「学校に行きなさい」と言っても動けない。泣く、腹痛を訴える、布団から出られない——そんな子どもの様子を見て、「怠けているの?甘えているの?」と感じてしまうことはありませんか。
でも、不登校の子どもの多くに「不安」が深く関わっていることは、研究でも繰り返し示されています。「行きたくない」ではなく「行こうとすると体が動かなくなる」——それが、不安が引き起こす状態です。
この記事では、「学校が怖い」子どもの心の中で何が起きているのかを、心理的な背景から丁寧にほぐしていきます。公認心理師として、また子どもたちの不安と長く向き合ってきた私が、保護者のあなたに伝えたいことをまとめました。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもが「学校が怖い」「行きたくない」と言っているが、理由がよくわからない方
- 「怠け・甘え」なのか「本当に苦しいのか」の区別がつかなくて迷っている方
- 子どもの不安がどこから来ているのか、背景を理解したい方
- 発達特性のある子どもが不登校になり、不安との関係が気になっている方
「行けない」は「行かない」ではない——不安が体を動かなくさせる

まず最初に、一つ大切なことをお伝えさせてください。
不登校の子どもが「学校に行けない」状態は、多くの場合「行くのが面倒」「行く気がない」という状態とは根本的に違います。不安が強いとき、人間の脳と体は「危険から逃げる」モードに入ります。心臓がドキドキする、お腹が痛くなる、足が動かなくなる——これは意志の問題ではなく、体が「ここは危険だ」と判断して起こしている生理的な反応です。
Tekin & Aydın(2022)が発表した子ども・思春期の不登校と不安に関するストレスコーピングレビューでは、不登校と不安障害・抑うつなどの情動的な困難との間に一貫した強い関連があることが、複数の研究を通じて示されています。「不登校=不安が深く関わっている」というのは、今日の研究で広く支持されている見方です。
📌 「行けない」と「行かない」は違う
不安が強い状態では、「行きたい気持ち」があっても体が動かなくなります。
これは怠けや甘えではなく、脳と体が「危険」に反応している状態です。
まずその前提を知ることが、関わり方を変える第一歩になります。
私自身、子どもたちと向き合ってきた経験のなかで、「行きたいのに行けない、自分でもわからない」と泣きながら話してくれた子を何人も見てきました。「怠け」と見えるその子が、実は誰より自分を責め続けていることが多いのです。
ゆう「行けない自分はダメだ」と一番責めているのは、子ども本人のことが多いです。
なぜ学校がここまで怖くなるのか——不安の3つの背景
「学校が怖い」という状態は、一つの原因から来るわけではありません。子どもによって異なりますが、よく見られる背景を3つに整理してみます。
① 学校での傷つき体験が積み重なっている
友人関係のトラブル、先生との関係のこじれ、授業中の失敗体験、いじめや仲間外れ——こういった傷つき体験が積み重なると、「学校=傷つく場所」という記憶が脳に刻まれていきます。すると、学校に近づくだけで不安が自動的に起動するようになります。
本人が「何があったか」をうまく言葉にできないことも多いです。「別に何もない」と言っていても、積み重なった小さな傷つきが原因になっていることがあります。
🔹 これはあくまで一般化した事例ですが——
中学1年生のDさんは、授業中に答えを間違えたときにクラスメートに笑われた経験が何度か重なり、「また笑われるかもしれない」という不安が強くなっていきました。やがて学校の門に近づくだけで体が震えるようになり、「なんで怖いのかわからない」と言いながら泣いていました。本人も理由を説明できないまま不登校になるケースは少なくありません。
② 「失敗してはいけない」というプレッシャーの蓄積
真面目で責任感が強い子どもほど、「うまくできなかったらどうしよう」「みんなに迷惑をかけたらどうしよう」という思考が強くなりやすい傾向があります。完璧にやらなければという内なるプレッシャーが、学校という「評価される場」への不安を高めていきます。
こういった子どもは、外から見ると「しっかりしている」「問題ない」と映ることが多く、不登校になったときに周囲が驚くケースも多いです。
③ 発達特性による感覚・社会的な負荷
発達特性(ASD・ADHDなど)のある子どもにとって、学校という環境は想像以上に多くのエネルギーを必要とします。騒音・においなどの感覚刺激、暗黙のルールの読み取り、複数の指示への対応——こういった負荷が毎日積み重なることで、エネルギーが枯渇し、学校に対する強い不安や回避が生まれることがあります。
⚠️ 発達特性が関わっている場合
発達特性は親御さんの関わり方が原因ではありません。
「もしかして特性があるのかも」と感じたときは、まず専門医への相談が大切です。
特性に合わせた環境調整が、不安の軽減に大きくつながることがあります。


