家庭内暴力の中でも、子どもによる親への暴力でお困りの方は少なくありません。
私の勤める相談室には、子どもの家庭内暴力に悩む方がよく来ます。
子どもが小学生くらいであれば、なんとか対応できるかもしれませんが、中学生くらいになって体が大きくなると手に負えなくなります。
親が力で抑えるのにも限界がありますし、そもそも根本的な解決にはなりません。
そこで、本記事では、家庭内暴力に及ぶ子どもの特徴と対処法について詳しく説明していきます。
- 家庭内暴力について詳しく知りたい!
- どんな子どもが家庭内暴力に出やすいの?
- 具体的な対応法を知りたい!
- 相談できる専門機関はどこがあるの?
今まさに、子どもの家庭内暴力でお悩みの方にとって参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。
家庭内暴力とは
まず、家庭内暴力について、その定義を確認します。
家庭内暴力は、家庭内で起こる、家族に対する暴力的な行為や言動のことである。広義には、夫、妻、子供、祖父、祖母など、家族間の暴力・暴言(また、そこからおこる物品・建造物の破壊・破損など)をさす。狭義には、両親、まれには祖父母に向けられる、子供や孫からの暴力・危害・虐待・暴言・罵詈雑言(および家庭内の物品・建造物などの破壊・破損の行為)をいう。
コトバンクによる
家庭内暴力といっても、親による暴力や子どもによる暴力などさまざまなものがあります。
また、家族に対する直接的な暴力だけでなく、物や家に対する破損行為も含まれます。
この記事では、家庭内暴力を「子どもによる家族に対する暴力的な行為」に限定して使っていきます。
家庭内暴力の推移
子どもによる家庭内暴力が増加傾向にあることについて確認していきます。
次の図は、小学生以上の子どもによる家庭内暴力の認知件数の推移です。
この図のとおり、子どもによる家庭内暴力は年々増加していて、その中でも特に小学生や中学生による家庭内暴力は増加傾向にあります。
警察などの広報により、子どもの暴力について、親が警察に相談しやすくなっていることが考えられています。
また、個人的には、「衝動傾向のある子ども」「社会に適応できないことによるイライラなどを家族にぶつけやすい子ども」が増えていることも原因の一つだと思われます。
家庭内暴力に及びやすい子どもの特徴については、次で説明します!
令和元年における家庭内暴力の被害者を同居している家族に限って見ると、母親が2,187件と最も多く、父親が403件、兄弟姉妹が329件、同居の親族が192件の順でした(警察庁生活安全局の資料による)。
家庭内暴力に及びやすい子どもの特徴
では、どのような子どもが家庭内暴力に及びやすいと思いますか?
「キレやすい子」「衝動的な子」「乱暴な子」などいろいろな特徴が考えられると思います。
そうした子どもの特徴を理解するために役に立つのが、「心理アセスメント」の考え方です。
心理アセスメントとは、人の悩みや問題行動の意味を理解して原因を特定し、治療や対処法を導き出すものです。
今回は、心理アセスメントの基本である「生物心理社会モデル」の考え方を参考にして、①生物、②心理、③社会の3つの領域別に説明していきます。
衝動性の高さ(生物面)
1つ目は、生物面として、脳機能の影響として考えられるのが、AD/HDなどに代表される「衝動性」の高さです。
衝動性が高い子どもは、ちょっとした刺激を受けただけで、自分の欲求や感情を抑えられずに、衝動的に粗暴な言動に及んでしまいがちです。
こうした子どもは、小さい頃から衝動性が高く、親や先生など周りの大人に注意されてばかりで、内面に怒りやイライラなどの感情をため込んでいることが少なくありません。
これは「発達障害の二次障害」の症状の一つとして、攻撃的な行動に及びやすくなっている可能性が考えられます。
発達障害の二次障害が反抗的な行動につながることについて解説した記事がありますので、併せてお読みください。
プライドの高さとその裏にある自信の乏しさ(心理面)
