発達障害の子が言うことを聞かない理由と関わり方|心理師が解説

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「何度言っても同じことを繰り返す」「こっちの話が全然伝わっていない気がする」「もう怒鳴るしかなくなってしまった」——そんな毎日に、疲れ果てていませんか。

発達障害のある子どもへの関わりで、「言うことを聞かない」という悩みは、保護者から最もよく聞かれるものの一つです。でも私は、この言葉をそのまま受け取ることに、少し立ち止まってほしいと思っています。

「言うことを聞かない」のではなく、「聞けない理由がある」——この見方の転換が、関わり方を変える最初の一歩になります。

公認心理師の私(ゆう)が、子どもの視点から「なぜそうなるのか」を整理し、今日から試せる具体的な関わり方をお伝えします。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • 発達障害(ASD・ADHD・LDなど)のある子どもへの声かけが毎日うまくいかない方
  • 「怒鳴ってしまった後」に自己嫌悪に陥ることが増えてきた方
  • 指示を出しても行動が変わらず、どう関われば伝わるか迷っている方
  • 「この子はわざとやっているのか」と感じることがある方
目次

「言うことを聞かない」のではなく「聞けない理由がある」

スマホでゲームする少年

ゆう

「わざとやっている」ことは、ほぼありません。まずここから。

発達障害のある子どもが「言うことを聞かない」場面には、その子なりの理由があります。反抗しているわけでも、なめているわけでも、親を困らせたいわけでもない——それが多くのケースで言えることです。

よくある理由を整理してみましょう。

📌 「言うことを聞けない」主な理由

  • 言葉の意味が正確に伝わっていない:「ちゃんとして」「早く」などの曖昧な表現が処理できない
  • 複数の情報を同時に処理できない:「着替えて、歯を磨いて、連絡帳を出して」は3つの別々の指示として処理される
  • 今やっていることを切り替えられない:好きなことに集中しているとき、急な中断は脳に強いストレスをかける
  • 見通しが持てず不安になっている:「次に何が起きるか」がわからない状態では動きにくい
  • 感覚的な負荷がかかっている:騒がしい・眩しい・疲れているなど、すでに限界に近い状態のことがある
  • 指示は聞こえているが、身体が動かない:やろうとしているのに行動を開始する機能(実行機能)が弱い

どれも「わざとやっている」わけではありません。子どもの脳の特性として、そういう処理の仕方をしているのです。これを「反抗」として対応するか、「特性」として対応するかで、関わり方はまったく変わってきます。

「何度言ってもわからない子」ではなく「別の伝え方が必要な子」

同じことを10回言っても変わらないなら、それは「10回言い続けるべき状況」ではなく、「伝え方を変えるべき状況」です。

これは保護者の失敗ではありません。発達障害のある子どもへの関わり方は、定型発達の子どもへの関わり方と「入力の仕方」が違うだけです。その違いを知ることが、疲弊から抜け出す第一歩になります。

場面別・言うことを聞かないときの背景と対応

ゆう

「なぜそうなるか」がわかると、対応が変わります。場面ごとに見ていきましょう。

①朝の準備・登校前に動かない

🔍 背景にあること

朝は脳が覚醒しきっていない状態からスタートします。「着替え・朝食・歯磨き・持ち物確認」という複数の作業を、順序よく自分でこなす「実行機能」は、発達障害のある子では特に負荷がかかりやすい機能です。急かされると焦りとパニックが加わり、さらに動けなくなります。

💡 試してみたい対応

  • やることを「1枚のリスト」にして、毎朝同じ場所に貼る(口頭指示を減らす)
  • 「着替えた?」ではなく「シャツを着てね」と一つずつ伝える
  • 「あと10分だよ」より「時計の長い針が6になったら出るよ」と具体的に示す
  • 前夜に翌朝の準備を済ませておく(学校の用意・服の準備など)

②ゲームやYouTubeをやめられない

🔍 背景にあること

ASDやADHDのある子どもは、興味のある活動への集中が非常に強くなりやすい(過集中)。「やめなさい」という突然の中断指示は、その子の脳にとって強いストレスです。「なぜ今やめなければならないのか」という見通しがないまま中断を求められると、パニックや激しい抵抗につながることがあります。

💡 試してみたい対応

  • 「あと5分でやめてね」と予告を入れ、タイマーを一緒にセットする
  • 「やめたら〇〇しよう」と終わった後の見通しをセットで伝える
  • 「このゲームが終わったら」など、区切りのよい場所でやめる提案をする
  • やめられたときは「自分で終われたね」と具体的に認める

③宿題をやろうとしない・途中で投げ出す

🔍 背景にあること

学校での活動で既に認知的・感情的なエネルギーを大量に消耗しています。帰宅後は「ガス欠」に近い状態のことが多く、「宿題をやろうとしない」のは「怠けている」のではなく「もう限界」のサインであることがほとんどです。また、LD(学習障害)がある場合は、書くこと・読むこと自体に強い苦手さがあることもあります。

💡 試してみたい対応

  • 帰宅直後ではなく、30分〜1時間の休憩後に取り組む時間を設ける
  • 「全部やる」より「ここまでやったら終わり」と量を区切る
  • 苦手な教科は量を減らすことを担任に相談する(合理的配慮)
  • 「一緒にやろう」と並走するだけで取り組めることがある

📋 これはあくまで一般化した事例ですが…

小学3年生のHさん(男子)は、帰宅後に宿題を出すよう言っても「あとで」と言い続け、夜になっても手をつけないことが続いていました。保護者は毎日叱り続けていましたが変わらず、親子ともに疲弊していました。

