WISC-Ⅴの検査結果を受け取り、
「積木模様」という項目を見て戸惑った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
得点が高いと安心してよいのか。
低いと何か問題があるのか。
そもそも、この検査は何を測っているのか・・・
積木模様は、WISC-Ⅴの中でも子どもの特性が比較的はっきり表れやすい下位検査のひとつです。
しかし、数値だけを見ても、その意味を正しく理解することは簡単ではありません。
この記事では、
- 積木模様は何を測っているのか
- 得点が高い・低い場合にどのような特徴が見られるか
- 他の指標とどのように組み合わせて読むのか
- 家庭でどのような支援が考えられるか
を、心理職の視点から整理していきます。
検査結果を「不安の材料」にするのではなく、
子どもの理解を深める手がかりにするための「読み方」をお伝えします。
WISC-Ⅴの「積木模様」とは何を測る検査か
積木模様は、赤と白の立方体を使って、見本と同じ模様を作る課題です。
一見すると単純な図形課題に見えますが、実際には複数の能力が関係しています。
視空間認知とは何か
まず中心となるのが「視空間認知」です。
これは、目で見た情報を正確に捉え、空間的に整理する力を指します。
たとえば、
- 図形の位置関係を理解する
- 全体と部分を同時に見る
- 左右や上下の配置を把握する
といった能力です。
黒板の図を写す、地図を読む、図形問題を解くなど、学習場面とも深く関わります。
図形把握・構成力・分析力との関係
積木模様では、見本の模様を
- どのようなパーツでできているかを分析し
- 頭の中で再構成し
- 実際に積木を配置する
という一連のプロセスが必要です。
そのため、
- 分析的思考
- 構成力
- 手と目の協応
といった力も含まれています。
なぜWISCで重要視されるのか
積木模様は、視空間指標の代表的な下位検査です。
言語能力の影響を受けにくいため、子どもの“思考の土台”に近い部分が見えやすいとされています。
言葉で説明する課題が苦手でも、積木模様では力を発揮する子もいます。逆に、言語理解は高いのに、空間処理に難しさを抱えている場合もあります。
その意味で、積木模様は「学力」そのものではなく、
学習を支える認知特性の一部を示す指標と考えるとよいでしょう。
積木模様の得点が低い場合に見られる特徴
WISC-Ⅴの積木模様の得点が低いと、
「やはり何か問題があるのでは」と不安になる保護者の方は少なくありません。
ただし、積木模様が低い=知的な問題、という単純な話ではありません。
ここでは、得点が低い場合に見られやすい特徴と、誤解しやすいポイントを整理します。
つまずきやすい学習場面
積木模様の得点が低い子どもは、視空間的な情報処理に負荷がかかりやすい傾向があります。
そのため、次のような場面で困りごとが生じやすくなります。
- 板書を写すのに時間がかかる
- 図形問題で手が止まりやすい
- 地図やグラフの読み取りが難しい
- 工作や図工で完成形をイメージしにくい
「考えていない」のではなく、
頭の中で形を組み立てる処理にエネルギーが必要な状態と理解する方が適切です。
板書・図形・地図理解との関係
学校生活では、黒板の図やノートのレイアウト、
算数の図形、社会科の地図など、視空間処理を必要とする場面が頻繁に出てきます。
積木模様が低い子どもは、
- どこから書き写せばよいか迷う
- 図の一部に注意が偏り、全体像をつかみにくい
- 見本と自分のノートを行き来するのに時間がかかる
といった形で困りごとが表れやすくなります。
これらは「不注意」や「集中力の問題」と誤解されやすい点でもあります。
処理速度との違いに注意
積木模様の得点が低い理由は、
必ずしも視空間認知の弱さだけではありません。
よくあるのが、
- 正確に作れるが、時間が足りずに得点が伸びない
- 作り方は理解しているが、手が追いつかない
といったケースです。
この場合、積木模様の低さの背景には、
処理速度の遅さや、作業ペースの個人差が関係している可能性があります。
そのため、
- 積木模様が低い
→ 空間認知が弱い
と短絡的に結論づけず、
他の指標とのバランスを見る視点が重要になります。
低い得点が示すのは「能力の限界」ではない
積木模様が低いからといって、
将来にわたって図形や空間的課題が苦手になると決まっているわけではありません。
- 視覚情報を言語化すると理解しやすい
- 手順を分けて提示すると取り組みやすい
- 見本を大きく・単純化すると負担が下がる
といった支援によって、学習上の困りごとは軽減できます。
重要なのは、
「できない」のではなく、
「やり方を調整すると力を発揮しやすい特性がある」
と捉える視点です。
積木模様の得点が高い場合に見られる特徴
積木模様の得点が高いと、
