ペアレント・トレーニングとは?発達障害のある子の親が知りたいこと

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「ペアレント・トレーニングをすすめられたけど、自分の育て方が悪かったってこと?」——そう感じて、踏み出せずにいる方は少なくありません。

ペアレント・トレーニング(ペアトレ)は、親を責めるものでも、しつけを教えるものでもありません。子どもの特性を理解しながら、今日から少し試せる関わり方のコツを一緒に考えていくプログラムです。

私は公認心理師として、子ども家庭支援センターで発達障害や不登校の支援に携わっています。現在は保護者向けのペアトレをグループ形式で実施しており、毎回多くの保護者の方に参加していただいています。「参加してよかった」という声とともに、「もっと早く知りたかった」という声も多くいただきます。

この記事では、ペアトレとは何か、受けるとどう変わるか、どこで受けられるかを、現場の実感を交えてお伝えします。「まず知るだけでいい」という気持ちで読んでみてください。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • 発達障害のある子どもとの関わり方に行き詰まりを感じている
  • ペアレントトレーニングをすすめられたが、何をするのかよくわからない
  • 「自分の育て方のせいなの?」と感じて、受けることに踏み出せずにいる
  • どこで受けられるか・費用はどのくらいかを知りたい
目次

ペアレントトレーニングとは何か

子どもに寄り添う父親

一言で言うと「子どもへの関わり方を一緒に考えるプログラム」

ペアレント・トレーニング(以下、ペアトレ)とは、発達の特性がある子どもの保護者が、日々の関わり方のコツを学ぶための支援プログラムです。1960年代にアメリカで開発され、日本では1990年代ごろから広まってきました。現在は、厚生労働省による発達障害者支援施策のひとつとしても位置づけられています。

「親のトレーニング」という名前から、「私の育て方が悪かったから受けるもの」と感じてしまう方もいます。でも、そうではありません。

ペアトレの考え方の根本にあるのは、「親が変わると、子どもとのやりとりが変わる」ということです。「あなたの育て方が間違っていた」のではなく、「お子さんの特性に合った関わり方を一緒に見つけていきましょう」というスタンスです。

ゆう

親を責めるためじゃない。一緒に考えるためのプログラムです

対象はADHD・ASD(自閉スペクトラム症)などの診断がある子どもだけでなく、グレーゾーンの子ども、不登校、子どもの行動に困っている保護者まで広がっています。「診断がついていないから受けられない」ということはありません。

どんなことを学ぶの?

ペアトレで中心的に学ぶのは、子どもの行動を3つに分けて考えるという視点です。

💡 行動の3つのタイプ

  • 好ましい行動:増やしたい行動。積極的にほめる
  • 好ましくない行動:減らしたいが危険ではない行動。注目を外し、できたらほめる
  • 許しがたい行動:安全にかかわる行動。一貫したルールで対応する

「ほめるのが大事」とよく言われますが、ペアトレはただ「ほめましょう」と言うだけではありません。どんな行動をどうほめると子どもに伝わるか、指示の出し方・タイミング・言葉の選び方まで、具体的なスキルとして学んでいきます。

プログラムは通常、グループ形式で全10回前後、隔週で実施されます。毎回の流れはだいたい次のとおりです。

📋 1回のセッションの流れ(例)

  • 「良いところ探し」——前回から今回までの子どもの小さな変化を共有
  • 宿題の振り返り——やってみてどうだったかをグループで話し合う
  • 今日のテーマを学ぶ——講義とロールプレイ
  • 次回までの宿題を確認する

「宿題」といっても難しいものではなく、「今週、子どもの好ましい行動を1つ見つけてほめてみる」というような小さな実践です。

グループで受けることの意味

私が実施しているグループでも感じることですが、同じ立場の保護者同士が集まる場そのものに、大きな力があります。

「うちの子だけじゃなかった」「こんな関わり方をしている人がいるんだ」——グループの中でそう感じる瞬間が、孤立していた気持ちをほぐすことがあります。セッションが終わった後も「あのときの仲間に連絡してみよう」という関係が続くこともあります。知識やスキルだけでなく、仲間とのつながりがペアトレの大切な副産物になっています。

ゆう

「うちだけじゃない」と感じる場所、それがグループの力です

📚 参考研究

山中智央 ほか(鳥取大学大学院医学系研究科・島根大学)(2024). 日本における発達障害のある子どもの保護者のペアレントトレーニングへの期待. Yonago Acta Medica, Vol.67, No.4, pp.329-340.
DOI: 10.33160/yam.2024.11.008

PT未受講の保護者806名を対象にしたこの調査では、オンラインと対面を選べる柔軟な形式へのニーズが高く、費用負担の軽減を求める声も多いことが示されました。また、診断のない(グレーゾーンの)子どもを持つ保護者も参加できるプログラムへのニーズが確認されています。

受けるとどう変わる?——ペアトレの効果と、現実のこと

子どもと親、両方に変化が起きる

ペアトレの効果として、研究でも繰り返し確認されているのは次のようなことです。

✅ ペアトレで確認されている変化

  • 保護者の精神的な健康(ストレス・疲弊感)が改善する
  • 子どもの好ましくない行動が減りやすくなる
  • 親子の関わりにポジティブな場面が増える
  • 保護者が子どもの特性を理解しやすくなる

