日常生活や仕事をする中で、他の人が当たり前のようにできていることが自分にとっては難しく感じることありませんか?
特に、女性の場合、学生まではそこまで苦労は感じなかったけど、実際に仕事をしたり子育てを始めたりしてから、うまくできないことで落ち込んでしまうことがあります。
もしかすると、その原因が発達障害にあるのかもしれません。
発達障害にはさまざまな特徴がありますが、女性ならではの悩みもあるため、苦労している女性も少なくないでしょう。
そこで、本記事では、発達障害の女性が上手に生きるためのスキルを4つの悩み別に紹介します。
この記事は次のような人におすすめです。
- 生活や仕事でうまくできないと感じている女性
- 自分は発達障害ではないかと悩んでいる女性
- 身近に発達障害で困っている女性がいる方
この記事は、沢口千寛先生の書籍「ちょっとしたことでうまくいく発達障害の女性が上手に生きるための本」を参考にしています。
発達障害のある女性とは
発達障害と聞くと「男性」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
実際に、大人でも子供でも発達障害と診断される割合は男性の方が高いです(男性:女性=2.3:1)。
例えば、ADHDの場合、男の子はじっと座ってられずに落ち着きがないため発達障害が目立ちますが、女の子は頭の中が多動で思考がぐるぐるしていても行動面では落ち着いているように見えるので気づかれにくいということがあります。
そのため、女性が大人になってから、「私、もしかすると発達障害ではないかしら。」と自分で気がつくようになることがあるのです。
また、「グレーゾーン」と呼ばれる、発達障害の診断まではつかないけど、その傾向がある方も少なくありません。
周りからは一見普通に見えるため、その女性が悩んでいたとしても「大したことはない」と軽く見られてしまいがちです。
周りに頼れない、自分でなんとかするしかないと考えて頑張っても、結果的にうまくいかなくて落ち込んでしまいます。
そのような女性たちがうまく生活できるようになるための方法について、次から詳しく説明していきます。
なお、今回紹介している書籍では、次の6つの項目で構成され、それぞれの悩み別に対策が説明されています。
- 自分に合う仕事を見つけたい
- 家事・生活の悩みを何とかしたい
- 育児の悩みを何とかしたい
- 疲れやすい体質を何とかしたい
- 人間関係の悩みを何とかしたい
- 女性にありがちな悩みを何とかしたい
この記事では「自分に合う仕事」「家事・生活の悩み」「育児の悩み」「女性にありがちな悩み」の4つについて、それぞれ内容を紹介します。
自分に合う仕事を見つけたい
仕事が変われば人生が変わる
発達障害の人にとって、仕事との相性はとても重要です。
相性が悪いとどれだけ努力しても結果が出ないことも少なくありません。
適職がわからない
- 業務を分割して自分の得意を見つける
- ナビゲーションブックを活用する
- 適職診断・性格診断を受けてみる
自分の得意なことが見つけられない人は、自分の業務を分割して分析してみると得意なことを発見しやすいです。
例えば、データの入力作業であれば、次のように分割できます。
- データ収集
- 集めたデータを整理する
- データを入力する(数字)
- データを入力する(文字)
- 見た目を整える
このようにできる限り分割してみることで、データを入力すること自体は苦手でも、「人に声をかけてデータを集めることは苦ではない。」、「数字のデータはミスをしやすいけど、文字情報の場合はミスが少ない。」、「データを見やすく整える作業は楽しい。」など、新たな気づきが得られるかもしれません。
業務を細分化することで、自分がどこでつまずいているか、反対にどこが得意なのかが見えてきます。
また、「ナビゲーションブック」を活用することも検討しましょう。
ナビゲーションブックとは、障害や病気を持つ人向けの自分の取説のようなもので、これを使うと自分の障害特性に特化した自己分析ができるようになります。
「ナビゲーションブック」と検索すると色々出てきますが、この書籍の筆者がおすすめしているのは「独立行政法人高齢・障害・求人者雇用支援機構」が発行している「ナビゲーションブックの作り方」という資料です。
さらに、適職診断や性格診断を受けてみるのも対策の一つです。
有名なのは「エムグラム診断」や「16パーソナリティーズ性格診断」などの無料のものがあります。
ただし、診断結果はあくまでも傾向を示すものなので、実務に即しているとは限りません。
心理テストのプロで就労にも詳しい専門家として、公認心理師や臨床心理士で「産業カウンセラー」資格を持っている人に相談するのもおすすめです。
つい無理をしてしまい、続かない
- 頑張る方向を自己開示に向ける
- 職場における上手なヘルプの出し方を見つける
職場で初めから過剰に適応しようとして無理をしてしまい、そうしたキャラクターと認識されてしまうと、後になって自己開示した時に良くも悪くも相手の期待を裏切ってしまいます。
そのため、早めの段階で自己開示していき、自分のキャラクターをわかってもらうことが過剰適応を避けるコツです。
