子育ての悩みは、子どもが何歳になっても尽きませんよね。お子さんは成長とともに、少しずつ心理面・行動面が変化していきます。
私は公認心理師として、子ども家庭支援センターで多くのご家族の相談を受けてきました。今回ご紹介するのは、エリクソンの「発達段階理論」。お子さんが今どんな心理的課題と向き合っているのかを理解する手がかりになり、関わり方を考えるヒントになります。
この記事では、理論を「子どもの行動や感情を理解するための視点」として整理し、各時期で親ができることまでお伝えします。一緒に見ていきましょう。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- エリクソンの発達段階理論って何?とざっくり知りたい方
- 子どもの成長に合わせた接し方のヒントがほしい方
- お子さんの行動の背景を、少し距離をもって理解したい方
- 親である自分自身の心の課題にも目を向けたい方
エリクソンの発達段階理論とは?(なぜ親に役立つのか)

ゆう理論は、関わりのヒントとして使えます
E.H.エリクソンは、人の精神的・人格的な発達は生涯を通じてのテーマだと考えました。そして人生を8つの段階に分け、それぞれの段階に、その時期に重要な「発達課題」があるとしました。
2つのキーワード
- 発達課題:その時期に乗り越えていきたいテーマ
- 心理社会的危機:その課題につまずいたときに生じやすい悩み。「危ない」という意味ではなく、次へ進むか戻るかの”分岐点”を指します
この理論は、今でも心理相談の分野では欠かせない知識で、子育てにもとても役立ちます。ただし、確立されたのは70年ほど前。当時と今では子どもの発達の時期も異なり、年齢は個人差も大きいので、あくまで参考程度に考えてくださいね。発達特性そのものについては、こちらもどうぞ。


子ども時代の発達段階と親の関わり|乳児期〜青年期



“課題”を知ると、関わりが変わります
乳児期(0歳〜1歳半)|基本的信頼 対 不信
この時期で一番大切な課題は、「基本的信頼」を獲得することです。赤ちゃんは一人では何もできず、お腹が空けば泣き、抱っこを求めて泣き、欲求を満たしてもらいます。多くの場合、その役割を身近な大人が担います。
「困ったら助けてもらえる」という経験を重ねることで、基本的信頼が育ちます。逆に、泣いても応えてもらえない状況が続くと、「誰も助けてくれない」という不信感を抱きやすくなります。基本的信頼は、その後の人間関係を築く土台になる、とても重要なものです。
この時期のお世話は本当に大変ですよね。私自身も、子どもが乳児期だった頃は毎晩のように夜泣きがあり、心身ともに疲れました。それでも「欲求を満たしてあげることが大切」と思い、妻と協力して乗り越えました。
幼児前期(1歳半〜3歳)|自律性 対 恥・疑惑
この時期に大切なのは「自律性」を身につけることです。歩き始め、会話が増え、食事や排せつのトレーニングも始まります。失敗を繰り返しながらも少しずつ成功を重ね、「自分でできる」という感覚を得ることが、自律性につながります。
親が手をかけすぎて失敗させないようにすると、子どもは「自分でやってみよう」と思えません。逆に厳しすぎて叱り続けると、「どうせできない」という恥の気持ちを抱きやすくなります。放任しすぎず、過干渉しすぎず、程よく関わることが大切です。相談室でも、極端な関わりはどちらも子どもの発達に影響すると感じてきました。
幼児後期(3歳〜5歳)|積極性 対 罪悪感
この時期は「積極性」を育てていく時期です。好奇心が高まり、いろいろなことに自発的に取り組むようになります。保育園や幼稚園で友達と遊ぶ機会も増え、人間関係が広がっていきます。
親が積極性を尊重し、やりたいことを自由にさせてあげるのが理想的です。逆に厳しく制限しすぎると、「やりたいことをするのは悪いこと」と感じ、罪悪感を抱くようになります。もちろん、自分や他人を傷つける行為は止め、公共の場での振る舞いを教えるのは親の務めです。
私も、子どもが友達を叩いたり道路に飛び出したりしたときは厳しく注意しました。一方で、泥んこやのりでベタベタになったときは、心の中で「服が汚れるのに」と思いつつ、汚れるまで楽しんだことを一緒に喜ぶようにしていました。
児童期(5歳〜12歳)|勤勉性 対 劣等感
この時期は「勤勉性」の獲得が課題です。勤勉性とは、周囲や社会から期待される課題に、自主的・継続的に取り組むことを意味します。小学校では多くの授業や課題、係活動などがあり、自分の役割に責任をもって取り組むことが求められます。
一つずつ取り組む中で自信がつき、「やり遂げる力がある」と気づいて勤勉性が育ちます。逆に、友達と協力する経験が不足すると、友達が比較の対象になり、優れて見える人の前で「劣等感」を意識しやすくなります。この頃は、勉強や運動の能力差も見えはじめる時期です。
親としては、お子さんの得意なことや好きなことを見つけて伸ばす働きかけをしたいですね。苦手なことにも少しずつ取り組めるよう支えながら、友達と比べるのではなく、互いを認め合える関わりを目指したいところです。
青年期(12歳〜18歳)|アイデンティティ 対 拡散
この時期の課題は「アイデンティティ」の確立です。これは「自分が自分であること」「他者とは異なる存在であること」を、自分自身で定義できるようになることを指します。
青年期は第二次性徴で身体が急激に変化し、心理的な不安や戸惑いが起きやすい時期です。親への依存から少しずつ離れ、友達や恋人との関係を深めていきます。進路や価値観など、自分の人生を左右する選択にも直面し、自分で決断することを求められます。こうした経験を通じて、アイデンティティを確立していきます。
選択に迷う状態が長引くことを「モラトリアム」と呼びます。これは決定のために努力している状態です。一方、自分の人生に主体的な選択ができないまま自信を持てず、自己嫌悪に陥る状態を「アイデンティティ拡散」と言います。
親は、干渉しすぎず、少し離れたところから必要な支援を必要な分だけ行うよう心がけたいですね。思春期の関わり方に迷ったら、こちらも参考にしてください。


