発達障害のある人は、いろいろな特性があって、得意なことと苦手なことの差が大きいことが特徴です。
一人一人の発達障害の特性に合った勉強方法を身に付けることができれば、子どもでも大人でも楽しく学び続けることができるようになります。
そこで、今回は、
- 発達障害の特性に合った具体的な勉強方法を知りたい!
- 発達障害の子どもへの勉強の教え方のコツを教えて!
- 効率的に、着実に身に付ける方法ってあるの?
といった疑問や悩みに答えていきます。
発達障害の人の苦手を克服して勉強に繋げていきましょう。
この記事は、うつや発達障害により離職からの復帰を支援する会社の代表である安田祐輔氏の「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本」を参考にしています。
発達障害の人の勉強に対する困り事
発達障害の人が勉強するときに困ってしまいがちな特徴について説明します。
もちろん発達障害と言っても、「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD(学習障害)」によって、苦手なことや困り事は変わるので、それぞれにおける特徴について押さえておきます。
ASDの人の勉強に対する困り事
ASDの人は、「こだわりの強さ」や「コミュニケーション力不足」といった特徴があります。
そのため、勉強に対して次のような困り事が生じやすいと言われています。
- 効率的な予定を立てるのが苦手
- 優先順位づけが苦手
- 得意分野ばかりやってしまう
- 講師が話している内奥が理解できない
- 講師にうまく質問できない
- 口述試験が苦手
ADHDの人の勉強に対する困り事
ADHDの人は、「不注意」で気が散りやすく、「衝動性」から思いつきで行動しやすく、「多動性」からじっとすることが苦手です。
そのため、勉強に対して次のような困り事が生じがちです。
- ケアレスミスが多い
- 予定通りに行動できない
- 長時間座っていることができない
- 学んだことをうまくノートに整理できない
- 勉強中、つい、スマホを見てしまう
- 大事な試験に忘れ物をしてしまう
LDの人の勉強に対する困り事
LDの人は、他の学習の面では問題がなくても、ある特定のことだけが極端に苦手な障害です。
例えば、文章を「読む」ことができても、「書く」ことが極端にできないといった場合や、「読み書き」ができても「話す」のが極端に苦手といった場合などがあります。
そのため勉強に対して、次のような困り事が生じます。
- 文字を一文字ずつにしか読めず、単語や文章の塊として理解しづらい(読みが苦手)
- 黙読または音読が苦手(読みや話しが苦手)
- 画数の多い漢字が書きづらい(書きが苦手)
- 簡単な計算で間違える(計算が苦手)
発達障害の人が上手に勉強するための5つの対策
発達障害の人が上手に勉強するための対策を解説します。
具体的には次の5点です。
- スケジュール・段取り対策
- 過集中・寝起き対策
- 理解力・集中力対策
- 継続力・環境づくり対策
- 忘れ物・プレッシャー対策
スケジュール・段取り対策
予定どおりにできないのを何とかしたい
効率的に学習を進めるためには、事前に「いつまでに、何を、どのように進めればよいか」を考える必要があります。
ADHDの人は、予定どおりに学習を進めることは苦手です。
ASDの人であれば一度決めた予定に沿って進めることは得意なのですが、そもそもこだわりの強さから上手な計画を立てることができず、その結果予定どおりにできないことも少なくありません。
スケジュールや段取りに関する学習のコツについて説明していきます。
スケジュールが立てられない
発達障害の人は、試験やテストまでのスケジュールを上手に立てることができないことが多くあります。
ADHDの人だと、思いついたらすぐに行動に移しやすいという特性があるためスケジュールを立てるより前に、思いついた順番に衝動的に手をつけてしまうことがあります。
ASDの人だと、こだわりの強さが、段取りの妨げになることがあります。
物事を自分が決めた特定の順番やルールで行うことにこだわりがありますが、それは効率的で実現可能なスケジュールではないことが多いです。
こうした人たちの解決策は次のとおりです。
基本的な考え方としては、「試験日までの残り時間を考え、それまでに試験範囲が終わるようにざっくりとしたスケジュールを立てる」といったことに尽きます。
