高校生くらいのお子さんが、特殊詐欺に加担して逮捕されることがある――。そう聞いて、驚かれたかもしれません。被害者のニュースはよく耳にしても、加害の側にまわった子どもの話を知る機会は、あまり多くないものです。
この記事では、子どもが特殊詐欺の「受け子」に加担してしまう背景と兆候、そして親にできる対応を整理してお伝えします。「まさかうちの子が」と感じる方にこそ、知っておいてほしい内容です。
申し遅れました。私は公認心理師の「ゆう」と申します。以前の職場で、非行に関わった子どもたちの支援にも携わってきました。その経験から、できるだけ具体的に、けれど親を責めない視点でお話しします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもが「楽に稼げるバイト」の話に関心を持っていて不安な方
- 特殊詐欺の受け子について、加害側の実態を知っておきたい方
- 子どもの持ち物や交友関係に、気になる変化を感じている方
- 万が一のとき、どこに相談すればいいか知っておきたい方
特殊詐欺の「受け子」とは

まず、「特殊詐欺」と、その役割の一つである「受け子」について整理します。
特殊詐欺とは
特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキなどで親族や公的機関の職員などを装い、被害者を信じ込ませて現金やキャッシュカードをだまし取る犯罪の総称です。警察庁は、手口別に複数の種類に分類しています。
よく知られているのが「オレオレ詐欺」です。電話で親族や警察官、弁護士などを装い、示談金や補償金などの名目で現金を振り込ませる手口を指します。どの種類にも共通するのは、グループで役割を分担し、被害者を騙してお金を受け取る点です。
受け子とは
特殊詐欺は、グループのメンバーが役割を分担して行います。「受け子」は、被害者から現金やカードを直接受け取る役割です。
📝 特殊詐欺グループの主な役割
- 架け子:被害者に電話をかけて騙す役
- 受け子:被害者から現金やカードを直接受け取る役
- 出し子:だまし取ったカードでATMから現金を引き出す役
- 見張り役・送迎役:受け子や出し子を見張ったり、現場へ送り迎えする役
- リクルーター:仲間を集める役割
このうち、子どもが担わされるのは、ほとんどが「受け子」や「出し子」です。被害者に直接会ったり、防犯カメラに写ったりするため、最も逮捕されるリスクが高い役割でもあります。
大人たちは、自分ではやらず、お金に困って口車に乗せやすい子どもに押し付けがちです。知り合いを通じて探したり、SNSで募集したりします。子どもの側は「短期間で高収入の安全なバイト」という軽い認識で関わってしまうことが多いのです。
ゆう子どもが担うのは、最も捕まりやすい「受け子」が多いんです。
特殊詐欺に加担する子どもは、どれくらいいるのか
「そんな子どもが、本当にいるの?」と感じる方もいるかもしれません。けれど、数字を見ると、決して珍しいことではないとわかります。


警察庁の発表では、令和7年に特殊詐欺で検挙された20歳未満の少年は463人(暫定値)でした。少年の検挙人員のうち約75%が「受け子」で、検挙された受け子の約2割が少年だったとされています。
少年の加担は平成30年ごろをピークに少しずつ減少しているものの、検挙人員に占める割合は依然として高い状況です。「うちの子に限って」とは言い切れないのが、今の現実だと言えます。



特別な子どもだけの話、ではないんです。
子どもが受け子に加担するきっかけ
身近に例がないと、子どもがどうやって加担していくのか、想像しにくいかもしれません。「よほど悪い子なのだろう」と思われがちですが、私が相談の場で出会ったケースでは、どこにでもいるようなお子さんが巻き込まれていました。
話を持ちかけられる入口は、大きく二つに分かれます。友達や先輩からの紹介と、SNSで見つけた「高収入」の募集です。いずれも、はっきり「詐欺」と言われる場合と、「書類を受け取るだけの楽な仕事」と伏せられる場合があります。
これはあくまで一般化した事例ですが
お金がないと友達に相談したら先輩を紹介され、「楽して稼げる」と誘われた。怪しいと思ったけれど、断るのが怖くて引き受けてしまった――。あるいは、SNSの「短期間で高収入」にアクセスしたら知らない人から連絡が来て、会って話すうちに抜けられなくなった――。こうした流れは、決してめずらしくありません。
自分から進んで関わる子は多くありません。多くは「断るのが怖くて」引き受けてしまいます。そして一度加担すると、「やめるなら金を払え」「家族に危害を加える」などと脅され、抜けられなくなっていくのです。