過剰適応している人は、「仕事」と「人間関係」に全神経を集中していることが多く、何とかして仕事を覚えよう、人の名前を覚えよう、笑顔で対応しようといった具合に、常に外部に意識を向けています。
その意識を自分に向ける、つまり「自己開示」に向けてみましょう。
自己紹介や会話でのちょっとした好きに自己開示をすると良いでしょう。
「ちょっと忘れっぽいところがあるので、うっかりしていたら遠慮なく突っ込んでください。」といった具合です。
また、頑張っても定時内で終わらない、ちょっとした休憩も取れないほど忙しい、毎日緊迫していて心が休まらないなど、過剰適応を感じたら、まずは周囲の人に相談してみましょう。
その際、ただ「できません」というのではなく、自分が「いつ」「どこで」つまずいているのかを確認してから相談すると、周りの心証も良くなります。
家事・生活の悩みを何とかしたい
ちょっとの改善で大きなメリット
日常生活場面でも発達障害のある女性の苦手はたくさんあります。
その分、うまくこなせるようになったらメリットはかなり大きいです。
例えば、毎日やる家事で1分の時短に成功すれば、1年で365分も有効な時間を作ることができます。
片付けられない
- 間取り図を書いてみる
- 時間の使い方を工夫する
- プロの力も借りてみる
ADHD傾向の人に多いと言われているのが、部屋の片付けがうまくできない悩みです。
その原因として考えられているのは「視覚認知の弱さ」や「空間認知能力の弱さ」です。
これらの力が弱い人は、部屋が散らかっていても気にならなかったり、どこに何を収納していいのか分からず、適当に詰め込むだけになってしまったりします。
こうしたタイプの人であれば、部屋の間取り図を描くことで、「ここにスペースがあるな。」「ここにモノが集中しているな。」という家全体をイメージしやすくなります。
次に、どこが散らかっているのか書き込み、自分の生活の動線を確認することで、「収納が遠いから放置してしまうのかも。」「玄関にラックがあれば、コートがその辺に放置されない。」という感じに気づくこともできるようになります。
その上で、家具の配置を考え直すと片付けやすくなります。
それでもうまくできないと感じる方には、家事代行サービスを頼むことも良いでしょう。
料理ができない
- 料理・自炊に対するハードルを下げる
- レシピサイトやアプリをうまく活用する
ASD傾向の人は、レシピに書いてある「適量」や「適宜」という言葉を見ると止まってしまいますし、ADHD傾向の人は料理の工程の多さがハードルを上げています。
出来立ての料理を複数食卓に並べるには高度なマルチタスクが求められます。
料理ができないことに悩む場合は、「1食1品でいい」「疲れた日は外食でOK」といった感じに料理へのハードルを下げた上で、自分のペースで続けることが大切です。
料理を毎日作っている人に共通するのは、料理においてうまく手を抜くコツを掴んでいる点です。
また、食材が余ってしまう場合には、レシピサイトやアプリを使って、食材検索をしてみましょう。
今、冷蔵庫にある食材だけで作ることのできるレシピがわかります。
気が散りやすい人はコンロを同時に複数使わず、1つだけに絞り、他の料理は火を使わずに自動で動いてくれる電子レンジや電子鍋などを利用すると安心です。
育児の悩みを何とかしたい
一人で抱え込まずに周囲を頼ろう
育児では、発達特性的に苦手とされることを求められることが多いです。
臨機応変な対応、コミュニケーション、マルチタスクなど、発達障害があってもなくても育児をするのは大変です。
子供の発達障害との向き合い方が分からない
- 特性のぶつかり合いはパターン別に解消する
- 発達特製の悩み解決は早期療育がキー
母親も子供も発達特性を持っていると、その特性同士がぶつかり合うことがあります。
特性同士のぶつかり合いのパターンは次のようなものです。
- お互いのこだわりが衝突しけんかにつながる「こだわり衝突パターン」
- 相手の特性が自分の特性を刺激してストレスがたまる「特性連鎖パターン」
- 親の苦手と子供の苦手の分野が合致していて、教育ができない「苦手お揃いパターン」
母親も発達特性があり、子供の頃に苦労した経験がある場合、「子供の生きづらさがわかるからこそ私がしっかり配慮しなければ」と思う傾向にあります。
「こだわり衝突パターン」の場合は、大抵母親が折れてフラストレーションをためがちです。
どちらのこだわりを押し通してもどちらかがストレスにつながってしまう状況を打破するには、母親側のこだわりを変える必要があります。
ASD傾向の人は、合理性や論理性があるのなら、柔軟にこだわりを変えることができます。
つまり、母親のこだわりを変えなければ子供が暴れて自分のストレスになるという非合理性を認識できれば、自分のこだわりを変えやすくなります。
「特性連鎖パターン」の場合は、まずは子供と母親自身の特性を把握しましょう。
特性をなくすことはできませんが、工夫次第で影響を受けにくくすることはできるはずです。
「苦手お揃いパターン」の場合は、母親が教えることを頑張らずに、「療育」を頼る方法があります。
