日常生活を送る上で、一人で暮らしていると自分でやらなければならないことが多く、いろんな問題を起こしてしまうことがあります。
例えば、「朝寝坊する」、「締め切りに遅れる」、「光熱費の支払いを忘れる」、「探し物や落とし物をする」などです。
こうした問題は誰であっても起こしてしまうものですが、発達障害の人はその頻度が多かったり、トラブルが大きくなったりしがちです。
発達障害の人の多くは、問題にぶつかってしまうと大なり小なりパニックになってしまい、適切に解決することができなくなってしまいがちです。
そこで、今回は、
- 発達障害の人の日常生活で生じやすい悩みとは?
- その悩みが生じる原因を知りたい!
- 具体的で効果的な解決方法を教えて!
といった疑問や悩みに答えていきます。
この記事は、村上由美先生の書籍「ちょっとしたことでうまくいく発達障害の人が上手にお金と付き合うための本」を参考にしています。
発達障害の人が日常生活で生じやすい悩み
はじめに、発達障害の人が日常生活で生じやすい悩みについて、発達障害の種類別の特徴を押さえた上で説明します。
ADHD
ADHDは、「注意欠如多動症」の略で、注意の集中、分散、コントロールの困難さによって気が散りやすいとか、注意を適切に切り替えられないのが特徴です。
そのため、気が進まないことになかなか取り組めずに先延ばしにする傾向があります。
また、一度に注意を向けられる範囲が狭く、一度に複数の作業をする際に順序などを一時的に思い出すタイプの記憶が苦手なため、ケアレスミスを起こしやすいという特徴もあります。
- 生活リズムが崩れやすく、規則正しい生活を自力で送ることが苦手
- 家事など、一度に複数の用事をこなすことが苦手
- 片付けや掃除が苦手で、部屋が散らかっているため探し物が多い
- いいと思ったら即行動するため、衝動買いなど計画外の行動が多い
- 次々と思いついたことを話してしまい、うっかり失言してしまう
ASD
ASDは、「自閉スペクトラム症」の略で、次の3つの症状が遅くとも3歳までに認められます。
- 対人関係の障害
- コミュニケーションの障害
- 限定した情動的な興味・行動・活動
全般的に言語発達に遅れが出る場合があります。
興味の幅が狭く、かつ深いため、好きなことに対してはとことんのめり込みますが、興味がない、あるいは本人にとって必要性を感じないことには無関心なことが多いです。
- 好きなものにこだわり、生活に困っても趣味などにお金を使ってしまう
- 数字だと伝わるが、暑い/寒いといった感覚的な情報だとうまく処理できない
- 計画外の予定や突然の出費に慌て、パニックになってしまう
- 完璧にこだわる一方で、思いどおりにできないと突然投げ出してしまう
- 用件や状況に合わせた服装や言葉遣いが苦手
LD
LDは、「学習障害」の略で、年齢や知的発達などに比べて文字や数の読み書きや操作が著しく苦手な状態です。
読み書きが困難なディスレクシアと計算LDが代表的なものです。
ディスレクシアは、次のような特徴があります。
- 文字や数字の形の区別が難しい、漢字の偏とつくりがバラバラに見える
- 音と文字を適切に結び付けて覚えられない
- 文字自体は読めるが、単語や文章になると意味を理解しづらい
計算LDは、次のような症状が単独あるいは組み合わさって出てきます。
- 数の多少や増減関係がわかりづらい
- 位取りのルールがわからない
- 割合が理解できない
- 書類を読んで内容を理解したり、該当する箇所に書字をしたりすることが苦手(ディスレクシア)
- 契約書などの複雑な表現の文章だと意味を読み取れないことがある(ディスレクシア)
- メモを取ることが苦手(ディスレクシア)
- 予算を立てる、家計簿をつけるといったお金の管理が苦手(計算LD)
- とっさに計算して小銭を出すことが苦手(計算LD)
- 料理のレシピなどを見て配合を計算することが苦手(計算LD)
発達障害は生活障害
発達障害の特性は、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。
ここでは発達障害についての基本的な情報を押さえた上で、日常生活に支障が出てしまう理由や負担軽減のために活用すべきIT技術について説明します。
生活の悩み
発達障害の人が親元を離れて一人で暮らすようになると、次のような問題に直面することが多いようです。
- ゴミ出しを忘れる
- 待ち合わせや締切に遅れる
- つい無駄遣いをしてしまう
- 残高不足で銀行口座の引き落としができなかった
- 片付けができない
- 探し物、失くし物が多い
- 周囲の人と話し合えない
- 失言して相手を傷つけてしまう
