「変わりたい」——子ども自身がそう口にしているのに、実際の行動はなかなか変わらない。その様子を見て、「やる気はあると言うけど、信じていいのかな」と、戸惑いや不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
子どもを励ましても、叱っても、見守っても変わらないと、親は次第に疲れ、どう関わればいいのかわからなくなってしまいます。
この記事では、公認心理師の私が、子どもが「変わりたい」と思っていても行動に移せないとき、内側で何が起きているのかを整理してお伝えします。
ゆう「甘え」や「口だけ」と決めつける前に、少し立ち止まって考えてみませんか。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもが「変わりたい」と言うのに、行動が伴わず戸惑っている方
- 励ましても叱っても変わらない我が子に、疲れを感じている方
- どう関わればいいのか、わからなくなってしまった方
「変わりたい」と言うのに動かないとき、親が混乱する理由


引きこもりや問題行動が続く子どもが「変わりたい」と口にしているにもかかわらず、行動が伴わないと、親は強い戸惑いや不安を感じます。本音なのか、口先だけなのか、どう受け止めればいいのかわからなくなるからです。
特に、不登校や発達の特性があるお子さんの場合、その言葉を聞くたびに期待してしまい、行動が伴わないことで、裏切られたように感じてしまうこともあるでしょう。すると、つい厳しく言ってしまったり、逆に何も言えなくなってしまったりするものです。
この混乱は、親の関わり方が間違っているから起きるのではありません。子どもの「言葉(気持ち)」と「行動」が一致しない状況そのものが分かりにくいものだからこそ、親自身に生じる自然な反応なのです。
「昨日はあんなに前向きだったのに、今日は何もしない」という変化の激しさに、振り回されてしまう方も少なくありません。この波があること自体が、子どもが今まさに葛藤の中にいる証でもあります。「一貫していない」と責めるのではなく、「今日はこういう日なんだな」と受け止める姿勢が、親自身の消耗を防ぐことにもつながります。



混乱するのは、あなたのせいではありません。
行動に移れない子どもの内側で起きていること
こうした子どもの内側では、「変わりたい」という思いと同時に、「失敗したくない」「うまくできる自信がない」といった不安が強く働いていることがあります。頭では必要性を理解していても、心が追いつかず、動こうとすると体が止まってしまうような感覚です。
この状態は、怠けているわけでも、やる気がないわけでもありません。むしろ真面目で、うまくやろうとする気持ちが強い子どもほど、一歩が踏み出せなくなってしまうことがあります。
「どうせ失敗するくらいなら、動かないほうがまし」という思考に陥ってしまうこともあります。これは、傷つくことから自分を守ろうとする、いわば防衛反応のようなものです。「動かなければ、失敗もしない」という考え方は、一見、後ろ向きに見えるかもしれません。
けれどそれだけ、子どもが「うまくやりたい」という気持ちを強く持っている、という見方もできます。
これはあくまで一般化した事例ですが、Eさん(中学生)は「来週こそ学校に行く」と繰り返し口にしていました。
けれど当日の朝になると、体が動かず、布団から出られなくなってしまうのでした。
母親は「また口だけだったのか」と落胆しましたが、実際のEさんの中では、「行きたい」気持ちと「怖くて動けない」気持ちがせめぎ合っていました。
この2つの気持ちは、どちらも本物です。「行きたい」が嘘で「怖い」が本音、というわけではありません。矛盾する気持ちを同時に抱えていること自体が、子どもにとっても苦しいものなのです。



