「少し元気になってきたと思ったら、また部屋から出てこなくなった」
不登校の子どもを支えている保護者の方から、こういった声をよく聞きます。一歩進んだと思ったら二歩戻る。その繰り返しに、疲れてしまうのは当然のことです。
でも、その「波」は回復が止まったサインではありません。不登校からの回復は、もともと波を繰り返しながら進むものです。この記事では、回復の5つのプロセスと、それぞれの段階で親がどう関わればいいかを、具体的な言葉かけも含めてお伝えします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもの不登校がいつ終わるのか見えなくて不安な方
- 回復してきたと思ったら揺り戻しがあり、落ち込んでいる方
- 今子どもがどの段階にいるのかを知りたい方
- 段階ごとの声かけや関わり方を具体的に知りたい方
不登校の回復は「波がある」が前提

まず最初にお伝えしたいのは、不登校からの回復は一直線ではないということです。
「3週間ぶりに学校に行けた」「友達と外出できた」という明るいニュースの翌週に、また完全に動けなくなる。これは決して珍しいことではなく、回復プロセスのごく自然な一部です。
回復の波が起きやすいタイミングとして、以下のような場面があります。
📋 揺り戻しが起きやすいタイミング
- 新学期・クラス替えなど環境の変化が起きるとき
- 久しぶりに登校した直後
- テストや行事など、プレッシャーがかかるとき
- 回復してきたと感じて、周囲が少し期待し始めたとき
- 気温・季節の変化など、体調が揺れやすいとき
揺り戻しが起きたとき、「また振り出しに戻った」と感じるのは親として自然な反応です。でも、子どもは振り出しに戻ったのではありません。一段階前に戻っているように見えても、それまで積み上げてきた回復の土台は消えていません。
ゆう揺り戻しを「失敗」ではなく「充電中」と捉えると、少し気持ちが楽になることがあります。
不登校の回復プロセス|5つの段階と子どもの状態
回復のプロセスは、おおむね以下の5つの段階をたどることが多いです。ただし、順番通りに進むとは限らず、行ったり来たりしながら進んでいくのが一般的です。
段階① 消耗期|心も体も限界の状態
子どもの様子:頭痛・腹痛など身体症状が出る。朝になると動けない。泣いたり怒ったりと感情が不安定になる。「学校に行かなければ」という気持ちと「行けない」という現実の間で葛藤している。
学校へのエネルギーが完全に枯渇している状態です。この段階では、登校の話を持ち出すことが最も逆効果になります。
段階② 安定期|休むことに慣れてきた状態
子どもの様子:身体症状が落ち着いてくる。ゲームや動画など好きなことに没頭するようになる。昼夜逆転が起きやすい。一見「楽しそう」に見えるが、外には出たがらない。
心がエネルギーを回復している時期です。外から見ると「怠けている」ように見えますが、この段階は回復に不可欠なプロセスです。
段階③ 退屈期|暇を感じ始めた状態
子どもの様子:「暇だ」「何かしたい」という言葉が出てくる。でも何かを始めても続かない。「行く」と言っては直前でやめることが繰り返される(いわゆる「行く行く詐欺」)。
回復の兆しが見えてくる段階です。「やっぱりダメだった」と落胆しやすい時期ですが、「やろうとした」こと自体が回復のサインです。続かなくても、焦らず見守ってください。
段階④ 活動期|外へのエネルギーが出てきた状態
子どもの様子:習い事・フリースクール・外出など、家の外に出られるようになってくる。友達や先生に会うことへの抵抗が薄れる。将来のことを少し話せるようになる。
行動範囲が少しずつ広がる段階です。ただし、まだ不安定さが残っており、プレッシャーをかけると段階③や②に戻ることがあります。
段階⑤ 社会復帰期|自分のペースで動き出す状態
子どもの様子:学校・フリースクール・通信制など、自分に合った場所に通えるようになる。進路や将来について自分なりに考えられるようになる。
「社会復帰=元の学校に戻ること」ではありません。子どもが自分のペースで社会とつながれる場所を見つけることが、この段階のゴールです。
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段階別|親の関わり方と具体的な言葉かけ


