「すごいね!」「上手!」「えらいね!」——子どもを褒めるとき、こんな言葉をつい口にしていませんか。褒めて伸ばすことは大切です。でも実は、褒め方によっては、かえって子どものやる気や自信を奪ってしまうことがあります。よかれと思った一言が、逆効果になっているかもしれないのです。
私は公認心理師として、子育てに悩む保護者の方とたくさん向き合ってきました。この記事では、子どもを本当に伸ばす「上手な褒め方」を、3種類の褒め方の違いと具体例を交えながら、やさしくお伝えします。今日から声かけが少し変わる、そんなヒントをお持ち帰りくださいね。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- つい「すごいね」「上手」ばかり言ってしまう方
- 褒めているのに、子どもに響いていない気がする方
- 褒め方の「正解」を知りたい方
- 子どものやる気や自信を、上手に育てたい方
その褒め方、逆効果かも?

まず知っておきたいのが、子どもへの接し方には大きく2つのタイプがある、ということです。
条件付き子育てと、無条件子育て
「条件付き子育て」とは、子どもが望ましい行動をしたときだけ愛情を示し、そうでないときは愛情を引っ込める関わり方です。「100点を取ったら褒める」「できなければ冷たくする」——これを続けると、子どもは「結果を出さないと愛されない」と感じてしまいます。
怖いのは、これが多くの場合、無意識に起きていることです。親に悪気はなくても、「いい子にしていれば優しくされる」という体験の積み重ねが、子どもの心にプレッシャーとして残ることがあります。まずは「自分もやってしまっているかも」と気づくこと。それが、褒め方を見直す出発点になります。
一方の「無条件子育て」は、結果や行動にかかわらず、その子の存在そのものを大切にする関わり方です。目指したいのは、こちらです。褒め方も、この「無条件」の姿勢がベースにあると、子どもの心にすっと届きます。
「甘やかしになるのでは?」と心配になるかもしれませんが、無条件子育ては甘やかしとは違います。できたことは具体的に認め、できなかったことには一緒に向き合う。ただし、その土台に「どんなあなたでも大切」という安心感がある、ということです。この安心があるからこそ、子どもは失敗を恐れず挑戦できます。
安易な「褒めて伸ばす」の落とし穴
「褒めて伸ばす」はよく聞く言葉ですが、ただ褒めればいいわけではありません。褒め方を間違えると、ごほうび欲しさに行動する子や、失敗を怖がる子になってしまうことがあります。大切なのは「褒める回数」ではなく「褒め方の質」なのです。
ゆう褒めるのが悪いのではなく、「どう褒めるか」がカギなんです。
子どもを伸ばす「3種類の褒め方」
褒め方は、大きく3種類に分けられます。それぞれの違いを見ていきましょう。
①おざなり褒め
「すごいね」「上手」「いいね」など、中身のない、うわべだけの褒め方です。手軽ですが、くり返すと子どもには響かなくなります。何がどう良かったのかが伝わらないため、子どもの心には残りにくいのです。忙しいとつい口ぐせのように出てしまいますが、「ながら褒め」になっていないか、ときどき振り返ってみましょう。
②人中心褒め
「頭がいいね」「才能があるね」「優しい子だね」など、その子の能力や性格そのものを褒める方法です。一見よさそうですが、注意が必要です。「頭がいい」と褒められ続けた子は、失敗すると「頭が悪いと思われる」と恐れ、難しいことに挑戦しなくなることがあります。
能力や才能は、子どもにとって「自分では変えられないもの」に感じられます。だからこそ、それを褒められると、「失敗したら、この評価が崩れてしまう」というプレッシャーになりやすいのです。よかれと思った「すごいね」が、実は子どもを守りに入らせてしまう。ここが、褒め方の落とし穴です。
③プロセス褒め(これが正解)
そして目指したいのが、この「プロセス褒め」です。結果ではなく、そこに至るまでの努力・工夫・過程を褒める方法です。「毎日コツコツ練習したね」「いろんな方法を試したね」——過程を認められた子は、失敗を恐れず、挑戦し続ける力を育てていきます。
努力や工夫は、自分の意思で変えられるものです。だからプロセスを褒められた子は、「頑張ればまた認めてもらえる」「工夫すればうまくいく」と感じ、前向きに取り組めます。たとえうまくいかなくても、「やり方を変えてみよう」と立て直せる。プロセス褒めは、子どもに”伸びる考え方”そのものを教えてくれるのです。
褒め方のスキルアップには、ペアレント・トレーニングの知識も役立ちます。