2つ目は、心理面として、プライドの高さとその裏にある自信の乏しさについて説明していきます。
家庭内暴力に及びやすい子どもは、プライドが高く、わがままで、自己中心的な傾向があります。
小さい頃から、親からの過干渉や過保護のもとで育てられてきていて、自分で考えて判断して行動することがなく、失敗しても親に尻拭いしてきてもらってきていて、精神的に未熟なまま成長していきます。
こうした子どもは、中学生や高校生になっても、同年代の仲間と対等な関係を築けません。
また、学校などで自分の思うような評価を得ることができず、自信を低下させています。
家庭内で培われてきたプライドの高さと、家庭外でうまくいかないことによる自信のなさがある中、いわば親に対する当てつけとして、親に対して攻撃的な行動に及びます。
学校や社会での不適応(社会面)
3つ目は、社会面として、学校や社会生活における不適応さについて説明していきます。
子どもは、学校や友人関係などで自分の思うような生活を送ることができていないと感じると、イライラや不満といった感情を抱くようになります。
そうした状況において、子どもは、学校や社会で生じたイライラや不満といった感情を親にぶつけることで解消しようとします。
また、中学生や高校生くらいになると、「自分とは何者なのか?」という発達課題にぶつかるようになり、気分が不安定になりがちにもなります。
子どもの発達課題については、次の記事を参考にお読みください。
家庭内暴力の対処法
子どもが家庭内暴力に及んだときの対処法について説明していきます。
子どもの家庭内暴力が、思春期特有のいわゆる「第二次反抗期」だけが原因であれば、その時期が過ぎれば落ち着いていく可能性は高いでしょう。
しかし、子どもが家庭内暴力を繰り返したり、その程度がひどい場合には、そのまま放っておくことはできず、親は何らかの対処を取らなければなりません。
そこで、緊急性の高いもの、その場でパッとできること、事前に準備したり、時間をかけて働きかけたりすることなど、家庭内暴力の対処法を説明していきます。
- 家族の安全を確保する
- 警察に通報する
- 家族で役割を決めておく
- 子どもの話を聴く
- 子どもの暴力の原因を考える
- 子どもの学校や社会生活を整える
- 怒りのコントロールをできるようにする
- 子どものストレスを解消させる
- 暴力が周囲に与える意味を伝える
- 精神障害や発達障害の可能性を考える
全部で10個あります。私が相談室で実際にアドバイスしていることを中心に紹介していきます!
家族の安全を確保する
何より大切なのは、家族の身の安全です。
子どもの暴力から、家族の身の安全を確保するために、鍵の掛けられる部屋に逃げ込む、家の外で避難できる場所などを決めておくことが大切です。
また、子ども自身の身の安全を図ることも忘れてはいけません。
壊れて危険な家電や家具は極力少なくする、窓ガラスには飛散防止フィルムなどを貼るといった対策をしておくことも大切です。
警察に通報する
子どもが自宅で大暴れしたり、家族に暴力を振るったりして、家族が身の危険を感じるようなときには、子どものためにもためらわずに警察に通報してください。
もしも警察を呼んだら大ごとになってしまうし、もしかしたら子どもが逮捕されてしまうのではないかと心配でしょう。
もしかすると、一番最後の手段と思っている方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、子どもにそれ以上の暴力を振るわせないため、また、子どもに責任の大きさを実感させるためにも、警察官による早期の介入が必要です。
どうしても警察に通報したくないとき、もしかしたらそれは子どものためというよりは、親自身の心理的な抵抗が原因の場合があります。
親が世間体を気にしている、親自身が子育てが悪いと責めらせるのではないか不安であるといった思いがどこかにないでしょうか?
親のためではなく、子どものことを考えて行動しましょう!
