言いたいことを我慢して飲み込んでしまう。かと思えば、つい強い言い方をして後悔する——。家族や周りの人とのやりとりで、「うまく気持ちを伝えられないな」と感じることはありませんか。
そんなときに役立つのが「DESC法」です。相手を傷つけず、でも自分の気持ちもきちんと伝える。そんなバランスのよい話し方を、4つのステップで身につけられる方法です。
私は公認心理師として、人との関わりに悩む方とたくさん向き合ってきました。この記事では、DESC法とは何かと、家庭でもすぐ使えるやり方を、例文つきでやさしくお伝えします。
ゆう肩の力を抜いて、読んでみてくださいね。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 言いたいことを我慢して、もやもやしがちな方
- つい強い言い方をして、あとで後悔してしまう方
- 夫や子どもに、角を立てずに気持ちを伝えたい方
- 上手な伝え方を、具体的な型で身につけたい方
DESC法とは?


DESC法とは、相手を尊重しながら、自分の気持ちも上手に伝えるための話し方の「型」です。1970年代にアメリカで生まれた手法で、「アサーション(アサーティブな自己表現)」を実践するための具体的な方法として知られています。
自己表現には、大きく3つのタイプがあるといわれます。自分を抑えて我慢する「受け身型」、相手を押しのける「攻撃型」、そして自分も相手も大切にする「アサーティブ型」。DESC法は、この3つめ——攻撃でも我慢でもない“第3の道”を、誰でも実践できるようにした型なのです。
たとえば、相手の頼みを断れずに引き受けてしまうのは「受け身型」。逆に「なんでやってくれないの!」と責めてしまうのは「攻撃型」です。どちらも、あとで自分がつらくなったり、関係がぎくしゃくしたりしがち。アサーティブ型は、その中間でバランスをとる伝え方です。我慢して飲み込むことが多い方も、つい言いすぎてしまう方も、DESC法を知っておくと、ちょうどいい伝え方に近づけます。
「言いたいことを言うのはわがままかも」と感じる方もいるかもしれません。でも、自分の気持ちを正直に、相手を尊重しながら伝えることは、わがままではありません。お互いが気持ちよくいられる関係を築くための、大切なスキルです。



我慢でも攻撃でもなく、「正直に、でも優しく」が基本です。
DESC法の4つのステップ
DESCは、4つのステップの頭文字をとった言葉です。



この順番で伝えると、気持ちがすっと届きやすくなります。
D:Describe(描写する)
まず、起きている事実だけを客観的に伝えます。自分の評価や推測は入れず、「事実」だけを言葉にするのがポイントです。「だらしない」「いつも」などの決めつけを入れると、相手は身構えてしまいます。「今週、食器洗いが3日続けて私になっているね」のように、淡々と描写します。
E:Explain(説明する)
次に、その事実に対する自分の気持ちや考えを、正直に伝えます。ここでも、相手を責めるのではなく「私」を主語にするのがコツ。「私は少し疲れてしまって…」と、自分の気持ちとして話すと、相手も受け取りやすくなります。
S:Specify(提案する)
続いて、相手にしてほしいことを、具体的に「提案」します。命令ではなく、お願いの形で。「夜の食器洗いだけ、お願いできないかな?」のように、何を・どうしてほしいかをはっきり伝えると、相手も動きやすくなります。曖昧な「ちゃんとして」では伝わりません。
C:Choose(選択する)
最後に、提案へのお返事に応じて、次の行動を選びます。「いいよ」なら「ありがとう、助かる」と感謝を。もし「難しい」と言われたら、責めずに別の案を出します。相手に選ぶ余地を残すことで、対等な関係が保てます。YESにもNOにも、あらかじめ次の一手を用意しておくと、落ち着いて対応できます。提案が通らなくても「伝えられた」こと自体に意味があります。気持ちを言葉にできた経験は、次につながっていきます。
例文でわかるDESC法【家庭編】


