療育手帳とIQの関係とは?WISCとの関わりを公認心理師が解説

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「療育手帳って、結局IQがいくつから取れるの?」——そう感じている保護者の方は少なくありません。

WISCの結果を見て、療育手帳のことが気になり始めた方もいらっしゃると思います。療育手帳の基準は、実は全国一律ではありません。

この記事では、療育手帳とIQの関係、そしてWISCとの関わりを、公認心理師の私がわかりやすくお伝えします。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • 「療育手帳はIQいくつから取れるの?」と気になっている方
  • WISCの結果を見て、療育手帳のことが気になり始めた方
  • お住まいの自治体でどんな基準になっているか知りたい方
  • 幼児期の検査と就学後の検査で数値が変わり、戸惑っている方
目次

療育手帳とは?知的障害のある方への福祉制度

笑顔の女性

療育手帳とは、知的障害があると判定された方に交付される、福祉サービスを受けやすくするための手帳です。障害者手帳には主に3種類ありますが、療育手帳はそのうち知的障害に関するものにあたります。

身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは違い、療育手帳には根拠となる法律がありません。1973年の厚生事務次官通知にもとづいて、各都道府県・政令指定都市がそれぞれの判断で運用している制度です。

法律ではなく通知にもとづく制度であるということが、この後お伝えする「自治体ごとの違い」の大きな理由になっています。国が細かいルールを一律に定めているわけではないため、各自治体が独自に基準を定め、運用してきた歴史があるのです。

そのため、手帳の名称そのものも自治体によって異なります。東京都や埼玉県などでは「愛の手帳」、名古屋市では「愛護手帳」、多くの自治体では「療育手帳」という名称が使われています。

療育手帳を取得すると、福祉サービスの利用や、公共料金・税金の一部軽減など、さまざまな支援を受けやすくなります。ただし、受けられる支援の内容も自治体によって差があるため、具体的な内容はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

ゆう ゆう
療育手帳は、実は全国共通ではありません

判定基準は自治体によって異なります

療育手帳の等級(障害の重さの区分)やIQの基準も、自治体によって異なります。名称と等級の呼び方の違いを、いくつかの自治体の例で見てみましょう。

自治体手帳の名称最重度重度中度軽度
東京都愛の手帳1度2度3度4度
名古屋市愛護手帳1度(IQ20以下)2度(IQ21〜35)3度(IQ36〜50)4度(IQ51〜75)
徳島県療育手帳A1A2B1B2
香川県療育手帳AB
岡山県療育手帳AABB
愛媛県療育手帳A最重度A重度A中度/B中度B軽度

同じ「中度」という程度であっても、自治体によって「3度」「B1」「Ⓑ」など、呼び方がまったく異なることが分かります。この表はあくまで一例であり、基準は変更されることもあるため、必ずお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。

一般的な目安としては、最重度がIQ20以下、重度がIQ21〜35、中度がIQ36〜50、軽度がIQ51〜70(自治体によっては75)とされることが多いです。

同じIQでも、住んでいる地域によって等級や基準が変わることがあります。

大切なのは、IQの数値だけで判定が決まるわけではないという点です。日常生活での適応行動も、あわせて総合的に判断されます。

「適応行動」とは、実際の生活の様子を指す言葉です。食事や着替え、排せつといった身の回りのことがどれくらい自分でできるかを見ます。お金の管理や交通機関の利用など、社会生活を送るうえで必要な行動がどれくらい身についているか、といったことも含まれます。

同じIQの数値であっても、日常生活での困りごとの大きさによって、判定される等級が変わることがあります。IQはあくまで判断材料の一つであり、それがすべてではないということを、ぜひ知っておいていただきたいです。

IQはどう決まる?年齢で変わる検査の種類

机で勉強

療育手帳の判定に使われる知能検査は、年齢によって主に使われるものが変わります。

幼児期には、田中ビネー式知能検査が使われることが多くあります。田中ビネーは2歳から受けられる検査で、精神年齢と生活年齢の比較からIQを算出する方式です。全問正解できた年齢級をもとに基底年齢を求め、そこから知能指数を計算します。

就学後になると、WISC(5歳0か月〜16歳11か月が対象)が中心的に使われるようになります。このブログを読んでくださっている方の多くは、お子さんが小学生以上だと思いますので、ここからはWISCとの関係を中心にお伝えします。

補足
田中ビネー式とWISCでは、算出の考え方が異なります。田中ビネーは精神年齢をもとにした指数であるのに対し、WISCは同年齢集団の中での位置づけを示す指数です。そのため、同じお子さんでも、検査の種類によって数値の出方が異なることがあります。幼児期に受けた田中ビネーの数値と、就学後に受けたWISCの数値が違っていても、不思議なことではありません。

