高校生くらいの子どもが、特殊詐欺に加担して捕まることがあるってご存知でしょうか?
被害者の話はよくニュースで流れますが、加害者側についてはあまり聞く機会がありませんね。
子どもが特殊詐欺に加担した場合、たとえ特殊詐欺グループメンバーに利用されていたとしても、被害額が大きければ少年院送致などになることもあります。
子どもの様子がおかしいなと気づいたときに、親としてきちんとした介入をすることが、子どもの特殊詐欺への加担を防ぐことができます。
そこで、本記事では、子どもを特殊詐欺の受け子に加担させない方法について詳しく説明していきます。
- 特殊詐欺の「受け子」って何?
- 特殊詐欺に加担する子どもの特徴を知りたい!
- 子どもが「受け子」をするときに見せる兆候とは?
- どうやって対応したらいいのか教えて!
「うちの子が詐欺に加担することなんてない!」と思っている方ほど、子どもの兆候を見逃してしまいやすいので、是非この記事を最後まで読んで子どもを守りましょう。
特殊詐欺の受け子とは
まず、「特殊詐欺」と、その役割の一つである「受け子」について説明していきます。
特殊詐欺とは
警視庁は、特殊詐欺について、次のように定義しています。
犯人が電話やハガキなどで親族や公共機関の職員などを名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させたりする犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺や窃盗など)のこと。
警視庁による
また、警視庁は、令和2年1月1日から、手口別に特殊詐欺を10種類に分けました。
- オレオレ詐欺
- 預貯金詐欺
- 架空料金請求詐欺
- 還付金詐欺
- 融資保証金詐欺
- 金融商品詐欺
- ギャンブル詐欺
- 交際あっせん詐欺
- その他の特殊詐欺
- キャッシュカード詐欺盗(窃盗)
この中で、よく耳にするのは「オレオレ詐欺」ではないでしょうか?
オレオレ詐欺とは、電話を利用して、親族、警察官、弁護士などと装って、交通事故の示談金や会社の資産横領の補償金などの名目で、現金を口座に振り込ませるといったものです。
突然息子のふりをして電話をかけて、「オレだよ、オレ、オレ」と言うことから、こうした名称がつきました。
そのほかの種類の詐欺についても、共通するのは、詐欺グループのメンバーが共謀して、電話などを利用して、被害者を騙して金銭を口座に振り込ませたり、現金を直接受け取ったりすることです。
受け子とは
次に、「受け子」について説明していきます。
特殊詐欺は、詐欺グループのメンバーが様々な役割を分担をして行う犯罪です。
役割は多岐にわたっていて、「受け子」はその一つです。
リーダー:取りまとめや指示役
架け子:被害者に電話をかけて騙す役
出し子:ATMから騙し取ったカードで現金を引き出す役
受け子:被害者から現金やカードを直接受け取る役
見張り役:受け子や出し子が逃げないように見張る役
リクルーター:受け子や出し子などを仲間に引き入れる役
他にも、架け子が使用する携帯電話を用意する者、騙しやすい被害者を一覧にした名簿を作ったり用意したりする者、詐欺グループの拠点を用意する者など様々な役割があります。
この中で、子どもが加担したときに与えられる役割は、ほとんどが「受け子」や「出し子」です。
受け子や出し子は、被害者に直接会ったり、ATMの防犯カメラに写ったりするなど、最も逮捕されるリスクが高い役割です。
詐欺グループの構成員である大人たちは、自分たちでやろうとせず、金に困っていて口車に乗せやすい子どもにそうした役割を押し付けようとしがちです。
詐欺に加担してくれそうな子どもを、知り合いを通じて探したりSNSなどで募集したりすることが多いようです。
