WISC-Ⅴ(ウィスク・ファイブ)は、子どもの認知機能や知的能力をいろんな角度から評価できる心理検査です。
その結果については、多くの人が「全体のIQ値」に目が向きがちですが、それに加えて5つの指標の合成得点も重要です。
これら合成得点は、子ども一人ひとりの特性や困りごとを理解する上で重要な手がかりとなります。
そこで、本記事では、WISC-Ⅴの合成得点の基本的な意味、実際の支援にどう活かすかといった応用まで詳しく解説します。
- 保護者や子育てに関心のある方
- 学校や教育現場で子どもと関わる教師・支援員の方
- 心理士・発達支援関係の専門職の方

WISC-Ⅴの結果の読み取り方の基本を知りたい方は、次の記事を先にお読みください。


WICS-Ⅴの合成得点


WISC-Ⅴは、全検査IQ(FSIQ)と5つの指標の合成得点から解釈を行っていきます。
それぞれの指標の解釈の概要は次のとおりです。
合成得点 | 解釈概要 |
---|---|
全検査IQ | 知的発達の遅れの有無 |
言語理解指標 | 言語能力(特に表現力)、習得知識 |
視空間指標 | 視覚処理能力(図形、書字、片付け等) |
流動性推理指標 | 新奇課題を推理し解決する応用力(算数・数学、小論文) |
ワーキングメモリー指標 | ワーキングメモリー、読み書き困難、言語障害 |
処理速度指標 | 作業効率、集中持続困難、書字困難 |



このほかにも「量的推理」「聴覚ワーキングメモリー」などの合成得点がありますが、より専門的な知識が必要になりますので、この記事では割愛します。
全検査IQ(FSIQ)の解釈
全検査IQは、全体的な知的発達における遅れの有無の判断に使われる合成得点です。
一般的には、FSIQ79以下(下位8%)で知的な遅れの可能性を検討することになります。
知的な発達水準=生活年齢×FSIQ÷100
- 小数点以下は切り捨て。
- 1歳程度高く推定されることがあるため、それを考慮し、得られた値より1歳下まで幅をとる。
- 適宜学年に変換し、主訴の発達水準として理解する。
例えば、12歳の子ども(小学6年生)のFSIQが88だった場合、12×88÷100=10.56です。
小数点を切り捨てて、知的発達水準は10歳程度(小学4年生程度)と考えます。
このようにFSIQに基づいて知的発達水準を推定し、その水準に主訴となっている課題を合わせて考えます。



子どもの問題をアセスメントするにあたって、知的な問題がどの程度影響しているのか見極めることができます。
ところで、知的な水準が低いからといって、指示に従わせるばかりでは子どもは成長しません。
子どもにより良い方略があることに気づかせるため、大人側がいくつか選択肢を与えて、自分で結果を予測させて行動させることが大切です。
自分の能力を自覚することこそ、自己肯定感につながっていきます。


言語理解指標(VCI)の解釈


言語理解指標は、言語能力と習得知識の程度を反映しています。
言語表現力と推理能力を反映している。言葉を聞き取って理解する力はそれほど反映しない。リスニング力が弱い場合、ワーキングメモリー指標(WMI)が低得点になることが多い。
低下する原因としては、①初期発達における児童虐待(特にネグレクト)、②長期にわたる教育の不備(学習障害の見落とし等)、③長期にわたる不登校などが考えられる。語彙力は、言語能力でも、習得知識でもある。
言語能力が弱い場合の支援として、視空間指標が高い場合には、視覚的手がかりが有効になる場合があります。
イラストや写真などを用いた手順表や、動画、ハンドサイン、色による分類、図式を示すことで理解を進めることができます。
文字の音読に支障がない人には、単語や短文程度であれば、視覚的手がかりとして文字を用いても良いでしょう。
また、まとまった文章を話す練習にも、視覚的手がかりを用いると効果的です。
特に、最初に主題や前提を話す練習をすると良いです。
視空間指標(VSI)の解釈
視空間指標は、視覚処理能力(視覚イメージ能力)を反映しています。
視覚イメージを問題解決に活用する能力。図形を上下や左右に反転させるとどう見えるかイメージする力である。視覚認知、空間認知、視覚ー運動協応(器用さ)なども含まれる。なお、視力や色覚は含まれない。
視覚処理の弱さへの支援としては、構造化された環境や整理整頓された環境を用意することが第一歩です。
また、定規、コンパス、分度器などは、視覚処理の弱さを補うようなものを用意すると良いでしょう。


