「学校がないからホッとする。でも、このままでいいのかな……」
不登校の子どもを持つ保護者にとって、夏休みは不思議な季節です。毎朝の「今日は行けるかな」という緊張がなくなって、まず安心する。でも数日もすれば、「二学期が来たらどうなるんだろう」という不安が頭をもたげてくる。ホッとした気持ちとモヤモヤした不安が、同時に存在している——そんな夏を過ごしている方は、きっと多いと思います。
この記事では、その「ホッとしながらも不安」という気持ちを丁寧にほぐしながら、不登校の子どもと過ごす夏休みの考え方と、二学期に向けた心の準備をお伝えします。公認心理師として、また子どもを持つ一人の親として、一緒に考えさせてください。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 不登校のまま夏休みに入って、ホッとしながらもモヤモヤしている方
- 「夏休み中に何かしなければ」と焦りを感じている方
- 二学期が来たらどうなるのか、今から不安で仕方ない方
- 子どもと一緒にどう過ごせばいいのか、方向性が見えない共働きの保護者の方
「夏休みにホッとする」は、正常な感覚です

まず最初に、これだけお伝えさせてください。
子どもが不登校のとき、夏休みが来てホッとする——この感覚は、おかしくありません。学校がある期間、保護者は毎朝「今日は行けるか」「どう声をかけるか」「担任への連絡は」という緊張を繰り返しています。その緊張が一時的に解除されるのですから、ホッとするのは当然の反応です。
子どもにとっても同じです。「学校に行かなければいけない時間」がなくなることで、罪悪感や焦りが少し和らぎます。夏休みに入ると子どもが少し表情が明るくなった、という経験をした方も多いのではないでしょうか。
📌 夏休みにホッとすることは、親失格ではありません
毎日の緊張が和らぐことへの安心感は、長期間の心理的負荷が続いていた証拠です。
その安心感を、まず自分に許してあげてください。
でも同時に、「このままでいいのかな」「何かしなくていいのかな」という不安もある。その両方を抱えながら夏を過ごしているのが、不登校の子を持つ保護者のリアルだと思います。
ゆうホッとすることと、不安でいることは矛盾しません。その両方を感じていること自体、とても誠実な親御さんの姿だと思います。
夏休みに「焦って何かしなければ」と思わなくていい理由
「夏休み中に子どもを立て直さなければ」「二学期から行けるようにするための準備を」——そう考えて、いろいろ動こうとしている方もいるかもしれません。その気持ちは痛いほどよくわかります。でも、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
不登校の回復に必要なのは、何かを「する」ことよりも、心のエネルギーを「回復させる」ことです。学校があった期間、子どもは「行けない自分」への罪悪感や、周囲への申し訳なさを抱えながら過ごしていました。そのエネルギーの消耗が、まだ続いています。
夏休みは、その消耗を回復させるための貴重な時間でもあります。「何もしない夏休み」は、回復に向けた大切な充電期間である可能性があります。
🔹 これはあくまで一般化した事例ですが——
中学1年生のEさんは、4月から不登校になり夏休みを迎えました。お母さんは「夏休みのうちに支援機関に連れていかなければ」と焦りを感じていましたが、まずはEさんの様子を見ようと決めました。最初の2週間は昼過ぎまで寝て、ゲームをして過ごしていましたが、3週目頃から自分から「一緒に買い物行っていい?」と言いだし、徐々に外出できるようになりました。焦らず待った夏休みが、回復の転換点になりました。
もちろん、何もしないことが正解というわけではありません。でも「夏休みのうちに解決しなければ」というプレッシャーを、まず親自身が手放してみることが、子どもにとっても親にとっても、この夏を少し楽にする第一歩になります。
夏休みの今だからこそ、親自身も少し話してみませんか
焦りや不安を一人で抱えたまま秋を迎えると、疲弊してしまいます。
夜でも自宅から、オンラインカウンセリングでまず親だけで話してみてください。
夏休み中に意識してほしい3つのこと


「何もしなくていい」とお伝えしましたが、まったく何もしなくていいわけではありません。ここでは「やること」ではなく「意識すること」として、3つの視点をお伝えします。
① 親子の「関係の温度」を取り戻す
学校がある期間、「今日は行くの?行かないの?」「担任に何て連絡しよう」という緊張のなかで、親子の関係が少しギスギスしてしまうことがあります。夏休みは、その関係をゆっくり取り戻す時間として使ってほしいです。
特別なことをする必要はありません。一緒に好きなドラマを見る、夕飯を並んで作る、短いドライブに出かける——そういった「登校・不登校と関係のない時間」の積み重ねが、親子の信頼関係の土台を回復させます。
子どもが「この親には話せる」と感じるのは、不登校の話を真剣に聞いてもらったときだけではありません。「学校と関係のない話で笑えた時間」の積み重ねが、実は一番の安全基地になります。
② 生活リズムを「整えすぎない」ほどに整える
夏休み中に昼夜逆転してしまうことへの不安を持つ親御さんは多いです。確かに、二学期に向けてある程度の生活リズムがあるに越したことはありません。ただし、「きちんとした生活リズムに戻さなければ」と力を入れすぎると、夏休みが新たなプレッシャーの場になってしまいます。
🔹 無理なく取り入れやすい生活リズムの工夫
・食事の時間だけは家族でそろえるようにする
・午前中のどこかで短時間でも日光を浴びる(ベランダでもOK)
・就寝時間を0時前後を目安にしてみる(完璧でなくてOK)
・二学期の2週間前くらいから少しずつ起床時間を早めていく
「8時起床・3食・早寝」を最初から求めなくていいです。今の子どもが無理なくできる範囲から始めましょう。
③ 子どもが「好きなこと」に集中できる時間を守る
ゲーム、動画、マンガ、音楽——不登校の子どもが夏休みに好きなことに没頭していると、「こんなことばかりしていていいのか」と不安になるかもしれません。でも、好きなことに夢中になれる時間は、消耗した心のエネルギーを回復させる大切な時間です。
「ゲームばかりしている」ではなく、「ゲームに集中できるくらい、今日は心が安定している」と見方を変えてみてください。干渉しすぎず、でも隣にいてあげることが、この時期の最良の関わりかもしれません。