こうしたことは誰にでも起こりうることですが、発達障害の人はこうした問題を起こす頻度が多く、気をつけようとしても繰り返してしまうといった傾向があります。
発達障害の人はそうでない人と脳の使い方が違うことが明らかにされていて、それを裏付けるデータも揃ってきています。
発達障害の人が、自分なりに工夫して日常生活を安定するように送っていることも報じされています。
発達障害の人の三種の神器
インターネットが普及するにつれて、これまでと違うコミュニケーション手段が発達し、仕事の手順や働き方も変わってきました。
例えば、ADHDの人はケアレスミスが多いので、経理作業などで苦労していましたが、会計ソフトが出てきたことによってミスがぐっと減りましたし、経理という職業へ選択の幅も広がりました。
手書きが苦手だった人にとっては、パソコンの普及により長文を簡単に書けるようになりましたし、Eメールの登場によって大量データをその場で先方に送ることもできるようになりました。
最近では、スマホやタブレット端末により、電子書籍で本を読んだり、自宅でデータをダウンロードして動画を見たりすることもできるようになり、場所も取らないから片付けの心配も不要です。
つまり、インターネットやパソコンの技術が発達障害の人たちが苦手とする世界を助けてくれるようになってきたと言えます。
- パソコン
- スマートフォン
- インターネット
これらを活用することで生活がしやすくなります。
時間管理ができない
発達障害の特性が強い人は、時間の流れを自分の感覚や行動に結び付けることが苦手なため、時間の特徴を理解した上で、行動に落とし込む対策が必要です。
ここでは次の二つの問題を取り上げます。
- 待ち合わせ時間によく遅れる
- 毎週のゴミ出しを忘れる
待ち合わせ時間によく遅れる
- 乗換案内アプリを活用する
- 移動時間込みでスケジューリングする
発達障害の人の特徴で日常生活で問題となるのは「大事なところにうまく注意を振り分けることができない」という点です。
例えば、ASD傾向が強い人は、友達と約束した「映画やコンサートなど」を楽しむことで頭がいっぱいなので、当日の持ち物やルート、時刻といった現実的な段取りにまで頭が回りません。
また、ADHD傾向が強い人の場合、身支度の際「やっぱりカバンはこっちにしよう」と唐突に思いついたことをやってしまうので、その結果遅刻してしまうことがあります。
解決策としては、乗換案内アプリを活用し、自宅から待ち合わせ場所までのルートをあらかじめ調べて登録しておくことです。
同時に、外出する時間の30分前に出掛ける時間をアラート設定しておくと、少し余裕を持って準備する時間も確保することができます。
また、待ち合わせ時間に遅れがちな人は、「このくらいだろう」という見積もりの根拠が「一番スムーズに行ったときの時間」に基づいていることが多いです。
しかし、現実は信号待ちや列車の遅れ、乗り換えやトイレの待ち時間といった細かい時間のロスが必ず生まれます。
自分の感覚と現実の時間の流れが食い違っていること、時間の区切りや逆算などの苦手なことは機械に担当してもらうことを前提にスケジュールを組むことなどして、移動時間込みでスケジューリングして、待ち合わせを守ることを優先事項として意識するようにします。
スケジュール管理の代表的なアプリとしてタイムツリーがあります。次の記事を参考にしてください。
毎週のゴミ出しを忘れる
- スマートフォンに知らせてもらう
- 前夜までにゴミをまとめ、玄関に置いておく
朝はやることが多く、さらに出勤時間に間に合うように一度に複数のことを考えながら作業しないといけませんが、発達障害やその傾向がある人にとって、これはとても大変な状況です。
曜日によって捨てるものが違う、いつもならゴミ出しを先にやっているのに、たまたま忘れた日は先に食事をしてしまった、目の前の洗濯物が気になって片付けていたら出勤時間になってゴミ出しを忘れたといったことが生じます。
発達障害の人の場合、何か一つ気がかりなことがあるとずっとそれがこだわってしまう(ASD傾向)、または目の前にあることに次々注意が移ってしまう(ADHD傾向)、数字が絡む情報の処理が難しい(数字のLD)という特性があります。
こうした傾向がゴミ出しがうまくいかないことの背景にある可能性があります。
解決策としては、自治体や建設業者などが配布しているゴミ捨てガイドのアプリの活用がおすすめです。
「自治体名+ゴミ+アプリ」といったキーワードで検索すると見つけることができます。
ゴミ収集日にアラート設定をすると前日と当日に捨てるゴミについて知らせてくれます。
年末年始などのゴミ回収の休みの日も通知してくれます。
このアラートを活用して、前日のうちからゴミをまとめて玄関に置いておくことで出勤の際にゴミを確実に出せます。