ただし、誤解してほしくないのは、「ペアトレを受ければ子どもが変わる」ではなく、「親と子どもの関係が変わる」ということです。子どもを変えようとするプログラムではなく、親子のやりとりの質が変わることで、結果的に子どもの行動も変わりやすくなります。

うまくいかない日があって当然

グループを実施していると、「先週はうまくほめられなかった」「怒鳴ってしまった」という声が毎回出ます。それは失敗ではありません。

🗒 これはあくまで一般化した事例ですが……

ADHDの診断がある小学3年生のお子さんを持つCさんは、ペアトレに参加した当初、「どうせ自分には無理」という気持ちで来ていました。第3回のセッション後、「昨日、子どもがランドセルを自分でしまったのをほめたら、次の日も自分でしまっていた」とグループで話してくれました。「こんな小さなことでも変わるんだ」という驚きが、Cさんの参加への意欲を変えました。

ペアトレで本当に大切なのは、スキルを完璧に実行することではありません。「なぜこの子はこうするのか」という見方が少し変わることです。そこが変わると、感情的な反応が変わります。反応が変わると、子どもの受け取り方も少しずつ変わっていきます。

ゆう

うまくいかない日も、参加し続けることに意味があります

どこで受けられる?費用は?——相談窓口と選び方

電話相談

「受けてみたい」と思っても、「どこに問い合わせればいいか」「費用はどのくらいかかるか」がわからないと動きにくいですよね。主な相談先と特徴をまとめます。

📍 ペアトレを受けられる主な場所

  • 発達障害者支援センター:各都道府県に設置。発達の特性がある子どもの支援に専門的に対応。費用は比較的低い。まず相談してみる入口として最適
  • 子ども家庭支援センター(子育て世代包括支援センター):地域に密着した相談窓口。私が実施しているのもここです。費用は機関によって異なるが無料のケースも
  • 医療機関(小児科・児童精神科):診断がついている場合はここから紹介されることが多い。保険外の場合は1回数千円程度
  • 児童相談所:子育て全般の相談に応じており、ペアトレを実施しているところもある
  • 大学の心理相談センター:費用が低いことが多い。学生が研修として関わる場合があるので事前確認を

オンラインで受ける選択肢も広がっています

「近くに実施している機関がない」「共働きで平日昼間に通えない」という方には、オンライン形式のペアトレが選択肢になります。

先ほどの研究(山中ら、2024)では、オンライン形式でも対面と同等の効果が確認されており、地域の支援センターを通じたオンライン実施でも十分な成果が得られることが示されています。「通えないから無理」ではなく、オンラインという選択肢を探してみることをお勧めします。

また、診断のないグレーゾーンの子どもを持つ保護者も受けられるプログラムが増えています(山中ら、2024)。「うちの子は診断がないから……」と諦めずに、まず問い合わせてみてください。

ゆう

「通えない」「診断がない」も、諦める理由にはならないかもしれません

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ペアトレを始める前に、まず話してみませんか

「受けたほうがいいとは思うけれど、一歩踏み出せない」——そういう段階にいる方も多いと思います。それでいいんです。

私がグループを実施していて感じるのは、参加された方のほとんどが「最初は迷っていた」ということです。でも、第1回のセッションに来てみると、「来てよかった」という感想をほぼ全員から聞きます。

ペアトレに参加する前に、「今の状況を誰かに話す」という段階があっていいと思っています。今どんな状況にあって、何に困っていて、何を変えたいのか。それを整理するだけで、次の一歩が見えてくることがあります。

💡 ペアトレを検討中の方への3つのヒント

  • まず地域の発達障害者支援センターか子ども家庭支援センターに問い合わせてみる
  • 「ペアトレをやっているか」を確認してから予約する(すべての機関が実施しているわけではない)
  • 「受けるかどうか迷っている」段階でのオンライン相談は、うららか相談室のような窓口が使いやすい

一人で抱え込まないことが、お子さんへの最大のケアにつながります。まず話してみることから始めてみてください。

ゆう

「迷っている」段階でも、話すことで見えてくるものがあります

ペアトレを受ける前でも、まず「今の状況」を話してみませんか

うららか相談室では、発達障害のある子どもへの関わり方や、ペアトレへの疑問について、スマホからオンラインで公認心理師などの専門家に相談できます。

まとめ

  • ペアレントトレーニングは「親を責めるもの」ではなく、「子どもとの関わり方を一緒に考えるプログラム」
  • ADHD・ASDなどの診断がある子だけでなく、グレーゾーンや不登校の子どもの保護者も対象になる
  • 行動の3つのタイプを学び、ほめ方・指示の出し方・一貫した対応のスキルを身につける
  • グループで受けることで「仲間とのつながり」という大切な副産物が生まれる
  • 子どもだけでなく、保護者の精神的な健康にも効果が確認されている
  • オンライン形式でも同等の効果があり、診断がなくても受けられる機関が増えている
  • まず発達障害者支援センターか子ども家庭支援センターに問い合わせてみることから始められる

「自分の育て方のせいなんじゃないか」と感じてきた時間を、これ以上ひとりで抱えなくていいです。まず話してみること、それが一番の第一歩です。

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ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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