上手な褒め方、3つのポイント


プロセス褒めを実践するために、意識したい3つのポイントをお伝えします。
ポイント1:成果より「プロセス」を褒める
テストの点や勝ち負けといった結果ではなく、そこまでの努力や取り組み方に目を向けましょう。「結果はどうあれ、頑張った過程はちゃんと見ているよ」というメッセージが、子どもの挑戦する心を育てます。
ポイント2:もっと「具体的」に褒める
「すごいね」で終わらせず、何がどう良かったのかを具体的に伝えます。「線からはみ出さずに、ていねいに塗れたね」のように具体的だと、子どもは「ちゃんと見てくれている」と感じ、次への意欲につながります。具体的に褒めるには、日ごろから子どもの様子をよく見ていることが欠かせません。「見ているよ」という関心そのものが、子どもにとって何よりのごほうびなのです。
ポイント3:もっと「質問」する
褒めるだけでなく、問いかけるのも効果的です。「どうやって考えたの?」「どこが一番むずかしかった?」。質問されることで、子どもは自分の頑張りを振り返り、達成感を深めます。会話も広がり、子どもの世界がぐっと見えてきますよ。
質問には、もう一つ良いことがあります。それは、親が評価する側から、一緒に楽しむ側にまわれることです。「教えて」と関心を向けられると、子どもは自分の取り組みに誇りを持てます。褒め言葉が思いつかないときでも、「それ、どうやったの?」と聞くだけで十分。子どもは、自分の頑張りに気づいてもらえたことを、うれしく感じます。
たとえば場面別に見ると、こんなふうになります。字が上手に書けたときは「先週より、とめ・はねが意識できてるね」。お手伝いをしてくれたときは「お皿を運んでくれて、すごく助かったよ」。友達に優しくできたときは「困っている子に気づいて、声をかけられたんだね」。結果や性格でなく、具体的な行動とプロセスを言葉にするのがコツです。
子どもへの声かけに、迷ったときは
「この褒め方で合っているのかな」と迷ったら、専門家に相談すると、その子に合った関わり方が見つかります。オンラインなら、自宅から気軽に話せますよ。
これはあくまで一般化した事例ですが、「テストで100点を取ったときだけ褒めていた」というお母さんがいました。あるとき、点数ではなく「毎日机に向かえていたね」と過程を褒めるようにしたそうです。すると、点数が下がった日でも子どもが落ち込みすぎず、「次はここを頑張る」と前を向けるように。「結果ばかり見ていた自分に気づきました」と話してくれました。褒める場所を少し変えるだけで、子どもの心は変わっていくのですね。
褒め方に迷ったときは
ここまで読んで、「これまでの褒め方、間違っていたかも」と感じた方もいるかもしれません。でも、どうか自分を責めないでくださいね。子どもを褒めてきたこと自体が、愛情の証です。気づいた今日から、少しずつ変えていけば大丈夫です。完璧な褒め方より、あなたが子どもをちゃんと見ているその姿勢が、何より大切です。
褒め方・叱り方についてもっと体系的に学びたい方には、この記事も参考にした次の書籍がおすすめです。具体例が豊富で、今日から実践しやすい一冊です。
なお、褒め方を工夫しても子どもの様子が気になる、関わりに悩んで疲れてしまう——そんなときは、ひとりで抱えず専門家に相談してくださいね。話すだけでも、心が軽くなることがあります。
子育ての悩みを、ひとりで抱えていませんか
子どもへの関わりに迷ったときは、専門家と一緒に整理すると、その子に合ったヒントが見えてきます。気持ちを話すだけでも、心が軽くなりますよ。
まとめ
今日お伝えしたことを、最後に振り返っておきますね。
- 大切なのは褒める回数ではなく「褒め方の質」
- 褒め方には、おざなり褒め・人中心褒め・プロセス褒めの3種類がある
- 目指したいのは、努力や過程を褒める「プロセス褒め」
- ポイントは、プロセスを・具体的に・質問しながら褒めること
- これまでの褒め方を責めず、今日から少しずつ変えれば大丈夫
褒め方を少し変えるだけで、子どもは「見てもらえている」という安心の中で、のびのびと挑戦できるようになります。今日さっそく、お子さんの「頑張っている過程」を一つ見つけて、具体的な言葉にしてみてくださいね。あなたのあたたかいまなざしが、お子さんの一番の力になります。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

