「ゲームばかりしている」——多くのご家庭で聞かれる悩みです。
ただ、「ゲーム好きな子」と「ゲーム依存」は、実は医学的に区別される概念です。WHO(世界保健機関)は2019年、ゲームのやめられない状態を「ゲーム障害」として正式に病気に位置づけました。
「うちの子もそうなのでは」と不安になった方もいると思います。一方で、「病気だなんて大げさ」と感じる方もいるでしょう。
この記事では、ゲーム障害とはどんな状態を指すのか、そしてなぜそこまでのめり込んでしまうのかを整理し、親としてどう関わればいいかを一緒に考えます。スマホ全般の依存ではなく、ゲームそのものに焦点を当てています。
私は公認心理師として子ども家庭支援センターに勤務し、発達障害・不登校・問題行動の相談を日々受けています。ゲームをめぐる親子の対立は、最近とても多く相談を受けるテーマの一つです。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どものゲーム時間がコントロールできず悩んでいる方
- 「ゲーム依存」が病気として扱われると聞いて気になっている方
- ゲーム内の課金トラブルが心配な方
- ゲームをやめさせようとすると激しく反発される方
「ただの好き」と「ゲーム障害」の違い——WHOが定めた基準

ゆう好きなだけでは「障害」ではありません
まず大切な前提をお伝えします。ゲームを長時間プレイすること自体は、病気ではありません。
WHOは国際疾病分類「ICD-11」で「ゲーム症(ゲーム障害)」を新たな疾患として収載しました。日本精神神経学会の解説によると、ゲーム行動症は、持続的または反復的なゲーム行動に加えて、次の4項目を満たす場合に診断されるとされています。
🔑 WHO「ゲーム障害」の4つの基準
- コントロールができない——ゲーム時間を減らそうと思っても、なかなかできない
- 生活の中での優先度が極端に高い——勉強・家族行事よりゲームが中心になっている
- 問題が起きても続ける・エスカレートする——学業や家庭生活に明確な問題が出ているのに続けてしまう
- 長期間続いている——上記が概ね12ヵ月以上継続している(症状が重い場合はより短期間でも該当)
つまり、「好きでよくゲームをする」状態と、「生活に支障が出るほどコントロールができない」状態は、まったく別のものです。この区別を知っておくことは、過剰に心配しすぎないためにも、見過ごしてはいけない状態を見逃さないためにも役立ちます。
📄 参考資料
日本精神神経学会の解説(樋口進氏監修)によると、WHOはICD-11において、ゲーム行動症を持続的・反復的なゲーム行動に加えて上記4項目を満たす状態として定義しています。なお、アメリカ精神医学会のDSM-5-TRでは、インターネットゲーム行動症は「今後の研究のための病態」として位置づけられており、ICD-11ほど確立した診断名としては採用されていません。
また、厚生労働省の推計(2017年度)では、ネット・ゲーム依存が疑われる中高生は全国で93万人、およそ7人に1人という割合に上るとされています。「うちだけ」ではない、ということも知っておいていただきたい数字です。
なぜゲームはやめられなくなるのか——家庭環境との関係
ゲーム障害に至る背景は一つではありません。ゲーム自体の設計(達成感・報酬システム)に加えて、家庭環境が大きく関わっていることが、近年の研究で繰り返し示されています。
「親の関わり方が悪いからゲーム依存になる」という単純な話ではありません。ただ、家庭という環境が、子どもがゲームにどう向き合うかに影響していることは知っておく価値があります。
📄 研究の紹介
Atalan Ergin & Essau(2025)による系統的レビュー(International Journal of Developmental Science, DOI: 10.1177/2192001X251352496)は、77件の研究を対象に思春期のインターネットゲーム障害(IGD)と家族要因の関係を検証しています。多くの研究が、家族機能の低さ・保護者のメンタルヘルスの不調・親子の愛着の弱さ・否定的な養育行動・親のインターネットに対する否定的な態度が、子どものIGDリスクと関連していることを報告しています。
この研究で重要なのは、「親が悪い」という結論ではなく、「家庭の安心感や関係性が、子どもがゲームに依存的に向き合うかどうかに影響する」という視点です。
💬 一般化した事例
これはあくまで一般化した事例ですが——中学1年のDくんは、両親の不仲が続く時期にオンラインゲームの時間が急激に増えました。ゲーム内のチームメイトとの会話が、Dくんにとって「安心できる関係」になっていたのです。家庭での緊張から距離を置く手段として、ゲームが機能していました。
