「どうしてまた同じことで落ち込んでしまうんだろう」
「がんばっているのに、なぜか自分を責めることが止まらない」
そんなふうに感じたことはありませんか。私自身、公認心理師として多くの方のお話を聞いてきた中で、「ずっと繰り返してしまう悩みの根っこには、コアビリーフという思い込みがある」と気づかされてきました。
この記事では、コアビリーフとは何かという基本から、なぜ手放しにくいのか、そして日常の中でできる緩め方まで、一緒に考えていきたいと思います。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- つい「もっとがんばらなきゃ」「私がダメだから」と自分を責めてしまう方
- 同じパターンで悩むことが繰り返されていて、なぜか分からない方
- 子育てや仕事に追われながら、なんとなく生きづらさを感じている方
- 思い込みを手放したいけれど、どうすればいいか分からない方
ゆうこの記事は、安藤俊介先生の「なぜ日本人は怒りやすくなったのか?」を参考にしています
コアビリーフとは何か
コアビリーフとは、幼少期からの経験を通じて無意識に形成された「自分や世界に対する根本的な信念」のことです。
「私は価値がない」「人に迷惑をかけてはいけない」「努力しないと認められない」——こうした思い込みは、過去の体験や親の言葉、社会の価値観から少しずつ作られます。そして気づかないうちに「当たり前のこと」として、私たちの思考の前提になっていきます。
コアビリーフは英語の「core(核)」と「belief(信念)」を合わせた言葉で、日本語では「中核信念」とも呼ばれます。心理療法の分野では、認知行動療法の理論でも中心的な概念として扱われています。
あなたが何かに強く反応してしまうとき、その背景にはたいてい、長い時間をかけて積み上げられたコアビリーフがあります。
コアビリーフの具体例
コアビリーフは「〜べき」「〜はず」「普通は〜」「当たり前」といった言葉で表れることが多いです。代表的なものを挙げます。
不毛なコアビリーフになり得るものの例
- 努力は必ず報われる
- みんなと仲良くしなければならない
- 諦めてはならない
- 親の期待に応じなければならない
- 人から認められなければならない
- 仕事を優先させなければならない
- 結婚しなければならない
- 親の世話をしなければならない
出典:安藤俊介「なぜ日本人は怒りやすくなったのか?」(一部抜粋)
大切なのは、これらが「誰にとっても不毛」というわけではないことです。信念を強く信じすぎてしまい、自分も周りの人も誰もが幸せにならないときに、不毛なコアビリーフになります。



「べき思考」に気づいたとき、それがコアビリーフのサインかもしれません。
なぜ不毛なコアビリーフを手放せないのか
「分かっているのに、どうしても変えられない」——そう感じたことはありませんか。コアビリーフが手放しにくいのは、意志が弱いからでも、考え方がおかしいからでもありません。次の3つの理由があります。
①「当たり前」として無意識に根付いている
コアビリーフは長い時間をかけて形成され、無意識のうちに思考の前提になっています。「私はダメだ」「もっと努力しなければ」という考えが浮かんでも、それを疑うことなく「当たり前のこと」として受け入れてしまいがちです。
幼少期から身についた信念は、大人になっても自動的に働き続けます。「こう考えるのがふつうだ」と思い込んでいるため、そもそも「問い直す」という発想が生まれにくいのです。
②心理的な「安全基地」になっている
不毛なコアビリーフは苦しみを生む一方で、心理的な安全基地の役割を果たすこともあります。
たとえば、「努力しなければ価値がない」という思い込みを持つ人は、努力することで「私は大丈夫」と安心できます。「人に頼ってはいけない」という思い込みがある人は、一人で抱え込むことで「迷惑をかけていない」と安心できるのです。
苦しいのに手放せないのは、その信念が自分を守る機能も持っているからです。これは意志の問題ではありません。
③過去にうまくいった経験がある
「完璧でなければならない」という思い込みを持つ人が、徹底的に準備したことで試験や仕事で成果を出した経験があると、「この考え方のおかげだ」と信じるようになります。
環境や状況が変わっても同じコアビリーフにしがみつくと、柔軟な対応ができなくなりストレスが増えることがあります。成功体験のある信念は、特に手放しにくいのです。
これはあくまで一般化した事例ですが、40代のAさん(仮名)は「手を抜いたら認められない」という信念を持って仕事を続けてきました。子育てが始まって以降も同じペースで完璧を求め続けた結果、慢性的な疲弊感を抱えるようになりました。「過去に通用した方法が、今の自分には合わなくなっている」という気づきが、コアビリーフを緩める第一歩でした。
不毛なコアビリーフを少しずつ緩める方法
コアビリーフは「手放す」というより「緩める」というイメージが合っています。一度で変えようとしなくていい。「気づく→試す→緩める」という小さなプロセスを繰り返していくことが大切です。
①自分のコアビリーフに「気づく」
まず、自分がどんな場面で強く反応するかを振り返ることから始めます。怒り・焦り・罪悪感・落ち込みを強く感じるとき、その裏にコアビリーフが隠れていることが多いです。
ひとつ試してほしいのは、「なぜそう思うのか?」を自分に問いかける習慣を持つことです。
💬 気づくための自問の例
- 「なぜ私はこの場面でこんなに落ち込むのだろう?」
- 「この”〜べき”という考え、いつから持っているんだろう?」
- 「この信念がなかったら、私はどう感じるだろう?」
②具体的なコアビリーフを一つずつ問い直す
気づいたコアビリーフに対して、「本当にそうだろうか?」と問い直すことを試してみてください。以下は、よく見られるコアビリーフと、その問い直しの例です。
| コアビリーフ | 問い直しの視点 |
|---|---|
| 努力は必ず報われる | 報われないこともある。だからといって、誰が悪いわけでもない。 |
| みんなと仲良くしなければ | 全員から好かれる必要はない。うまくいかない関係もある。 |
| 人から認められなければならない | 人からの評価が、自分の価値を決めるわけではない。 |
| 諦めてはならない | 諦めることは、負けでも逃げでもない。選択を変えるだけのこと。 |
| 親の期待に応えなければ | 自分の人生は自分のもの。自分が幸せに生きることが親孝行にもなる。 |
| 仕事を優先させなければ | 優先させるべきは、仕事ではなく自分の人生。 |
| 離婚してはならない | 離婚は失敗ではない。選択を変えるだけのこと。 |
| 親の世話をしなければ | ケンカしながら世話をするより、互いに距離を取るほうが幸せなこともある。 |



