「先生から電話があった。うちの子が友達に意地悪な言葉を言い続けているらしい」——そんな知らせを受けたとき、あなたはどんな気持ちになりましたか。
驚き、恥ずかしさ、怒り、そして「なぜそんなことを」という戸惑い。いじめられた側の親へのニュースや記事は多いのに、「うちの子が意地悪をしていた」加害側の親向けの情報は、驚くほど少ないのが現状です。
この記事では、子どもが友達に意地悪な言動をとる背景と、親としてどう関わればいいかを整理します。責めるだけでは変わらない——その先にある向き合い方を一緒に考えましょう。
私は公認心理師として子ども家庭支援センターに勤務し、発達障害・不登校・問題行動の相談を日々受けています。以前の職場では、友人への攻撃的な言動が非行につながっていった少年たちとも長く向き合ってきました。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもが友達に暴言・意地悪をしていると学校から連絡を受けた方
- 繰り返しているのに、叱っても効果がなくて困っている方
- なぜそんな言動をとるのか、背景を知りたい方
- いじめに発展する前に手を打ちたいと思っている方
まず知っておきたい——「意地悪」と「いじめ」の違い

ゆうどちらも軽くは見られませんが、段階の違いがあります。
子どもが友達に意地悪をするという行為には、幅があります。「一度きつい言葉を言った」と「繰り返し特定の子を標的にしている」では、対応の重さが変わります。
🔑 段階の整理
- 一時的な言動——カッとなって強い言葉が出た、遊びの中でのからかいが度を越えたなど。発達途上の子どもには起こりやすく、適切に対応すれば変化しやすい
- 繰り返す意地悪——特定の子に続けて暴言を言う、仲間外れに誘う、陰口を言い続けるなど。この段階では、背景にある要因を探りながら丁寧に向き合う必要がある
- いじめの段階——継続的・組織的に特定の子を傷つける。学校・専門機関と連携した対応が必要になる
「意地悪をする子」にラベリングしてしまうことも、「子どものしたことだから大したことない」と軽く見ることも、どちらも正確ではありません。された側の子どもには確かに傷つきがある、という前提で向き合うことが出発点です。
なぜ子どもは友達に意地悪をするのか——4つの背景



「意地が悪い子」ではなく「何かを抱えている子」として見てほしいです。
子どもが友達に意地悪をするとき、「性格が悪いから」「家のしつけが悪いから」という単純な説明では、根本的な対応につながりません。背景を知ることで、向き合い方が変わります。
① 自分がしんどいことを上手く言葉にできない
学校でのストレス、家庭での緊張感、友人関係での不安——こうした感情を言葉にする力がまだ十分でない子どもは、しんどさを誰かへの攻撃という形で外に出してしまうことがあります。意地悪の相手が「弱そうに見える子」「自分に反論しない子」になりやすいのは、そのためです。
② 仲間の中での立場・承認欲求
特定の子を標的にすることで、グループの中での自分の立場を守ろうとすることがあります。「あの子をバカにすることで、自分がその上にいられる」という構造です。
この背景がある場合、叱っても「また見つからないようにやろう」と学習するだけになりやすく、仲間集団の力学そのものに目を向ける必要があります。
③ 発達特性が関わっていることもある
ADHD(注意欠如・多動症)の特性がある子どもの場合、衝動性から言葉が先に出てしまうことがあります。「悪口を言ったらいけない」とわかっていても、カッとなった瞬間に止められない。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある子どもの場合、相手が傷ついているという感覚が読み取りにくく、「冗談のつもり」「正直に言っただけ」という感覚のまま繰り返すことがあります。
これは「発達障害だから仕方ない」という話ではなく、伝え方を変えることで行動が変化しやすくなるという視点です。「何度注意しても変わらない」と感じているなら、専門家への相談が助けになります。
④ 見聞きしてきた関係性のパターンを繰り返している
家庭内での言葉遣い、きょうだい間の関係、以前いじめられた経験——子どもは見聞きしてきた関係性のパターンを、友達関係の中で再現することがあります。
これは「親のせい」という話ではなく、子どもが「そういう関係の形があるのだ」と学習してきた結果です。別のパターンを体験・学習させることで、変化が起きていきます。
💬 一般化した事例
これはあくまで一般化した事例ですが——小学4年のLくんは、クラスの特定の子に「キモい」「来るな」と繰り返し言っていることが担任から伝えられました。お父さんが「なぜそんなことをするんだ」と叱りつけると、Lくんは黙り込んでしまいました。後で担任が話を聞くと、Lくん自身が以前のクラスで似たような経験を受けており、「強い側にいれば安心」という感覚が根付いていたことがわかりました。
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子どもへの向き合い方——叱って終わりにしない対応





