「共働きなのに、なんでこんなにお金が不安なんだろう。」
仕事も続けている。それなりに収入もある。でも教育費のこと、老後のこと、もし仕事を辞めなければならなくなったら——そんな「もしも」が頭から離れず、夜中にスマホで家計シミュレーションを見ては余計に不安になる。
ゆうあなたはそんな経験、ありませんか。
「共働きなのに不安なのはおかしい」——そんなことはありません。むしろ、共働きだからこそ感じやすい不安の構造があります。
この記事では、子育て家庭のお金の不安を「家計の問題」としてではなく、「なぜ不安が消えないのか」という心理的な背景から整理します。数字の話よりも、あなたの心が少し楽になることを目指しています。
公認心理師の「ゆう」です。子ども家庭支援センターで日々、親御さんの相談に関わっています。お金の悩みは家計の問題であると同時に、心の問題でもあります。その両面から一緒に考えていきましょう。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 共働きなのに「お金の不安」が消えず、なぜか罪悪感を感じている方
- 家計のことをパートナーと話し合えず、ひとりで不安を抱えている方
- お金の不安がストレスとなり、子育てや夫婦関係に影響してきた方
- 「漠然とした不安」の正体を知って、心を楽にしたい方
共働きなのにお金が不安——その感覚はおかしくありません


まず、データをお伝えします。
2024年に実施されたある調査によると、共働き家庭の8割以上が経済的な不安を感じているという結果が出ています。また、子どもがいる・妊娠中の保護者4,933名を対象にした調査では、全体の40%以上が「お金に関する悩みがある」と回答しており、妊娠中に限ると約60%に上ります(ミキハウス「子育てに関する家庭内での悩み」調査)。
つまり、収入があっても、子育て中の親の多くがお金の不安を感じているのが実態です。「共働きなのに不安」は矛盾ではなく、子育て家庭にごく一般的な感覚なのです。
では、なぜ収入があっても不安は消えないのでしょうか。次にその心理的な背景を見ていきます。



「不安なのは自分だけ」ではありません。まずそこから始めましょう。
家計不安が消えない、4つの心理的な理由
お金の不安は「数字の問題」だけではありません。心理学の観点から見ると、不安が消えない背景にはいくつかの構造があります。
理由① 将来への「予期不安」
不安の多くは、まだ起きていないことへの心配です。「教育費が足りなくなったら」「病気になって働けなくなったら」「老後の貯蓄が間に合わなかったら」——これらはすべて、現時点では起きていない出来事への「予期不安」です。
予期不安は、実際のリスクが小さくても「最悪の事態」をリアルに想像してしまう心の働きによって増幅されます。情報が多いほど不安も増えやすく、家計シミュレーションを調べるほど怖くなるのはこのためです。
理由② コントロール感の喪失
不安の正体は多くの場合、「自分でコントロールできない」という感覚です。物価の上昇・税制の変化・子どもの将来の進路——これらは自分の努力だけでは決まらない要素を多く含んでいます。
コントロールできないことへの不安は、いくら情報を集めても解消しにくいという特徴があります。「もっとちゃんと調べれば安心できるはず」と思っていつまでも調べ続けてしまうのは、このパターンに入りやすいです。
理由③ 「ちゃんとしなければ」というプレッシャー
SNSや周囲の情報から「NISAをやっていて当然」「教育費はこれだけ必要」「老後2,000万円問題」など、さまざまな「正解」が流れ込んできます。
それらと自分の現状を比べて「自分はできていない」と感じるほど、不安は大きくなります。「情報が多い時代ほど、不安も多い」という逆説がここにあります。
理由④ 疲れと不安の悪循環
仕事・子育て・家事で消耗しているときほど、心の余裕がなくなり、不安を感じやすくなります。疲れているとき人は「最悪の可能性」に目が向きやすくなるという心理的な特性があります。
「夜中に不安が強くなる」のはこのためです。日中の疲れがピークに達した状態で、ひとりでお金のことを考えると、不安が膨らみやすくなります。
💡 あなたの不安はどのタイプ?
①将来のことを考えると止まらない(予期不安)
②何をしても「足りない気がする」(コントロール感の喪失)
③周りと比べて焦る(プレッシャー)
④夜や疲れているときに特に強くなる(疲れとの悪循環)
複数当てはまっても構いません。「どのタイプか」を知ることが、対処の入口になります。
「夫婦でお金の話ができない」が不安を大きくする


