「子どものWISC結果を見ていたら、自分にも似たような特徴があると気づいた」
「整理が苦手、忘れっぽい、人の話を最後まで聞けない……もしかして私もADHD?」
子どもの発達検査をきっかけに、こんなふうに自分自身のことが気になりはじめた保護者の方は少なくありません。
私は公認心理師として子ども家庭支援センターに勤務していますが、「子どもの相談をするうちに、自分のことも知りたくなった」と話してくれる保護者の方と出会うことがあります。そのことを恥ずかしいとか、おかしいとか思う必要はまったくありません。自分の特性を知ることは、子どもへの関わりにもつながる、とても前向きな一歩です。
この記事では、大人が受ける知能検査「WAIS」の基本と、受検前に知っておきたいことを整理してお伝えします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもの発達検査をきっかけに「自分も?」と気になった方
- 長年、仕事や生活の中でうまくいかないことが多いと感じている方
- 大人の知能検査(WAIS)について基礎から知りたい方
- 検査を受けるとどんなことがわかるのか、前もって把握しておきたい方
「自分も発達障害かも」と感じるのは珍しくありません

発達障害には遺伝的な背景があることが知られています。ただし、それは「親が原因で子どもに発達障害が生じた」ということを意味するものではなく、脳の多様な特性のパターンが家族の中で共通して現れやすいことがある、というものです。
子どもの検査結果に目を通しながら「この特徴、私にも心当たりがある」と感じること自体は、自己理解の入口として非常に自然な反応です。
ゆう「自分もそうかも」という気づきは、子どもをより深く理解するための視点にもつながります。
また、こんな気持ちを抱いている方もいるかもしれません。
- プリントをよくなくしてしまう、締め切りを忘れる
- 複数のことを同時にこなすのが苦手
- 人の話を最後まで聞けない、会議中に頭が散漫になる
- 片付けが苦手で、いつも部屋が散らかっている
- 衝動的に発言してしまい、後から後悔する
こうした困りごとが長年続いているなら、自分の認知特性を知ることは、生活をラクにするヒントになります。
大人の発達特性を調べるための検査として用いられることがあるのが、知能検査「WAIS(ウェイス)」です。



WAISは知能検査であるため、それだけで発達障害がわかるものではありませんが、医師が治療方針を立てるために使われます。
大人の知能検査「WAIS」とは|WAISで何がわかるのか
WAISの基本
WAIS(ウェクスラー成人知能検査)は、世界中で使用されている信頼性の高い知能検査です。子ども向けのWISCと同じシリーズで、対象年齢は16歳〜90歳11か月。日本で現在使われている最新版は「WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)」です。
WAIS-Ⅳで測定できる4つの指標
- 言語理解(VCI):言葉を使って表現する力、知識・社会常識を扱う力
- 知覚推理(PRI):目で見た情報を処理・推理する力
- ワーキングメモリー(WMI):聞いた情報を一時的に記憶して使う力
- 処理速度(PSI):素早く正確に作業する力
全体のIQ(FSIQ)に加えて、この4つの指標ごとの得意・苦手のパターンが明らかになります。
WISCとの違い
「子どもが受けたWISCと、WAISはどう違うの?」という疑問をよく受けます。シンプルにまとめると次のとおりです。
WISC と WAIS の違い
- WISC-Ⅴ:5歳〜16歳11か月が対象の子ども向け検査
- WAIS-Ⅳ:16歳〜90歳11か月が対象の大人向け検査
測定する認知機能の構造はよく似ていますが、問題の難易度・内容が異なります。どちらも「得意・苦手のパターンを明らかにする」という目的は共通です。


WAISを受けるメリット
「IQを数値で知ること」が目的ではありません。WAISを受けることの本質的な価値は次の3つにあります。
- 困りごとの「理由」がわかる:「なぜうまくいかないのか」が、脳の特性という視点で整理できます。自分を責める必要がなくなります。
- 得意・苦手のパターンが見える:「こっちのやり方は苦手だけど、こっちは得意」という具体策が立てやすくなります。
- 発達特性の傾向を把握できる:ADHDやASDの傾向が凸凹パターンとして現れることがあります。確定診断は医師が行いますが、受診の判断材料になります。
「自分の特性を誰かに話してみたい」そんなときは
公認心理師・臨床心理士にオンラインで相談できます。検査を受ける前の不安や、結果をどう受け止めればいいかも話せます。
受検前に知っておきたい|よくある誤解5つ


