今回の記事では、
大人のADHDの症状を改善するためのトレーニング方法
について詳しく説明していきます。
最近は、ADHDを始めとした発達障害についての認識が広がってきました。
例えば、忘れ物が多かったり、じっとしていられなかったりしていたことが、ADHDが原因かもしれないと考えられるようになりました。
しかし、大人については多くの人が自分がADHDに気付けないまま、自分の苦手さや生きづらさを抱えて生活しています。
特に、子育て中の親の場合は、そのADHDの影響もあって子どもの気持ちを振り回してしまっている可能性があります。
そこで、今回は、
- 自分の中で隠れたADHDに気が付く方法を教えて!
- 自分の苦手なことや嫌いなことを治す方法を知りたい!
- 薬に頼らずにADHDを克服する方法ってあるの?
といった疑問や悩みに応えてきます。
なお、この記事では、脳内科医の加藤俊徳先生の書籍「ADHDコンプレックスのための脳番地トレーニング」を参考にしています。
ADHDとは
ADHDとは、DSM-5で「注意欠如多動症」と言い、不注意と多動性・衝動性が特徴です。
不注意:活動に集中できない,気が散りやすい,物をなくしやすい,順序立てて活動に取り組めないなど。
多動性・衝動性:じっとしていられない,静かに遊べない,待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど。
ADHDを始めとする発達障害について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
隠れやすいADHD
先ほど説明したように、ADHDかどうかについては、不注意・多動性・衝動性の3点の症状が目立っていれば、自分自身がADHDであると気づくことは比較的簡単です。
自分で気がつけば、自分で病院に行って正式に診断してもらうことができます。
しかし、大人の場合、行動面では年齢相応に落ち着いてしまうため、ADHDが見過ごされることが少なくありません。
さらに、併存疾患のある場合や脳に強みがある場合には、更にADHDの発見が見過ごされやすくなります。
併存疾患がある場合
併存疾患とは、心身の疾患が複数生じている状態を示します。
他の疾患の症状が目立ってしまい、ADHDの症状が隠れやすいということです。
昼間の強い眠気・入眠困難・いびきなど
いびきがあると、入眠中に酸素が脳と体に十分に行き渡らず、睡眠障害、不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの可能性が疑われます。
すると、昼間でも集中力が低下し、やる気がないといったADHDの症状を隠すことがあります。
突然不安になる・電車に乗るのが怖い・人前で緊張する
これらの症状は、不安障害に伴うことが多く、不安障害はADHDと併存することが知られています。
不安障害が強いと、運動不足や生活リズムの崩れにつながり、それにより気持ちの不安定さが前面に立ってしまい、多動性が目立たず、不注意などがあってもほとんど気づかれないまま放置されることが多くあります。
酒、たばこ、スマホ、ゲームなどやらずにいられない
現代の日本では、環境の影響を受けやすいADHDの人にとって、簡単に依存しやすい環境に置かれていると言えます。
こうした依存症があると、周囲の人は依存症の方で困るため、ADHDに目が向きにくくなります。
依存症の人に対しては、まずはADHDを疑うことも大切です。
依存症については、次の記事で詳しく説明しています。
自閉スペクトラム症のみの診断を受けている
人と会っても目を合わせられない、コミュニケーション障害が強いといった場合、自閉スペクトラム症とだ診断されることがあります。
実は、自分のことが分からない、人との距離感がつかめないのは、自閉スペクトラム症に限らず、ADHDでも認められる症状です。
脳に強みがある場合
どんな人にも脳には強みといえる場所があります。
その強みの特徴によって、ADHDの症状(自分の弱さ)が隠れてしまうことがあります。
メンタルが安定しているタイプ
気が短い、思いつきで動くといった衝動性がないメンタルが安定しているタイプです。
精神的に安定しているように見えるため、ADHDと思われにくい傾向があります。
しかし、実は記憶系や思考系が弱く、すぐに行動できない、締め切りに間に合わないなどの悩みがあります。
成績が良いタイプ
記憶力が良く、勉強ができる高偏差値のADHDのタイプです。
過集中により猛勉強ができたり、記憶力や計算力に優れていたりします。
しかし、感情系が弱く、意欲が減退して活動性落ちることがあります。
伝達系も弱いので、人とのコミュニケーションがうまくいかず、一人になりやすい傾向もあります。
やる気があるタイプ
活動性でやる気に満ちていて、やりたいことも多くて行動的なタイプです。
他人ウケも良いことが特徴的です。