家計不安の背景を探ると、多くの家庭に共通するひとつの問題が浮かび上がります。それが、「夫婦でお金の話ができていない」という現実です。
データが示す「夫婦の家計管理の実態」
ソニー生命保険が2024年11月に実施した「20代・30代共働き夫婦の生活意識調査」(全国有職者1,000名対象)によると、家計管理の方法は以下のような結果でした。
📊 共働き夫婦の家計管理(ソニー生命 2025年1月発表)
- 主に妻が管理:43.9%
- 主に夫が管理:27.9%
- 夫婦別々:19.9%
- 管理していない:7.1%
出典:ソニー生命保険「20代・30代共働き夫婦の生活意識調査2025」(2024年11月実施・2025年1月公表)※引用前にご確認ください
この数字から見えてくることがあります。妻・夫どちらかが「主に管理」している家庭が合計で約72%、別々管理が約20%。つまり「夫婦が一緒に家計の全体像を共有している」家庭は、実はごく少数派である可能性が高いのです。
また同調査では、毎月の生活費を「把握していない」と答えた人が25%——つまり4人に1人が、自分の家庭の月の支出を把握していないという結果も出ています。
「知らない側」が感じる不安、「管理する側」が感じる孤独
家計管理を一方が担っている状態では、2種類の問題が生まれます。
まず「知らない側」は、家計の全体像が見えないことで漠然とした不安を感じやすくなります。「なんとなく大丈夫だろう」と思いながらも「実はまずいのかもしれない」という不安が頭をよぎり続けます。
一方、「管理する側」は、ひとりで家計の責任を背負うプレッシャーと孤独感を抱えやすくなります。「相談したいけど、どうせ分かってもらえない」という諦めから、ますます一人で抱え込む悪循環に入ります。
これはあくまで一般化した事例ですが——Cさん(40代・共働き)は「家計は私が全部管理していて、夫はいくら貯まっているかも知らない。相談しても『任せてる』の一言で終わる。不安なのは私だけで、夫は危機感がないと思うと、また腹が立つ」とおっしゃっていました。お金の不安が、夫婦関係への不満とセットになっているケースは非常に多いです。
「お金の話」がしにくい理由
夫婦でお金の話をしにくい理由として、よく挙がるのは以下です。
- 「お金の話をすると喧嘩になる」という過去の経験がある
- どちらかが「自分の収入が少ない」ことへの引け目を感じている
- 「細かいことを言うとケチだと思われそう」という遠慮がある
- 「話す時間と気力がない」という共働きならではの疲弊
これらはどれも「性格の問題」ではなく、対話の機会と方法が不足していることから来るものです。
お金の不安もひとりで抱えていませんか
うららか相談室では、公認心理師・臨床心理士に夜間・土日もオンラインで相談できます。家計の不安・夫婦関係・子育てのストレスを整理するための場として、多くの方が利用しています。
家計不安が子育てと親のメンタルに与える影響
「お金の心配は、お金の問題だから」と割り切ろうとしても、実際にはそう簡単にはいきません。家計への不安は、じわじわと子育てや親のメンタルに影響を与えます。
慢性的なストレスによる心身の消耗
「お金の不安」が頭の片隅にある状態が続くと、それ自体が慢性的なストレス源になります。睡眠の質の低下・集中力の低下・些細なことへのイライラ——これらはすべて、長期的なストレスが引き起こす心身の反応です。
消耗が続くと燃え尽き症候群に発展することもあります。心の疲れについては、こちらもあわせてご覧ください。


