WISCの結果で学習障害がわかる?プロフィール傾向を公認心理師が解説

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「読み書きに時間がかかる」「計算だけが極端に苦手」——そんなお子さんの様子から、学習障害(LD)ではないかと感じる保護者の方は少なくありません。

WISCの結果を見て、その手がかりを探そうとする方もいらっしゃると思います。ですが、その見方には注意が必要です。

この記事では、学習障害のWISCプロフィールについて研究で分かっていること、そしてその限界を、公認心理師の私が根拠とともにお伝えします。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • WISCの結果を見て「この子は学習障害では」と感じた方
  • 読み書きや計算だけが極端に苦手なお子さんの様子が気になる方
  • 学習障害のWISCプロフィールについて、正確な情報を知りたい方
  • ネットの情報だけで判断することに不安を感じている方
目次

結論:WISCの結果だけでは、学習障害かどうかはわかりません

ポイント

先に結論をお伝えします。WISCの結果だけで、お子さんが学習障害(LD)かどうかを判断することはできません。「特定の指標が低いから」という見方だけで、学習障害と決めつけることはできないのです。

WISCはあくまで知能検査であり、学習障害の診断を目的とした検査ではありません。学習障害の診断は、読み書きや計算などの学習到達度を測る検査、生育歴、学校での様子など、幅広い情報をもとに医師や専門家が総合的に判断します。

とはいえ、WISCの結果を見て「この子は学習障害でしょうか」と感じる保護者の方は少なくありません。この記事では、研究で報告されている学習障害のWISCプロフィールの傾向を、根拠とともに丁寧にご紹介します。

ゆう ゆう
研究の傾向は、診断の代わりにはなりません

学習障害は、そもそも「知能」の問題ではありません

学習障害(LD、医学的には「限局性学習症」)には、ASDやADHDとは異なる、大きな特徴があります。知的な能力の全体的な低さではなく、「知的な能力に対して、特定の学習領域だけが著しく低い」という、能力と成績のズレによって定義されるという点です。

読む、書く、計算するといった特定の学習面だけに著しい困難が見られる場合に、学習障害の可能性が検討されます。全体的な知的能力の高さ・低さそのものは、学習障害の有無を直接決めるものではありません。

実は、この性質のために「学習障害に特有のWISCの結果パターンは、理論上存在しえない」という指摘をする専門家もいます。学習障害は、知能の測定値そのものではなく、知能と学習到達度との「差」によって定義される概念だからです。

学習障害は、IQの高い・低いで決まるものではありません。

とはいえ、実際の臨床データを見ると、学習障害のある子どもたちに、比較的よく見られる傾向がいくつか報告されています。次の章で、具体的な研究をご紹介します。

研究でわかっている代表的な傾向

プロセス

比較的よく報告されている傾向を、3つに分けてご紹介します。あくまで「集団としての傾向」であり、目の前のお子さんに当てはまるとは限らない点に注意してお読みください。

①GAI(一般知的能力)とCPI(認知熟達度)の差

イタリアで行われた研究では、学習障害(SLD)のある子ども172名と、そうでない子ども74名のWISC-Ⅳのデータが比較されました。

その結果、ある特徴的な差が見られました。一般知的能力指標(GAI)が、認知熟達度指標(CPI)より高いという差です。GAIは言語理解と知覚推理を、CPIはワーキングメモリーと処理速度を組み合わせた指標です。

つまり、「考える力」自体は保たれているのに、「情報を処理し、こなしていく力」がそれに追いついていない、という形の凸凹が見られやすいということです。

出典
Poletti, M. (2016). WISC-IV Intellectual Profiles in Italian Children With Specific Learning Disorder and Related Impairments in Reading, Written Expression, and Mathematics. Journal of Learning Disabilities, 49(3), 320-335.

②特定の下位検査が低くなりやすい傾向

同じ研究では、下位検査ごとの傾向も報告されています。「類似」(言葉の共通点を見つける課題)、「数唱」(数字を覚えて答える課題)などです。「語音整列」(数字と仮名を並べ替える課題)、「符号」(記号を書き写す課題)も含め、これらの成績が学習障害のある子どもたちで低くなりやすいことが示されました。

これらの下位検査には、ワーキングメモリーや処理速度に関わる課題が多く含まれています。読み書きや計算には、こうした「情報を一時的に保持しながら処理する力」が土台として関わっているためだと考えられます。

出典
Poletti, M. (2016). WISC-IV Intellectual Profiles in Italian Children With Specific Learning Disorder and Related Impairments in Reading, Written Expression, and Mathematics. Journal of Learning Disabilities, 49(3), 320-335.

③ADHDを併存すると、より全般的な低下になりやすい

ドイツで行われた研究では、ADHDと学習障害を併せ持つ子ども、学習障害のみの子ども、定型発達の子どもの3グループのWISC-Ⅴプロフィールが比較されました。

その結果、ADHDを併存するグループは、学習障害のみのグループと比べて、ワーキングメモリー・処理速度・言語理解など、より広い範囲の指標で低いスコアを示しました。特定の領域だけが弱いのではなく、全般的な低下が見られたということです。

つまり、学習障害単独の場合と、ADHDを併存する場合とでは、プロフィールの現れ方が変わるということです。ASD・ADHDの記事でもお伝えした通り、併存の有無によってプロフィールが変わる点は、発達障害全般に共通する重要な視点です。

出典
Becker, A., Daseking, M., & Kerner auch Koerner, J. (2021). Cognitive Profiles in the WISC-V of Children with ADHD and Specific Learning Disorders. Sustainability, 13(17), 9948.

ゆう ゆう
凸凹の形は、一人ひとり違います

一人で抱え込まないで

お子さんのことも、ご自身のことも、話せる場所があります

「プロフィールが当てはまる=学習障害」と考えてはいけない理由

ここまでご紹介した傾向は、あくまで「学習障害と診断された子どもたちの集団を平均すると、こういう傾向が見られやすい」という統計的な話です。

逆から見ると、「GAIとCPIに差がある」「特定の下位検査が低い」というだけで、目の前のお子さんが学習障害だと判断することはできません。学習障害の診断には、WISCの結果に加えて、実際の読み書きや計算の到達度を測る検査が欠かせません。

プロフィールの一致は、診断の根拠にはなりません。

WISCの結果は、あくまで「気になるサインの一つ」として受け止め、最終的な判断は医師や専門家に委ねることが大切です。

気になるときは、どうすればいい?

理解力

WISCの結果を見て「もしかして」と感じたときは、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。

  • 医療機関(児童精神科・小児科など)で相談する
  • 発達支援センターや教育相談機関に相談する
  • 学校のスクールカウンセラーに相談する

いずれの場合も、WISCの結果だけでなく、読み書きや計算の到達度、学校での様子など、幅広い情報をもとに総合的に判断してもらうことが大切です。相談先の選び方については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

今日からできる一歩を、一緒に考えませんか

専門家に話すことで、見えてくることがあります

まとめ

この記事のまとめ

  • WISCの結果だけでは、学習障害かどうかは判断できません
  • 学習障害は、知能の高い・低いではなく、能力と学習到達度との差で定義されます
  • 研究では、GAIとCPIの差、特定の下位検査の低下などの傾向が報告されています
  • ADHDを併存すると、より全般的な低下になりやすいことも分かっています
  • 気になるときは、専門家に総合的な判断を相談することが大切です

得意と苦手の差にも、ちゃんと意味があります

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ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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