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大人の発達段階|成人前期〜老年期





親である私たちにも、課題はあるんです
発達段階は、子ども時代で終わりではありません。子育て中の私たち自身も、それぞれの課題と向き合っています。自分の段階を知ることは、自己理解にもつながります。
成人前期(18歳〜40歳)|親密性 対 孤立
この時期の課題は「親密性」です。社会に出て自立し、他者と深い関係を結べるようになる時期で、恋愛や結婚をする人もいます。親密性を育むには、青年期にアイデンティティを確立できたかが鍵になります。自己が確立していないと、表面的な関わりにとどまり、孤独につながることもあります。子育て中の親世代の課題とも言えます。
成人後期(40歳〜65歳)|世代性 対 停滞
この時期の課題は「生殖性(世代性)」です。子育てが一段落し、新しい習い事や人間関係を広げる余裕が出てきます。孫など次の世代と関わることで、世代性が育まれます。逆に、これまでと同じことしかせず次の世代とつながれないと、「停滞」に陥ることもあります。私自身、まさにこの段階。次の世代に何が残せるか、考え始めています。
老年期(65歳以上)|統合 対 絶望
この時期の課題は「統合」です。仕事を退職し、これまでの人生を振り返り、自分の人生の意味を見いだしていきます。「いろいろあったけど、満足できる人生だった」と受け入れられれば十分です。逆に意義を見いだせないと、老いや死を受け入れられず「絶望」に陥ることもあります。
まとめ
エリクソンの発達段階理論について、振り返ります。
- 人生を8つの段階に分け、各時期に「発達課題」があると考える理論
- 子どもの成長を「できる・できない」で評価するためのものではない
- その時期に向き合う課題を知ると、行動や感情の背景が見えやすくなる
- 親自身の段階を知ることは、自己理解の手がかりにもなる
発達段階の特徴を知ると、お子さんの行動や感情を、少し距離をもって受けとめられるようになります。「今はこういう課題と向き合っているんだな」——その視点があるだけで、日々の関わりは少しやさしくなります。あせらず、お子さんのペースで見守っていきましょうね。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