「問い直し」は答えを出すためではなく、信念をほぐすための練習です。
③違う価値観に触れる
コアビリーフは自分の中では「当たり前」として根付いているため、一人で考えていると気づきにくいものです。自分とは違う考え方を持つ人の話を聞くことで、「そういう見方もあるのか」と視野が広がります。
大切なのは、違う価値観を「正しい・間違い」で判断しないことです。「そんな考え方もあるんだ」と、いったん受け止めてみるだけでいい。その感覚が、コアビリーフを緩めるきっかけになります。
④日記や書き出しで「外に出す」
頭の中だけで考えていると、思い込みはループしやすくなります。日記に書いたり、気持ちを紙に書き出したりすることで、自分の思考を客観的に見やすくなります。
書く行為は「思考の外在化」と呼ばれ、認知行動療法でも取り入れられている方法です。まずは気負わず、感じたことをそのまま書くところから始めてみてください。
⑤専門家と一緒に整理する
自分だけでは気づきにくいコアビリーフも、専門家との対話で整理しやすくなります。特に、長年繰り返してきた強い思い込みは、一人で向き合うと辛くなることがあります。
「変わらなきゃ」と焦るのではなく、「一緒に考えてもらう」というスタンスで相談することが、コアビリーフを緩める近道の一つです。
ひとりで抱え込まずに、話してみませんか
「誰に相談すればいい?」と迷ったときは、オンラインで専門家に話せる場所があります
共働き・子育て中の親が知っておきたいこと
仕事と育児を両立しながら、無意識に「もっとがんばらなきゃ」と自分を追い込んでいませんか。私自身も親として、この感覚は他人事ではないと感じています。
親のコアビリーフは子どもにも伝わりやすい
親の考え方や行動は、子どもに大きな影響を与えます。常に「がんばらなきゃ」と自分を追い込んでいる親の姿を見て、子どもも「努力しないと価値がない」と感じるようになることがあります。
逆に、親が自分自身を大切にしている姿を見せることで、子どもも「自分を大事にしていいんだ」と学んでいきます。自分をいたわることは、子どものためにもなります。



完璧な親でなくていい。少しずつ緩めていく姿が子どもの安心につながります。
パートナーとのコアビリーフのすれ違いを知っておく
夫婦間でコアビリーフが違うと、価値観のぶつかり合いが起きやすくなります。「育児は母親が主体でやるべき」「家事は完璧にしないといけない」——こうした思い込みが双方にあると、どちらかに負担が偏りやすくなります。
「なぜそう思うのか」をお互いに話し合うことが、コアビリーフのすれ違いを乗り越えるきっかけになります。責め合うのではなく、「それぞれの前提を知る」という姿勢で話してみてください。
親が自分の感情と向き合うことについて、こちらの記事も参考にしてみてください。


まとめ
この記事では、コアビリーフの基本と、不毛なコアビリーフを少しずつ緩める方法についてお伝えしました。要点をまとめておきます。
📌 この記事のまとめ
- コアビリーフとは、幼少期から形成された「自分や世界への根本的な信念」のこと
- 不毛なコアビリーフは、安全基地の役割や成功体験があるため、簡単には手放せない
- 手放すのではなく「緩める」イメージで、気づく→問い直す→試す を繰り返す
- 日記・書き出し・違う価値観との接触が、日常でできる実践的な緩め方になる
- 親のコアビリーフは子どもに伝わりやすい。自分をいたわることが子どもの安心にもつながる
- 強い思い込みは一人で変えようとしなくていい。専門家との対話も選択肢の一つ
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

