「昨日は行けたのに、今日はまた動けない」——そんな朝を、何度繰り返してきましたか。
行ったり行かなかったりが続く「五月雨登校」や、教室には入れず別室で過ごす「別室登校」。完全に休んでいるわけではないこの状態が、保護者にとって最も消耗するケースのひとつだと、私は相談の現場で実感しています。行けた日は安心して、行けなかった日は落胆して——その繰り返しで、親自身がどんどん消耗していく。
この記事では、五月雨登校・別室登校という状態が子どもの心の中でどういう意味を持つのか、「回復の途中」と「悪化の手前」をどう見分けるのか、そして親が今できる関わり方を、公認心理師の視点からお伝えします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもが学校に行く日と行かない日を繰り返しており、このままでいいのか不安な方
- 行けた日に喜んで、行けなかった日に落胆する繰り返しで疲弊している方
- 別室登校・保健室登校が続いていて、教室復帰をどう考えればいいか迷っている方
- 「これは回復の途中?悪化の手前?」どちらなのか判断基準が知りたい方
五月雨登校・別室登校とはどんな状態か

まず言葉の整理から始めます。
五月雨登校とは、登校する日と休む日が不規則に繰り返される状態です。週に数日しか行けない、特定の曜日だけ行ける、午前中だけで帰ってくるなど、パターンはさまざまです。五月雨のようにぽつぽつと登校することからこう呼ばれています。
別室登校(保健室登校・校内別室)とは、学校には来るものの、教室に入れずに保健室や相談室などで過ごす状態です。学校にいるという点では登校しているように見えますが、集団の場への参加が難しい状態が続いています。
🔹 この2つの状態に共通していること
・学校への気持ちと「行けない」現実の間で揺れ動いている
・「行けた」「行けなかった」で子ども自身も自己評価が上下しやすい
・親から見ると「今日は行けそうか」の予測が立てにくく、疲弊しやすい
・完全不登校と違い、「もう少しで戻れそう」という感覚と「いつまで続くのか」という不安が同時にある
この状態に置かれた保護者の疲弊は、完全不登校のそれとはまた別の種類のつらさです。「行けた日に安心して職場に話を入れたら行けなかった」「先が見えない宙ぶらりん感」——そういった声を、相談の中でとてもよく聞きます。
子どもの心の中で何が起きているのか
五月雨登校や別室登校の状態にある子どもは、外から見えるよりずっと多くのエネルギーを使っています。
「行けた日」は、心と体に相当な負荷をかけて登校しています。不安を抑え込み、「今日こそは」と自分を奮い立たせて学校に向かう。教室に入る(あるいは入れずに別室で過ごす)。その疲れが翌日に出て、動けなくなる——これが「行ったり行かなかったり」のサイクルの正体であることが多いです。
📌 大切な視点
行けた日の次の日に休むのは「サボり」でも「意志が弱い」のでもなく、前日に大きなエネルギーを使い果たした結果であることがほとんどです。「行けたのにまた休んで」ではなく、「行けた、よく頑張ったね」と受け取ってほしいです。
また、別室登校の子どもにとって、「教室に入れない自分」への罪悪感や自己嫌悪はとても大きいものです。「みんなは教室にいるのに、なぜ自分だけここにいるのか」という気持ちを、毎日抱えながら登校しています。そのストレスが積み重なり、「別室にも行けない日」が生まれることもあります。
ゆう「行けた」ことより「行こうとした」ことを見てあげてほしい。その積み重ねが回復の土台になります。
「回復の途中」と「悪化の手前」——どう見分けるか


保護者が最も知りたいのは、「今の状態はよくなっているのか、悪化しているのか」という点だと思います。明確な基準はありませんが、私が目安にしている視点をお伝えします。
回復に向かっているサイン
🔹 こんな変化が見られたら、回復に向かっているサインかもしれません
・休んだ日に「明日は行こうかな」と自分から言う
・家での表情が少しずつ穏やかになってきた
・食欲が戻ってきた、睡眠が少し安定してきた
・好きなことに集中できる時間が増えてきた
・「今日は別室でもいいから行く」と自分で選択できている
・親に話しかけてくることが増えた
注意が必要なサイン
⚠️ こんな変化が続くときは、専門家への相談を検討してください
・行ける日が月単位でどんどん減っている
・休んだ日の表情が暗く、ふさぎ込む時間が長くなっている
・「もう学校には行けない気がする」と言い始めた
・食欲不振・不眠・頭痛などの身体症状が強くなっている
・「消えたい」「どうせ自分はダメだ」という言葉が増えた
・親との会話がなくなり、部屋にこもりがちになった
どちらに向かっているかを判断するうえで大切なのは、「登校日数の多い少ない」ではなく「子どものエネルギーと表情の変化」を見ることです。週2日しか行けなくても、表情が穏やかで家での会話が増えているなら、回復に向かっているサインかもしれません。逆に週4日行けていても、疲弊しきった表情で帰ってくるなら、無理をさせすぎている可能性があります。
「これは回復?悪化?」一人で判断しなくていいです
今の子どもの状態を整理するだけでも、次の一手が見えてくることがあります。
オンラインカウンセリングなら、夜でも自宅から、まず親だけで相談できます。
親が今日からできる関わり方
「じゃあ、どうすればいいの?」——その問いに、いくつかの視点でお答えします。どれが正解ということではなく、お子さんの状態と照らし合わせながら試してみてください。
① 「行けた・行けなかった」で一喜一憂しない
これが最も難しく、最も大切なことです。行けた日に「よかった!」と安心し、行けなかった日に「また……」と落胆する——その親の感情の波が、子どもに伝わっています。
子どもは、親を喜ばせたい・心配させたくないという気持ちから、無理して行こうとすることがあります。その無理が翌日の欠席につながる。このサイクルを断ち切るために、「行けても行けなくても、あなたは大丈夫」というメッセージを言葉と態度で伝え続けることが土台になります。
② 「今日どうする?」は子どもに聞く
朝、「今日は行くの?行かないの?」と親が結論を求めるより、「今日どうしたい?」と子どもに選択を渡してみてください。「別室でもいいから行ってみようかな」「今日は休む」——どちらでも、自分で選んだという経験が、少しずつ自己効力感を育てます。
ただし、「自分で決めていいよ」と言いながら「でも行けると思うけどな」と付け加えると、子どもは親の期待を読み取って選択できなくなります。一言添えたくなる気持ちをぐっとこらえることも、関わりの一部です。
③ 別室登校を「教室復帰への踏み台」にしない
別室登校をしている子どもに対して、「次は教室に戻ろう」という言葉をかけたくなる気持ちはよくわかります。でも、別室を「仮の場所」として扱うと、子どもは「ここにいてはいけない、早く戻らなければ」というプレッシャーを感じます。
別室が「自分の居ていい場所」として安定してくると、そこから自然に教室への一歩が生まれることが多いです。今は別室でいい、というメッセージを伝えることが、意外と早い教室復帰につながることがあります。
④ 行けなかった日の過ごし方を整える
休んだ日を「空白の時間」にしないことも大切です。ゲームだけで一日が終わる・昼夜逆転するといった状態が続くと、翌日の登校ハードルがさらに上がります。
🔹 休んだ日に取り入れやすいこと
・午前中に短時間でも日光を浴びる(散歩・ベランダでもOK)
・食事の時間をある程度そろえておく
・子どもが好きなことに集中できる時間をつくる
・親と一緒に短い外出(コンビニ・図書館など)を取り入れてみる
「勉強しなくていいの?」と思うかもしれませんが、今は心のエネルギーを回復させることが最優先です。エネルギーが戻ってきてから、学習への意欲も戻ってきます。
⑤ 共働き家庭ならではの工夫
共働きの家庭では、「子どもが行くかどうかわからないまま仕事に出る」という状況が毎朝続くことの消耗感は特別なものがあります。いくつかの工夫が助けになることがあります。
- 「今日は行かないかもしれない」ことを職場の信頼できる人に伝えておく
- 昼に一度短いLINEや電話で子どもの様子を確認する
- 行けなかった日の子どもの過ごし方を事前に決めておく(居場所・連絡方法など)
- 配偶者・パートナーと「どちらが対応するか」を事前に分担しておく
「予測がつかない」ことへのストレスは、「予測できないことを事前に決めておく」ことである程度和らげることができます。
「いつまで続くの?」に答えられないけれど
「五月雨登校はいつまで続くの?」——これは多くの保護者から聞かれる質問です。正直に言うと、明確な答えはありません。子どもによって、背景によって、関わり方によって、まったく異なります。
ただ、私がこれまで見てきた経験では、親が「登校日数」を追いかけるのをやめて、「子どものエネルギーと表情」を見るようになったとき、子どもが少しずつ安定してくるケースが多いです。
五月雨登校は、完全不登校に向かう一方通行ではありません。回復に向かう過程でこの状態を経る子も多く、「行ったり行かなかったり」は、子どもが自分のペースで前に進もうとしている姿でもあります。
⚠️ こんなときは一人で抱え込まず、相談してください
・五月雨登校が半年以上続き、行ける日が増える気配がない
・子どもの表情がどんどん暗くなっている
・親自身が限界に近いと感じている
・「消えたい」「死にたい」という言葉が出た
こうした状態は、家庭だけで抱えるには限界があります。スクールカウンセラー・子ども家庭支援センター・オンラインカウンセリングなど、外の力を借りてください。



「行ったり行かなかったり」は、子どもが自分の限界と折り合いをつけながら、前に進もうとしているサインかもしれません。
まとめ
📝 この記事のまとめ
- 五月雨登校・別室登校は「完全不登校ではないが、登校が安定しない状態」。親が一番消耗しやすいケースのひとつ
- 「行けた日の翌日に休む」のは、前日に大きなエネルギーを使い果たした結果であることが多い
- 回復サインは「登校日数の増加」ではなく「子どものエネルギーと表情の変化」で見る
- 表情が暗くなる・食欲不振・「消えたい」発言が続くときは早めに専門家へ
- 「行けても行けなくても大丈夫」というメッセージを言葉と態度で伝え続けることが土台
- 別室登校を「仮の場所」にせず、「今いていい場所」として認めることが安定につながる
- 共働き家庭では「予測できない状況への事前準備」が親のストレスを和らげる
「行ったり行かなかったり」の毎日は、先が見えなくて本当につらいと思います。でも、その揺れの中で子どもは少しずつ自分の限界と折り合いをつけようとしています。親もまた、揺れながらそこに寄り添っていい。完璧に対応しなくていい——そう、自分に言い聞かせながら、一緒に進んでいきましょう。
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まず親だけでも、今の状況を話してみてください
「これは回復?悪化?」の判断も、一人でしなくて大丈夫です。
オンラインカウンセリングなら、夜でも自宅から、まず一人で相談できます。


元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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