「断れなかった」という入口が、本当に多いんです。
加担しやすい子どもに共通する背景


では、どんな子どもが加担しやすいのでしょうか。相談の場で見えてきた共通点を、5つの背景として整理します。どれも、その子が「悪い子」だからではなく、何かしらの困りごとが土台にあります。
📝 加担の背景にある5つの共通点
- ① お金に困っている
- ② 家族に相談しづらさを感じている
- ③ 非行傾向のある交友関係がある
- ④ 周囲に認められたい気持ちが強い
- ⑤ 相手の痛みを想像することが苦手
① お金に困っている
加担の動機で最も多いのが「お金欲しさ」です。友達との交際費やゲーム課金などで出費がかさみ、親からもバイトからも足りないとき、「簡単に稼げる」という誘いに手を伸ばしてしまいます。
② 家族に相談しづらさを感じている
家庭に居心地の悪さを感じていると、困ったことがあっても家族に相談できなくなります。お金に困っても「自分でどうにかするしかない」と思い込み、誘いを受け入れてしまいやすくなります。
③ 非行傾向のある交友関係がある
過ごす時間の長い友人が健全な環境にいれば、詐欺とは無縁でいられます。けれど、交友関係のどこかに詐欺グループとのつながりがあると、リスクの高い役割をやる子を探す大人に目をつけられやすくなります。
④ 周囲に認められたい気持ちが強い
誰しも、認められたい気持ちを持っています。成績や部活で思うようにいかず、惨めさを抱えた子が加担すると、報酬で羽振りよく振る舞い、「一人前になれた」という錯覚を得てしまうことがあります。
⑤ 相手の痛みを想像することが苦手
受け子は被害者と直接会うため、本来は罪の意識が芽生えやすい役割です。それでも続けられる場合、相手の気持ちに目が向きにくい状態にあると考えられます。
なお、自閉スペクトラム症(ASD)など、相手の気持ちを想像することが苦手な特性を持つお子さんもいます。ただし、特性があることと、詐欺に加担することは、まったく別の話です。発達障害について詳しくは、こちらをご覧ください。





特性があっても、詐欺をするわけではありません。ご安心を。
子どもの交友関係やお金のこと、一人で悩んでいませんか?
「どう声をかけたらいいのか分からない」と感じたとき、第三者と気持ちを整理するだけで、見えてくるものがあります。
子どもが受け子をするときに見せる兆候
では、加担しようとするとき、親は子どものどんな点に目を向ければよいのでしょうか。次のような兆候が見られることがあります。
急にスーツ・革靴・ビジネス鞄を持ち始める
受け子は、サラリーマンや銀行員のふりをするよう指示され、スーツなどを身につけます。高校生がスーツを持っていることはまずないので、ある日突然ビジネスマンのような服装をし始めたら、注意が必要です。
子どものものではないスマホを持っている
受け子は、グループから常に指示を受けて動くため、スマホが欠かせません。連絡用のスマホを渡されることもあります。親の知らないスマホをいつの間にか持っていたら、兆候の一つです。
知らない番号からの着信が頻繁にある
グループは、記録を残さないために電話で連絡することが多いとされます。子どもが知らない相手からの着信を頻繁に受けているようなら、気にとめておきたいサインです。



いつもと違う持ち物や連絡先に、目を向けてみてください。
兆候に気づいたときの対応


兆候に気づいたら、「まさかうちの子は大丈夫」と片づけず、落ち着いて関わることが大切です。
まずは、子どもの話をしっかり聴くことから始めます。加担している子は、後ろめたさや脅しから、なかなか本当のことを話せません。それでも、心配していること、困っているなら話してほしいことを、根気強く伝えていきましょう。
知らないスマホを持っていたり、知らない番号からの着信があったりする場合は、そのスマホを預かる、警察に届けるといった対応が必要になります。子どもが抵抗してうまくいかないときは、最寄りの警察署に相談してください。
警察に介入してもらうことで、子どもがグループから離れ、かえって安心できるようになることもあります。非行や犯罪の相談窓口である法務少年支援センターに相談するのも一つの方法です。家庭だけで抱え込まず、専門機関を頼ることが、結果的に被害を抑え、お子さんを守ることにつながります。



抱え込まず、迷わず専門機関に相談して大丈夫です。
まとめ
✅ この記事のポイント
- 子どもが担わされるのは、最も逮捕リスクの高い「受け子」「出し子」が多い
- 加担は特別な子だけの話ではなく、誰にでも起こりうる
- 「断れなかった」「お金に困っていた」など、背景には子どもなりの事情がある
- 急なスーツ・知らないスマホ・知らない番号からの着信は兆候のサイン
- 気づいたら抱え込まず、警察や法務少年支援センターなど専門機関へ相談を
親が兆候に気づき、落ち着いて対応することは、被害者を生まず、お子さんを加害に向かわせないための大切な一歩です。不安なときは、どうか一人で抱え込まないでください。
子どものことで、不安を一人で抱えていませんか?
緊急時は警察や専門機関へ。そのうえで、揺れる気持ちを整理したいときは、専門家に話してみることから始めてみませんか。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
