「このままで本当に大丈夫なのだろうか」「何とかして学校に戻さなければいけないのではないか」
不登校の状態が続くと、親として強い不安や焦りを感じるのは自然なことです。周りの子どもたちが当たり前のように学校に通っている姿を見ると、余計に気持ちが揺れてしまうこともあるでしょう。
「何かしなければ」と思い行動することは決して間違いではありません。しかし、よかれと思って取った対応が、結果として子どもをさらに追い詰めてしまうことがあります。
この記事では、不登校のときにやってしまいがちな対応と、その背景にある親の気持ちを整理しながら、よりよい関わり方について考えていきます。「やってはいけないこと」を知ることは、「どうすればよいか」に気づくための大切なステップです。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 子どもの不登校にどう対応すればいいか迷っている方
- 「学校に行かせるべきか、休ませるべきか」で悩んでいる方
- つい感情的になってしまい、後悔することがある方
- 今の関わり方が正しいのか不安を感じている方
不登校の原因や親の対応の全体像については、こちらの柱記事も参考にしてください。

なぜ「やってはいけない対応」をしてしまうのか

多くの場合、親の「やってはいけない対応」は「親が悪いから」ではありません。子どもを大切に思っているからこそ起きています。まずその背景を理解しておくことが大切です。
子どもを守りたいという強い思い
「このままでは将来困るのではないか」「社会に出られなくなるのではないか」──そうした不安から、何とか早く元の状態に戻したいと考えるのは自然なことです。特に責任感が強い保護者ほど、「自分が何とかしなければ」という思いが強くなり、行動が焦りに近づいていきます。その結果、子どもの気持ちよりも「解決」を優先した関わりになってしまうことがあります。
情報の多さによる混乱
不登校に関する情報は多く、「休ませるべき」「甘やかしてはいけない」など、正反対の意見も存在します。どれを信じてよいのかわからず、迷いながら関わることになります。この迷いが続くと対応に一貫性がなくなり、子どもにとっても不安定な関係になりやすくなります。
親自身の疲れと余裕のなさ
不登校の状態が長く続くと、親自身も心身ともに疲れていきます。周囲に相談できない状況が重なると、孤立感や無力感が強くなります。余裕がなくなると「今すぐ何とかしたい」という気持ちが強まり、結果的に子どもを追い込む関わりになってしまうことがあります。
ゆうやってしまったと気づいた時点で、変えていけばいいんです。気づけたこと自体が大切な一歩です。
やってはいけない対応① 無理に登校させる
「とにかく学校に行かせるべきか」という悩みは、支援の現場でも非常に多く聞かれます。
無理な登校はストレスを増幅させる
子どもが学校に行けない背景には、不安や恐怖、強いストレスがあります。その状態で無理に登校させると、「学校=苦しい場所」という認識がさらに強まります。一度強まったストレスは、その後の登校をより難しくしてしまいます。
一時的な改善は根本解決にならない
親の働きかけで一時的に登校できることもありますが、それは根本的な回復とは異なります。内面の負担が解消されていない場合、再び行けなくなることが多いです。そのたびに「やっぱりダメだった」という体験が積み重なり、自己評価が下がっていきます。
「行けない自分」を責める悪循環
無理に登校させられることで、「自分は頑張れない」「弱い」といった否定的な自己認識が強まります。これは回復を遅らせる大きな要因になります。焦って登校を促すより、まず安心できる環境をつくることが先です。
これはあくまで一般化した事例ですが、Cさん(44歳)は毎朝「今日こそ行こう」と子どもを起こし続けていました。子どもは玄関まで行くものの、体が固まって動けなくなる日が続きました。「行けない自分が情けない」と泣く子どもを見て、Cさんは「もう登校の話をやめよう」と決めたといいます。その翌月から、子どもが少しずつ表情を取り戻したそうです。