具体的には「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの通所施設と、「福祉型障害児入所施設」などの入所施設があります。
育児が苦痛で毎日つらい
- 育児の基準を下げる
- 愛ある手抜きをする
- 一人になれる時間を待つ
子育てのルールで一番大切なことは、「自分が元気であること」です。
育児本や他の人の育児の話を聞くと、「もっと私も頑張らないと」という気持ちになりますが、自分がつらい状況なのに「子供のために」と頑張ってしまうと、自分を犠牲にしがちです。
子供が大切な存在であることは違いませんが、だからこそ母親が元気であり、心に余裕があることを一番にしましょう。
そのためには、①育児の基準を下げる、②愛のある手抜きをする、③一人になれる時間を持つ、の3つが大切です。
①について、子育ての基準についてもしかすると相当に高く設定しているかもしれないので、自分が元気な状態を維持できる程度に、ハードルを下げてみましょう。
ハードルを低くしても、その基準に合わせて育児のやり方を変える必要はなく、これまでどおりの育児のやり方を継続しても構いません。
これまで「やって当然」と思っていたことが、「かなり頑張っている」という認識に変わるので、自己肯定感が上がりやすくなります。
②について、家族との時間をもっと確保し、自分の心に余裕を持たせて家族に優しく接するために、愛のある手抜きをしましょう。
例えば、子供の学校のバザーで手作りグッズを提出しなければならなかったため、メルカリでハンドメイド品を購入する、仕事のある日に晩御飯を作るのは大変なので、ミールキットを利用するなどは愛のある手抜きといえます。
③について、「母親は常に子供と寄り添うべきだ」という考え方に固執している場合には、一人になれる時間を積極的に作りましょう。
子供を預けられる人は預けて、その間自分の趣味に没頭するのも良いですし、友達と遊ぶのも良いでしょう。
それによりリフレッシュできると育児を頑張る活力が湧いてきます。
女性にありがちな悩みを何とかしたい
不器用でもセンスがなくても大丈夫
きれいに眉を描く、周囲から浮かないファッションをするなど、女性はセンスや器用さといった発達障害の人には苦手なものを求められるシーンが多いです。
努力だけが解決策だった時代は終わり、今では便利なサービスやグッズが助けてくれます。
ファッションが苦手
- 他人任せにしてしまう
ASD傾向の人は、変化よりも定番を好む性質があるため、流行を追いかけることは興味がありません。
年齢相応のファッションというものもありますが、明確な指針というものがないために、何を着ていいのか、何を着てはいけないのか、線引きがわかりません。
頭の中で服の組み合わせをイメージすることが苦手な人も多く、洋服の購入から苦手意識を抱きやすいです。
その場合、洋服選びは他人に任せてしまった方が断然楽ちんです。
例えば、人ではなくAIが服を選んでくれるアプリがあります。
「XZ(クローゼット)」は、クローゼットにある服を撮影し、アプリにアップロードすると、1週間分の着回しコーディネートを提案してくれます。
靴やアクセサリーも登録できるので非常に便利です。
自分の年齢に合わせたコーディネートが提案されるだけでなく、天気情報も加味してくれる優れものです。
また、洋服レンタルサービスに全て任せてしまう方法もあります。
「エアークローゼット」や「Rcawaii」などのスタイリストがコーディネートしてくれるサービスがおすすめです。
自分のサイズを登録し、どんなシーンで着たいのか、どんな服が好みなのか、要望を出せばそれに合わせた服を送ってくれます。
ヘアスタイルを可愛く決めたい
- 便利グッズで簡単おしゃれヘアに
- ヘアアレンジは動画で覚える
発達障害の特徴の一つに、手先の不器用さがあります。
ヘアアレンジをする際は、自分の目の届かない後頭部で作業するため、不器用な人にはハードルが高いです。
ヘアケアもスタイリングも便利グッズを使って負担を減らすことができます。
例えば、夜にヘアオイルやヘアミルクをつけてドライヤーを掛けても、翌朝寝癖がついてしまう人は、ナイトキャップをつけてみるといいでしょう。
巻き髪が好きだけど、ヘアアイロンを使うのは面倒な人は、ダイソーのスポンジカーラーがおすすめです。
寝る前に装着するだけで翌朝カールが着くので、アイロンで髪を巻いたようなヘアスタイルにできます。
ロングヘアの人はヘアチェンメーカーというヘアアレンジグッズもおすすめです。
髪をはさんでひとまとめにしてくれるだけでなく、外した時に緩いカールがつくので、アイロンで巻く必要がありません。
まとめ
今回は、発達障害の女性が上手に生きるためのスキルを紹介しました。
発達障害の女性は仕事や子育てなど苦労することがたくさんあります。
自分でできることは今回紹介した対策法を上手に用いて対応してほしいですが、一人では難しいと感じたら身近な人や専門家に相談することも大切です。
オンラインカウンセリングでは、発達障害の特性でお困りの方に対して専門家が具体的なアドバイスをしてくれるので、上手に活用すれば「生きやすく」なります。
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント