WISCの結果でADHDがわかる?プロフィールの傾向を公認心理師が解説

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「WISCの結果を見て、この子はADHDではないかと感じた」——そう思われた保護者の方は、決して少なくありません。

ワーキングメモリーや処理速度の数値が低かったりすると、つい発達障害と結びつけて考えてしまいがちです。
ですが、その見方には注意が必要です。

この記事では、ADHDのWISCプロフィールについて研究で分かっていること、そしてその限界を、公認心理師の私が根拠とともにお伝えします。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • WISCの結果を見て「この子はADHDでは」と感じた方
  • ワーキングメモリーや処理速度の低さが、発達障害と関係あるのか知りたい方
  • ADHDのWISCプロフィールについて、正確な情報を知りたい方
  • ネットの情報だけで判断することに不安を感じている方
目次

結論:WISCの結果だけでは、ADHDかどうかはわかりません

ポイント

先に結論をお伝えします。WISCの結果だけで、お子さんがADHD(注意欠如・多動症)かどうかを判断することはできません。「ワーキングメモリーが低いから」「処理速度が低いから」という見方だけで、ADHDと決めつけることはできないのです。

WISCはあくまで知能検査であり、発達障害の診断を目的とした検査ではありません。ADHDの診断は、生育歴の聞き取りや行動観察、医師による総合的な判断によって行われます。

とはいえ、WISCの結果を見て「この子はADHDでしょうか」と感じる保護者の方は少なくありません。この記事では、研究で報告されているADHDのWISCプロフィールの傾向を、根拠とともに丁寧にご紹介します。

ゆう ゆう
傾向を知ることと、診断することは別物です

ADHDのWISCプロフィールは、比較的一貫して報告されています

以前の記事でASDのWISCプロフィールをご紹介した際、研究によって報告される傾向が一貫していないことをお伝えしました。

一方でADHDについては、複数の国・複数の研究において、比較的よく似た傾向が繰り返し報告されています。これは、ADHDの中核的な特性(不注意・多動性・衝動性)が、ワーキングメモリーや処理速度が測っている力と関連しやすいためだと考えられます。

ただし、「比較的一貫している」ことと「診断できる」ことは、まったく別の話です。この点を踏まえたうえで、具体的な研究をご紹介します。

一貫性が高い傾向でも、それだけでは診断の根拠にはなりません。

研究でわかっている代表的な傾向

ポイント

比較的よく報告されている傾向を、4つに分けてご紹介します。あくまで「集団としての傾向」であり、目の前のお子さんに当てはまるとは限らない点に注意してお読みください。

①ワーキングメモリー・処理速度が低くなりやすい傾向

スペインで行われた大規模な研究では、ADHDのある子ども363名と、ない子ども356名、合計719名のWISC-Ⅳのデータが比較されました。

その結果、ADHD群はワーキングメモリー指標・処理速度指標・認知熟達度指標(この2つの指標を合わせた指標)において、対照群より有意に低いスコアを示しました。言語理解指標・知覚推理指標には、有意な差は見られませんでした。

出典
Rosales-Gómez, M., Navarro-Soria, I., Torrecillas, M., López, M. E., & Delgado, B. (2025). Cognitive Profiling of Children and Adolescents with ADHD Using the WISC-IV. Behavioral Sciences, 15(9), 1279.

②言語理解・知覚推理には有意差が見られにくい

同じ研究では、統計モデルを使った分析も行われています。ワーキングメモリーと処理速度が低いこと、言語理解と知覚推理には有意な差がないことを組み合わせたモデルです。

この4つの指標を使った予測モデルでは、ある傾向が示されています。ワーキングメモリーと処理速度が低く、言語理解と知覚推理が保たれているほど、ADHDに分類される可能性が高くなるという結果です。

また、この研究ではワーキングメモリーと処理速度の低下が、年齢層を通じて安定して見られ、男児でより顕著だったことも報告されています。女児のADHDでは、処理速度において男児より高い傾向が見られました。

出典
Rosales-Gómez, M., Navarro-Soria, I., Torrecillas, M., López, M. E., & Delgado, B. (2025). Cognitive Profiling of Children and Adolescents with ADHD Using the WISC-IV. Behavioral Sciences, 15(9), 1279.

