この記事では、
子どもや親のコミュニケーション能力を鍛える4つの方法
について説明していきます。
子どもが友だちになかなか話しかけられないのを見ると、「もっと自分から話しかけて仲良く遊んだらいいのに!」と心配になることがあるでしょう。
しかし、振り返ってみると、親自身がコミュニケーション能力に自信がなく、人付き合いが苦手ということも少なくありません。
そうした場合、親自身がコミュニケーション能力を鍛えることで、自然と子どものコミュニケーション能力を成長させる働き掛けができるようになります。
そこで、今回は、
- そもそもコミュニケーションとはどんな意味?
- コミュニケーション能力を鍛える方法を知りたい!
- 子どものコミュニケーション能力を高める接し方を教えて
といった疑問や悩みに答えていきます。
親自身がコミュニケーション能力を鍛えて、子どものコミュ力を育てていきましょう!
コミュニケーション能力とは
最初に、コミュニケーション能力とは具体的にどのように定義されているのか確認します。
国語辞典やウィキペディアには次のように記載されています。
①情報が送り手から受け手につたわること、②意思疎通
三省堂国語辞典
社会生活を営む人間の間での、身振りや音声、匂い等による情報の伝達。辞書的な定義としては、人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達などと定義づけられる。
ウィキペディア
コミュニケーションは、一方的に自分の考えや気持ちを「伝える」だけでは成り立たず、相手の話を「聴く」ことも重要です。
実際に、身近にいるコミュニケーション能力の高い人を想像してみてください。
きっと、その人は単におしゃべりな人ではなく、相手の話を聴くことも上手ではないでしょうか。
伝える力と聴く力の両方がコミュニケーション能力の基礎と言えます。
コミュニケーション能力が低い人の特徴
次に、コミュニケーション能力が低い人の特徴について触れておきます。
自分自身がコミュニケーションが苦手だなと思っている人は、どれが当てはまるか考えながら読んでみてください。
耳が痛く感じる人もいるかもしれませんが、自分の特徴を知っておくことは大切なことです。
自分の気持ちや考えを言葉にすることが苦手
1つ目は、自分の気持ちや考えを言葉にすることが苦手な点です。
コミュニケーション能力の一つとして「伝える」力は大切です。
挨拶や雑談程度であればさほど苦労なく話せる人でも、自分の気持ちや考えを言葉にできなければ、相手と会話を続けることは難しいでしょう。
自分の気持ちや考えを言葉にできない理由としては、①自分の内面に目を向けるのが苦手なこと、②言葉が少ないことの2点が挙げられます。
①については、今、自分が何を考えて、どんな感情になっているのかということを意識する力が不足しているということです。
特に、コミュニケーションを円滑にするためには、自分の感情に気付いて、その感情を大切に扱いつつ、言葉にして相手に伝える力が重要です。
自分の感情に向き合う方法については、次の記事を参考にしてください。
②については、小さい頃から他者との会話が少なかったり、本を読む習慣がなかったりして、自分の気持ちや考えを表現できる言葉の数が少ないということです。
例えば、「怒り」という感情の言葉がありますが、これに類似する又はこれよりも程度が強い言葉を並べてみましょう。
いら立ち、立腹、憤り、激怒、激昂、憤怒、激憤・・・
似たような言葉でも、ちょっとだけニュアンスが違ったりします。
日本語は考えや気持ちを表す言葉がたくさんあって、感情の機微を言葉で表現することができます。
しかし、小さい頃から親や身近な人との会話で使わなかったり、本を読む機会が少なかったりすると、なかなか言葉を増やしていくことができません。
こうした人たちは、自分の気持ちや考えを言葉にすることが苦手です。
自分に自信がない
2つ目は、自分に自信がないタイプです。
自分に自信がないと、相手や周囲の目を気にしすぎてしまいます。
すると、自分の言いたいことがあっても、「今は言わないほうがいいかな。」とか、「相手に失礼かもしれないな。」などと考えがちです。