スケジュールにはある程度の余裕を持たせることで、万が一風邪をひいてしまったときでも、後で追いつけるように計画しておくことがポイントです。
また、実現可能で、効率的な計画になっているか、一人で決めるのではなく、周りの人のアドバイスを受けることも大切です。
もしも、子どものスケジュールを親が立てるときには、お子さんの特性を踏まえながらも、お子さんと話しながらスケジュールを決めていくことが大切です。
親にスケジュールを押し付けられると、スケジュールどおりできないときに親のせいにする子もいます。
予定にない科目をやってしまう
衝動的な傾向がある人は、目に留まった刺激に飛びついてしまい、別の科目の勉強をしてしまうことがあります。
ADHDの人は、スケジュールを立ててそれに沿って勉強をしようとしていても、例えばテキストを開いたときなどにふと別の課題を見てしまうと、その勉強もしないといけないと思って予定を無視してしまいがちです。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
いろいろな方法がありますが、第一にやるべきことは「余計な情報が入らない学習環境を作ること」が大切です。
例えば、自分の勉強する机の周りに余計な本や物を置かないようにしたり、部屋にポスターなどを貼らないようにしたりすることが効果的です。
子どもの場合は、リビングで学習している子もいると少なくないと思いますが、そのときにはテレビを消したり、下の子を別の部屋に連れて行ったりして静かな環境を用意することが大切です。
過集中・寝起き対策
勉強する気が起きないのを何とかしたい
苦手分野を避けて得意分野ばかり勉強してしまう、早起きして勉強したいのになかなか起きられない、といった特徴がある場合、どうしたらもっと「やる気」が出るのか悩む人も多いでしょう。
中には、「過集中」や「睡眠障害」といった特性・症状である可能性もあります。
その対策について説明していきます。
得意分野ばかりやってしまう
ASDの人は、自分の興味がある場合にとことんのめり込む傾向があり、それは「過集中」と呼ばれています。
同じことを長時間にわたって続けても、全く苦痛を感じない人もいるようです。
ADHDの人の中にも「過集中」が起きることがあり、別の行動に切り替えることができないことがあります。
自分の好きで得意な分野ばかり勉強して、苦手な分野が疎かになってしまいがちです。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
興味のある得意分野への「過集中」を防ぐ環境づくりで最も簡単にできるのは、「事前に学習スケジュールを設定し、それに合わせてタイマーをかけておく」方法です。
タイマーがなったら、一度学習をやめると決めておくことで、過集中の状態から抜け出しやすくなります。
子どもに対してもタイマーの活用は非常に有効です。
朝勉強しようとしても、起きることができない
朝起きられない場合、いくつかの原因が考えられますが、一つは「概日リズム睡眠障害」などの睡眠障害を疑うことがあります。
睡眠障害の可能性があれば、早めに専門家に相談することが望ましいです。
ただ、睡眠障害ではなくても、朝なかなか起きられない人もいます。
そうした場合は、「光の取り入れ方」に課題があるかもしれません。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
朝、日光を浴びることで、眠りを感じる「メラトニン」の分泌が抑制され、朝起きることができるようになります。
そのため、朝日が入るようにカーテンを開けておくとか、スマートホーム化して自動でカーテンを開けられるようにすることも良いでしょう。
朝になると「光を発する時計」を用意する方法もあります。
理解力・集中力対策
上手に講義を受けられないのを何とかしたい
せっかく予備校や塾に通っているのに講義がうまく理解できない、集中力が切れてしまうといった場合、情報処理の傾向や、不注意・多動性などの特性が隠れているかもしれません。
上手に講義を受けるための工夫について説明していきます。
講師が話している内容が理解できない
ASDの人は、耳からの情報の処理が苦手な場合があります。
そのため、口頭での長い指示や説明が理解しづらく、覚えづらい人も多いです。
また、雑音などが多い場所で、必要な音声を選択的に聞き取ることが難しい人もいます。