③併存する特性によって、現れ方が変わる

ドイツで行われた別の研究では、ADHDのみの子ども、チック症やOCD(強迫症)を併存する子どもなど、複数のグループのWISC-Ⅳプロフィールが比較されました。

ADHDのみの子どもは、処理速度指標が有意に低いという結果が確認されました。一方でワーキングメモリー指標の低下は、ADHD単独の場合よりも、他の疾患を併存している場合に見られやすいことも示されています。

つまり、ADHDのプロフィールも、単独か併存かによって現れ方が変わるということです。ASDと同様、ADHDにおいても個人差や併存の有無を考慮する必要があります。

出典
Wanderer, S., Roessner, V., Strobel, A., & Martini, J. (2021). WISC-IV performance of children with Chronic Tic Disorder, Obsessive–Compulsive Disorder and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: results from a German clinical study. Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health, 15(1), 44.

④処理速度の「遅さ」の正体は、速さの「ムラ」かもしれない

「ADHDの処理速度の低さは、ゆっくり丁寧なのか、それとも急いで雑になるのか」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。実は、この問いに直接答える研究は、あまり見当たりません。

その代わりに、ADHDの研究で繰り返し扱われているのが「反応の変動性」という視点です。同じ課題に取り組んでいても、速く答えられる瞬間と、極端に時間がかかる瞬間が入り混じり、パフォーマンスが一定しないという特徴です。

つまり、「常に速いが雑」でも「常に遅いが丁寧」でもなく、速さそのものにムラがあるという、第三の特徴として捉えられています。この変動性は、ADHDの背景にある特性を探る手がかりとしても研究が進められています。

出典
Henríquez-Henríquez, M. P., Billeke, P., Henríquez, H., Zamorano, F. J., Rothhammer, F., & Aboitiz, F. (2014). Intra-individual response variability assessed by ex-Gaussian analysis may be a new endophenotype for attention-deficit/hyperactivity disorder. Frontiers in Psychiatry, 5, 197.

この「ムラ」という視点は、WISCの一時点の得点だけでは見えにくい部分です。日頃の様子として「調子のいい日と悪い日の差が大きい」と感じる場合は、こうした変動性が背景にある可能性も、一つの参考にしていただければと思います。

ゆう ゆう
ムラがあることも、その子の特性の一つです

一人で抱え込まないで

お子さんのことも、ご自身のことも、話せる場所があります

「プロフィールが当てはまる=ADHD」と考えてはいけない理由

ここまでご紹介した傾向は、あくまで「ADHDと診断された子どもたちの集団を平均すると、こういう傾向が見られやすい」という統計的な話です。

逆から見ると、「ワーキングメモリーが低い」「処理速度が低い」というだけで、目の前のお子さんがADHDだと判断することはできません。これらの指標が低い子どもの中には、ADHDとは関係のない要因を抱えている子も多くいます。

プロフィールの一致は、診断の根拠にはなりません。

WISCの結果は、あくまで「気になるサインの一つ」として受け止め、最終的な判断は医師などの専門家に委ねることが大切です。

気になるときは、どうすればいい?

相談に乗ってくれる女性

WISCの結果を見て「もしかして」と感じたときは、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。

  • 医療機関(児童精神科・小児科など)で相談する
  • 発達支援センターや教育相談機関に相談する
  • 学校のスクールカウンセラーに相談する

いずれの場合も、WISCの結果だけでなく、生育歴や日常での様子など、幅広い情報をもとに総合的に判断してもらうことが大切です。相談先の選び方については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

今日からできる一歩を、一緒に考えませんか

専門家に話すことで、見えてくることがあります

まとめ

この記事のまとめ

  • WISCの結果だけでは、ADHDかどうかは判断できません
  • 研究では、ワーキングメモリーと処理速度が低くなりやすい傾向が比較的一貫して報告されています
  • 言語理解・知覚推理には、有意な差が見られにくいことも分かっています
  • 併存する特性によって、現れ方が変わることがあります
  • 処理速度の低さの背景には、速さの「ムラ」(変動性)が関係している可能性があります
  • 気になるときは、専門家に総合的な判断を相談することが大切です

プロフィールの向こうにいる、その子自身を見てあげてください

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ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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