「何がそんなに怖いのか」を一緒に整理してみませんか
子どもの不安の背景を整理するだけでも、関わり方が変わることがあります。
まず親だけでも、オンラインで専門家に話してみてください。
不安が強い子どもに、親がしてほしいこと・避けてほしいこと


「何かしてあげたい」という気持ちはよくわかります。でも、不安が強い状態の子どもには、関わり方によって状態が改善したり、逆に悪化したりすることがあります。
避けてほしい関わり方
⚠️ 不安を強めやすい関わり
・「なんで怖いの?理由を教えて」と繰り返し問い詰める
→ 言語化できない子どもをさらに追い詰めます
・「みんなは行ってるよ」「このままじゃ将来どうなるの」
→ 罪悪感と自己嫌悪を深めます
・「大丈夫、怖くないよ」と不安を打ち消そうとする
→ 「わかってもらえない」という孤独感につながります
・無理に学校に連れていく
→ 「学校=強制・恐怖」という記憶がさらに強化されます
試してほしい関わり方
⭕ 不安を和らげる方向の関わり
・「そっか、怖いんだね」とまず受け取る
→ 「わかってもらえた」という安心が不安を少し和らげます
・理由を聞くより「今どんな感じ?」と感覚を聞く
→ 言語化しやすくなります
・「休んでいいよ」と言った後は、責めない・急かさない
→ 安心できる家が回復の基盤になります
・日常のなかで短い成功体験を積み重ねる
→ 「自分はできる」という感覚が不安への耐性を育てます



「受け取ってもらえた」という経験が、不安の解毒剤になります。
「不安が強い」と感じたとき——専門家への相談の目安
「家での関わり方を変えてみたけれど、なかなか改善しない」「子どもの不安がどんどん強くなっている気がする」——そう感じるときは、専門家への相談を検討してください。
不安の背景には、専門的なアプローチで改善できるものも多くあります。「病気かどうか」を確認するためだけでなく、「今の子どもに合った関わり方を一緒に考えてもらう」という目的でも、専門家は頼れる存在です。
⚠️ こんな状態が続くときは早めに専門家へ
・パニック発作のような症状(過呼吸・震え・強い動悸)が出る
・外出全般が怖くなってきた
・「消えたい」「死にたい」という言葉が出た
・不登校が3か月以上続き、改善の兆しがない
・発達特性が疑われる(まず専門医への相談を)
まずスクールカウンセラー・かかりつけ医・子ども家庭支援センターのいずれかに相談してみてください。
パニック発作のような強い身体症状や、外出全般への強い回避が続く場合は、かかりつけ医を経由して児童精神科・思春期外来への相談が必要になることがあります。診断は医師の領域ですので、「不安障害かどうか」の判断は専門医にゆだねてください。
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 「学校が怖い」「行けない」は怠けや甘えではなく、不安が体を動かなくさせている状態
- 不登校と不安・抑うつなどの情動的な困難との間には、一貫した強い関連がある(Tekin & Aydın, 2022)
- 不安の背景には①傷つき体験の蓄積②「失敗してはいけない」というプレッシャー③発達特性による負荷の3つが多い
- 「なぜ怖いの?」と問い詰めることや「大丈夫だよ」と打ち消すことは、不安をさらに強めやすい
- まず「そっか、怖いんだね」と受け取ることが、不安を和らげる最初の一歩
- パニック様症状・外出全般への回避・3か月以上の改善なしは専門家への相談のサイン
- 診断は医師の領域。「不安障害かどうか」の判断は専門医にゆだねる
子どもが「学校が怖い」と言えたとき、それはとても大きな一歩です。言葉にするだけのエネルギーを使って、あなたに伝えようとしているのです。その言葉をまず「そうなんだね」と受け取ることから、一緒に始めてみてください。
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子どもの不安を、一人で抱え込まないでください
「どう関わればいいかわからない」という親自身の不安も、話してみると整理されることがあります。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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