片付ける方法がわからない
発達障害の特性で「片付けが苦手」がよく挙げられます。
これは、自分にとって適した物の配置方がわかりにくいことが影響しています。
ここでは次の二つの問題を取り上げます。
- 物をどこに置いたのかがわからない
- 物を捨てられない
物をどこに置いたのかがわからない
- 使い終わる場所の近くにしまう場所を作る
- 一緒に使うもの同士でまとめる
- 扉を外して中に入っているものが見えるようにしておく
物をどこに置いたのかがわからない原因は、当たり前のことですが、使ったものを元の場所にその都度戻していないことです。
だからこそ、「置き場所を決める」、「使い終わったら決めた場所へ戻す」というルールが大切です。
発達障害の傾向の強い人は、この原則を体得することがとても困難です。
ADHD傾向の強い人は、興味・関心、特に新しい刺激に惹かれやすいことに加えて、一度に覚えていられる記憶の容量がとても少ないです。
すると、興味深い事柄が目の前に現れると、今まで手に持っていたものや使っていたものの存在が頭から消えてしまい、無意識のうちに意図しない場所に置いてしまうことがあります。
ASD傾向の強い人で片付けが苦手な人は、そもそも片付けの意味や必要性を認識していません。
このタイプは、多少散らかっていても、物がどこにあるか覚えていられるので、本人は困っていないのです。
片付けを習慣づけるには、日常生活で行う動作と結びついた場所に物をどう配置するかにかかっています。
解決策としては、ADHDの人であれば使い終わる場所の近くに収納場所を作るのが適切です。
普段よく過ごす場所のそばに一時置き用のボックスを用意して、定期的にそのボックスの中を整理して空にするように心掛けましょう。
また、発達障害の人は、準備している時に物を探してあちこち動き回ることで、作業が終わるまでにさらに時間がかかってしまうので、一緒に使う物同士でまとめることも大切です。
例えば、パスポートや通帳、年金手帳といった大事なものは、まとめて同じ場所に保管するといった方法もあれば、パスポートは旅行に関するものとして、旅行カバンに入れておくといったまとめ方もありです。
さらに、片付けが苦手な人は、ふたや袋を開けないと中身が見えないものは使いにくく、どんどん中身が地層のように堆積していきます。
その防止策としては、中が見えやすい透明なかごや袋に入れたり、扉そのものを外したりすることがおすすめです。
小さな子供やペットがいなければ、思い切って不要な扉を外してしまうのもありです。
物を捨てられない
- 似たもの同士でまとめる
- 使っていないものを意識して使ってみる
- リサイクルショップや寄付などを利用する
物をむやみに捨てるのは確かにもったいないですが、自分が使わない、あるいは使わなくなったとしたら手放した方が物にとっても自分にとっても良い結果になることが多いです。
ADHD傾向が強い人は、好奇心旺盛なことが多いので、つい試供品や新製品のおまけがついた物に手を伸ばしてしまいがちです。
ASD傾向が強い人は、親戚から「よかったら使って」と言われるなど、角が立たない言い回しをして断るのが苦手な上に、断ることに必要以上にエネルギーを消耗するので、いらないと思った物でも断れずに受け取ってしまいがちです。
発達障害の傾向が強い場合、自分の好みに合わないものと付き合うのがそもそも苦手という特性を認識して、ある程度試してみて不要だと分かったら無理に使うのを諦めて処分する覚悟も必要です。
解決法としては、同じものを家中から探して集めて並べる作業をすることです。
その上で、使うもの、使わないものに分け、使わないものはなぜ使わないのか理由を明確にすることで、捨てることができるようになります。
もしもその場で判断できなければ、半年待ってみるのも良いでしょう。半年間使わなければ捨てしまいましょう。
また、使うかどうかわからない物については、意識して使ってみることで、捨てるかどうかの結論を出すことができます。
実際に使ってみることで、本当に役に立つか、必要なのかが判断することができます。
捨てるにはもったいないと思うのであれば、リサイクルショップに買い取ってもらったり、フリマアプリで販売することも検討しましょう。
コミュニケーションが苦手
発達障害(特にASD)は、コミュニケーションの障害と定義されていて、特に「暗黙の了解」を苦手としています。
他人に自分の状況をどう伝えるといいのかを整理しながら適切な調整方法を探っていきましょう。
ここでは次の二つの問題を取り上げます。
- 連絡を忘れる
- つい余計なことを言ってしまう
連絡を忘れる
- スケジュールに「タスク」と「やる時間」を記入する
- メールやチャットツール、SNSを活用する