お子さんの発達の状態そのものが変化した可能性もありますし、検査の種類による数値の出方の違いという可能性もあります。数値の変化に一喜一憂しすぎず、専門家と一緒に経過を見ていく姿勢が大切です。

ゆう ゆう
小学生以降は、WISCが中心になります

一人で抱え込まないで

お子さんのことも、ご自身のことも、話せる場所があります

WISCの結果と療育手帳の関係

療育手帳の判定でWISCを受ける場合、まず見られるのは全検査IQ(FSIQ)です。FSIQが、お住まいの自治体の基準(おおむね70前後)を下回っているかどうかが、一つの目安になります。

ただし、WISCでは5つの指標(言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度)にばらつきがあることも少なくありません。指標間の差が大きい場合、FSIQだけでは、お子さんの実際の困りごとを十分に表せていないこともあります。

たとえば、言語理解の指標は平均的でも、処理速度やワーキングメモリーの指標が著しく低い場合、FSIQの数値は平均に近い値に落ち着くことがあります。しかし、日常生活では大きな困りごとを抱えているケースも少なくありません。

FSIQだけでなく、指標のばらつきも判定の参考にされることがあります。

このため、判定の場では、FSIQに加えて、指標のばらつきや、実際の生活面での困りごとについても、丁寧に聞き取りが行われます。指標の凸凹の読み方については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

また、FSIQが自治体の基準ぎりぎりの数値だった場合、それだけで対象・対象外が機械的に決まるわけではありません。複数回の面談や、より詳しい検査を経て、時間をかけて判断されることもあります。数値が基準の近くにあるからこそ、丁寧な見極めが必要になるのです。

発達障害があれば、療育手帳は取れる?

「ASDやADHDの診断を受けていれば、療育手帳も取れるのでは」と考える方もいらっしゃいますが、これは少し整理が必要です。

療育手帳は、あくまで「知的障害」に対する手帳です。ASDやADHDの診断があっても、知的な発達に遅れがない場合(WISCのFSIQが自治体の基準を上回っている場合)は、療育手帳の対象にはなりにくいのが実情です。

その場合の選択肢としては、精神障害者保健福祉手帳があります。こちらは発達障害そのものを対象とした手帳で、知的障害の有無を問いません。一方、発達障害に知的障害を伴う場合は、療育手帳の対象になります。

「知的障害を伴うかどうか」で、対象になる手帳の種類が変わります。

また、WISCの結果がIQ70〜84程度の「境界知能」にあたる場合、療育手帳の対象になるかどうかは、自治体の基準や、適応行動の状態によって判断が分かれます。境界知能そのものについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

発達障害と知的障害は、それぞれ独立した概念であり、重なることもあれば、どちらか一方だけということもあります。両者の違いについては、こちらの記事でも整理しています。

取得を考えたときの流れ

療育手帳の取得を考えている場合、まずはお住まいの自治体の窓口に相談することから始まります。おおまかな流れは、次のようになります。

  • お住まいの自治体の福祉窓口(福祉課・障害福祉課など)に相談する
  • 判定機関(児童相談所または知的障害者更生相談所)を案内される
  • 知能検査・面談・日常生活についての聞き取りを受ける
  • 総合的な判定結果にもとづき、手帳が交付されるかどうかが決まる
  • 18歳未満:児童相談所
  • 18歳以上:知的障害者更生相談所

相談後、判定のための知能検査や、日常生活についての聞き取りが行われ、総合的に判定されます。手続きの詳細や必要書類は自治体によって異なるため、まずは相談窓口に問い合わせることをおすすめします。

なお、一度の判定で「対象外」となっても、それで終わりではありません。お子さんの状態は成長とともに変化することがあり、必要に応じて再判定を受けることも可能です。また、手帳を取得したあとも、数年ごとに更新の判定があるのが一般的です。

一人で抱え込まず、専門家に相談しながら進めていくことも大切です。

今日からできる一歩を、一緒に考えませんか

専門家に話すことで、見えてくることがあります

まとめ

この記事のまとめ

  • 療育手帳は法律ではなく、自治体ごとの制度です
  • 名称・等級の呼び方・IQ基準は、自治体によって大きく異なります
  • 幼児期は田中ビネー、就学後はWISCが中心的に使われます
  • WISCではFSIQだけでなく、指標のばらつきも参考にされます
  • 療育手帳は知的障害への手帳で、発達障害単独では対象になりにくいことがあります
  • 判定はIQだけでなく、日常生活での適応行動もあわせて総合的に行われます

お住まいの地域の基準を、まずは窓口で確認してみてください

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ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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