それぞれの段階で、親の関わり方は変わってきます。同じ言葉でも、段階によって子どもへの影響がまったく異なります。
段階① 消耗期の関わり方
✅ この段階でのポイント
- 登校・学校の話は一切しない
- 「休んでいいよ」とだけ伝える
- 食事・睡眠など最低限の生活を支える
💬 言葉かけの例
「今日も休んでいいよ。ゆっくりしてね」
「何もしなくていい。ここにいていい」
🚫 この段階でのNG
「いつになったら行けるの?」「少しくらい頑張れないの?」
段階② 安定期の関わり方
✅ この段階でのポイント
- ゲームや動画を頭ごなしに制限しない
- 日常的な会話(食事・天気・好きなこと)を大切にする
- 親自身も情報収集・相談先の把握を進める時期
💬 言葉かけの例
「そのゲーム、どんな感じ?」(内容に関心を示す)
「今日は何食べたい?」(日常の小さな選択を尊重する)
🚫 この段階でのNG
「そんなにゲームばかりして」「少し外に出たら?」と外へ急かす
不登校中のゲームへの向き合い方については、こちらの記事も参考にしてください。


段階③ 退屈期の関わり方
✅ この段階でのポイント
- 「やりたい」という気持ちを否定せず、小さく試せる機会を作る
- 「続かなくていい」という雰囲気を作る
- 「行く行く詐欺」に落ち込まず、やろうとしたこと自体を認める
💬 言葉かけの例
「行けなくても全然いい。行こうと思えただけですごいよ」
「やってみてダメだったら、また休めばいい」
🚫 この段階でのNG
「また言うだけで行かなかった」と失望を見せる
段階④⑤ 活動期・社会復帰期の関わり方
✅ この段階でのポイント
- 子どものペースを尊重し、先回りして決めない
- 元の学校への復帰にこだわらず、多様な選択肢を一緒に考える
- 小さな一歩を具体的に認める
💬 言葉かけの例
「行けたね。それだけで十分だよ」
「どんな場所なら行きやすそう?一緒に考えよう」
🚫 この段階でのNG
「やっと行けた。このまま続けてね」とプレッシャーをかける
「まだ動かない」と感じたときの親の心の持ち方
子どもの回復を待ち続ける日々は、親にとっても本当に消耗します。「私の関わり方が悪いのだろうか」「もっと何かできることがあるのでは」と、自分を責めてしまうこともあるでしょう。
でも、子どもが動き出すかどうかは、親の対応だけで決まるものではありません。子ども自身の内側でエネルギーが回復するのを待つ時間が、どうしても必要です。
💡 「待つ時間」を少し楽にする3つの考え方
- 「何もしていない」のではなく「土台を作っている」……安心できる家がある、食事がある、親がそばにいる。それだけで子どもの回復を支えています
- 回復の速さは「親の頑張り量」とは比例しない……焦って動いても回復が早まるわけではありません。むしろ親が落ち着いていることが子どもの安心につながります
- 親自身もケアされていい……子どもを支えるためにも、あなた自身が誰かに話を聞いてもらう時間を作ってください



「待つ」ことは、何もしていないのではなく、子どもを信じることです。それができているだけで、十分な関わりだと私は思います。
親自身の気持ちの整理や、相談先については、こちらの記事も参考にしてください。


不登校の原因や全体的な理解については、こちらの柱記事もあわせてご覧ください。


まとめ
- 不登校の回復は一直線ではなく、波を繰り返しながら進む
- 揺り戻しは「失敗」ではなく、回復プロセスの自然な一部
- 回復には①消耗期②安定期③退屈期④活動期⑤社会復帰期の5段階がある
- 段階によって親の関わり方・言葉かけは変える必要がある
- 消耗期・安定期は「待つ・そばにいる」、退屈期以降は「小さく試せる機会を作る」
- 社会復帰は元の学校への復帰に限らない。子どものペースを尊重することが大切
回復を待つ日々は、長く感じることがあります。でも、子どもの横にいて、安心できる場所を守り続けているあなたの存在が、回復の一番の土台になっています。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