ゲームには、達成感・承認・つながりといった、子どもが日常で十分に得られていない心理的なニーズを満たす機能があります。「ゲームをやめさせる」より先に、「何がゲームの中で満たされているのか」を考えることが、対応のヒントになります。
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課金トラブルが起きたとき





課金は「ばれた後」の対応が大切です
ゲーム依存と並んで相談の多いのが、課金トラブルです。「いつの間にか高額な請求が来ていた」というケースは珍しくありません。
ガチャやアイテム購入の仕組みは、「もう少しで欲しいものが手に入るかもしれない」という期待感を強く刺激するように設計されています。大人でも理性的に判断するのが難しい設計だということを、まず知っておいてください。
課金トラブルが起きたとき、つい「なんでこんなことをしたの」と問い詰めたくなりますが、ここでも対応の仕方が今後に影響します。
⚠️ 課金トラブルが起きたときの注意点
- 感情的に激しく叱ると、隠れて課金を続けるリスクが高まる
- 家族カード・保護者のスマホを無断使用していた場合、「なぜ使えたのか」(パスワード管理など)も合わせて見直す
- 未成年者の意思表示には法的な取消が認められる場合がある(消費者庁・国民生活センターに相談可能)
- 家族内のルール(課金は事前相談制にする等)を、今後に向けて一緒に作る
課金は「お金の問題」であると同時に、「子どもの心理状態のバロメーター」でもあります。なぜそこまで欲しかったのか、ゲーム内で何を得ようとしていたのかを聞いてみることが、根本的な対応につながります。
親ができる関わり方
最後に、家庭で実践できる関わり方を整理します。
① 「禁止」よりも「一緒にルールを作る」
一方的な禁止は反発を招きやすく、隠れてプレイする結果につながることもあります。子どもと一緒に「何時まで」「どんなときは中断する」などのルールを話し合って決めることが、納得感を生みやすくなります。
② ゲームの中身に興味を持つ
「どんなゲーム?」「どこが面白いの?」と聞いてみることは、子どもとの対話のきっかけになります。否定から入らず、まず知ろうとする姿勢が、子どもの警戒心を緩めます。
③ ゲーム以外の居場所・関係を大切にする
ゲームが「唯一の安心できる場所」になっている場合、ゲーム時間を減らすだけでは解決しません。家庭での会話の時間、リアルな友人関係、part-timeの活動など、ゲーム以外でも満たされる感覚を持てる環境を整えることが大切です。
④ 深刻な場合は専門機関へ
⚠️ 次のような状況があれば、専門機関への相談を検討してください
- 昼夜逆転や不登校など、生活全般に影響が出ている
- ゲームを取り上げると暴言・暴力に至る
- 食事や入浴など基本的な生活が成り立たなくなっている
- 家庭内での対応に限界を感じている
ゲーム障害の治療や相談に対応する専門外来(精神科・心療内科のゲーム障害外来など)や、子ども家庭支援センター、精神保健福祉センターなどが相談先になります。
共働きで子どもの様子を毎日細かく見るのが難しい中で、一人で対応を抱え込む必要はありません。専門家と一緒に状況を整理することも、有効な選択肢です。
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 「ゲームが好き」と「ゲーム障害」は別物——WHOはICD-11で4つの基準(コントロール不能・優先度の異常な高さ・問題が起きても継続・長期間の持続)を定義している
- ネット・ゲーム依存が疑われる中高生は推計で7人に1人とされ、特別な少数の話ではない
- 家族機能・親子の愛着・養育行動などの家庭環境が、IGDのリスクと関連することが研究で示されている
- 課金トラブルは感情的に叱るより、家族内のルール作りと、本人の気持ちを聞くことが大切
- 関わり方のポイントは「一緒にルールを作る」「ゲームに興味を持つ」「ゲーム以外の居場所を大切にする」
- 生活全般への影響や暴言・暴力がある場合は早めに専門機関へ相談を
ゲームは、今の子どもたちにとって大切な居場所のひとつでもあります。「やめさせること」だけを目標にするのではなく、「なぜそこまで必要としているのか」に目を向けることが、長い目で見た解決への第一歩になります。
一人で全部わかろうとしなくていいんです。一緒に考えましょう。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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