家族で役割を決めておく
子どもが暴れるときの感情は「怒り」です。
「怒り」の感情は、一時的なものであって、長引くことはほとんどありません。
その一時的な行動に対して、家族が自分たちの身の安全を守るために、誰がどのように行動するか事前に決めておきましょう。
先ほど記載したように、安全確保のための避難場所を決めておきましょう。
また、誰が警察に通報するのか、誰が近所の誰に助けを求めるのかなど、とっさにやらなければならないことや役割を決めておくとよいでしょう。
子どもの話を聴く
子どもが落ち着いた状態にいるのであれば、じっくりと耳を傾けて話を聞きましょう。
子どもは、自分の思いや考えを素直に話してくれるとは限りません。
それでも、親が子どもの話を聴くという雰囲気や態度を示すことが大切です。
もしも子どもが話をしてくれそうであれば、親は子どもの話に真剣に耳を傾けて、子どもの気持ちを理解することに努めましょう。
親だと、「それは違うでしょ!」とか「こうした方がいい!」などと、思わず注意や助言をしたくなってしまうかもしれません。
そうした言葉は、大抵の場合子どもの不快感情を引き起こすばかりで効果的ではありません。
こうした思わず口に出してしまうことを「間違い指摘反射」と言い、親が子どもの話を聴くときに注意しなければならないことの一つです。
「間違い指摘反射」については、次の記事でも紹介していますので、併せてご覧ください。
子どもの暴力の原因を考える
もしも子どもから話を聴くことができたのであれば、なぜ子どもが家庭内暴力に及ぶのか、その原因を考えましょう。
子どもが、何に対して怒りの感情を抱いているのか、ストレスの原因は何か、どうして家庭内暴力として現れているのかがわかれば、具体的な対処法が見つかるはずです。
とはいえ、家庭内暴力につながるメカニズムは、子どもによって大きく異なり、簡単に答えがわかるものではありません。
専門家のアドバイスを得ることが、早期の問題解決につながることがあります。
相談機関については、下で説明します。
オンラインカウンセリングでも心理の専門家にアドバイスを受けることができます。
子どもの学校や社会生活を整える
子どもが家庭内暴力に及ぶ背景には、日常生活で生じているイライラが隠れていることがあります。
学校生活や社会生活がうまくいっていなければ、その問題の解決を図ることを試みましょう。
とはいえ、こうした問題は簡単に改善できるものではなく、家族で対応できることは限られているでしょう。
それでも、家族が子どものために考えてどうにか対処しようとしてくれているというメッセージにはなります。
子どもは、親に心配されている、見捨てられていない、守ってくれているということがわかれば、少し気持ちが和らぎ、暴力的な行動は減っていくでしょう。
学校に通っているお子さんであれば、スクールカウンセラーを活用することを検討してください。
怒りのコントロールをできるようにする
「アンガーマネジメント」という言葉はご存知でしょうか?
アンガーマネジメントとは、怒りなどの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングのことを指します。
怒りの感情は暴力に直接結びつきやすいことから、そうした怒りの感情をコントロールする力を養う必要があります。
アンガーマネジメントには、怒りと付き合うための方法がいくつもあり、子どもに合った方法を見つけるせることが望まれます。
次の記事で具体的な方法を紹介していますので、併せてお読みください。
子どものストレスを解消させる
子どものストレスが暴力の原因になっているようであれば、適切な方法で解消できるように方向付けましょう。
子どもが好きなことで簡単にできるものや継続できるものを見つけさせたいところです。
特に、思春期の子どもは欲求や感情が高まりやすく、そうした欲求や感情を運動で解消することが理想的です。
部活動やクラブ活動でも良いですし、近所をランニングしたり、自宅で筋トレやストレッチをしたりすることもおすすめです。
運動以外にも、子どもの好きなことをさせて良いのですが、例えばスマホのSNSやゲームなどについては、時間を決めずにやり過ぎてしまうと、「スマホ依存」などの別の問題が生じてしまうので注意が必要です。
次の記事で依存について説明していますので、併せてご覧ください。
どのようなお子さんでも、自宅で気軽に行えるストレス解消方法としては「マインドフルネス」もおすすめです。
暴力が周囲に与える意味を伝える
暴力がなぜいけないことなのかといったことをきちんと言葉にして説明することも大切です。
子どもによっては、暴力がいかに人を傷つけるのか理解できていない子がいます。
子どもが落ち着いているときを見計らって、暴力が家族の身体を傷つけるだけでなく、不安や恐怖などの感情を与えて、心に傷を負わせる行為であることを伝えましょう。
ただし、子どもが家族に対して怒りや不満を抱いているとすると、家族が伝えるよりも、第三者に説明してもらうことが適切です。
親戚や学校の先生など、子どもにとって怒りや不満の対象となっていない人に話してもらうように頼むことが考えられます。
また、より教育的な意味合いを持たせるのであれば、専門機関の職員による指導を依頼することもよいでしょう。
精神障害や発達障害の可能性を考える