受け子であれば、サラリーマンや銀行員のふりをして現金やキャッシュカードを受け取ることになるため、高校生くらいの子どもであってもスーツを着て被害者を騙すことになります。
子どもたちは、詐欺とわかって加担する場合と、詐欺とまでは知らずに加担する場合がありますが、どちらの場合も「短期間で高収入が得られる安全なアルバイト」という軽い認識で加担することが多いです。
特殊詐欺に加担する子どもの数
警視庁の発表によると、令和3年度で特殊詐欺の事件で検挙された20歳未満の少年は、431人で、前年度よりも60人減少し、総検挙人員に占める割合は18.2%でした。
少年の検挙人員において77.0%が「受け子」で、検挙された受け子に占める割合は、20.5%と、5人に1人が少年でした。
また、警察庁の統計では、少年による特殊詐欺の役割検挙人員は次のとおりでした。
以上のことを踏まえると、少年の特殊詐欺への加担は、平成24年頃から増加を続け、平成30年をピークにして、現在まで少しずつ減少していますが、令和3年度の総検挙人員に占める割合は約2割であるなど、依然として高い状況にあると言えます。
この表を見ても「受け子」として加担する子どもが多いことがわかります。
特殊詐欺に加担するようになるきっかけ
特殊詐欺に加担する子どもがそれなりの数がいるといっても、身近にそうした子どもがいない人にとっては、どうやって子どもが特殊詐欺に加担するようになるのかいまいち想像ができにくいかもしれません。
よほど悪い子どもなんだろうとか、悪い仲間が身近にいるんだろうとか、特別な子どもと思うかもしれません。
しかし、私が、相談室で出会ったケースでは、意外と普通の子どもが出会っても加担しています。
子どもたちが特殊詐欺の話を持ちかけられるのは、次の二つのパターンに分かれます。
- 金がないことを友人や先輩に相談する。
- SNSで「高収入で楽な仕事」などと検索して詐欺グループメンバーと直接やりとりをするようになる。
いずれの場合も「特殊詐欺」であるとはっきりと言われる場合と、詐欺であることを伏せて「書類を受け取るだけの楽な仕事」などと言われる場合があるようです。
詐欺と知らずに加担しても、怪しい仕事や危険な仕事だという認識があれば、捕まったときに処分を受ける可能性は高いです。
子どもによっては、詐欺とわかっていて自分から積極的に関与する人もいますが、そうでなくて誘いを断るのが怖くなって引き受けてしまう人が多いです。
そのような典型的なケースを2つ紹介します。
友達にお金がないことを相談したら、その友達の先輩を紹介された。その先輩から「楽して稼げる仕事がある」「指定された場所に行って書類を受け取るだけの仕事」と言われ、怪しいとは思ったけど、その先輩の誘いを断るのが怖くて引き受けた。
楽して稼げる仕事がないかと思ってスマホで調べてみたら「短期間で高収入」というSNSを見つけて、そのSNSにアクセスしたら、知らない人から電話がかかってきて、後日レストランで会って話をした。その人から直接話を聞いたとき「詐欺だろう」と思ったけど、「もう顔はわかっている」「電話番号から住所なんか調べられる」と脅されて怖くて引き受けた。
子どもが、一度でも「受け子」に加担してしまうと、犯罪行為であることに気づいてやめようとしても、詐欺グループメンバーから「今辞めるなら100万円払え」とか、「辞めるなら家族に危害を加える」とか、「他の人を紹介するまではやめさせない」などと脅されてやめられなくなります。
そして自分が逮捕されるまで、特殊詐欺に加担することになってしまい、被害を大きくしていきます。
特殊詐欺に加担する子どもの特徴
では、特殊詐欺に加担する子どもは、どのような特徴があるのでしょうか?共通する特徴とはどんな特徴でしょうか?