不登校の初期対応で特に大切なことは、こちらの記事でくわしく解説しています。


やってはいけない対応② 責める・否定する


言葉のかけ方は、子どもの状態に大きく影響します。
問い詰めることで心が閉じる
「どうして行けないの?」という問いかけは、親としては理解したい思いから出るものです。しかし、子ども自身も理由をうまく言葉にできないことが多く、問い詰められることでさらに苦しくなります。結果として、会話そのものを避けるようになることもあります。
ほかの子との比較による自己否定
「○○ちゃんは行けているのに」といった比較は避けてください。他の子どもと比較されることで、「自分は劣っている」という感覚が強くなります。この感覚は自己肯定感を大きく傷つけ、回復の妨げになります。
怠けていると決めつける
外からは何もしていないように見えても、内面では大きな葛藤や疲れを抱えていることが多いです。それを理解されずに「怠けている」と否定されると、親子の信頼関係にも影響が出てしまいます。子どもがゲームや動画に没頭しているように見えても、それが心の回復に必要な時間であることがあります。





「なぜ行けないの?」より「今どんな気持ち?」の方が、子どもの心が開きやすくなります。
関わり方に迷ったとき、専門家に相談してみませんか
「今の対応でいいのか」という不安を、一人で抱え込まないでください。
やってはいけない対応③ 放置・過干渉
関わり方の「距離感」は、とても重要なポイントです。
放置しすぎることで孤立する
「見守る」という言葉が誤解され、関わりを減らしすぎてしまうことがあります。子どもは不安を抱えながら過ごしているため、完全に放置されると孤立感が強まります。「何も言わないでいれば傷つけない」という思いも理解できますが、存在を感じさせない距離感は子どもの不安を深めることがあります。
過度に干渉してしまう
一方で、細かく管理したり過度に関わりすぎたりすると、子どもは自分で考える機会を失います。また、「監視されている」という感覚から、反発や無気力が生じることもあります。
「ちょうどよい関わり」を探る
大切なのは、子どもの様子を見ながら関わり方を調整することです。必要なときにそばにいる、でも過度に介入しない、というバランスが求められます。
💡 「ちょうどよい距離感」の目安
- 食事は一緒にとる(でも話を強制しない)
- 「おはよう」「おやすみ」など短い声かけは続ける
- 子どもが話しかけてきたときは手を止めて聞く
- 部屋にこもっていても、存在を感じさせる程度の関わりを保つ



「そこにいてくれる」という安心感が、子どもにとっては大きな支えになります。
では、どう関わればよいのか


やってはいけない対応を知ることで、関わり方の方向性が見えてきます。
安心できる関係をつくる
まずは、「この人は自分の味方だ」と感じられる関係を築くことが大切です。安心感があることで、子どもは少しずつ自分の気持ちを出せるようになります。解決しようとする前に、まず「ただそばにいる」ことから始めてみてください。
子どものペースを尊重する
回復のスピードは一人ひとり異なります。焦って進めるのではなく、その子のペースを大切にすることが結果的に回復を早めます。不登校の回復には段階があり、段階によって親の関わり方も変わってきます。


親自身も支えを持つ
親が孤立すると、関わりも苦しくなります。誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちは大きく変わります。親が安定していることが、子どもにとっての安心できる環境につながります。支えを持つことは、子どものためでもあります。


まとめ
- やってはいけない対応の多くは、子どもを思う気持ちから生まれている。自分を責めなくていい
- 無理な登校促しは「学校=苦しい場所」の認識を強め、回復を遅らせる
- 責める・比較する・問い詰めることは、子どもの自己肯定感を傷つける
- 放置も過干渉も逆効果。「そこにいる」という安心感がまず大切
- 親自身が疲れているなら、まず親自身が誰かに話を聞いてもらう
「今から少しずつ変えていくこと」が大切です。子どもにとって安心できる存在であることが、回復への一歩になります。あなたがここまで読んでくださったこと自体、子どものことを真剣に考えている証です。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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