一方で、仕事ややることが多すぎて、忘れ物やうっかりミスが多く、時間を守れないなどの記憶や理解が弱い人がいます。
整理整頓ができるタイプ
片付けができる整理整頓ができるタイプです。
ADHDの人は片付けが苦手と思われがちですが、理解系が強く、頭の中を整理できる人は片付けることができます。
一方で、気分屋でわがままなところがあり、すぐに怒ったり、キレたり、思いどおりにならないと憤慨しやすいなどの傾向があります。
スポーツができるタイプ
身体能力が高く、運動系の部活動で活躍できるタイプです。
運動神経が良いため、落ち着きがないことやじっとできないことは活動性の高さだと思われがちで、周囲からADHDが見過ごされやすくなります。
一方で、座学が苦手で、授業に集中することができません。
他人の話をしっかり聞けるタイプ
聴覚系が強い人は、しっかりと人の話を聴くことができます。
特に、専門職や経営者などは、しっかりと相手の指示を聞くことができるため、ADHDの症状が表に出にくくなります。
一方で、理解系が弱く、極端に片付けが苦手な人がいます。
気の利くタイプ
視覚系が強い人は、人の動きが観察できるので、人への配慮ができます。
人に優しく接することができるため、人当たりがよく捉えられがちです。
その一方で、感情系や思考系が弱く自分のことがよくわからない、将来の目標がないなどずるずる過ごすことがあります。
社交的なタイプ
伝達系が強く、どんな人とも柔軟に会話できるタイプです。
人とのコミュニケーションに支障がないため、会社などでも問題ないように見られます。
一方で、複数のことをうまく処理できないなどマルチタスクが弱く困りがちです。
隠れたADHDを発見する
ADHD改善の第一歩は、自分の隠れたADHD脳を自覚することです。
ADHD脳の人は、基本的に自己自覚が乏しい傾向があります。
日常的な困りごとやトラブルの多くは、自分の中に原因があると気づかなければ、問題の解決に向かうことはできません。
また、一人ひとりのADHD脳の特徴や脳の発達レベルは全く異なっており、できることとできないことは人によって異なります。
自分がADHDかもしれないと自覚するだけでなく、何ができて、何ができないかを分けて自覚することが大切です。
それによってはじめて、ADHDのトレーニングにつなげることができます。
ADHDの症状や弱みのトレーニング方法
自分の隠れたADHDを自覚するために、自分にどのような「弱み」が該当するのか確認して、それに合ったトレーニング方法を見つけていきましょう。
脳の特徴に合わせて、8つの「脳番地」に分けて説明していきます。
「脳番地」とは、ADHDの影響を受けると考えられている8つの領域を指します。
感情系脳番地
記憶系脳番地
思考系脳番地
理解系脳番地
運動系脳番地
聴覚系脳番地
視覚系脳番地
伝達系脳番地
加藤俊徳先生の本には、8つの脳番地ごとの「脳診断」と「処方箋」がたくさん紹介されていますが、ここでは代表的なものだけを紹介します。
感情系脳番地トレーニング
「自分の怒りを抑えられない」という弱みが特徴のタイプです。
自分の脳は感情系が弱いので、他人や環境、今の状況に影響されやすく、振り回されやすいと自覚しましょう。
こうした人には、怒りを爆発される前に「自分は怒っている」とスイッチが入ったことに気づくことが大切です。
怒りの爆発を防ぐ方法として、イライラに気づいたら、すぐに体を動かすようにしましょう。
身体を動かすと、注意が運動系脳番地にシフトするので、感情系脳番地にかかっていた負担が減り、怒りが薄らいできます。
子育て中の方の怒りのコントロールやトレーニングについては、アサーションも効果的です。次の記事を参考にしてください。
記憶系脳番地トレーニング
「必要なものをどこに置いたのか忘れてしまう」といった弱みが特徴のタイプです。
ADHD脳の人は、基本的に脳の覚醒度が低く、頭がボーとしているため、いろいろなことを忘れがちです。
目先のことで精一杯になり、過去を振り返る余裕がなく、これが記憶が弱いままであることにつながります。
こうした人は、行動をパターン化して、行動を体に染み込ませることで、置き忘れなどを防ぐことができます。
何が何でも定位置に置くことを自分で義務付けて、体に覚えさせることで改善できます。
思考系脳番地トレーニング
「興味がないとなかなか取り組めない」といった弱みが特徴のタイプです。
これを「マインド・ワンダリング」と言い、思考の目的がゆらゆらとふらつく頻度が健常者よりも高頻度に起こりがちです。
こうした定まらない自分の意思を継続するためには、翌朝の目的を寝る前に設定し、翌朝、目的をもう一度見直すことが必要です。
また、最初の一歩を踏み出しやすくするために、例えば休みの日のやることを時間割を作って何時から何時までは何をすると決めておきましょう。
自分のやらなければならないことが決まっていれば、半ば無理矢理に自分を動かすことができます。