子どもへの影響
親が不安やストレスを抱えていると、子どもはその空気を敏感に感じ取ります。「何かまずいことが起きているのかもしれない」と感じた子どもは、「親の心配をかけないようにしよう」と自分の気持ちを抑え始めることがあります。
また、家庭内の緊張感が続くと、子どもの情緒が不安定になりやすい環境にもなります。親のメンタルを整えることは、子どものためでもあるのです。
夫婦関係への影響
お金の不安が解消されないまま夫婦で共有されないと、それが夫婦間のすれ違いや不満の火種になることがあります。「お金の喧嘩は夫婦喧嘩の最大の原因」とも言われます。対話の不足が不満を生み、不満が対話をさらに難しくする——この悪循環を断つことが大切です。


不安を「なくす」より「付き合う」——今日からできること


家計への不安を完全になくすことは、現実には難しいです。将来への不確かさは誰にも消せません。それよりも、「不安と上手に付き合うこと」を目指す方が、心はずっと楽になります。今日から試せる視点を5つお伝えします。
① 「今、困っているか」を確認する
不安は「今」ではなく「未来」の話です。「今、生活できているか」「今、子どもに必要なものを与えられているか」——今の現実を確認することで、予期不安を少し落ち着かせることができます。
「最悪の事態」を頭の中で繰り返すのをやめて、「今日の現実」に意識を戻す練習が有効です。
② 「コントロールできること」だけに集中する
物価・税制・社会情勢は自分では変えられません。一方で「今月の支出を把握する」「固定費を一つ見直す」「パートナーと30分話す時間を作る」——これらはできます。
コントロールできないことへの不安はエネルギーを消耗するだけです。できることに集中することで、コントロール感が戻ってきます。
③ 「お金の話」を小さく始める
夫婦でのお金の対話を「家計会議」のような大げさなものにしなくて構いません。「今月、食費がいつもより多かったんだよね」「子どもの習い事のこと、少し話したい」——小さなひとことから始めることが大切です。
伝え方のコツについては、こちらの記事も参考にしてください。


④ 「不安を感じている自分」を責めない
「こんなことで不安になるなんて」「しっかりしなければ」と自分を責めると、不安の上に自己嫌悪が重なります。不安を感じること自体は、責任感がある証拠でもあります。「不安なんだな」とただ認めるだけで、感情の強さが少し落ち着くことがあります。
⑤ 不安が強くなりすぎたら、話せる場所を持つ
不安が強くなりすぎて、眠れない・集中できない・涙が出るという状態が続くなら、それは心が「助けを求めているサイン」です。パートナーにも言いにくい、友人には重すぎる——そんなときに、専門家という選択肢があります。
お金の不安も、話すことで整理されます。解決策を出してもらわなくていい。ただ話すだけでも、不安の輪郭がはっきりして楽になることがあります。
「漠然とした不安」を、誰かに話してみませんか
うららか相談室はスマホから予約・相談が完結。夜間・土日も対応しているので、日中忙しい共働きの方にも利用しやすいサービスです。家計の不安も含めた「生活のしんどさ」を整理する場として、ぜひ活用してください。
まとめ
- 共働き家庭の8割以上がお金の不安を経験している。あなただけではありません
- 不安が消えない理由は「予期不安」「コントロール感の喪失」「プレッシャー」「疲れとの悪循環」の4つ
- 共働き夫婦の約72%がどちらか一方が家計を管理しており、夫婦で全体像を共有している家庭は少数派
- 「知らない側」の漠然とした不安、「管理する側」の孤独——どちらも対話不足から生まれる
- 不安を「なくす」より「付き合う」発想で。今日の現実を確認し、コントロールできることに集中する
お金の不安は、数字を見ても消えないことがあります。それは心の問題でもあるからです。一人で夜中に抱えるより、少しでも誰かと共有できる場所を持ってください。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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