「うちの子、なんだか自信がなさそう」「すぐ『どうせできない』と言う」——そんなわが子の様子に、胸がざわつくことはありませんか。
自己肯定感は、これからの人生を支える心の土台です。そして何より嬉しいのは、自己肯定感は生まれつきではなく、日々の親の関わりの中で育てられるということ。特別な教育も、高価な教材もいりません。
私は公認心理師として、子育てに悩む保護者の方とたくさん向き合ってきました。この記事では、子どもの自己肯定感を高める親の接し方と声かけを、下がってしまう関わりへの注意点も交えながら、やさしくお伝えします。今日から少し、まなざしが変わるヒントをお持ち帰りくださいね。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもに自信がなさそうで、気になっている方
- 「どうせ無理」が口ぐせの子に、どう関わればいいか悩んでいる方
- 自己肯定感を高める、具体的な声かけを知りたい方
- よかれと思った関わりが逆効果になっていないか、確かめたい方
子どもの自己肯定感とは?

自己肯定感とは、「自分は自分のままで大丈夫」と、ありのままの自分を受け入れられる感覚のことです。テストの点数や運動の得意・不得意とは関係なく、「自分には価値がある」と思える心の土台をいいます。
ここで大切なのは、「何かができるから価値がある」ではなく「何ができなくても、あなたは大切」という感覚だということです。前者だけに頼ると、失敗したときに一気に自信を失ってしまいます。
もう少し詳しく見ると、自己肯定感には2つの側面があります。ひとつは、テストで良い点を取った、友だちより速く走れたなど、「人より優れている」ことで生まれる感覚。もうひとつは、根拠がなくても「自分なら大丈夫」「なんとかなる」と思える感覚です。
前者は比較で成り立つため、結果が出ないと崩れやすい。本当に土台になるのは、後者の「ありのままの自分を信じられる感覚」です。そして、この感覚こそ、日々の親の関わりで育てていけるものなのです。
小学生の時期が、なぜ大切なのか
小学生になると、勉強や運動、友だち関係の中で「自分は他の子と比べてどうか」を意識し始めます。比較の機会が一気に増えるこの時期は、自己肯定感が揺らぎやすいのです。だからこそ、家庭が「何があっても大丈夫」と思える安全基地であることが、大きな支えになります。
また、この時期に育った自己肯定感は、思春期以降の土台にもなります。自己肯定感が育っていると、失敗しても立ち直れる、新しいことに挑戦できる、人と健全な関係を築ける——そんな力につながっていきます。逆に、土台が育たないまま大人になると、生きづらさを抱えやすくなることもあります。小学生の今は、その土台をつくる大切な時期なのです。
ゆう「できるから大切」ではなく「いるだけで大切」。ここが土台です。
自己肯定感を下げてしまう、親の関わり
まず、よかれと思ってやりがちな「逆効果の関わり」から見ていきましょう。気づかないうちに、自己肯定感を削ってしまっていることがあります。
- 否定や叱責が多い…「ダメでしょ」「なんでできないの」が続くと、「自分は駄目な子」と刷り込まれます
- ほかの子やきょうだいと比べる…「〇〇ちゃんはできるのに」は、自信を確実に削ります
- 結果だけで評価する…点数や勝ち負けばかり見ると、失敗を怖がるようになります
- 先回りして手を出す…失敗させまいと親がやってしまうと、「できた」の実感が育ちません
もし当てはまっても、どうか自分を責めないでください。これらは、多くの親がついやってしまうことです。大切なのは、気づいた今から少しずつ変えていくこと。完璧な親である必要は、まったくありません。
子どもの自己肯定感を高める親の接し方


ここからは、自己肯定感を育てる関わり方です。全部やろうとせず、できそうなものから一つずつで大丈夫です。
①ありのままを受け止める
いちばんの土台がこれです。できてもできなくても、「あなたが大切」という気持ちを、態度と言葉で伝えること。「おはよう」「おかえり」の笑顔、「あなたがいてくれて嬉しい」の一言。条件をつけずに向けられる愛情が、自己肯定感の根っこを育てます。
特別なことをする必要はありません。スキンシップやアイコンタクト、名前を呼ぶこと、一緒にごはんを食べること——そうした何気ない日常のふれあいこそが、「自分はここにいていい」という感覚を静かに育てていきます。忙しい毎日の中でも、一日に一度、目を見て「大好きだよ」と伝えるだけで十分です。
②結果より「過程」を認める
「100点すごい」ではなく、「毎日コツコツ続けられたね」と、努力や工夫の過程に目を向けましょう。過程を認められた子は、失敗を恐れず挑戦を続けられます。この「褒め方」には具体的なコツがあります。こちらの記事もあわせてどうぞ。