好きなことに没頭できる夏休みは、回復の貯金をしている時間です。その時間を守ってあげてほしいと思います。
「二学期が怖い」——その不安とどう向き合うか
夏休みの後半に近づくにつれて、「二学期が来たらどうなるんだろう」という不安が大きくなってくる方は多いと思います。その不安は自然なものです。でも、その不安をどう扱うかで、残りの夏休みの質が変わってきます。
「二学期から行けるか」より「今の子どもの状態」を見る
「二学期から行けるようになるだろうか」という問いは、今の時点では誰も答えられません。子どもの状態は、夏休みの過ごし方や子ども自身の内側の変化によって、直前まで変わり続けます。
今できることは、「二学期に行けるかどうかを心配すること」ではなく、「今の子どもの心のエネルギーが回復しているかを観察すること」です。表情が少し柔らかくなった、笑う場面が増えた、自分から外に出たがるようになった——こういった小さな変化を見逃さないようにしてください。
「二学期から必ず行かせなければ」は手放していい
「この夏休みで回復させて、二学期から行かせなければ」というプレッシャーを、知らず知らずのうちに抱えていませんか。そのプレッシャーは、子どもにも伝わります。
二学期が始まっても不登校が続くことは、失敗ではありません。回復には時間がかかります。一学期より少しエネルギーが戻っていれば、それで十分な前進です。「二学期から行けなかった」ではなく「夏休みに少し回復できた」と捉えることが、親自身のメンタルを守るうえでも、子どもへの関わりを安定させるうえでも大切です。
二学期前に「学校と一度連絡を取る」という選択肢
二学期が始まる1〜2週間前に、担任やスクールカウンセラーと一度連絡を取ってみることを、私はお勧めしています。「二学期からどうするか」を決めるためではなく、「今の子どもの状態を共有する」ためです。
🔹 二学期前の学校連絡で伝えておくと良いこと
・夏休み中の子どもの様子(体調・表情・生活リズム)
・二学期に向けた今の子どもの気持ち(行きたい気持ちがあるか、まだ難しいか)
・もし登校するとしたら、どんな配慮があると助かるか(別室登校・時間短縮など)
・連絡の頻度や方法について確認しておく
「どうするかはまだわかりませんが、状況を共有したくて」という前置きで連絡するだけでも十分です。
学校側も、二学期の初日に突然対応するより、事前に状況を知っている方が動きやすいです。親と学校の関係を少し温めておくことが、二学期の滑り出しを少しだけ楽にしてくれます。
親自身の「夏休み」も大切にしてほしい





最後に、子どものことではなく、親御さん自身のことをお伝えさせてください。
不登校の子どもと過ごす夏休みは、仕事・家事・子どもの見守りが重なり、「自分のための時間」がまったく取れないことが多いです。特に共働きの場合、夏休み期間中は子どもをどう過ごさせるかという問題も加わります。
でも、親御さん自身がこの夏に少しでも回復できると、二学期に向けた子どもへの関わりに余裕が生まれます。「自分のための時間を持つこと」は、親としての責任の放棄ではなく、長く子どもに寄り添い続けるための必要な投資です。
⚠️ こんな状態が続いているときは、親自身への相談も検討を
・夏休みに入っても疲れが取れない、眠れない
・子どものことを考えると涙が出る
・「もう限界かもしれない」と感じることがある
・夏休みが終わることが、子ども以上に怖い
これらは、親御さん自身がケアを必要としているサインです。子どものためだけでなく、あなた自身のために相談窓口を使ってみてください。
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 夏休みにホッとする感覚は正常。毎朝の緊張から解放される安心感を、まず自分に許してあげてほしい
- 「夏休みのうちに解決しなければ」というプレッシャーは手放していい。充電期間として使うことが回復への近道になることが多い
- 夏休み中に意識してほしいのは「親子の関係の温度を取り戻す」「生活リズムを整えすぎない程度に整える」「好きなことに集中できる時間を守る」の3つ
- 「二学期から行けるか」より「今の子どものエネルギーが回復しているか」を見ることが大切
- 二学期前に担任・SCと一度連絡を取り、状況を共有しておくことが二学期の滑り出しを楽にする
- 「二学期から行けなかった」ではなく「夏休みに少し回復できた」と捉え直すことが、親のメンタルを守る
- 親自身の回復も、子どもへの関わりを安定させるために必要。限界を感じたら相談窓口へ
「ホッとしながらもモヤモヤする」——その感覚を持ちながら夏を過ごしているあなたは、十分すぎるくらい子どものことを考えています。今年の夏は、「何かしなければ」より「少し一緒に休む」を目標にしてみてください。子どもの回復は、あなたが一緒に休めたときに、静かに始まっていることが多いものです。
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夏休みの今だからこそ、一度話してみませんか
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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