発達障害、特にASD傾向が強い人はコミュニケーションの問題を抱えやすいです。
なぜなら、自分の都合と周りの都合とを天秤にかけた時に自分の都合を優先させがちなのと、「相手にとって共有しないといけない情報は何か?」という見極めが感覚的に困難なことが関係しています。
また、ADHD傾向が強い人は、連絡する必要性は理解しているのに、仕事などの他の用事が入ると思い出せない、必要な情報を探す前につい他のことをして忘れてしまうという注意の問題があり、連絡することを先延ばししてしまいがちです。
解決策として、例えば仕事の場でもそうですが、まずはやることを確認して、さらに情報を整理することが必要です。
特に相手に連絡するときは、
- 誰が(誰と)
- いつ(いつまでに)
- どこで
- どのように
- 何をするのか
- いくらかかるのか
- 何が変わったのか
といった情報は最優先で伝える必要があることを頭に入れておきましょう。
相手にメールを送るときなどは、これらの情報が含まれて整理されているか確認してから送ると良いでしょう。
また、すぐに連絡することができない場合や後で連絡する方がいいような場合には、スマホのスケジュールもしくはタスクリストに、いつ頃やるのかを記入し、リマインダー設定をしましょう。
また、発達障害の人は、音声言語のやり取りが苦手な人が多いため、文字のツールを活用するとコミュニケーションがうまくいくことが多いです。
メールが一般的ですが、最近ではSNSやチャットツールを使うことも増えてきました。
つい余計なことを言ってしまう
- まず相手のリクエストや話を聞く
- 「自分の意見を言っても良いか」許可を取ってから発言する
- 相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わない
発達障害の中で特にASD傾向が強い人は、知識が豊富なこともあって、つい自分が詳しいと思う話題に関しては説明したり教えたくなったりしやすいです。
しかし、相手が聞き入れる気持ちがあるかどうかをほとんど考えずに話してしまい、結果として相手に不快な思いをさせてしまいがちです。
また、ADHD傾向が強い人の場合、相手の感情を害する可能性があることはわかっていても、思いついたことをその場の状況を無視して口に出してしまうことがあります。
解決策として、まず相手のリクエストや話を聞くことが良いでしょう。
会話は流動的なため、その場の雰囲気を感覚的につかむことが苦手な場合、まず相手は自分から意見を聞きたいのか、それとも気分転換したいのかを観察してから発言する必要があります。
つい自分の話ばかりをしがちなタイプであれば、まず相手の話を黙って聞く練習から始めると良いでしょう。
今まで見えなかった相手の感情や悩みが見えてくるかもしれません。
また、相手と話しているところで、話に区切りをつけるような言葉が出てきたら、自分の意見を言ってもいいタイミングとわかります。
そうした時に、「さっき話していた話題だけど、自分少し詳しいからよかったら話してもいい?」といった感じに相手の許可をとることも良いです。
さらに、たとえ「相手の意見が正しくない」と思ったとしても、相手に自分の話を聞いてもらうためには、話をしたい欲求を少し抑える必要があります。
特に「正論」をいうときは気をつけなければなりません。
正論を言うことでかえって人間関係が悪化することもあるので、相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わないように気をつけましょう。
まとめ
今回は、発達障害の人が上手に生活する方法について説明しました。
時間管理ができない、片付ける方法がわからない、コミュニケーションが苦手という悩みについて、次のような対策を紹介しました。
- 乗換案内アプリを活用する
- 移動時間込みでスケジューリングする
- 使い終わる場所の近くにしまう場所を作る
- 一緒に使うもの同士でまとめる
- 扉を外して中に入っているものが見えるようにしておく
- スケジュールに「タスク」と「やる時間」を記入する
- メールやチャットツール、SNSを活用する
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
日常生活を送る上で、一人で暮らしていると自分でやらなければならないことが多く、いろんな問題を起こしてしまいます。誰であっても起こしてしまうものですが、発達障害の人はその頻度が多かったり、トラブルが大きくなったりしがちです。そこで、本記事では発達障害の人が上手に生活する方法について説明します。
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