春から中学生になる、高校生になる。そんな節目を前に、「この子、新しい学校に行けなくならないだろうか」と心配になっていませんか?進学の不安は、心配しすぎではなく、お子さんをよく見ている証拠です。
この記事では、進学の前後にスクールカウンセラー(SC)をどう頼れるのかを、国内外の研究レビューも手がかりに整理します。子ども家庭支援センターで不登校や発達の支援をしている公認心理師として、親ができる準備もお伝えします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 小学校から中学校、中学校から高校への進学を控えている方
- 進学をきっかけに、お子さんが学校に行けなくなるのではと不安な方
- スクールカウンセラーに、いつ何を相談していいか分からない方
- 進学の前に、親としてできる準備を知っておきたい方
進学で環境が変わると、親子ともに揺れるのは自然なこと

小学校から中学校、中学校から高校へ。進学は、お子さんにとって、環境がまとめて変わる出来事です。クラスの顔ぶれ、通学の距離、先生との関わり方、勉強の進み方、部活動。変わるものがあまりに多いので、気持ちが揺れるのは自然なことだと思います。
保護者の方からは、「小学校では元気に通えていたのに、中学に入ってから朝がつらそうで」というお話を伺うことがあります。私自身も親として、節目のたびに「大丈夫かな」と考えます。不安になる気持ちはよく分かります。
📝 事例|小学校では元気だったAさん
これはあくまで一般化した事例ですが、小学校では友だちも多く、先生にも慣れていたAさんがいました。中学に入ってからは、新しい人間関係に気を張り続けていたようです。数ヶ月たつころから、朝になるとお腹が痛いと訴えるようになりました。
お母さんは「小学校の頃は何ともなかったのに」と戸惑っていました。進学が原因だと決められるわけではありません。ただ、環境の変化が負担になっていた可能性はありました。
ゆう環境が変わる時期は、誰でも揺れます
進学前後は、不安が出やすいタイミングです。ただ、不安があること自体は、悪いことではありません。大切なのは、不安が出たときに頼れる場所を、先に知っておくことです。
中学から高校への進学では、また違った不安が出てきます。高校は義務教育ではなくなります。出席や単位の扱いも学校ごとに違うため、「休むと進級に響くのでは」という心配が、親子ともに強くなりやすい時期です。仕組みは学校によって異なりますので、入学前に確認しておくと安心です。
小学生と中学生の不登校の違いや「中1ギャップ」については、小学生の不登校と中学生の不登校の違いの記事で詳しく書いています。この記事では、頼れる人としてのSCに焦点を当てます。
スクールカウンセラーにできること|研究から分かる範囲
SCは、学校に配置されている心理の専門職です。「何かあってから相談する人」という印象を持つ方も多いかもしれません。では、進学のような移行期には、SCはどんな関わりをしているのでしょうか。
2025年に『カウンセリング研究』に掲載された、杉﨑雅子さんと飯田順子さんのレビュー論文があります。SCによる移行期支援について、国内外59本の研究を整理したものです。論文からは、次のことが読み取れます。
📚 論文で整理されていること
- 海外のSC:大学進学の準備支援や、障害のある生徒の就労への移行計画に関わっている
- 国内のSC:子どもや保護者への直接支援のほか、教職員へのコンサルテーション(間接支援)や、学校間連携を促す役割を担っている
出典:杉﨑雅子・飯田順子(2025)「スクールカウンセラーによる移行期支援に関する研究動向と今後の課題」『カウンセリング研究』58巻1号, pp.29-44
「学校間連携」とは、たとえば小学校と中学校が、子どもの情報や支援のつなぎ方を話し合うことです。SCは、その橋渡し役になり得るということです。
「教職員へのコンサルテーション」とは、SCが先生方に、子どもへの関わり方を助言することです。保護者がSCに話した内容が、先生の関わり方を考える手がかりになることもあります。ただし、どこまでを先生と共有するかは、学校や相談の内容によって異なります。相談の最初に「先生にはどこまで伝わりますか」と確認してみてください。
ただし、日本ではSCが移行期の支援に関わった研究は多くありません。論文でも、SCの役割や関わり方をもっとはっきりさせる必要があると指摘されています。



効果の証明はこれから。でも頼れます
つまり、「進学前にSCに相談すれば、不登校を防げる」と証明されているわけではありません。現時点でこれを証明する研究結果は出されていませんが、経験上として、進学前から相談先を知っておくと、困ったときに動きやすくなると感じています。
SCそのものについて知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。