ステップだけではイメージしにくいので、家庭でよくある場面で見てみましょう。
例①:家事をしてくれない夫に
- D:「今週、食器洗いが3日続けて私になっているね」
- E:「正直、仕事のあとだと少し疲れちゃって」
- S:「夜の食器洗いだけ、お願いできないかな?」
- C:(OKなら)「ありがとう、助かる!」(難しいなら)「じゃあ週末だけでもどう?」
例②:ゲームをやめない子どもに
- D:「約束の時間を30分過ぎているね」
- E:「約束は守ってほしいなと思って、少し心配なんだ」
- S:「キリのいいところで、あと5分で終わりにできるかな?」
- C:(できたら)「ちゃんと止められたね」(難しいなら)「一緒に時間のルールを見直そうか」
同じ「やめてほしい」でも、頭ごなしに叱るのと、DESC法で伝えるのとでは、相手の受け取り方がまるで変わります。事実→気持ち→提案→選択。この順番を意識するだけで、ぐっと伝わりやすくなりますよ。
伝え方のクセを、ひとりで抱えていませんか
「どう言えば伝わるんだろう」と悩んだら、専門家と一緒に整理すると、自分に合った伝え方が見つかります。オンラインなら、自宅から気軽に相談できますよ。
もっと「伝え方」を磨きたいあなたへ
DESC法は、知って実践するほど身についていきます。ただ、「本を読んでもひとりだと続かない」「自分のクセを直したい」という方には、プロから学べる場を活用するのも一つの方法です。客観的なフィードバックをもらえると、上達がぐっと早まります。
オンラインで学べる大人向けのコミュニケーション教室・講座を比較した記事も用意しています。家庭でも職場でも役立つ「伝える力」を、もう一歩深めたい方は、のぞいてみてくださいね。


子どもの「伝える力」も育っていく


うれしいことに、親がDESC法で穏やかに伝える姿は、子どもにとって最高のお手本になります。子どもは、親のコミュニケーションを見て、伝え方を学んでいくからです。「事実を話す」「気持ちを言葉にする」親の姿が、そのまま子どもの「伝える力」を育てます。
また、子ども自身が気持ちを言葉にできるようになるには、まず感情に気づく力が必要です。子どもの感情の育ちと関わり方は、こちらの記事も参考になります。


これはあくまで一般化した事例ですが、夫に不満を言うたびに口論になってしまう、という方がいました。「あなたはいつも」と責める言い方をやめ、DESC法で「事実→私の気持ち→お願い」の順に伝えてみたそうです。すると夫も身構えずに聞いてくれ、「そう言ってくれたら分かるよ」と協力してくれるように。「言い方を変えただけなのに、こんなに違うとは」と驚いていました。伝え方は、関係そのものを変える力を持っています。
DESC法を使うときのコツと注意点
最後に、DESC法をうまく使うためのポイントをお伝えします。
- 完璧を目指さない…最初からうまくできなくて当たり前。まずは「事実から話す」だけでも十分です
- 感情的になったら、一度間を置く…落ち着いてから伝えるほうが、ずっと届きます
- 提案は「お願い」の形で…命令や強制にならないよう、柔らかい言葉を選びましょう
なお、自分がふだんどんな自己表現のクセを持っているか、知っておくと上達が早まります。受け身型・攻撃型・アサーティブ型、自分はどれに近いか——こちらのチェックで確かめてみてください。


そして、伝え方を工夫しても関係がつらい、何を言っても響かない——そんなときは、ひとりで抱えず専門家に相談してくださいね。
まとめ
今日お伝えしたことを、最後に振り返っておきますね。
- DESC法は、我慢でも攻撃でもない「アサーティブな伝え方」の型
- D描写→E気持ち→S提案→C選択の順で伝えると、すっと届く
- 「あなたは」でなく「私は」を主語に、お願いの形で伝える
- 親が穏やかに伝える姿は、子どもの「伝える力」も育てる
- 完璧でなくていい。まずは「事実から話す」ことから始めよう
伝え方を少し変えるだけで、家庭の空気は驚くほど変わります。我慢して飲み込む必要も、強く言って後悔する必要もありません。まずは今日、ひとつの場面で「事実→気持ち→お願い」の順を試してみてくださいね。あなたの気持ちが、もっと優しく相手に届きますように。
伝え方の悩みを、ひとりで抱えないで
気持ちをうまく伝えられないつらさは、専門家と話すと整理されていきます。話すだけでも、心がふっと軽くなりますよ。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