その特徴について、次の5点に分けて説明していきます。
お金に困っている
家族関係が悪い
不良仲間がいる
周囲を見返したい気持ちが強い
共感性が乏しい
お金に困っている
1つ目が、子どもがお金に困っていることです。
子どもが特殊詐欺に加担する動機で共通するのは「お金欲しさ」です。
詐欺とわかって加担する場合でも、詐欺グループメンバーに「簡単に稼げる仕事だよ」と騙されている場合のどちらであっても同じです。
高校生くらいの子どもは、学校や社会生活で自分の思うようにいかないことがあると、同じような仲間と一緒に遊んで過ごすことで、自分の嫌なことから目を背けようとします。
仲間と一緒にカラオケに行ったり、飲食をしたり、スマホゲームで課金をしたりするなど、お金がいくらあっても足りない状況になります。
そうしたときに、親からもらえなかったり、アルバイトでも思うように稼げなかったりすると、安易に詐欺に加担するようになります。
家族関係が悪い
2つ目が、家族関係の悪さです。
子どもは、家庭に居心地の悪さを感じたり、親を信頼していなかったりすると、何か困ったことがあっても、家族に相談することができなくなります。
先ほどのお金に困ったときには、自分でどうにかするしかありません。
そうしたときに、特殊詐欺の誘いを受けてしまうと、親に頼めないから仕方がないといて引き受けてしまいがちです。
また、親を困らせてやろうという気持ちから、詐欺とわかっていながら加担する子どももいます。
不良仲間がいる
3つ目は、身近に不良仲間がいることです。
いくら家族と仲が悪くて、友達と一緒に過ごす時間が多いからといっても、その友達が健全な環境にいる子どもであれば特殊詐欺とは無縁でしょう。
しかし、もしもその友達が不良であったり、その友達に不良仲間がたくさんいたりすれば、どこかで詐欺グループメンバーとのつながりが生じてしまい、目がつけられる可能性は否定できません。
特殊詐欺グループの種類にもよりますが、暴力団組員が関与しているグループ、いわゆる「半グレ」と呼ばれるような人たちが関与しているグループ、特殊詐欺を専門とするグループなどがあり、いずれのグループも逮捕されるリスクの高い「受け子」や「出し子」をやるような子どもを探しています。
不良仲間との関係が広がれば広がるほど、特殊詐欺のメンバーに目をつけられて、特殊詐欺に誘われる機会は増えてしまいます。
周囲を見返したい
4つ目は、周囲を見返したいという気持ちを持っていることです。
人は誰でも、周囲から認められたい、褒められたいという欲求があります。
高校生くらいになると、高校で思うような成績を取ることができないとか、部活動で活躍できないとかなど、さまざまな悩みが生じて、惨めな気持ちや情けない気持ちを強める子どもがいます。
そうした子どもが特殊詐欺に加担するようになると、特殊詐欺メンバーである大人の指示を受けて、ときには新幹線や飛行機に乗って日本中を移動するような「仕事」をしていると認識するようになります。
そして、報酬を手に入れることで、羽振りよく振る舞ったり、高級品やブランド品を所持したりすることで、周囲に自分がどれだけすごい存在であるのかを示すようになります。
まるで、一人前の大人になったような気持ちになれるのです。
共感性が乏しい
5つ目は、共感性が乏しいことです。
特殊詐欺は、大勢の人がさまざまな役割に分かれて関与している分、責任の重さを感じにくい犯罪であると言われています。
それでも、「受け子」は、被害者である高齢者と直接会って話をすることもあるため、罪の意識が芽生えやすい役割です。
そうした「受け子」の役割ができる、続けられるということは、その子どもが被害者の気持ちに目が向きにくいということです。
発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、共感性が乏しいと言われています。
発達障害については、次の記事をご覧ください。
自閉スペクトラム症だからといって、特殊詐欺をするわけではないのでご注意を!
子どもが「受け子」をするときに見せる兆候
こうした子どもが特殊詐欺に加担することになり、受け子の役割をしようとするとき、親は子どものどのような点に目を向ければ良いのでしょうか?
子どもが受け子をするときには、次のような兆候が見られます。
- 突然、スーツ、革靴、鞄を身に付け始める
- 子どものものでないスマホを所持している
- 知らない人からの着信を受けている
それぞれ見ていきましょう。
スーツ、革靴、鞄を身に付け始める
子どもが、スーツを着たり、革靴やビジネスバッグを身に着けるようになったら注意しましょう!