理解系脳番地トレーニング
「曖昧な指示や抽象的な表現でフリーズする」といった弱みが特徴のタイプです。
理解系脳番地が弱いということは、頭の中の整理が苦手だということです。また、実体験を伴わないことを頭の中で想像することも苦手です。
「自分は頭の中が混乱しやすい」「自分は体験学習型だ」と自覚することが大切です。
その上で、曖昧な指示や抽象的な表現を出されたときには、「締め切りはいつまでか」「範囲はどこからどこまでか」など自分から聞く必要があります。
また、一度やった仕事はしっかり手順をメモしておいて、自分で確認できるようにするしかありません。
運動系脳番地トレーニング
「じっと座っていられない」といった弱みが特徴のタイプです。
ADHDと運動には深い関わりがあります。
ADHD脳の人は、運動不足になると症状が徐々に重くなっていきます。
運動不足で症状が重くなっていくと、多動症状が目立たなくなっていきますが、それは改善されたわけではないので、多動よりも深刻な問題と言えます。
大人でも子供でも、ADHD脳の人がじっとしようとするのは、大きな間違いです。
じっと座っていられないのであれば、長時間座るような会議などの場合には、初めからタイミングを決めておいて、途中で一度だけ立ち上がって部屋の外に出ることがおすすめです。
また、ペットボトルの水を飲んだり、タブレットを食べたりして、一度気分を仕切り直すと座っていられるようになります。
聴覚系脳番地トレーニング
「雑音が気になる」といった特徴が弱みのタイプです。
ADHD脳の人は、聴覚系が弱いため、耳から聞いたことが頭に残りにくく、様々な場面で苦労します。
聴覚記憶が弱く、自分で意識して注意を向けたことしか聞くことができません。
また、雑音により脳がざわついた状態になりやすい人もいます。
雑音の多い場所では、継続的に集中できる、自分にとって面白いと思えることをやるようにしましょう。
また、やる課題が決まっているのであれば、ヘッドフォンで自分の好きな音楽をかけるのも良いでしょう。
視覚系脳番地トレーンング
「何度も同じミスを繰り返す」といった弱みが特徴のタイプです。
目の前で起こることをじっくり見ていないので、見て判断する力が弱い人が少なくありません。
スマホやパソコンで活字を目で追っていると、周囲が一切見えていないことがあります。
注意力や興味が持続せずに、他のことに意識が向きやすく、それが同じミスを繰り返すことにつながります。
ケアレスミスをなくするためには、自分が書いたものを、もう一度加工し直すという訓練が必要です。
例えばパソコンのメールで書いた文章を、ワードに貼り付けて確認するなどすると、見え方が変わって、間違いに気づくことができるようになります。
伝達系脳番地トレーニング
「思ったことをそのまま言ってしまう」といった弱みが特長のタイプです。
ADHD脳の人は、伝えることや言葉に関して失敗談が多くあります。
話し方も独特で、話を被せて一方的な話し方になりがちで、相手の話を聞き終わらないうちに、被せるようにして自分の言いたいことを言ってしまいます。
思ったことをそのまま言ってしまって失敗をしてしまうと、話さない方がいいと思いがちですが、話すことを抑制するのはADHD脳を改善する上ではマイナスです。
つまずきながらでも、少しずつ自分の考えを人に伝えるようにしましょう。
また、本を読むことで、頭の中に内言語を響かせ、会話力を伸ばすトレーニングもあります。
自分の気持ちを伝える方法としては、「アサーショントレーニング」もおすすめです。
おすすめのオンラインカウンセリング
自分のことや家族のことでお悩みの方は、一度オンラインカウンセリングを検討してみてはいかがでしょうか?
他人に相談することに多くの人は抵抗がありますが、私のブログをお読みになっていただいている方は、悩みを解決するために一歩進むことのできる方です。
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多種多様な相談内容にも対応しているので、一度試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、大人のADHDの症状を改善するためのトレーニング方法について説明しました。
親自身が自分のADHDに気が付いて、弱さや苦手なところをトレーニングで改善できれば、日常の失敗やミスが少なくなり、きっと余裕のある子育てにつながるでしょう!
発達障害の方向けの勉強の仕方について解説した記事もあるので、参考にしてください。
ご相談やご質問がある場合は、こちらにご連絡ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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