「夫が最近、笑わなくなった気がする」
「育児を手伝ってくれているのに、どこかぼんやりしている」
そんな夫の変化が気になりながらも、「自分も余裕がないから」とそのままにしていませんか。実は、父親も産後うつになることがあります。母親だけの問題だと思われがちですが、パパの心も、子どもの誕生と同時に大きく揺れています。
この記事では、公認心理師として子育て家庭の支援に関わってきた私が、父親の産後うつのサイン・背景・そして妻としてできる関わり方を一緒に考えていきます。「うちの夫、大丈夫かな」と感じているあなたに、読んでほしい内容です。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 出産後から夫の様子がなんとなく変わったと感じている方
- 夫が育児に関わっているのに、どこか元気がなく見える方
- 「父親も産後うつになるの?」と初めて聞いた方
- 夫にどう声をかければいいか分からなくて困っている方
父親も産後うつになる——意外と知られていない現実

産後うつというと、出産を経験した母親のこととして語られることがほとんどです。でも実は、父親も産後うつになることがあります。国立成育医療研究センターの調査では、妻の出産から3か月までにうつ傾向を示す父親は約16.7%にのぼるというデータがあります。
10人に1〜2人の父親が、子どもの誕生後に心の不調を経験しているかもしれない——そう聞いて、少し驚いた方もいるかもしれません。
なぜ「父親の産後うつ」は知られにくいのか
父親の産後うつが見過ごされやすい理由は、大きく3つあります。
父親の産後うつが気づかれにくい3つの理由
- 「産後うつは母親のもの」という思い込みがある
社会的なイメージとして、産後の心の不調は母親のものと捉えられがちです。父親自身も「自分が弱音を吐いてはいけない」と感じやすい。 - 症状が「うつ」らしくない形で出ることが多い
男性の場合、落ち込みよりも怒り・イライラ・無気力・過度な飲酒といった形で現れやすく、周囲も本人も気づきにくい。 - 相談できる場所がほぼない
母親向けの産後健診や育児相談は整備されていますが、父親が気軽に相談できる窓口はまだまだ少ないのが現状です。
以前の職場で父親の育児関連の相談に関わっていたことがありますが、「妻に言えなかった」「自分がおかしいと思っていた」という声を何度も聞いてきました。気づかれないまま深刻化するケースも少なくなく、妻側からのアプローチがとても重要になります。
ゆう「夫だから大丈夫」ではなく、「夫だからこそ見えにくい」と思っておきましょう。
こんなサインが出ていたら注意——父親の産後うつの症状
父親の産後うつの症状は、母親のそれとは少し異なることがあります。「なんとなく元気がない」「以前と違う」という違和感を大切にしてください。
よく見られる症状のサイン
😔 気分・感情面のサイン
- 以前より怒りやすくなった、イライラしやすい
- 笑顔が減った、楽しそうにしていない
- 「自分はダメな父親だ」と自己否定的な発言が増えた
- 子どもや育児への関心が薄れてきた
- 将来や家計について過度に心配している
😴 身体・行動面のサイン
- 眠れない、または眠り過ぎる
- 食欲がなくなった、または過食気味になった
- お酒の量が増えた
- 仕事のミスや集中力の低下が目立つようになった
- 家に帰るのが遅くなった、家でもぼんやりしていることが多い
これらの症状が2週間以上続いている場合は、専門医への相談を検討してみてください。診断は医師の領域ですが、「最近こんな様子が続いているが大丈夫か」という形で、かかりつけ医や心療内科に相談するところから始めることができます。
これはあくまで一般化した事例ですが、子どもが生まれてから3か月ほど経ったころ、帰宅後すぐに寝てしまうようになった夫を持つBさん(仮名)から相談を受けたことがあります。「育児疲れかと思って放っておいたけど、話を聞いたら仕事でも限界を感じていた」とのことでした。早めに気づいて受診につないだことで、深刻化を防げたケースです。