受け子は、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る役割ですが、詐欺グループメンバーから指示されて、サラリーマンや銀行員などの格好をすることが求められます。
高校生くらいの子どもだと、当然スーツを持っていることはないため、自分で買うお金がなければ、父親のスーツを無断で借りるか、先輩などから借りるか、詐欺グループメンバーに渡された金で購入することになります。
いずれの場合であっても、ある日突然ビジネスマンのような服装をするようになることは特殊詐欺に加担するときの兆候の一つです。
私の知り合いが、スーツを着て出張に行ったとき、地方の駅前で、警察官に受け子ではないかと疑われて職務質問にあったことがあります。
子どものものでないスマホを所持している
受け子をするときには、常に特殊詐欺グループのメンバーからの指示を受けて行動することになるため、スマホがなくてはなりません。
そのスマホについて、特殊詐欺グループのメンバーから指示を受けるように渡されることがあります。
子どもがいつの間にか親の知らないスマホを所持していたとしたら、特殊詐欺に加担するときの兆候の一つです。
知らない人からの着信を受けている
特殊詐欺グループのメンバーは、いつでも「受け子」に指示を飛ばして動かすことができるように、頻繁に連絡を取ってくることが多くあります。
そのようなときはメールで連絡がある場合もありますが、特殊詐欺グループのメンバーはやり取りの記録を残したくないため、基本的には直接電話で連絡をしてくることが多いようです。
子どもが知らない人からの着信を受けて電話を頻繁にしているような時は、特殊詐欺に加担するときの兆候の一つです。
兆候に気づいたときの対応
子どもが、特殊詐欺の受け子をやりそうな兆候を見つけたときには、親は「まさかうちの子は大丈夫だろう。」と安易に考えず、適切な介入をしなければなりません。
まずは、何よりも子どもと向き合ってしっかりと話を聴きましょう。
子どもが、受け子をしようとしているとき、又はしているときには、大抵の場合後ろめたい気持ちを持っていたり、場合によっては特殊詐欺グループのメンバーから脅されて口止めされていることから、なかなか本当のことを話してくれません。
しかし、受け子をやりたくてやっている子どもは多くはないため、親は子どもを心配していることをきちんと伝えて、本当に困っていることがあれば話をしてほしいと根気強く伝えていきましょう。
また、知らないスマホを所持していたり、知らない人からの着信を受けているようであれば、そのことについて対応しなければなりません。
知らないスマホであれば警察に届けさせる必要がありますし、知らない人からの着信に出ないようにするためにスマホを預かって電源を切らせることも必要です。
こうしたことは子どもの抵抗にあってなかなかうまくできないこともあるため、そうしたときには最寄りの警察署に相談しましょう。
親としては、子どもが犯罪に加担していたら逮捕されてしまうかもしれないという不安や恐怖があるかもしれませんが、そのまま放っておいたら、さらに罪を重ねてもっと大きな被害を生み出してしまうかもしれません。
子どもは、警察に話を聞いてもらったり介入してもらったりすることで、特殊詐欺グループのメンバーから離れることができるようになり、安心できるようになることもあります。
そのほか、非行や犯罪の相談窓口である法務少年支援センターなどの機関に相談することもよいでしょう。
親は、家庭内だけで抱え込まずに、子どもの特殊詐欺への加担が疑われるようであれば、躊躇することなく専門機関に相談することが、結果的に被害を最小限に抑えて、子どもを守ることにつながります。
おすすめのオンラインカウンセリング
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多種多様な相談内容にも対応しているので、一度試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、子どもを特殊詐欺の受け子に加担させない方法について説明しました。
子どもが特殊詐欺に加担してしまうと、その被害は非常に大きいですし、子どもの将来にも関わってしまいます。
親が、子どもの兆候に気がついて適切な対応をとることで、被害者を作らず、我が子を犯罪者にしないことができます
ご相談やご質問がある場合は、お気軽にお問い合わせまでご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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