言いたいことがあるのに、その場の空気を考えてのみ込んでしまう。あるいは逆に、イライラして子どもやパートナーにきつく言いすぎて、あとで自己嫌悪に陥る——。我慢と衝突のあいだで、心がすり減っていませんか。
実は「我慢する」でも「攻撃する」でもない、第三の伝え方があります。それがアサーションです。
私は公認心理師として、伝え方の悩みをたくさん伺ってきました。この記事では、アサーティブに伝える5つのコツと、それが子どもの自己表現力まで育てる理由を、一緒に見ていきましょう。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 言いたいことを言えずに、いつも我慢してしまう方
- つい感情的に言いすぎて、あとで後悔することが多い方
- 子どもやパートナーへの伝え方を見直したい方
- 子どもに「自分の気持ちを言える子」に育ってほしい方
言いたいことが言えない・つい言いすぎる、その理由

「我慢ばかりしてしまう」「気づくと相手を責めている」。どちらも、根っこにあるのは同じものかもしれません。自分の気持ちより、相手や周囲の反応を優先しすぎている状態です。
我慢するタイプの方は「言ったら嫌われる」「波風を立てたくない」と考えがちです。一方、攻撃的になりやすいタイプの方も、実は「わかってもらえない不安」を抱えていることが少なくありません。どちらにも共通しているのが、自分の気持ちを大切に扱えていないこと。ここを少しずつ変えていくのが、アサーションの第一歩です。
ゆう我慢も言いすぎも、根っこは「自分を後回し」なのかもしれません。
アサーションとは?3つの自己表現タイプ
アサーションとは、自分も相手も大切にしながら、自分の気持ちを正直に伝えるコミュニケーションのことです。自己表現の仕方は、大きく3つのタイプに分けられます。
攻撃的タイプ
自分の意見を優先し、相手の気持ちを後回しにする伝え方です。「どうしてできないの!」と相手を責める言い方が出やすく、関係がぎくしゃくしやすくなります。
非主張的タイプ
相手を優先しすぎて、自分の気持ちを抑え込む伝え方です。その場は丸く収まっても、不満が静かにたまり、ある日爆発してしまうこともあります。
アサーティブタイプ
自分の気持ちも相手の気持ちも、どちらも大切にする伝え方です。「私はこう思う。あなたはどう?」と、対等に歩み寄ろうとする姿勢が特徴です。目指したいのは、この3つ目のタイプです。
アサーティブに伝える5つのコツ
いきなり完璧を目指さなくて大丈夫です。次の5つを、できそうなものから少しずつ試してみてください。
①「言っていい」という権利を思い出す
誰にでも、自分の気持ちや考えを表す権利があります。「これくらいで言うのは申し訳ない」と感じる方こそ、まずこの前提を思い出してください。
②「言ってはいけない」という思い込みを見直す
「いい親は我慢するもの」「波風を立てるのは悪いこと」。そんな思い込みが、あなたの口をふさいでいませんか。その考えは、本当にいつも正しいでしょうか。
③まず自分の気持ちを把握する
「私は今、何が嫌で、どうしてほしいんだろう」。伝える前に、自分の気持ちを自分で確かめる。これがアサーションのいちばんの土台になります。
④結果や周囲を、気にしすぎない
伝えた結果どう思われるかは、相手が決めること。あなたにできるのは、誠実に気持ちを伝えるところまでです。相手の反応まで背負い込まなくていいのです。
⑤「アイメッセージ」で伝える
「(あなたは)なんでやらないの」ではなく、「(私は)手伝ってくれると助かるな」。主語を「私」にして気持ちを伝えるのがアイメッセージです。相手を責めず、自分の気持ちをまっすぐ届けられます。
もう少し具体的な「型」が知りたい方には、DESC法という手順がおすすめです。事実を描写し→気持ちを伝え→提案し→選択する、という流れで考えると、感情的になりすぎずに伝えられます。別記事で詳しく紹介しています。


親のアサーションは、子どもの自己表現力を育てる


アサーションは、あなた自身を楽にするだけではありません。親がアサーティブに伝える姿は、子どもにとって最高のお手本になります。
親が「お母さんはこう思うな」と気持ちを言葉にしていると、子どもも「自分の気持ちは言っていいんだ」と学んでいきます。反対に、我慢ばかりや感情的な言い方が続くと、子どももそのパターンをまねしてしまいがちです。
完璧でなくて大丈夫です。あなたが少しずつアサーティブを練習する姿そのものが、子どもの「自分の気持ちを伝える力」を静かに育てています。
もっと実践してみたいときは
まずは「自分が今どのタイプに近いか」を知っておくと、練習の方向が見えやすくなります。簡単なチェックシートも用意しているので、よければ試してみてください。


「頭ではわかっても、いざとなると言えない・言いすぎてしまう」。そんなときは、専門家と一緒に練習してみるのも一つの方法です。話すうちに、自分の伝え方のクセに気づけることもあります。
伝え方のクセを、一緒に見直してみませんか
我慢と衝突をくり返してしまうのは、あなたのせいではありません。専門家に話すことで、自分に合った伝え方が見えてくることがあります。オンラインなので気軽に始められます。
まとめ
今日お伝えしたことを、最後に振り返っておきますね。
- 我慢も言いすぎも、根っこは「自分の気持ちを後回し」にしていること
- アサーションは、自分も相手も大切にする第三の伝え方
- コツは「権利を思い出す・思い込みを見直す・気持ちを把握・気にしすぎない・アイメッセージ」
- 親がアサーティブに伝える姿が、子どもの自己表現力を育てる
- 完璧でなくていい。練習する姿そのものに意味がある
言いたいことを上手に伝えられると、心はぐっと軽くなります。今日のどれか一つから、あなたのペースで始めてみてくださいね。あなたの「正直な気持ち」は、伝えていいものなのですから。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