また、個別のトレーニングとして、パズル課題に取り組ませることもおすすめです。


流動性推理指標(FRI)の解釈


流動性推理指標は、流動性推理能力と量的推理の程度を反映しています。
過去に身につけた習慣や概念では解決できない新奇な課題を、戦略的かつ柔軟に解決する能力。特に、WISCでは、対象の背後にある概念を検出し、法則やルールを直観的に推理し、応用する能力を測定している。社会的状況を推理する力は関係ない。
推量的な概念を必要とする応用問題を推理し、解決する能力。
WISC-Ⅴでは、直観(非言語)による流動性推理能力を調べています。
つまり、説明より先にまず答えがひらめく能力の程度を量ることができます。
そのため、解決のパターンや公式を作り出すことができます。



「コツ」を掴むことも得意です。
流動性推理能力の弱い人の支援のためには、逆にパターンや公式を教えてあげると良いでしょう。
また、暗黙の了解や手続き、視点やコツを明示化することが大切です。
ワーキングメモリー指標(WMI)の解釈
ワーキングメモリー指標は、ワーキングメモリーと音韻情報処理の力の程度を反映しています。
一時的な記憶力であり、学習のように半永久的に覚えている記憶力ではない。補助指標「聴覚ワーキングメモリー」では、聴覚のみのワーキングメモリー(聞く力)を測定できる。
読み書きの基礎となる力。
ワーキングメモリー能力は、注意力や集中力の基礎となります。
この力が強い子どもは、環境による妨害があっても気が散りにくいです。
ワーキングメモリー能力が弱い子どもで、視空間指標が高い場合には、イラストや写真などの視覚情報を提示することが有効です。
同じことを何度も質問してくるような子どもには、何度でも同じ子を言ってあげるか、または文字で提示してあげるようにしましょう。



「何度も同じことを言わせないで!」とは言わないようにしましょう。子どもの傷つきにつながってしまいます。
処理速度指標(PSI)の解釈


処理速度指標は、次の三つの力を反映しています。
- 単純で慣れている課題や作業を正確かつ素早く遂行する能力
- 単調な反復作業における集中や意欲の維持・持続
- 筆記するスキル
1については、作業を要領よく、手際よく、速やかに進める力を指します。
処理速度が遅いということは、処理に十分に慣れて、あまり考えずに自動的に作業する状態が生じにくいということです。
そのため、基礎的な計算や読み書きで苦戦する可能性があります。
2については、多動性や衝動性を示して、注意が持続しにくい子どもが当てはまります。
処理速度が遅い子どもへの支援としては、タイマーやカウントダウンを用いるなど、時間を明示することが効果的です。
時間を計測し、記録して、作業を少しずつ素早くする訓練をしていきましょう。
訓練を始めるにあたっては、初めは作業の時間を長めに確保すると良いでしょう。
また、難しそうな作業は免除できるのであれば免除してあげると良いです。



小学校高学年の子どもには、先のことを考えて、早めに行動するように促すと良いです。
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まとめ
今回は、WISC-Ⅴの合成得点の基本的な意味、実際の支援にどう活かすかといった応用を説明しました。
WISC-Ⅴの合成得点を正しく読み解くことは、子どもの強みや課題を的確に把握し、適切な支援へとつなげる第一歩です。
検査結果の背景にある認知プロセスや特性に注目することで、より深い理解と具体的な支援策が見えてきます。
多面的な視点を持って、子ども一人ひとりに寄り添った関わりを目指しましょう。
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までお読みいただきありがとうございました。


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