WAISを受ける前に、知能検査についての「思い込み」をあらかじめ解いておくと、結果をより正確に受け取れます。次の5つは、特によく聞く誤解です。
誤解① IQはその人の知能の全てを表している
IQは知能の一側面を数値化したものです。理解力・記憶力・推理力・表現力・処理速度など、知能を構成する複数の力のうち、検査で測れる部分のみを反映しています。IQが高いからといって、すべての面で優れているわけではありません。
誤解② IQは一生変わらない
IQは変化します。成長の過程で変わることに加えて、検査当日の体調・ストレス状態・検査者との関係性によっても変動します。「本来のIQ」を正確に知りたいなら、体調を整えて臨むことが大切です。



体調が悪い日に受けた結果は、本来の実力を反映していない可能性があります。無理せず体調の良い日に受けましょう。
誤解③ 結果が悪ければ知的障害と診断される
知的障害の診断には、IQの数値だけでなく、日常生活の適応状況や発達歴の確認など、複数の要件が必要です。また基本的に18歳未満で診断されるものであり、大人が知能検査を受けて即座に「知的障害」と診断されることはありません。検査は「診断のためのツール」ではなく「自己理解のための地図」です。
誤解④ 検査当日にすぐ結果がわかる
WAISの結果は、検査当日には出ません。一般的な流れは次の通りです。
- 初回面接(インテーク):約1〜1.5時間
- 検査の実施:約1〜1.5時間(後日)
- 結果フィードバック:約1時間(検査から1週間〜1か月後)
申し込みから結果説明まで、1か月〜3か月程度かかることを想定しておきましょう。機関によっては予約が数か月待ちになることもあります。
誤解⑤ 知能検査で発達障害が診断できる
知能検査は発達障害の「診断」を下すものではありません。ADHDやASDの傾向が凸凹パターンとして現れることがありますが、それはあくまで参考情報です。発達障害の確定診断は医師(精神科・心療内科)が行います。
「検査結果を持って受診する」という流れを取ることで、診断の助けになる場合があります。
WAISはどこで受けられる?費用・流れ・結果の活かし方
受けられる場所
WAIS-Ⅳを受けられる主な場所は次の通りです。
- 精神科・心療内科:医師の指示がある場合は保険適用の可能性あり
- 発達障害支援センター:公的機関・費用が安い場合が多い
- 民間の心理相談室・カウンセリングルーム:自費診療(1万〜5万円程度)。予約が取りやすい場合も
- 大学の心理相談室:比較的安価で受けられる場合がある
受診先を選ぶ際は「WAIS-Ⅳ(最新版)を実施しているか」を必ず確認してください。まだWAIS-Ⅲ(旧版)を使っている機関もあるためです。
結果フィードバックを受けるときのポイント
結果を受け取るときに多い誤解を整理しておきます。
- IQの数値だけに注目しない。4つの指標の「凸凹パターン」を見ることが大切
- 「今回の結果がすべて」ではない。体調や環境で変動する
- 「弱みを直す」より「強みを活かして弱みを補う」発想を持つ
フィードバックの場では、「この結果を日常生活にどう活かせるか」を具体的に聞くことをおすすめします。数値の意味だけでなく、困りごとへの対処法まで教えてもらえる検査者が良いSCの条件と同様、良い検査者の条件でもあります。
結果を受け取った後にできること
検査結果は「自分の脳の地図」です。数値に一喜一憂するのではなく、
- 「ワーキングメモリーが弱い→メモを活用する習慣をつける」
- 「処理速度が遅い→締め切りに余裕をもたせる」
- 「言語理解が高い→口頭の指示より文字で確認する仕事スタイルが合う」
このように、特性に合った工夫を見つける入口として使ってみてください。発達特性の傾向が見られた場合は、精神科・心療内科への受診を検討することも一つの選択肢です。



「自分を知ること」は、自分を責めることとは正反対の行為です。特性を知ることで、ラクになる道が見えてくることがあります。
まとめ|「自分を知る」は子どもへの理解にもつながる
この記事のまとめ
- 子どもの発達検査をきっかけに「自分も?」と気になるのは自然な反応
- 大人の知能検査はWAIS-Ⅳが代表的。16歳〜90歳が対象
- WAISでわかるのは言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4指標
- 「IQ=すべて」「変わらない」「当日に結果が出る」などの誤解は事前に解いておく
- 受けられる場所は精神科・発達支援センター・民間相談室など。WAIS-Ⅳ(最新版)対応か確認を
- 結果は数値より「凸凹パターン」に注目し、困りごとへの対処に活かす
自分の特性を知ることは、子どもへの理解を深めるきっかけにもなります。「なぜ子どもがあの行動をとるのか」が、自分の経験を通じてより立体的に見えてくることがあるからです。
一人で抱え込まず、まず誰かに話してみることから始めてもいいと思います。
「自分の特性、誰かに話してみたい」と感じたら
公認心理師・臨床心理士にオンラインで、自分のペースで相談できます。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
