「また学校に行けなかった」――そう感じた朝、子どもにきつい言葉をぶつけてしまった。そして夜、寝顔を見ながら自分を責める。あなたは今、そんな日々を過ごしていませんか。
不登校の子にイライラしてしまうのは、あなたが悪い親だからではありません。
公認心理師として、子ども家庭支援センターで多くの保護者の方と出会ってきた私です。今日は、イライラする自分を責めずに、少しだけ気持ちを整える3つの視点を、あなたと一緒に考えていきたいと思います。
- 子どもの不登校にイライラしてしまう自分が嫌になっている方
- 夜、子どもの寝顔を見ながら「私のせいかな」と自分を責めている方
- 夫婦で温度差を感じ、ひとりで抱え込んでしまっている方
- 「優しくしなきゃ」と思うほど、苦しくなってしまう方
イライラするのは、あなたが「ちゃんと向き合っている」証拠
「子どもにイライラしてしまう自分は、母親(父親)失格なのではないか」――そう感じている方は、決して少なくありません。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。イライラするということは、あなたが子どものことを真剣に考え、向き合おうとしている証拠でもあります。どうでもいい相手には、人はそもそもイライラしません。
イライラの正体は「不安」かもしれません
心理学の世界では、怒りやイライラは「二次感情」と言われることがあります。怒りそのものよりも、その奥にある別の感情――不安、悲しみ、無力感――が、怒りという形になって表に出てくる、という考え方です。
不登校の子どもを前にしたとき、あなたの心の中ではこんな声が響いていないでしょうか。
- 「このままで、この子の将来は大丈夫だろうか」
- 「私の関わり方が、何か間違っていたのだろうか」
- 「明日も、また同じ朝が来るのか」
こうした不安や無力感が積み重なり、やがてイライラという形で表面化していく。これは、あなたが特別に短気だからでも、愛情がないからでもありません。むしろ、子どもを思う気持ちが強いからこそ、不安も強くなるのです。
「コントロールできない」感覚が、心を疲れさせます
もうひとつ、イライラの大きな原因があります。それは「コントロールできない」という感覚です。
これはあくまで一般化した事例ですが、ある共働きのお母さんは、こんな風に話してくださいました。
「朝、起こしに行くたびに『今日はどうだろう』とドキドキするんです。行けるかもしれないと期待して、でも結局行けない。その繰り返しで、いつの間にか自分の心が削られていって。気づいたら、子どもに八つ当たりしている自分がいました。」
人は、予測できない状況に置かれ続けると、心が疲弊していきます。「明日は行けるかもしれない」という期待と、「やっぱり行けなかった」という落胆。この感情の振り幅に、毎日付き合うことは、想像以上に消耗するものです。
あなたが今、心がすり減っていると感じているなら、それは当然の反応なのです。
自分を責めずに進むための3つの視点
ここからは、私が現場で多くの保護者の方と関わってきた経験から、「これを意識すると、少し心が楽になる」と感じる3つの視点をお伝えします。
「こうすべき」というアドバイスではありません。あなたの心を少しだけ軽くするための、見方の角度を変える視点として、受け取っていただけたら嬉しいです。
視点①「子どもの問題」と「自分の不安」を分けてみる
不登校の子どもを前にしたとき、私たちはつい、すべてを「子どもの問題」として捉えがちです。でも実は、その中には「子ども自身の問題」と「親であるあなたの不安」が混ざっていることが少なくありません。
たとえば、こんな風に分けて考えてみてください。
- 子ども自身の問題:今、学校に行けない理由、心の中で起きていること
- 親の不安:将来への心配、周囲の目、自分の育て方への自責
このふたつは、似ているようで別のものです。あなたの不安は、子どもが解決できることではありません。逆に、子どもが今抱えている苦しさは、あなたが代わりに引き受けられるものでもないのです。
「私の不安は、私が抱えるもの」「子どもの問題は、子どもが向き合うもの」――そう線を引いてみるだけで、不思議と気持ちが少し軽くなることがあります。
もちろん、これは「突き放す」ということではありません。あなたが自分の不安を抱えきれないとき、それを子どもにぶつけてしまわないために、まずは線を引くという話です。
視点②「完璧な親」を降りる勇気を持つ
不登校の子どもを支える保護者の方には、こんなプレッシャーがかかりがちです。
- 子どもには優しく接しなければ
- 常に味方でいなければ
- 感情的になってはいけない
- 家を安全な居場所にしなければ