相手に気を遣いすぎてしまって、会話をすることを諦めてしまうことも少なくありません。
他者を信用していない
3つ目は、他者を信用していないタイプです。
自分の本当の考えや気持ちを伝えることをせず、相手との会話の際にはできる限り表面的な会話で済ませようとしがちです。
警戒心が強く、相手のことを疑いの目で見やすい人は、そもそも会話をすることすら避けようとするかもしれません。
こうした人たちの中には、過去に身近な人から虐待に遭ったり、学校などでいじめの被害を受けたりした経験があることがいると考えられています。
- 他者を信用できないから、人との会話を避ける。
- 人との会話を避けると人の気持ちがわからなくなる。
- 人の気持ちがわからなくなると、一層人を信用できなくなる。
負のスパイラルに陥っていきます。
他者の気持ちを理解するのが苦手
4つ目は、他者の気持ちを理解するのが苦手なタイプです。
目の前の相手が何を考えて、どんな気持ちなのか想像することができないと、円滑な会話のやり取りは続きません。
また、相手のことを考えられないと、自分ばかりが一方的に話をしてしまって、相手に不快な感情を抱かせてしまうこともあります。
「他者の気持ちを理解することが苦手」というのは、発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)の特徴の一つでもあります。
自閉スペクトラム症の特徴については、次の記事を参考にしてください。
コミュニケーション能力を鍛える方法
コミュニケーション能力を鍛える方法について説明していきます。
コミュニケーション能力の基本としては、自分の気持ちや考えを「伝える」力と、相手の話を「聴く」力が重要です。
それに加えて、上手なコミュニケーションを取るためには、会話の中で「質問する」、「切り出す、切り返す」といった力も大切です。
この4つの力については、戸田久実先生の書籍「一瞬でいい関係を築くコミュニケーション大百科」を参考にしています。
その書籍には、「伝える」「聴く」「質問する」「切り出す、切り返す」について、たくさんのコミュニケーション能力を鍛えるためのコツが載っています。
その中でも、より身近で使いやすそうなものを抜粋して、少しアレンジを加えながら紹介していきます。
同書では、4つの他、「大勢の前で話す」「仕事以外で会話する」といったコミュニケーションのコツについても詳しく説明されています。
伝える
1つ目の方法は「伝える」に関することです。
ここでは、「言いたい「核」を明確にする」、「「〜してはダメ」ではなく、「〜するとよい」が相手をその気にさせる」の二つを紹介します。
まずは、「言いたい「核」を明確にする」についてです。
相手に伝わる言い方ができている人は、言葉にする前に「何をわかってほしいのか」をはっきりさせています。
言いにくいからといって遠回しに伝えようとすると、自分でも何をいっているのかすらわからなくなってしまいます。
事前に「これをわかってもらいたい」ということを明確にしておきましょう。
- 具体例:毎日長時間スマホゲームをする夫(妻)に対して
- ×:ゲームのやりすぎで睡眠不足になっている気がする。無理はしないでほしい。
- ○:ゲームが気晴らしになるかもしれないけど、睡眠不足になるからゲームは23時までにしてほしい。その時間になったら私も声をかけるね。
しっかり言いたいことの「核」を言葉にしましょう。
次に、「「〜してはダメ」ではなく、「〜するとよい」が相手をその気にさせる」です。
相手にいい動きをしてほしいとき、「〜してはダメ」とだけ言われると、否定された気持ちになってしまいます。
反対に「〜するとよい!」と言われると、そう動けばいいのかと、相手も受け取りやすくなります。
自分よりも目下の人に伝えるときには、この言い方を心掛けるとよいでしょう。
その方が、相手の行動が変わりやすくなります。
聴く
2つ目の方法は「聴く」に関することです。
ここでは、「話の乗っ取りは相手を不快にさせる」、「「理解した」とわかるように反応を言葉にする」の二つを紹介します。
まずは、「話の乗っ取りは相手を不快にさせる」です。