子どもの行動の裏側にある気持ちに目を向けてみましょう。
励ましや説得が、かえって逆効果になることがある


子どもが動けない様子を見ていると、親としては「大丈夫だよ」「やればできるよ」と励ましたくなります。また、行動を起こす理由を説明したり、必要性を説いたりすることもあるでしょう。
しかし、こうした関わりが、かえって子どもを追い詰めてしまうことがあります。子ども自身も「わかっている」のに、行動できない状態だからです。親からの正論や期待は、子どもにとってプレッシャーとなり、「できない自分」をより強く意識させることにつながります。
その結果、気持ちを閉じてしまったり、反発的な態度として表れたりすることもあります。「なんで動かないの」と問い詰めることも、子どもにとっては同じように追い詰める言葉になり得ます。本人が一番、動けない自分にもどかしさを感じているからこそ、その気持ちに追い打ちをかけない関わりが大切になります。
「頑張れ」という言葉も、時には「今のあなたのままでは足りない」というメッセージとして伝わってしまうことがあります。励ますつもりが、知らず知らずのうちに子どもを追い詰めてしまう——これは、多くの親が経験する難しさです。
良かれと思った関わりが空回りしてしまう背景には、こうした親子の心理的なすれ違いがあります。



良かれと思う関わりが、空回りすることもあります。
「変わらせようとしない関わり方」が前に進む力になる
カウンセリングや心理療法の分野では、本人の中にある気持ちを尊重しながら関わる考え方として、「動機づけ面接」というアプローチがあります。
これは、周囲が無理に変えようとするのではなく、本人が感じている迷いや不安も含めて受け止める姿勢を大切にする関わり方です。行動が変わらない背景には、本人なりの理由があることが多いものです。それを否定せずに整理しながら、上手に背中を押すことで、少しずつ前に進む力が育まれていきます。変えようとするよりも、まず理解しようとする関わりが、結果的に子どもの主体性を支えることもあります。
例えば、「なぜ行けないの」と理由を尋ねる代わりに、「今、どんな気持ち?」と気持ちそのものを聞いてみる関わりです。正しい答えを求めるのではなく、ただ気持ちを言葉にする手伝いをするというイメージです。
すぐに変化が見えなくても、「わかってもらえた」という感覚が、子どもの中に安心を積み重ねていきます。この安心の積み重ねこそが、やがて自分から動き出すための土台になっていきます。
子どものやる気を引き出す関わり方について、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。


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親だけで抱え込まず、整理しながら関わるという選択肢も
親だけで、子どもが動けない理由を理解しようとしても、うまくいかないことが多いものです。親自身も不安や焦りを抱えているため、子どもの気持ちを整理することが難しくなるからです。頭ではわかっていても、感情が追いつかず、同じやり取りを繰り返してしまうこともあるでしょう。
こうしたとき、親だけで答えを出そうとしなくても大丈夫です。身近な人には話しにくい焦りや苛立ちも、第三者になら安心して話せることがあります。第三者と一緒に状況を整理することで、親子それぞれの気持ちや立場が見えやすくなることがあります。
特に、この状態が数か月以上続いている場合や、親自身が眠れない・食欲がないといった不調を感じている場合は、早めに相談することをおすすめします。専門家に話すことで、「今の関わり方で合っているのか」を客観的に確認でき、日々の対応にも少しずつ余裕が生まれてきます。子どものことだけでなく、親自身がどう感じ、どう疲れているかを話す時間があってもいいのです。
最近では、家庭の事情に合わせて相談できるオンラインの形も増えています。すぐに利用を決めなくても、「選択肢として知っておく」こと自体が、関わり方を見直すきっかけになることもあります。



知っておくことも、一つの備えになります。
オンラインカウンセリングについて、詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。


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まとめ
- 「変わりたい」と行動が一致しないのは、意志の弱さではなく心理的な要因があることが多い
- 行動できない子どもの内側では、変わりたい気持ちと不安がせめぎ合っている
- 励ましや説得が、かえって子どもを追い詰めてしまうことがある
- 変えようとせず理解しようとする関わりが、結果的に主体性を支える
- 「今、どんな気持ち?」と気持ちを聞く関わりが、安心につながる
- 親だけで抱え込まず、第三者と一緒に整理するという選択肢もある
子どものために考え続けているからこそ、親自身の心がすり減ってしまう——それは決して弱さではありません。親が安心して気持ちを整理できる場を持つことは、結果的に子どもを支える力にもなります。
すぐに答えが出なくても、焦らず、今の関わり方を少しずつ見直していきましょう。変わろうとしている子どもの隣に、あなたがいてくれること。それ自体が、すでに大きな支えになっています。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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