「子どもの不登校について、夫(妻)と話すたびに口論になってしまう」——そんな状況に疲れていませんか。
不登校の子どもを持つ保護者が最も頼りたいのは「配偶者・パートナー」だという調査結果があります。でも実際には、意見が合わず一人で抱え込んでいる、という声もとても多いのが現実です。二人とも子どものことを思っているのに、なぜこんなにすれ違うのでしょうか。
この記事では、不登校をめぐる夫婦のすれ違いがなぜ起きるのか、その心理的な背景を整理したうえで、対話を少しずつ前に進めるための考え方をお伝えします。公認心理師として、また一人の親として、一緒に考えさせてください。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもの不登校対応について、夫婦で意見が対立してしまっている方
- 「登校させるべき」「見守るべき」でいつも平行線になってしまう方
- パートナーが不登校を理解してくれず、孤立感を感じている方
- 夫婦関係が悪化しないか不安を感じながら日々を過ごしている共働きの方
「二人とも子どものため」なのに、なぜすれ違うのか

不登校に関する夫婦のすれ違いで、もっともよく見られるのがこのパターンです。
🔹 よくある夫婦の対立構図
一方(多くの場合、より関わりが多い側):「今は休ませて、心が回復するのを待ちたい」
もう一方:「このまま休ませ続けたら、将来が心配。少しでも行かせたほうがいい」
どちらも子どもを思う親の気持ちから来ています。でも、見えている景色が違うために、話すたびに衝突してしまいます。
不登校の子どもへの関わりが多い側(多くの場合、在宅時間が長い方や学校対応を担う方)は、子どもの日々の様子をより細かく見ています。「今は無理だ」という実感がある。一方で、外で働いている側は、子どもの変化が見えにくく「なぜ行けないのか」が感覚としてつかみにくい。
これは、どちらかの「愛情が薄い」ということではありません。見えている情報量の差が、意見の差を生んでいることがほとんどです。
ゆう意見の違いは「関心の差」ではなく、「見えている景色の差」から来ていることが多いんです。
すれ違いが深刻になる3つのパターン
夫婦のすれ違いには、いくつかのパターンがあります。どれに当てはまるかを知ることで、対話の入り口が少し見えてきます。
① 情報共有が足りていないパターン
子どもの日々の様子、学校やスクールカウンセラーとのやり取り、子どもが話した言葉——これらをパートナーに十分に共有できていない場合、意見の温度差が生まれやすくなります。
忙しい日常のなかで「また説明しなければ」という疲れや、「言っても伝わらない」という諦めから、情報共有がだんだん減っていくことがあります。すると、一方は「なんでそんなに深刻なの?」、もう一方は「どうして何もわかってくれないの?」という気持ちが積み重なっていきます。
② 不登校への「理解度」の差があるパターン
不登校に関する情報に触れる機会は、二人の間で大きく異なることがあります。支援機関に通い、書籍を読み、他の保護者と話している側と、「今日はどうだった?」という会話だけで状況を把握している側では、不登校への理解度が異なっても不思議ではありません。
「なぜわかってくれないの」ではなく、「まだ知らないだけかもしれない」と考え直してみることが、対話の糸口になることがあります。
③ それぞれの「不安の形」が違うパターン
「登校させるべき」という意見の裏には、「このまま学校に行けなくなったら、将来どうなるのか」という不安が隠れていることがほとんどです。「見守ろう」という意見の裏にも、「今子どもを追い詰めたら、もっと深刻になるのでは」という別の不安があります。
📌 大切な気づき
意見の対立は「主張の戦い」ではなく、「不安の形の違い」から来ていることが多い。
相手の意見の「裏にある不安」を聴こうとすると、対話の質が変わってきます。
夫婦どちらかだけでも、まず話を整理してみませんか
夫婦二人で行き詰まりを感じているとき、第三者に話すことで気持ちが整理されることがあります。
オンラインカウンセリングなら、まず一人からでも相談できます。
対話を少し前に進めるための、4つの視点