③話をさえぎらずに聴く
子どもが話しているとき、つい「それはこうでしょ」と口をはさんでいませんか。最後まで聴いてもらえた経験は、「自分の気持ちには価値がある」という感覚を育てます。アドバイスは、ぐっとこらえて後回し。まずは「そうだったんだね」と受け止めることが先です。
④失敗できる場所を用意する
自己肯定感は、成功だけでなく「失敗しても立ち直れた」という経験の中でも育ちます。小さな失敗は、取り上げずに見守ること。転んでも自分で立ち上がる経験が、「自分は乗り越えられる」という自信になります。折れない心の育て方は、こちらも参考になります。


⑤子どもの意見を尊重する
「どっちがいい?」「あなたはどう思う?」と、小さな選択を子どもに任せてみましょう。自分で決めた経験の積み重ねが、「自分の考えには意味がある」という感覚を育てます。家庭のルールを一緒に決めるのも、よい方法です。
子どもへの関わり方に、迷ったときは
「この関わりで合っているのかな」と迷ったら、専門家に相談すると、その子に合ったヒントが見つかります。オンラインなら、自宅から気軽に話せますよ。
場面別・自己肯定感を育てる声かけ例
「具体的に何と言えばいいの?」という方のために、場面別の声かけ例をご紹介します。
- できなくて落ち込んでいるとき…「できなくて悔しかったね。挑戦したのがえらいよ」
- 失敗してしまったとき…「大丈夫、失敗は誰にでもあるよ。次どうするか一緒に考えよう」
- お手伝いをしてくれたとき…「助かったよ、ありがとう」(存在への感謝を伝える)
- 友だちとトラブルがあったとき…「そう感じたんだね」とまず気持ちを受け止める
- 自分を否定する言葉を言ったとき…「そう思っちゃうんだね。でもお母さんはあなたのこと大好きだよ」
ポイントは、気持ちをまず受け止めてから、言葉をかけることです。正論やアドバイスより先に、「わかってもらえた」という安心を届けてあげてください。感情の受け止め方については、こちらの記事も役立ちます。


うまくいかないとき・気になるとき


ここまで読んで、「頭ではわかるけど、毎日そんなに優しくできない」と感じた方もいるかもしれません。それが自然な気持ちです。
大切なのは、親が完璧であることではありません。イライラして強く言ってしまう日があっても大丈夫。あとで「さっきは言いすぎたね」と伝えられれば、それも子どもにとって大切な学びになります。親が自分の失敗を認める姿こそ、いちばんのお手本なのです。
また、発達の特性がある子は、まわりと比べて「できないこと」に直面しやすく、自己肯定感が下がりやすい傾向があります。その子の場合は、できないことより「できていること」「その子ならではの良さ」に目を向けることが、とりわけ大切になります。
たとえば、じっとしているのが苦手な子は「行動力がある」、こだわりが強い子は「集中力がある」というように、同じ特性も見方を変えれば強みになります。「みんなと同じにできること」を求めるより、その子のペースやその子らしさを認めてあげること。それが、特性のある子にとって何よりの支えになります。診断や特性について気になることがあれば、抱え込まず専門機関に相談してみてくださいね。
そして、親自身が疲れきっていると、子どもにやさしくする余裕は生まれません。子どもの自己肯定感を育てる前に、まずあなた自身を大切にしてあげてください。もし子どもの様子が長く気になる、関わりに悩んで苦しいというときは、ひとりで抱えず専門家に相談してくださいね。
これはあくまで一般化した事例ですが、「どうせぼくなんて」が口ぐせのお子さんがいました。親御さんが、できないことを指摘するのをやめ、「今日、自分で起きられたね」など小さな「できた」を言葉にするようにしたそうです。数か月後、その子が「今日、算数がんばった」と自分から言うように。「否定を減らして、小さなことを認めるだけで、こんなに変わるとは」と話してくれました。土台は、日々の小さな積み重ねで育っていくのですね。
まとめ
今日お伝えしたことを、最後に振り返っておきますね。
- 自己肯定感は「何ができなくても大切」と思えるありのままの感覚
- 否定・比較・結果だけの評価・先回りは、自己肯定感を下げやすい
- ありのままを受け止め、過程を認め、話を聴くことが土台になる
- 気持ちを受け止めてから声をかけると、安心が届きやすい
- 親は完璧でなくていい。まず自分自身を大切にすることも大切
自己肯定感は、特別な才能ではなく、日々のまなざしの積み重ねで育っていきます。すぐに変わらなくても大丈夫。「あなたは大切だよ」というメッセージを伝え続けること、それ自体が、お子さんの心の土台になっています。今日できそうな声かけを一つ、さっそく試してみてくださいね。あなたとお子さんの毎日が、もっとあたたかいものになりますように。
子育ての悩みを、ひとりで抱えていませんか
子どもの心の育ちに迷ったときは、専門家と一緒に整理すると、その子に合ったヒントが見えてきます。気持ちを話すだけでも、心が軽くなりますよ。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