話を聞いているときにやってはいけないのは、話を乗っ取って、自分の話を始めることです。
相手がまだ話を終えていないところで、「実は私もそれでね!こんなことがあって!」と話し始めると、相手は消化不良な気持ちになってしまいます。
話の乗っ取りを常習化していると、本人は気持ちよくても、その場に居合わせた人が大迷惑します。
人は自分の話を聴いてくれる相手を好きになるものです。
もっと信頼されたいと思ったら、いつの間にか話の乗っ取りをしていないか、振り返ってみましょう。
「聴く」という漢字は、相手の声をただ「聞く」のではなく、気持ちや想いを汲み取るという意味が含まれています。
次は、「「理解した」とわかるように反応を言葉にする」です。
相手の話を聴いたときには、その話の内容を理解できたということを、言葉や態度で反応しましょう。
具体的には、「わかった」「そうなんだね」と言ったり、うなずいたり、納得したような表情をしたりすることで、相手に「理解しましたよ」というメッセージを送ります。
相手が「自分の話をわかってもらえた」という気持ちになってくれれば、自分の話も聴いてくれるようになり、会話が深まっていきます。
質問する
3つ目の方法は「質問する」に関することです。
「伝える」「聴く」のコミュニケーションに加えて、相手に質問をすることでコミュニケーションの質が高まり、言葉のキャッチボールも続いていくことになります。
ここでは、「「〜しないですよね?」疑いの質問は、相手を不快にさせる」、「口数が少ない人は二者択一の質問をする」の二つを紹介します。
まずは、「「〜しないですよね?」疑いの質問は、相手を不快にさせる」です。
疑いの問いは、相手を不快にさせます。
今までにも前例があって、また繰り返すおそれのある相手の場合、念を押したくて、ついそんな言い方をしてしまうこともあるかもしれません。
でも、信用されていないと思ったら、誰でも嫌な気持ちになるものです。
念押ししたいときには、「〜しないですよね?」といった言い方ではなく、「〜のようにお願いします。」と言いましょう。
- 具体例:風呂掃除を担当する夫(妻)に頼む。
- ×まさか、風呂掃除しないなんて言わないよね?
- ○風呂掃除の約束は守ってほしいので、お願いね。
次は、「口数が少ない人へは二者択一の質問をする」です。
皆さんの周りに口数が少なく、自分から話さないタイプの人はいませんか?
そうした人の場合、特に初対面では話を振りづらいこともあるでしょう。
そんなときにおすすめなのは、相手が答えやすいように、まずは「はい」か「いいえ」で答えられる質問にすることです。
「はい」か「いいえ」で答えられる質問で会話ができると、相手も話しやすくなっていくので、少しずつ話題を広げていきましょう。
切り出す、切り返す
4つ目の方法は「切り出す、切り返す」に関することです。
相手との会話の中であまり心地よい内容でない場合には、会話のある部分を適切に切り出してみたり、上手に切り返したりできるようになることが理想的です。
ここでは、「質問の「なぜ?」を詰問の「なぜ!?」にしない」、「相手の間違いを突っつかないで言い分を切り出す」の二つを紹介します。
まずは、「質問の「なぜ?」を詰問の「なぜ!?」にしない」です。
何か疑問が湧いてくるとき、「なぜ?」「何で?」と問いかけることはよくあるはずです。
ただ、人に対して「なぜ?」と投げかけるときには注意が必要です
受け手が責められていると受け取ってしまうこともあるからです。
「なぜ、こういうことになったの?」と3回立て続けに言われると、相手は思考停止に陥ってしまいます。
- 具体例:理由を尋ねたいとき
- ×なぜ期限を守れないの?
- ○期限が守れないことが続いているけど、理由があれば教えてくれる?
次は、「相手の間違いを突っつかないで言い分を切り出す」です。
相手が間違えたり勘違いしたりしている場合、相手の間違いをずばりと指摘するのはやめた方がいいでしょう。
プライドを傷つけたり、「恥をかかされた」と不快な想いをさせることになってしまうからです。
ただ、正しく伝え直すことをするだけにとどめます。
- 具体例:相手が仕事を間違えているとき
- ×それって、間違っていますよね?