進学の前後に、親ができる準備


では、進学を前にして、親は何をしておけるでしょうか。大きなことをする必要はありません。できそうなものから、一つずつで大丈夫です。
✅ 進学前後にできる5つの準備
- お子さんの気持ちを聞く:何が不安か、先生や学校に伝えてもいいかを確認する
- 今の学校に相談する:時間に余裕のある時期に、担任やSCへ心配ごとを伝える
- 引き継ぎの方法を確認する:情報のつなぎ方は、自治体や学校で異なります
- 進学先の相談窓口を知る:SCの勤務日や、相談の申し込み方法を調べておく
- 家庭で言葉にしておく:「つらいときは言っていいよ」と、先に伝えておく
お子さんの気持ちを聞くときは、「新しい学校で、ちょっと心配なことってある?」くらいの軽い聞き方がおすすめです。「大丈夫?」と詰めるように聞くと、「大丈夫」としか答えにくくなります。答えが返ってこなくても、聞いてくれる人がいると伝わるだけで十分です。
とくに大切なのは、①のお子さんの気持ちです。親が心配のあまり先回りすると、本人の気持ちが置き去りになることがあります。
お子さんが望まないのに、情報を伝えすぎないようにしてください。何を誰に伝えるかは、お子さんと一緒に決めるのが基本です。



全部やらなくて大丈夫です
相談する時期は、年度末で学校が慌ただしくなる前の、時間に余裕のあるころが話しやすいと感じます。ただ、「もう遅いかも」と思っても、入学後に相談して構いません。気づいたときが、動きどきです。
③の引き継ぎについては、どんな形で行われるかが学校によって違います。「引き継ぎはありますか」「SCにも伝わりますか」と、学校に尋ねてみてください。聞くだけでも、安心材料になります。
④のSCは、学校によって勤務日が限られていることがあります。入学後に慌てないよう、申し込み方法を先に確認しておくと動きやすくなります。
中学から高校への進学では、進路そのものに迷う方も多いと思います。そのときは、こちらの記事も参考にしてください。


進学の不安、一人で抱えなくて大丈夫です
学校の外にも、話を聞いてもらえる場所があります。気持ちを整理したいときの選択肢として、うららか相談室があります
進学後に「おや?」と思ったときの動き方
準備をしていても、進学後に「おや?」と感じる日は来るかもしれません。朝の体調不良が増えた、休みたがる、帰宅後にぐったりしている、友だちの話が減った。こうした変化は、環境に慣れる途中でも見られます。
一つの変化だけで、不登校と決めつける必要はありません。ただ、気になる変化が続くときは、早めに相談先へ声をかけてみてください。サインの見方は、次の記事で詳しく解説しています。


どこから話していいか迷うときは、担任の先生か養護教諭に「SCにつないでもらえますか」と聞くのも一つの方法です。学校によって窓口は違いますが、最初の一言を決めておくと、電話や連絡帳でも伝えやすくなります。
SCに相談するときは、「いつから、どんな様子か」と「親としてどう感じているか」を、短く伝えれば十分です。うまく話せなくても大丈夫です。一度で答えを出そうとしなくて構いません。



SCとは、何度かに分けて話せます
SCとの相性が合わないと感じることもあります。その場合は、無理に続けなくて構いません。ほかの相談先の選び方は、不登校の相談先はどこがいい?状況別の選び方で整理しています。
家庭では、欠席や遅刻があっても、まず「しんどかったね」と受け止めてあげてください。理由を問いただすより、休んだ日の過ごし方を一緒に整えるほうが、お子さんは落ち着きやすくなります。親が「行かせなければ」と焦るほど、本人も追い込まれやすくなります。
腹痛や頭痛、だるさなど、体の不調が続くときは、小児科などの医療機関にも相談してください。心の問題と決めつけず、体の面も一緒に確認することが大切です。
まとめ
- 進学は環境がまとめて変わる出来事で、親子ともに揺れるのは自然なこと
- 国内のSCは、直接支援・教職員へのコンサルテーション・学校間連携に関わっている
- 移行期のSC支援は研究が少なく、効果が証明されているわけではない
- 進学前に、お子さんの気持ちを聞き、相談先と引き継ぎ方法を確認しておく
- 進学後に気になる変化が続くときは、早めに声をかけて大丈夫
進学は、お子さんにとってもあなたにとっても、大きな節目です。うまく乗り切ることだけが目標ではありません。揺れたときに、「相談していいんだ」と思える場所が一つでもあれば、それは大きな支えになります。
進学を前にした不安は、あなたがお子さんを大切に思っている証です。頼れる場所を先に知っておくだけで、心の余裕は少し変わります。ひとりで全部を背負わなくて大丈夫ですよ。
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話すだけで、整理できることがあります
進学のことで迷いがあるときは、うららか相談室で話を聞いてもらうのも一つの選択肢です


元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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