すると、教室で周囲の声やエアコンの音などの雑音と「講師の声」が同じ大きさで聞こえてしまうのです。
こうした人たとの解決策は、次のとおりです。
集中力の問題ではないため、頑張って講師の声を聞き取ろうとしてもうまくいきません。
そこで、レコーダーを用いて録音する方法が挙げられます。
うまく聞き取れなかったところについては聞き直すことができますし、低速で聞き直すことで内容が理解しやすくなります。
他にも、文字起こしツールを活用して、視覚的に講師の声を見れるようにするといった方法もあります。
例えば、グーグルドキュメントの文字起こし機能は優秀なので、多少の音声の取りこぼしや誤変換はありますが、問題ないくらいの精度で文字起こしができます。
長時間座っていることができない
ADHDの特徴の一つに「多動性」があります。
長時間にわたってじっと座って話を聞き続けてはならない講義は、多動性が強いADHDの人にとって苦手なものの一つです。
子どもの頃にじっとできない人でも、大人になるにつれて徐々に落ち着いてきますが、大人になっても長時間座っていると席を立ちたくなる人もいます。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
ADHDの人は、身体にずっしりとした重みを感じさせることで、多動性が緩和することがあります。
最近では、ADHDのサポート器具として、体に圧を与える「重いひざ掛け」といった商品があります。
重さは2キロ程度と、通常のひざ掛けよりもずっしりとした重みがあり、下半身に圧を感じることがで落ち着くことができます。
この商品は、ADHDの子どもの学習にも効果的です。
継続力・環境づくり対策
自習ができないのを何とかしたい
効率的に自習を進めるにはどうしたら良いのでしょうか。
目に入るものや音が気になって集中できない方が、集中力を高める工夫など、発達特性が原因となるつまずきポイントを確認します。
学んだことをうまくノートに整理できない
ADHDの人に多いのが、「メモをなくしてしまった」「どこに学習内容をまとめたのかを忘れてしまった」といったもので、「不注意」の特性が影響しています。
メモやノートに書いている途中で、別のことに注意が映ってしまい、メモやまとめたところがわからなくなってしまうのです。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
「メモをなくしてしまった」ことの対策としては、付箋や裏紙などにメモを取らないで、ルーズリーフにとるようにして、ファイルがとじることがおすすめです。
関連のある場所に一緒に閉じておくだけで、後から見直しやすくなります。
「どこに学習内容をまとめたのか忘れてしまった」ことの対策としては、手書きではなく、パソコンやタブレットにメモを取ることです。
パソコンやタブレットのメモであれば、検索機能を使ってすぐにデータを見つけ出すことができます。
勉強中、ついスマホを見てしまう
勉強の邪魔をする一番の敵は「スマホ」かもしれません。
ADHDの人は、少し集中が切れただけで、「10分間だけ休憩しよう」とゲームアプリを開いて、気づいたら1時間以上も遊んでしまうこともあります。
自分でやめようと思っても、衝動性が原因で、行動を抑えるまもなくスマホに手が伸びてしまいます。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
一番の対策は、勉強中だけは自分のそばに置かずに、家族や友人などにスマホを預けることです。
また、スマホを預ける相手がいない場合には、スマホを「機内モード」に設定することで、通知などが来ないようにすることも有効です。
通知がなくなるだけでも、集中力は阻害されにくくなります。
忘れ物・プレッシャー対策
試験本番の不安をなくしたい
試験本番の不安を解消するためにはどうしたらよいでしょうか。
締め切りが守れない、忘れ物をしてしまう、試験会場まで迷ってしまうなど、そもそも試験の前段階で失敗することもあり、そこには発達特性が原因となることがあります。
そこで、試験本番の不安をなくすためのポイントを紹介します。
提出書類の締め切りが守れない
ADHDの人は、衝動性が原因で、やりたいことを思いつくと、やるべきことがあっても注意がうつってしまうことがあります。
やるべきことをしっかり覚えていても、ついついタスクを先延ばしにする先送り癖もADHDの特徴です。
そのため、書類の提出締め切りが頭ではわかっていても、どれくらいの時間が残されているのか感覚的に理解できていないことがあります。
こうした人たちの解決先は、次のとおりです。
書類提出の期限を守るためには、期限を「忘れない仕組み」と、書類提出に必要なタスクを「先送りできない仕組み」の2つが必要です。
「忘れない仕組み」には、スケジュール管理が有効なので、Googleカレンダーなどに登録して、リマインダー機能やスヌーズ機能も設定しておけば安心です。
「先送りできない仕組み」には、家族や友人など自分以外の人の助けを借りることが大切です。
他者からリマインドをもらうことで、「そろそろやらないとまずいな」という気持ちになり、取り掛かることができるようになります。
思春期のお子さんだと、反発してくるかもしれませんので、事前に親子で話し合っておくことが大切です。
ケアレスミスがなくならない
試験当日に問題を解いているとき、ケアレスミスで点数を落としてしまったらもったいないです。
マークシートのような形式の場合、一つの解答欄がズレると全て点数を失ってしまいます。
ADHDの場合、不注意特性が原因でケアレスミスが増えてしまいがちです。
ASDの場合、感覚特性で問題用紙の当たる光がまぶしく感じたり、エアコンの音が気になって集中できなかったりします。
こうした人たちの解決策は、次のとおりです。
ケアレスミスにつながりやすい原因を特定することが最初に行うことです。
問題文の読み飛ばしや読み間違い、マークシートの解答欄のずれなどがミスの場合には「該当箇所以外を隠し、必要な箇所だけが見えるようにする」といった方法があります。
感覚過敏が原因のミスの場合には、試験の主催団体に事情を伝えた上で、窓際の席にしてもらったり、静かな別室で受験させてもらったり、イヤーマフをつけさせてもらったりすることで対策できます。
一人一人の特性に合わせて「合理的配慮」をすることが事業者にとっても義務化されているので、遠慮なく伝えてください。
発達障害の人におすすめなオンラインカウンセリング
最後に、発達障害の人の学習の悩みにおすすめのオンラインカウンセリングについて紹介します。
発達障害のある大人だけでなく、発達障害のある子どもの学習についての悩みにも対応してくれるオンラインカウンセリングサービスです。
うららか相談室
うららか相談室は、国内最大のオンラインカウンセリングです。
カウンセラーの数は480名を超えていて(2023年11月現在)、子育てや教育、親子関係や家族関係に詳しいカウンセラーが多数所属しています。
カウンセラーは、全員が臨床心理士か公認心理師、または人の支援に関する国家資格を持っています。
うららか相談室の公式サイトでは、「相談内容から探す」の中の「自分自身の性格・能力」や「育児・子育て」で、1発達障害についての悩みに対応してくれます。
不登校の子どものいる親のためのカウンセリングといえば、うららか相談室が最も対応力に優れているといえます。
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かもみーる
かもみーるは、医師監修のオンラインカウンセリングで、自分の好きな場所・時間・方法で、有資格者であるカウンセラーに相談できるカウンセリングを提供しています。
精神科医によるオンライン診察にも対応していて、その場合は保険が適用されます。
発達障害のある大人についての相談を専門とするカウンセラーがいますし、精神科医も揃っているため、必要に応じて精神科診察もオンラインで実施してくれるのは強みです。
- 精神科医による診察をオンラインで受けられる
- 自宅で人目を気にせず受けられる
- 自分に合ったカウンセラーを選べる
- 対面形式に近いカウンセリングを受けられる
まとめ
今回は、発達障害の人が上手に勉強するための5つの対策について説明しました。
- スケジュール・段取り対策
- 過集中・寝起き対策
- 理解力・集中力対策
- 継続力・環境づくり対策
- 忘れ物・プレッシャー対策
発達障害のあるお子さんの学習を助けるための学用品について紹介した記事もありますので、参考にしてください。
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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