この記事では、
子どもの変わりたい気持ちを後押しする方法
について詳しく説明します。
子どもが中学生くらいになると、周りと比べて自分がうまくいっていないと感じると、「変わらないといけない」という気持ちが生じるようになります。
親としては、子どもが悩んでいる姿をそっと見守ってあげたいところですが、子どもによっては変わりたいけど変われないことに悩み、初めの一歩を踏み出せないことがあります。
そのような子どもの「変わりたい」という気持ちをそっと後押しする方法があります
それを心理相談の分野では「動機づけ面接」と言います。
そこで、今回は、
- 動機づけ面接って何?
- 親としてどのような気持ちで接することが大切なの?
- 変わりたい気持ちを後押しする方法を教えて!
といった疑問や悩みに応えていきます。
中学生や高校生くらいの子どもの親にとっては、非常に参考になりますので、是非参考にしてください。
動機づけ面接
動機づけ面接は、英語では「Motivational Interviewing:M I」と言います。
アメリカのニューメキシコ大学のウィリアム・R・ミラーと、イギリスのカーディフ大学のステファン・ロルニックの二人が主になって開発した心理技法です。
二人は、動機づけ面接を次のように定義しています
動機づけ面接は、協働的なスタイルの会話によって、その人自身が変わるための動機づけとコミットメントを強める方法である。
「動機づけ面接(第3版)」ウィリアム・R・ミラー ステファン・ロルニック:星和書店 2019
簡単に言い直すと、人が抱えている「変わりたいけど、変われない」、「変わりたいけど、変わりたくない」といった両方の気持ちを解消して、その人が行動できるように支援していく方法です。
変わりたいけど変われないことに悩んでいる子どもは、「頑張って変わろうとする言葉」と、「今のままでもいいとする言葉」の両方を話します。
親は、その両方の言葉に注意をながら、変わりたい気持ちの深さや強さを促していきます。
ただし、子どもは親から介入されると、「抵抗」しようとすることがあります。
そうしたときに、親は真正面から介入することは避けて、とりあえずは、よい親子関係であり続けることを大切にします。
親子関係が安定していなければ、子どもの変わりたい気持ちを促すことはできません。
よい親子関係を維持する中で、親は子どもの変わりたい気持ちを大切にして、子どもに抵抗されないように少しずつ背中を押していきます。
変わりたいけど変われないという気持ち
動機づけ面接の具体的な内容に入る前に、変わりたいけど、変われない子どもの気持ちについて考えてみましょう。
そうした子どもは、その両方の気持ちに挟まれて気持ちが沈み、身動きが取りにくくなっています。
例えば、「いい高校に入るために勉強しなければいけないけど、どうせ受からないから勉強したくない。」として、机に向かうけど勉強が進まない感じです。
頭の中でぐるぐると考えてしまって、判断ができずに、行動することができなくなっています。
このような両極端な気持ちを持っている子どもについて、そのどちらかに肩入れするような助言をすると、逆に振れてしまうという現象があります。
先ほどの例の場合に、子どもに対して「とにかく受験のために勉強しよう!」などと勉強することを促進するように働きかけてしまうと、子どもは「そんな簡単に言わないでほしい。」として結局勉強をしなくなってしまうかもしれません。
変わりたいけど変わりたくないという子どもの気持ちは、とても繊細で扱いが難しいです。
親が子どもに接するときに注意すること
子どもが、変わりたいけど変われないことで悩んでいるとき、親が会話をする際にどのような点に注意をする必要があるでしょうか。
親が注意するべきことの一つとして、「間違い指摘反射」があります。
人は誰であっても、人が間違えていることをしていることを目にしたとき、それを反射的に指摘したくなります。
例えば、高校受験を目指す子どもが、スマホをいじりながら、「もう少ししたら勉強するよ。」と言ったら、親は「スマホをやめて、今すぐに勉強しなさい。」と注意したくなるでしょう。
親が子どもを心配する気持ちや頑張ってほしいという熱意があるとしても、残念ながら、間違い指摘反射に対する子どもの通常の反応は、言い返す、反論する、無視する、話を遮るといった拒否的・否定的なものになりがちです。
人は、強い説得を受けると、人に自分のことを決められたくないという思いから、心理的抵抗が生じます。
親が、子どもの行動や態度について「間違い指摘反射」で注意をしてしまうと、親子の関係が悪化してしまい、かえって子どもの「変化したくない」という気持ちを引き出してしまいます。
親としてどんな気持ちで接することが大切か
子どもが、変わりたいけど変われないと悩んでいるとき、親としてどのような気持ちで接することが望ましいでしょうか?
ここでは、「動機づけ面接」の考え方にならって、次の4点について、親の心構えを説明していきます。
- 協働
- 受容
- 喚起
- 思いやり
ひとつずつ見ていきましょう!
協働
親と子どもが、協力して悩みや問題の解決に当たることです。
子どもは、変わりたいけど変わりたくない気持ちを抱いているとき、そのことを一人で抱えてしまって、身動きが取りにくくなっています。
そうしたとき、親は子どもを説得して無理やり悩みや問題に向き合わせるのでは関係が悪くなりますし、かといって子どもに全てを任せていても先に進みません。
親子が、一緒に悩みや問題を解決していこうとするスタンスに立つことで、協力的な関係を続けることができるようになります。
受容
親が、子どもの考えや価値観を受け入れてあげるということです。
子どもには、子ども自身の考え方や価値観があることを尊重して、子どもの問題や短所ではなく、よいところに着目します。
そして、子どもの世界観(考え方や価値観を含む)を正確に理解しようと試みて、子どもが自分で判断して先に進むことができるように支援します。
子どもは、変われないでいる自分について、「今のままでいい。」と口にして、自分を変えることから目を背けようとすることがあります。
そうした子どもの話に耳を傾けると、その言葉の背景には、自信がない気持ちや誰からも支えてもらえていないということなどによる諦めや無力感がみられることがあります。
「今のままでいい。」という言葉を否定も肯定もせずに、その言葉のまま受容することで、子どもの本音が語られることがあります。
喚起
親が、子どもに向き合って話を聴いていく中で、変化したい気持ちを信じたり見つけたりすることです。
子どもが、変わりたいけど変われないということで悩んでいるとき、親が「こうすればいい。」とか「こういうふうに考えればいい。」といっても効果的ではありません。
子どもの中にある「変わりたい気持ち」を引き出すことが親の役割とも言えます。
子どもの中にある「本当はもっと頑張りたい。」、「今よりもよい生活を送りたい。」という気持ちがあることを信じて接します。
親の中に「あなたなら変化できる。」という気持ちがあれば、自然と子どものやる気を引き出すような言葉や態度が表れるようになり、子どもが少し安心して変わろうとするようになります。
思いやり
親は、子どもにとって一番利益になることや生活が向上していくことを目標として接するということです。
変われなくて行動できなくなっている子どもを見ると、ついイライラやムカムカが生じやすいので、常に意識しておくことが大切です。
また、「子どものため」と思いながらやっていることが、実は親のためにやってしまっていることもあるため自戒する意味もあります。
例えば、いい高校や大学に入ってほしくて塾に通わせていることについて、一見子どものために見えても、実は親自身の学歴コンプレックスの解消のためだったりする場合があります。
子どもの変わりたい気持ちを引き出す基本スキル
子どもが、変わりたいけど変われないことで悩んでいるとき、どのように接すれば良いでしょうか?
先ほどの心構えとは異なり、子供の変わりたい気持ちを引き出すための具体的な接し方のスキルを紹介します。
ここでは、「動機づけ面接」の考え方にならって、次の4点の基本スキルを説明していきます。
- 開かれた質問
- 是認
- 聞き返し
- 要約
ひとつずつ見ていきましょう!
開かれた質問
親が子どもと話をするときに、子どもが自由に答えられるように、「〜についてどう思う?」「〜についてどう感じる?」といったように質問する方法です。
これを「開かれた質問」と言います。
「オープンクエスチョン」とも言います。
その反対に「はい」や「いいえ」で答えられる質問は、「閉じられた質問」です。
閉じられた質問を続けていると、子どもは「聞かれたことだけ答えればいい。」と受動的な姿勢になってしまいます。
そのため、子どもに質問をするときには、オープンクエスチョンを用いて、自分で考えさせて答えさせることが大切です。
例えば、「勉強をすることについてどう思う?」、「部活を辞めて一番困ることは?」「勉強を続けるためには、どんな方法があるか?」といった質問です。
親が子どもに問いかけていくことで、子ども自身に「自分が何をしなければならないのか」、「どうしたらいいのか」ということを考えさせて、行動できるように方向づけます。
是認
子どもの努力や長所や強みを見つけて言葉にして直接伝えていく方法です。
例えば、子どもが「1時間勉強した後、ゲームをして遊んじゃった。」と言ったときに、「1時間は勉強をできたんだね。」と応じるといった感じです。
子どもが「遊んじゃった」として失敗したということで話していますが、親が子どもが少しでもできたことに焦点を当てて伝えるのがコツです。
親が、できるだけ子どもの良いところやできたところに着目する態度が大切です。
子どもが人に迷惑をかける行動をとってしまったとしても、もしかしたらそれよりも悪い事態を避けようとする子どもなりの努力かもしれません。
そう考えると、子どもの良いところやできたところのポイントは必ず見つかると言えます。
聞き返し
4つの基本スキルの中でも、一番大切なのが「聞き返し」の方法です。
聞き返しは質問ではなく、子どもの言葉をそのまま伝えることです。
質問と違って語尾を下げて話しかけます。
語尾を上げた質問は、答えを要求することになりますが、語尾を下げた聞き返しは、それがないため、子どもが安心して自由に自分の考えを掘り下げて考えることができます。
「単純な聞き返し」と「複雑な聞き返し」の二つに分かれます。
「単純な聞き返し」は、子どもの発言を繰り返したり、意味を変えずに言い換えるような対応です。
会話に弾みがついて、話が展開していく効果があります。
例えば、子どもの「勉強なんかしたくない。」という発言に対して、親は「勉強をしたくない。」と応じます。
まずは、「単純な聞き返し」です。
単純な聞き返しは、子ども自身が話した言葉なので、その言葉に対して、子どもが否定しにくいところがあります。
親と子どもが相手の言葉を否定せずに話を進めることができるようになります。
次に、「複雑な聞き返し」です。
「複雑な聞き返し」は、子どもの言葉に含まれる意味を推測したり、子どもが言葉にできていない感情や考えを明確にしたりする対応です。
親子の会話を深めていく効果があります。
例えば、子どもの「勉強なんかしたくない。」という発言に対して、親は「勉強を難しく感じていて困っているんだね。」と応じます。
子どもの発言の背景に、学校の勉強についていくことができていないことに困っているのではないかと推測して、言葉にしています。
複雑な聞き返しでやり取りをするコツとしては、「しかし」とか「でも」という言葉を使わずに、「同時に」とか「一方では」という言葉を使うことです。
そうすることで、子どもは親に理解してもらえているという気持ちになることができます。
子どもの感情や考えを推測しなければならないためなかなか難しいですが、これができるようになると、子どもは自分から自分の悩みに目を向けるようになり、一歩を踏み出しやすくなります。
要約
子どもとの話を進めた後に、子どもが話した言葉を集めて整理して、子どもに対してまとめて聞き返す方法です。
話に出てきた話題を集めることで、親と子どもとの間で理解を共有することができるようになります。
できるだけ、子どもが変わりたいという気持ちを選んでまとめていくことが大切です。
そうすることで、子どもは変わりたいけど変われない気持ちの中から、純粋に「変わりたい」という気持ちに向き合うことができるようになります。
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まとめ
今回は,子どもの変わりたい気持ちを後押しする方法について、「動機づけ面接」の考え方に沿って説明してきました。
子どもが変わりたいけど変われないことで悩んでいるとき、親としてじっくりと子どもに向き合って話をしましょう。
そうした中で、今回紹介したような基本的なスキルを用いて、子どもの変わりたい気持ちに目を向けることができれば、そっと背中を押すことができるようになります。
子どものやる気を後押しするためには、コミュニケーションスキルが大切になります。
コミュニケーションスキルを学ぶためには、「アサーション」の考え方も大切です。
次の記事で、詳しく説明しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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