- ○そのことについては、一人でやらないで、みんな一緒に話しながらやりましょう。
上手に言い換えるのがポイントです。
子どものコミュニケーション能力を高めるための接し方
最後に、子どものコミュニケーション能力を高めるための接し方についてです。
親自身がコミュニケーション能力を鍛える努力をしていれば、自然と子どものコミュニケーション能力も伸びていきます。
ここでは親が子どもと会話をするときに、特に気を付けた方が良い点について説明していきます。
親の気持ちを伝える
1つ目は、親の気持ちを伝えることです。
親が自分の考えや気持ち、内面で生じている感情を言葉にして子どもの伝えると、子どもは自分の気持ちを言葉にして伝える方法を身に付けていきます。
また、親が自分自身の気持ちを素直に表現するということは、子ども自身にとっても「自分の気持ちを表現していいんだ。」という安心感にもつながります。
子どもの話に耳を傾ける
2つ目は、子どもの話に耳を傾けることです。
子どもは、いつだって親に自分の話を聴いてもらいたいものです。
学校の出来事、友達と遊んだこと、勉強が大変だったことなど、話したいことが山ほどあります。
子どもにしっかりと向き合って話を聴いてあげましょう。
子どもは、親が真剣に聴いてくれるといった体験を重ねる中で、自分の考えや気持ちを言葉にしてくれるようになります。
私は、コミュニケーション能力のためには、この「聴く」力が一番大切だと考えています。
子どもの話に興味を持って質問する
3つ目は、子どもの話に興味を持って質問をすることです。
子どもに質問をするということは、親が「子どもに対して気にかけている」、「どんなことでも知りたい」というメッセージになります。
すると、子どもは自分のことに関心を持ってくれていると感じて、うれしくなってたくさん話をしてくれるようになります。
先ほど説明したように、質問する際には、「なんで?」という否定的な質問は避けましょう。
また、話を割り込んで質問するようなことも避けましょう。
子どもが答えやすいタイミングで、答えやすい質問をしてあげるのがコツです。
親が質問をして、子どもが答えるというやりとりを通して、言葉のキャッチボールに慣れていき、自分で考えながら話をするという習慣がついていきます。
子どもの感情的な行動を受け止めて言葉にして返す
4つ目は、子どもの感情的な行動を受け止めて言葉にして返すことです。
子どもは、ちょっとしたことで泣いたり怒ったりと、その時々の感情が行動につながりやすいところがあります。
親は、子どもの感情的な行動に左右されず、どっしりと構えて子どもが落ち着くまでそばにいてあげましょう。
子どもが少し落ち着いたところで、「今のは悔しかったね。」とか「イライラして嫌だったんだね。」など、子どもの気持ちや感情を言語化して伝えることが大切です。
子どもは、自分のその時の心の動きと、親に教えてもらった感情の言葉が結び付いて、自分の感情を言語化できるようになっていきます。
これが、感情をコントロールする力にもつながっていきます。
子どもの感情を育てる方法については、次の記事を参考にしてください。
おすすめのコミュニケーション教室
コミュニケーションスキルを伸ばしたい人は、専門的なトレーニングを受けることのできるコミュニケーション教室に通うことも良いと思います。
オンラインのコミュニケーション教室も増えてきているので、自宅で気軽にトレーニングを受けることができます。
おすすめのコミュニケーション教室について、次の記事で紹介しているので参考にしてください。
まとめ
今回は、 コミュニケーション能力を鍛える4つの方法について説明してきました。
子どものコミュニケーション能力を鍛えるためにも、まずは親が自分自身のコミュニケーション能力を鍛えていきましょう!
すると、親と子どものやり取りを通じて、自然と子どものコミュニケーション能力も高まっていきます。
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までご覧いただきありがとうございました。