「疲れているだけかな」と思ったとき、もう一歩だけ夫の様子を観察してみてください。
なぜ父親は産後うつになるのか——背景にある3つのプレッシャー


「育児をしているのは妻なのに、なぜ夫が?」と思うかもしれません。でも、父親には父親なりの、見えにくいプレッシャーがあります。
①「稼がなければ」という責任感
子どもが生まれると、父親は「家族を養わなければ」という責任感を強く感じやすくなります。育児休業を取りたくても職場の空気が許さない、妻が育休中で収入が減った分を補わなければ——そうしたプレッシャーが、じわじわと心を削っていきます。
仕事を頑張りながら育児にも関わろうとする「両立プレッシャー」は、特に真面目な父親ほど強くなりやすいです。
②育児の「孤立感」
母親には産後健診・育児相談・ママ友といったつながりが生まれやすい一方、父親はそうした場から切り離されやすいです。育児の主役は妻で、自分は「サポート役」という立場になりがちで、「役に立てていない」という疎外感を抱えることも少なくありません。
「里帰り出産」で妻と子どもが数週間家を空けるケースでは、父親が産後の孤立を深めやすいということも、支援の現場で感じてきました。
③睡眠不足と夫婦関係の変化
夜間授乳や夜泣きによる睡眠不足は、父親も同様に受けます。睡眠不足が続くと、判断力が落ち、感情のコントロールが難しくなります。また、子どもが生まれてから夫婦の会話が減り、以前の関係性が変わったと感じることもストレスになります。
📌 父親の産後うつになりやすい背景まとめ
- 真面目で責任感が強い
- 「弱音を吐いてはいけない」という思い込みがある
- 仕事も育児も全力でこなそうとしている
- パートナーが精神的に不安定な時期と重なっている
- 相談できる相手がいない・いないと思い込んでいる
妻としてできること——責めず、並走するための関わり方
「夫が産後うつかもしれない」と気づいたとき、妻としてどう関わればいいのでしょうか。自分も余裕がない中での話なので、無理をする必要はありません。まず、知っておいてほしいことをお伝えします。
まず「気づいた」ことを大切に
夫の変化に気づいたこと自体が、大切な第一歩です。「なんか最近元気ないな」という直感を、「気のせいかな」と流さずに受け止めてください。
すぐに「大丈夫?産後うつじゃないの?」と聞く必要はありません。まずは「最近どう?仕事しんどくない?」という軽い声かけから始めてみてください。
効果的な声かけと、避けたいNG言動
| 💬 こんな声かけが届きやすい | ❌ 避けたいNG言動 |
|---|---|
| 「最近しんどそうだけど、無理してない?」 | 「私の方がもっと大変なのに」と比べる |
| 「話したくなったらいつでも聞くよ」 | 「なんでそんなことでへこんでるの」と責める |
| 「一緒に考えよう」と提案する | すぐに解決策を押しつける |
| 「ありがとう、助かってる」と感謝を伝える | 「ちゃんとやってよ」とプレッシャーをかける |



「解決しよう」ではなく「そばにいる」というメッセージが、まず大事です。
専門家への相談を一緒に考える
症状が続いているようであれば、専門家への相談を一緒に考えてみてください。「病院に行こう」と言うのではなく、「専門家に話を聞いてもらうのも一つの方法だと思う、どう思う?」というスタンスで提案すると、夫も受け入れやすくなります。
また、妻自身も「夫のことが心配で自分もしんどい」と感じているなら、一人で抱え込まないでください。夫婦のことを一緒に相談できる場所を使ってみることも、選択肢の一つです。
「夫のこと、誰かに話したい」と思ったら
夫婦のこと・育児のストレス・自分のしんどさ、まず話してみることが第一歩です
まとめ
この記事では、父親の産後うつについて、症状・背景・妻としての関わり方をお伝えしました。要点をまとめます。
📌 この記事のまとめ
- 父親も産後うつになる。発症率は出産後3か月で約16.7%というデータがある
- 男性の場合、落ち込みよりも「怒り・無気力・飲酒増加」という形で症状が出やすい
- 責任感の強さ・孤立感・睡眠不足・夫婦関係の変化が主な背景にある
- 妻からの「気づき」と「声かけ」が、深刻化を防ぐうえで大きな力になる
- 解決策を押しつけず「そばにいる」というスタンスが関わり方の基本
- 症状が続く場合は、専門家への相談を一緒に考えてみることも大切
夫のことを心配できているあなたは、すでに十分に向き合っています。ひとりで抱え込まず、一緒に考えていきましょう。
ひとりで抱え込まないために
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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