「この子は空間認知が得意なんだ」と前向きに受け止められることが多いでしょう。
実際、積木模様が高い子どもには、視覚的・空間的な処理を必要とする場面で強みが見られやすくなります。ただし、「何でも得意」という意味ではありません。
得意になりやすい学習場面
積木模様が高い子どもは、次のような場面で力を発揮しやすい傾向があります。
- 図形問題の理解が比較的スムーズ
- 黒板の図を見て写す作業が早い
- パズルやブロック遊びが得意
- 図解やイラストから情報をつかみやすい
目で見た情報を、頭の中で構造化することが比較的楽にできるため、
「見れば分かる」タイプになりやすいのが特徴です。
日常生活での強み
学習以外の場面でも、次のような強みが見られることがあります。
- 工作やレゴなどの構成遊びが得意
- 物の配置や整理がうまい
- 迷路や地図を使った遊びを楽しめる
- 見本を見て同じものを再現するのが得意
これらは、視空間認知と構成力の強さが日常生活にも反映されている例です。
見落とされがちな困りごと
積木模様が高い子どもでも、困りごとが全くないわけではありません。
むしろ、次のような点が見落とされやすくなります。
- 言葉で説明する課題が苦手
- 考えを口頭で整理するのに時間がかかる
- 読み書きの負荷が高いと学力が過小評価される
「見て理解する」ことが得意な分、
言語的な説明中心の授業では力を発揮しにくいこともあります。
その結果、
空間課題は得意なのに、国語や説明文の理解でつまずく
といったアンバランスが生じることも珍しくありません。
高い得点も“特性の一部”として捉える
積木模様が高いことは、確かに強みです。
しかし、それは子どもの特性の一側面にすぎません。
- どの場面で活かせるか
- どの場面では別の支援が必要か
という視点で捉えることで、
強みを学習や生活に活かしやすくなります。
他の指標と組み合わせて読むことが重要
WISC-Ⅴの検査結果は、
下位検査を単体で見るものではありません。
積木模様の得点だけを見て
「この子は空間認知が得意(苦手)」と判断してしまうと、
実際の特性を取り違えることがあります。
重要なのは、
他の指標との“組み合わせ”で読む視点です。
視空間指標との関係
積木模様は、視空間指標を構成する代表的な下位検査です。
そのため、まずは視空間指標全体の得点とのバランスを見ることが基本になります。
たとえば、
- 積木模様は高いが、視空間指標全体は平均的
- 積木模様は低いが、もう一方の下位検査は高い
といった場合、
課題の形式との相性が影響している可能性があります。
積木模様は「スピード」「構成」「手先の操作」が求められる課題です。
そのため、純粋な空間把握力とは別に、
作業ペースや手の使い方の影響を受けやすい点に注意が必要です。
H3:処理速度が低い場合の誤解
積木模様は制限時間内で行う課題です。
そのため、処理速度が低めの子どもは、
- 正確に作れても、時間切れで得点が伸びない
- 考えすぎて手が止まりやすい
といった形で、本来の力より低く出ることがあります。
この場合、
積木模様が低い
= 空間認知が弱い
と短絡的に結論づけるのは適切ではありません。
「理解できているか」と「速くできるか」は別の能力
である点を押さえておく必要があります。
指標のアンバランスが示す意味
WISC-Ⅴでは、
指標間の凹凸(ばらつき)自体が重要な情報になります。
たとえば、
- 視空間(積木模様)は高いが、言語理解は低め
といったアンバランスがある場合、
その子にとって「すんなり理解しやすいルート」と「負荷がかかりやすいルート」を
併せ持っていると考えられます。
この視点を持つと、この子の支援としては
- 図で説明すると理解しやすい
- できるだけ平易な言葉を用いる
- 実演を見せると定着しやすい
といった関わり方の工夫につなげやすくなります。
単独の数値で判断しないことが最大のポイント
ところで気をつけてほしい点があります。
それは、積木模様の得点は、
子どもの特性の「一部」を示すにすぎない
という点です。
- 高い/低い
ではなく、 - どの指標との組み合わせで
- どの場面に影響しそうか
という読み方をすることで、
検査結果は“ラベル”ではなく、
具体的な支援のヒントになります。
家庭でできる支援のヒント
積木模様の結果を見て、
「では、家庭では何を意識すればいいのか」と悩まれる方は多いです。
ここでは、積木模様の得点が低い場合・高い場合のどちらにも共通して役立つ
実践的な関わり方のヒントを整理します。
視覚情報を“言葉”に変換して伝える
視空間処理に負荷がかかりやすい子どもには、
「見て分かるでしょ」ではなく、
見えている情報を言葉にして補足する関わりが有効です。
例:
- ×「ここを見て」
- ○「この三角の右側にある四角だよ」
図や見本がある場面では、
位置関係や手順を言語化することで、理解の負担が下がります。
課題を“分解”して提示する
積木模様が苦手な子どもは、
完成形を一度にイメージすることに負荷がかかりやすい傾向があります。
その場合は、
- ① まずは端から作る
- ② 次に同じ色のパーツを集める
- ③ 最後に全体を整える
といった形で、
工程を小さく分けて提示すると取り組みやすくなります。
これは、宿題や片付けなど日常場面にも応用できます。
見本は“大きく・単純に”提示する
視空間認知に負荷がかかる子どもほど、
小さく複雑な見本は処理コストが高くなります。
家庭での支援では、
- 見本を拡大する
- 余計な情報を減らす
- 色や線をはっきりさせる
といった工夫だけでも、
「分かりやすさ」は大きく変わります。
スピードを求めすぎない
積木模様は時間制限のある課題ですが、
日常生活や学習場面では
スピードを求めすぎないことも重要です。
- 早くできること
- 正確に理解できること
は別の能力です。
「遅い=できていない」と評価され続けると、
子どもは挑戦そのものを避けるようになります。
強みがある場合は“活かす設計”をする
積木模様が高い子どもには、
視覚的な理解のしやすさという強みがあります。
- 図で説明する
- イラストを使う
- 実際にやって見せる
といった関わり方を増やすことで、
理解のスピードや定着が高まりやすくなります。
「できない」ではなく「負荷が高い」
家庭での関わりで最も大切なのは、
子どもの困りごとを
×「できない」
○「このやり方だと負荷が高い」
と捉え直す視点です。
関わり方を少し変えるだけで、
子どもの反応が変わることは珍しくありません。
H2:検査結果をどう受け止めればよいか
WISC-Ⅴの結果を見ると、
どうしても数値に目が向きやすくなります。
「平均より低い」
「他の子より弱い」
そう感じた瞬間、
親として不安や焦りが強くなるのは自然なことです。
ただ、WISC-Ⅴは
子どもの“でき・不でき”を評価する検査ではありません。
どのような理解の仕方をしやすいか、どこに負荷がかかりやすいか
を知るための手がかりです。
凹凸は“問題”ではなく“特性”
検査結果に凹凸があると、
「どこかに問題があるのでは」と捉えられがちです。
しかし、実際の臨床では、
凹凸があること自体は珍しいことではありません。
- 見て理解するのは得意
- 言葉で説明されると混乱しやすい
- じっくり考えるのは得意だが、スピードは遅い
こうした特性の組み合わせが、
その子なりの理解スタイルを形づくっています。
凹凸は「弱点」ではなく、
支援の方向性を教えてくれる情報と捉える方が建設的です。
検査結果は“予測”ではなく“現在地”
WISC-Ⅴの結果は、
将来を決めるものではありません。
あくまで「今この時点での特性」を示すものです。
関わり方や環境が変わることで、
学習のしやすさや行動の出方は変化します。
そのため、
- この結果だから無理
- この結果だから決まっている
と固定的に捉える必要はありません。
困りごとは“支援で軽くできる”
積木模様の得点が低い場合でも、
関わり方や環境調整によって、
困りごとは軽減できることが多くあります。
また、高い場合でも、
別の領域で負荷がかかっていることはあります。
検査結果は、
「何ができないか」ではなく
「どこを支えると力を発揮しやすいか」
を考えるための材料です。
一人で抱え込まないでいい
検査結果を前に、
「どう支えればいいのか分からない」と感じるのは自然です。
その場合は、
学校や専門機関、心理職などに相談することも選択肢です。
支援を求めることは、
親としての弱さではなく、
子どもを理解しようとする行動です。
まとめ
積木模様の結果は、
子どもの特性を理解するための“入り口”にすぎません。
- 高い・低いに一喜一憂しすぎない
- 他の指標との組み合わせで読む
- 関わり方を調整するヒントとして使う
この視点を持てると、
検査結果は不安の材料ではなく、
子どもを理解するための“道具”になります。
終わりに
検査結果を読んでも、
「結局、うちの子の場合はどう考えればいいのか分からない」
と感じる方は少なくありません。
WISC-Ⅴの数値は、
子どもの特性を理解するための“材料”のひとつです。
実際には、生活場面や学校での様子と合わせて読み解く必要があります。
ココシェルでは、
検査結果の受け止め方や、家庭での関わり方について
心理職の視点で整理した記事やサポートを用意しています。
「この関わりで合っているのか不安」
「子どもとの関係がしんどくなってきている」
と感じたときは、ひとりで抱え込まず、
必要な支援を頼ってください。


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