具体的な対処法の最後になりますが、もしも子どもの家庭内暴力が続いていたり、その程度が激しかったりする場合には、何らかの精神障害を疑う視点も大切です。
思春期に好発する精神障害のうち、暴力につながりやすいものとしては、統合失調症(妄想や幻覚など)、高次脳機能障害(病気や事故で脳に障害が生じて情動制御が困難になる)などがあります。
また、上記の「家庭内暴力につながる子どもの特徴」でも触れましたが、AD /HDなどの発達障害の二次障害の影響の可能性もあります。
精神障害や発達障害の可能性が考えられるのであれば、次に説明する相談機関に速やかに連絡しましょう。
相談機関
最後に、子どもの家庭内暴力に悩む親にとって、頼りになる相談機関を紹介します。
家庭内のことなので、あまり外の人に相談したくないとか、子どもの怒りを買いそうで怖いという気持ちはすごく分かります。
しかし、親として守るべきものは、家族の身の安全ですし、その暴力を振るってしまう子どもの自身です。
最近では、子どもによる非行の件数が減少していることもあって、以前よりも丁寧に対応してくれるところが増えてきました。
今回紹介するのは、主に公的機関の相談窓口です。
守秘義務があって情報が外に漏れる心配はありませんし、どの機関も無料で相談に乗ってくれます。
たとえ、子どもを連れていかなくても、親だけで相談に乗ってくれますし、電話でも対応してくれるところもありますので、まずは電話をしてみることをお勧めします。
警察署(生活安全課)
各都道府県警には、地域別の警察署があり、そこには生活安全課という非行少年や子どもによる問題行動を担当している部署があります。
警察署には、緊急時の通報や警察官による厳しい指導などをイメージされる方が多いかもしれません。
生活安全課には、「少年補導専門官」や「少年補導員」(都道府県によって名称は異なる)といった、少年の心理や少年法の知識を専門的に有した警察職員が所属しています。
少年補導専門官らは、社会内にいる子どもに対して継続的な指導をしてくれたり、親の相談に乗ってくれたりします。
また、社会適応力を伸ばすために、地域のボランティア活動に参加する機会を設けてくれたり、学生ボランティアによる学習支援をしてくれたりもします。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、各都道府県に設置されています。
地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進から、社会復帰の促進、自立と社会経済活動への参加の促進のための援助まで、相談内容は広範囲にわたっています。
相談対象に年齢制限はありません。
もしも、家庭内暴力の背景に、精神障害や発達障害の可能性が少しでもあると感じる場合には、まずは精神保健福祉センターに電話をしてみましょう。
精神保健福祉センターで直接相談に応じることができなくても、その子の症状にあった児童精神科や専門機関を紹介してくれます。
児童相談所
児童相談所は、各都道府県や政令指定都市に設置されています。
親による児童虐待や子どもの発達の遅れなどの相談に応じてくれるイメージがあるかもしれませんが、子どもの問題行動についての相談にも応じてくれます。
18歳未満の子どもについて対象としてくれています。
ただ、最近は児童虐待の相談が増加傾向にあって、子どもの問題行動の相談については、なかなかすぐに対応できないケースも増えているようです。
そうした場合には、次の法務少年支援センターがお勧めです。
法務少年支援センター
法務少年支援センターは、法務省管轄の機関です。
主に県庁所在地にある少年鑑別所に併設されていて、子どもの問題行動についての相談に応じてくれます。
少年鑑別所の心理技官や法務教官が担当することになります。
心理技官が、親や子どもと面接や心理検査をして問題行動の原因を特定して、適切な対処法を助言してくれます。
そして、法務教官が、直接子どもと関わる中で、その子にとって必要な教育や助言してくれます。
少年非行の専門家に相談することができ、直接的な指導を期待することもできるため、一番お勧めです。
おすすめのオンラインカウンセリング
家庭内暴力のことでお悩みであれば、オンラインカウンセリングを検討してみても良いかもしれません。
他人に相談することに多くの人は抵抗がありますが、私のブログをお読みになっていただいている方は、悩みを解決するために一歩進むことのできる方です。
実際のカウンセリングルームや精神科病院などにいくのは勇気がいりますし、家族の理解も得にくいと思いますので、そうした方には「オンラインカウンセリング」をおすすめしています。
ランキング形式で紹介している記事があるので参考にしてください。
まとめ
今回は,暴力を振るう子どもの特徴と対処法について説明してきました。
子どもが家庭内暴力に及ぶと、不安になって混乱してしまうかもしれませんが、今回ご紹介した内容をきちんと頭に入れておくことで、いざというときに適切な対処をとることができるようになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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