叱ることは必要です。でも、それだけでは変わりにくい。
学校から連絡を受けた直後、感情的に叱りつけたくなるのは当然のことです。ただ、叱るだけで終わってしまうと、子どもは「見つからないようにやればいい」と学習するだけになることがあります。
避けてほしい対応
⚠️ 逆効果になりやすい対応
- 長時間の問い詰め・怒鳴り続ける——子どもは萎縮し、正直に話せなくなる。再発の隠蔽につながりやすい
- 「意地悪な子」「最低な子」などのラベリング——自己評価を傷つけ、かえって攻撃性が高まることがある
- 「もうしないよね」という約束だけで終わらせる——背景に触れないまま終わると繰り返しやすい
- 「あなたがやったはずがない」と否定する——子どもが「何をしても守られる」と学習し、行動が止まらなくなる
子どもへの向き合い方のポイント
🔑 関わり方の3ポイント
- 行為を明確に否定しつつ、子ども自身は否定しない——「あの言葉は絶対にダメ。でも、あなたが嫌いなわけじゃない」と分けて伝える
- 「された側の気持ち」を具体的に伝える——「○○さんはどんな気持ちだったと思う?」と、相手の立場を想像させる問いかけをする。答えを急がず待つ
- 「なぜそうしたのか」より「そのとき何があったか」を聞く——責める問いより、状況を一緒に振り返る問いのほうが子どもは話しやすい。「そのとき、どんな気持ちだった?」と感情から入る
子どもが話し始めたら、途中で評価・判断を挟まずに最後まで聞くことが大切です。「それは違う」と言いたくなっても、まず聞き切る。その後で「でも、だからといってその言葉はダメだよ」と伝える順番を守ることで、子どもの言葉が増えていきます。
学校・相手の保護者との連携と、再発を防ぐために
学校との連携
学校への対応は、感情的にならず事実を確認しながら進めることが基本です。「子どものことをしっかり向き合います」という姿勢を早めに示すことで、学校側も連携しやすくなります。
担任やスクールカウンセラーに「家でどう話せばいいか」を相談することも有効です。学校と家庭が別々に動くより、同じ方向で関わるほうが子どもの変化が起きやすくなります。
再発を防ぐための家庭での視点
意地悪な言動が繰り返される場合、次の視点を持っておくことが助けになります。
🔑 繰り返す場合に確認してほしいこと
- 子どもが家でストレスを発散できている場所はあるか
- 子ども自身が誰かから意地悪を受けていないか(加害・被害の役割は固定でないことがある)
- 発達の特性(衝動性・相手の感情への鈍さ)が関わっていないか
- 家庭内の言葉遣い・関係性のパターンが影響していないか
「またやってしまった」という繰り返しが続くようなら、家庭内だけで解決しようとすることに限界があります。スクールカウンセラー、子ども家庭支援センター、発達の専門機関など、外部の専門家と連携することをお勧めします。
⚠️ 早めに専門機関に相談してほしいとき
- 繰り返し注意しても変化が見られない
- 特定の子を継続的に標的にしている(いじめの段階に近い)
- 暴言が暴力を伴うようになっている
- 子ども自身が罪悪感をまったく示さない
- 発達特性が関わっているのではと感じている
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 「意地悪をする子」ではなく「何かを抱えている子」として背景を探ることが対応の出発点
- 背景には「感情の言語化が苦手」「仲間内での立場の確保」「発達特性」「関係パターンの再現」などが複合している
- された側の子どもに確かに傷つきがある、という前提は外さない
- 叱るだけでは隠蔽を学習するリスクがある——「行為を否定する、子どもを否定しない」の分け方が重要
- 学校との連携は、感情的にならず事実確認しながら「一緒に向き合う」姿勢で進める
- 繰り返す場合や深刻化の兆しがある場合は、早めに専門機関へ
「なぜわが子が」という問いへの答えは、すぐには見つからないことが多いです。でも、背景を知ろうとすること、学校と連携しようとすること、専門家に話してみること——その一歩一歩が、子どもの行動を変えていく力になります。
一人で全部抱えようとしなくていいんです。一緒に考えましょう。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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