どれも、子どもを思うがゆえの大切な気持ちです。でも、これらをすべて完璧にこなそうとすると、あなた自身が壊れてしまいます。
あなたは「完璧な親」である必要はありません。子どもにとって本当に必要なのは、完璧な親ではなく、「自分の気持ちと向き合おうとしている親」です。
正直にお話しすると、私自身も、わが子のことで悩むことがあります。専門家であっても、目の前のわが子のこととなると、途端に答えが見えなくなる。それが現実です。
「ごめん、お母さん(お父さん)、今日はちょっと疲れちゃった」「さっきはきつい言い方してごめんね」――そう子どもに伝えられる親のほうが、完璧を装い続ける親より、ずっと信頼されることがあります。
弱さを見せられる親であることは、子どもにとっても「弱音を吐いてもいい」という安心感につながります。
視点③「ひとりで抱え込まない」という選択をする
共働きのご家庭では、特に多いのが「夫婦間の温度差」のお話です。
「夫(妻)は仕事で家にいない時間が長く、子どもの状況をリアルタイムでは見ていない。だから危機感が伝わらない」「相談しても、『そのうち行くんじゃないか』と軽く流される」――こうした孤立感を抱えている方は、本当にたくさんいらっしゃいます。
そして、夜になって子どもが寝静まったあと、ひとりでスマホを開いて情報を探す。そんな時間を過ごしているのではないでしょうか。
ひとりで考え続けると、思考はどうしても悪い方向に向かいがちです。「私が悪いのでは」「将来どうなってしまうのか」と、出口のないループに入り込んでしまうのです。これは、あなたの性格の問題ではなく、孤立した状況がそうさせているだけです。
ひとりで抱え込まない、という選択をしてほしいのです。
パートナーに話す、信頼できる友人に話す、スクールカウンセラーに相談する、自治体の相談窓口を使う――どれもよい選択肢です。そして、もし身近な人には話しづらいと感じるなら、家族や知人ではない、第三者の専門家に話すことも、ひとつの方法です。
家族や友人だと、どうしても関係性に気を遣ってしまったり、アドバイスをされて余計に苦しくなったりすることがあります。第三者の専門家であれば、利害関係なく、ただあなたの気持ちに耳を傾けてもらえます。
オンラインで臨床心理士・公認心理師などの専門家に相談できる「うららか相談室」では、自宅から落ち着いた環境で、あなたの話を聴いてもらえます。会員登録の上、ご利用いただけます。ひとりで抱え込まず、専門家に話してみるのも、ひとつの選択肢です。
今夜、あなたにしてほしい小さなこと
ここまで、3つの視点をお伝えしてきました。でも、たくさんの情報を一気に消化するのは難しいですよね。
だから、今夜、あなたにしてほしいのは、たったひとつのシンプルなことです。
子どもが寝たあと、寝顔を見ながら自分を責める時間があるなら、そのうち1分だけでいいので、「今日もよくやった」と自分に声をかけてあげてください。
朝、子どもを起こした。ご飯を作った。仕事もした。きつい言葉をぶつけてしまった日もあるかもしれない。それでも、あなたは今日もここにいて、子どものことを考え続けている。それは、本当にすごいことです。
子どもを大切にする前に、まずあなた自身を、少しだけ大切にしてあげてほしいのです。
まとめ|自分を責めずに、明日を迎えるために
今日お伝えした内容を、最後にもう一度整理します。
- イライラするのは、あなたが子どもに真剣に向き合っている証拠
- イライラの正体は、不安や無力感などの「二次感情」であることが多い
- 視点①:「子どもの問題」と「自分の不安」を分けて考える
- 視点②:「完璧な親」を降りる勇気を持つ
- 視点③:ひとりで抱え込まず、第三者の専門家を頼る選択をする
- 今夜、自分自身に「お疲れさま」と声をかけてあげる
不登校という出来事は、家族の在り方をゆっくりと問い直す時間でもあります。すぐに答えが出るものではありません。だからこそ、あなた自身が壊れないように、ペースを整えながら歩んでいってほしいのです。
イライラする日があってもいい。自分を責めてしまう夜があってもいい。それでもまた、明日が来ます。完璧でなくていい、立ち止まる日があってもいい。あなたのペースで、ゆっくり進んでいきましょう。
「身近な人には話しづらい」「ただ気持ちを聴いてほしい」――そんなときには、専門家に話してみるのもひとつの方法です。
うららか相談室は、オンラインで臨床心理士・公認心理師などの専門家に相談できるサービスです。会員登録の上、ご自宅から落ち着いた環境で、あなたのペースで話すことができます。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター


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