「どちらの意見が正しいか」を決めることが目標ではありません。二人が同じ方向を向いて、子どもを支えていける関係を作ることが目標です。そのために、試してみてほしい視点をお伝えします。
① 議論より「情報共有の場」をつくる
意見をぶつけ合う前に、まず「今週の子どもの様子」を共有する時間を意識的につくってみてください。「今日はこんなことを言っていた」「昨日は少し表情が明るかった」——そういった日常の小さな情報を積み重ねることで、パートナーの見えている景色が少しずつ変わってきます。
夜、子どもが寝たあとに5〜10分だけ話す時間を設ける、LINEで短く共有するなど、「議論」ではなく「情報共有」のハードルを下げることから始めてみてください。
② 「意見」ではなく「不安」を話す
「学校に行かせるべきだ」「見守るべきだ」という意見のぶつかり合いは、なかなか着地しません。代わりに、「私は〇〇が心配で……」という形で、自分の不安を言葉にしてみてください。
🔹 言い換えの例
❌「いい加減に登校させるべきだ」
⭕「このまま何か月も続いたら、進路が心配で……正直怖いんだ」
❌「なんでそんなに追い詰めるの」
⭕「今の子どもの様子を見ていると、これ以上プレッシャーをかけたら壊れてしまいそうで、私が怖くて」
不安を言葉にすると、相手が「攻撃されている」と感じにくくなり、対話になりやすくなります。
③ 「役割分担」で温度差を活かす
夫婦で意見が完全に一致しなくても、それ自体が問題なわけではありません。むしろ、一方が「待つ・見守る」役、もう一方が「将来の選択肢を調べる・情報収集する」役と、役割を分けることで両方の関心をうまく活かせることがあります。
大切なのは、子どもの前では対立を見せないことです。親の不和を子どもは敏感に感じ取ります。「方針を話し合う場所」と「子どもと過ごす場所」を切り分けることを、まず一つの合意として共有してみてください。
④ 二人だけで抱え込まず、第三者を入れる
夫婦だけで話し合い続けることが、必ずしも良い結果につながるとは限りません。スクールカウンセラーや子ども家庭支援センターへの相談に、できれば二人で行ってみることをおすすめしています。
専門家を前にすると、普段は「意見の違い」として対立していた部分が、「共通の心配」として見えてくることがあります。二人とも同じように子どもを心配していたということに気づくきっかけになります。
⚠️ こんな状況が続くときは、早めに第三者を入れることを検討してください
・話し合いのたびに激しい口論になってしまう
・どちらかが相手を完全に無視するようになっている
・「もうどうでもいい」と諦めてしまっている
・夫婦の不和を子どもが気にしている様子がある
夫婦関係の悪化は、子どもの回復にも影響します。一人で抱えず、相談窓口を使ってみてください。



夫婦二人で行き詰まったとき、第三者の言葉が突破口になることがあります。相談窓口は子どものためだけではないんです。
「どちらが正しいか」より大切なこと
不登校の支援に正解はひとつではありません。「登校を促すほうがいい場合」も「じっくり待つほうがいい場合」も、子どもの状態や背景によって異なります。だからこそ、夫婦のどちらの意見が「正しい」かを決めようとすることより、今の子どもの状態をできるだけ正確に把握して、その子に合った方針を二人で探していくことのほうが大切です。
これはあくまで一般化した事例ですが——中学2年生のCさんの家庭では、はじめの頃は「登校させる派」と「見守る派」に分かれていたご両親が、スクールカウンセラーとの面談を二人で経験したことをきっかけに、少しずつ同じ方向を向けるようになっていきました。「話し合い」ではなく「一緒に学ぶ場」を持つことが、転換点になることがあります。
意見の違いは、解決しなければならない問題というより、「それだけ二人が子どもを真剣に考えている」というサインでもあります。その気持ちを、ぶつけ合うのではなく、重ね合わせる方向に少しずつ向けていけるといいと思います。
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 夫婦の意見の違いは「愛情の差」ではなく、見えている情報量や不安の形の違いから生まれることが多い
- すれ違いのパターンは①情報共有不足②理解度の差③不安の形の違いの3つが主なもの
- 「議論」より「情報共有の場をつくること」から始めると対話がしやすくなる
- 「意見」ではなく「不安」を言葉にすることで、相手が受け取りやすくなる
- 子どもの前では対立を見せないこと、これだけは最初の合意として共有してほしい
- 二人で行き詰まったときは第三者(SC・支援機関・カウンセラー)を入れることを検討する
- どちらが正しいかより、子どもの今の状態を把握して一緒に考えることが大切
意見が対立するほど、子どものことを真剣に考えているということでもあります。その気持ちが、いつかお互いへの理解に変わっていけるように。まず、今日一つだけ「情報を共有してみること」から始めてみてください。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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