支援の中で、帰宅後30分はゲームをしてよい時間にし、その後「宿題は1枚だけ」に絞ることにしました。「1枚だけ」と決まったことで、Hさんは「終わりが見える」安心感から取り組めるようになり、1枚終わると自分からもう1枚やることも増えていきました。

関わり方を変える5つのポイント

家族愛

ゆう

「もっと頑張らせる」より「入力の仕方を変える」のが近道です。

①指示は「短く・具体的に・一つずつ」

発達障害のある子どもにとって、長い説明や複数の指示は処理が追いつかなくなる原因です。

🔄 言い換え例

  • 「ちゃんとしなさい」→「椅子に座ってね」
  • 「早くして」→「靴を履いてね」
  • 「なんでできないの!」→「ランドセルをここに置いてね」
  • 「着替えて、歯磨きして、連絡帳出して」→まず「着替えてね」だけ伝え、終わったら次を伝える

②「見える化」で言葉の負荷を減らす

口頭の指示は、言葉が消えてしまいます。紙に書いたリスト・ホワイトボード・タイマーなど、「見てわかる」形にすることで、何度も口頭で言う必要がなくなります。

「言葉で伝える」ことを減らし、「環境が自然に促す」仕組みを作る——これが、怒鳴らなくてすむ家庭環境の基本です。

③「前の行動」ではなく「今してほしい行動」だけを伝える

「さっきも言ったでしょ」「何度言えばわかるの」という言葉は、子どもに「どう行動すればいいか」を伝えていません。過去を責めるより、「今、〇〇してほしい」という未来の行動だけを一言で伝えるほうが、子どもの脳には届きやすいです。

④「できたこと」を具体的に言葉にする

発達障害のある子どもは、日常的に注意・叱責を受ける機会が多く、自己肯定感が低下しやすい状態にあります。「えらいね」「すごいね」という大きな評価より、「自分で靴を揃えられたね」「時間に間に合ったね」という具体的な場面への言及が、子どもの行動を強化します。

⑤「なぜダメか」より「どうすればいいか」を伝える

「なぜそんなことをするの!」という問いかけに、多くの発達障害のある子どもは答えられません。自分の行動の理由を言語化する力が弱いことが多いからです。

叱るときも「〇〇はダメ」で終わらず、「〇〇のときは△△しよう」とセットで伝えることで、次の行動への手がかりになります。

「どう関わればいいか」、専門家と一緒に考えてみませんか?

お子さんの特性に合った関わり方を、公認心理師・臨床心理士にオンラインで相談できます。うららか相談室なら、自宅から気軽に話すことができます。

保護者自身が追い詰められたときに読んでほしいこと

ゆう

怒鳴ってしまった後の自己嫌悪、私も相談の場でよく聞きます。

「また怒鳴ってしまった」「こんな親でごめんなさいと思う」「この子のことを可愛いと思えない瞬間がある」——こういう言葉を、相談の場で打ち明けてくれる保護者の方はとても多いです。

正直に言います。それは、あなたが限界まで頑張っている証拠です。余裕があれば怒鳴りません。自己嫌悪を感じるということは、「本当はこうしたくなかった」という気持ちがあるということです。

「正しい関わり方ができない自分」を責めないために

この記事に書いてある関わり方を、毎日完璧にやる必要はありません。10回のうち3回できれば上出来です。できなかった7回は、「今日はここまでだった」でいい。

発達障害のある子どもへの関わりは、長距離走です。保護者が倒れてしまっては、子どもも困ります。まず保護者自身が少し休める時間と、話せる場所を確保することが、子どもへの最善の支援につながります。

「ペアレントトレーニング」という選択肢

発達障害のある子どもへの関わり方を、体系的に学べるプログラムとして「ペアレントトレーニング」があります。医療機関・発達支援センター・一部の放課後等デイサービスなどで実施されており、保護者が集まって関わり方を学ぶグループ形式のものが多いです。

「関わり方を一から学びたい」「同じ悩みを持つ保護者と話したい」という方にとって、有効な選択肢の一つです。思春期のお子さんへのペアレントトレーニングについてはこちらでも解説しています。

一人で抱え込まないために

発達障害のある子どもへの関わりで消耗したとき、相談できる場所はあります。学校のスクールカウンセラー、市区町村の子ども家庭支援センター、かかりつけの医療機関——どこに相談すればいいか迷う方は、こちらの記事を参考にしてください。

限界を感じる前に、話せる場所を持っておきませんか

「毎日の関わりに疲れた」「誰かに聞いてほしい」——そんなとき、うららか相談室では公認心理師・臨床心理士にオンラインで気軽に相談できます。一人で抱え込まないでください。

まとめ

📝 この記事のポイント

  • 「言うことを聞かない」のではなく「聞けない理由がある」という視点の転換が出発点
  • 理由は「曖昧な指示が処理できない」「切り替えが難しい」「実行機能の弱さ」など特性によるもの
  • 朝の準備・ゲーム・宿題など場面ごとに、背景を理解した上で対応を変える
  • 関わり方の5原則:短く・具体的・一つずつ/見える化/今の行動を伝える/できたことを言葉にする/「どうすればいいか」をセットで伝える
  • 怒鳴ってしまうのは限界まで頑張っているから。自己嫌悪に追い込まれる必要はない
  • ペアレントトレーニング・相談先の活用で、一人で抱え込まない環境を作る

関わり方は、一日で変わりません。でも、「なぜそうなるのか」を知るだけで、子どもへの見方が少し変わります。その変化が、毎日の積み重ねの中でじわじわと関係を変えていきます。焦らず、一つだけ試してみてください。

ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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