発達障害のある方は、日常生活を送る中で人間関係に悩み、仕事でつらい思いをすることが少なくありません。
なぜなら、発達障害のある人は他者とのコミュニケーションが苦手なことが多く、その結果人付き合いがうまくいきにくいからです。
本記事では、発達障害の人にこそ知ってほしいコミュニケーションスキルを解説します。
- 発達障害のある人で人間関係で悩みがち
- 家族や会社の人とトラブルになりやすい
- コミュ力をアップしたい
この記事は、精神科医の「ゆうきゆう」先生のマンガ「マンガでわかる 生きるのがラクになる話し方あります」を参考にしています。
「話し方」を変える
うまく話そうと頑張らなくていい
発達障害のある人でコミュニケーションが苦手な方は、人前に立つと緊張が高まって思うように話せなくなりがちです。
そうした人は、コミュニケーションに対する「考え方」や「話し方」をちょこっと変えるだけで、今よりもラクに人と話すことができるようになります。
- 伝わればそれでいい
- 伝えることは1つに絞る
- あえてゆっくり話す
伝わればそれでいい
人は「うまくやろう」と意識すればするほど緊張が高まってかえって失敗してしまいます。
話すのが苦手な人が上手に話そうとすることばかり考えていると、うまく話せなくて、自分の気持ちを伝えられなくなってしまいます。
そこで発想を変えてみましょう。
「うまく話す」を「相手に伝わればそれでいい」とハードルを下げてみるのはどうでしょうか。
それだけで緊張をしなくなります。
発達障害のある人の中には、完璧を求め過ぎてしまったり、恥をかいてはいけないという思いが強過ぎたりする人がいます。
必要以上に自分を苦しめてしまいやすいので注意しましょう。
伝えることは1つに絞る
ADHDの人は、頭の中に次々と考えが浮かびやすく、それらをどんどん口に出してしまうとしゃべりすぎになってしまう傾向があります。
ASDの人には経験を映像として記憶する人がいて、そうした人は言葉にするのに時間がかかりやすく、結果として「自分の気持ちや考えをうまく言葉にできない」と悩む人がいます。
このような傾向を踏まえて、会話を始める前に「この会話では何を伝えるか」と「伝えること」を絞りましょう。
自分の考えを言葉にするのが苦手な人は、日頃から自分の考えや感じたことをメモに取るなどして「言語化しておく」と良いでしょう。
あえてゆっくり話す
あなたが話すスピードは、相手があなたの話を「受け止め」て「理解する」ための時間でもあります。
早口すぎると会話に緊張感が出てきてしまったり、相手が圧倒されてしまったりします。
意識してゆっくり話してみましょう。
語尾をしっかりと止めるのも効果的です。
また、ADHDがある人の中には、声が大きくなってしまう人もいます。
相手との距離がわからず近づき過ぎてしまったり、静かな場所なのに通常の声の大きさで話したりしてしまいます。
そうした場合には、自分の声が周りの人と声の大きさを合わせるように意識しましょう。
ただし、緊張していたり、「より正確に伝えたい」という思いが強かったりすると、これらのことが疎かになりがちです。
まず「ゆっくり話すこと」からはじめるようにしましょう。
「ゆっくり話すこと」で自分も落ち着くことができます。
雑談は相手に話してもらう
口下手でも会話が途切れない
周りは簡単にしているように見える雑談。
発達障害のある人にとっては、結構難しく感じる人が少なくありません。
雑談はコミュニケーションの基本とも言えますが、意識して考えると雑談をするのは結構難しいことです。
ここでは、雑談は自分でするよりも相手にしてもらうことで対応していくテクニックを紹介します。
- 「うなずく」だけでOK
- 「おへそを相手に向ける」だけで好感度アップ
- 自然で違和感のない「オウム返し」の仕方
「うなずく」だけでOK
仲の良い人と雑談するのはできても、初めての人やそれほど親しくない人と気を遣いながら雑談するのはストレスを感じやすいものです。
さらに、複数人での雑談になると、大勢の人が同時にしゃべると話の流れを追うのが難しくなりますし、どのタイミングで話せば良いのかわからないということもあります。
発達障害の人の中には、複数の人の話す声や雑音を同時に拾ってしまい、誰か一人の声だけを拾うことが難しいという人がいます。
そういう人は、無理に会話に参加するのではなく、「聞き役に徹する」と割り切ってもいいでしょう。
周りが話している時に、「聞いています」という感じでうなずいていればいいのです。
「おへそを相手に向ける」だけで好感度アップ
人は、「ちゃんと自分の話を聞いてくれている」と感じると、相手の実際の能力や知識に関係なく印象は良くなります。
話すのが得意ではないという人は、まずは「聞き上手」を目指してみましょう。
そうしたメッセージを簡単に手っ取り早く目指すには「姿勢で示すこと」がおすすめです。
具体的には「相手におへそを向ける」のを意識することです。
相手に「片手間に聞いている」と感じさせないようにする工夫です。
体の中心を相手に向けることになるため「真剣に聞いている」という印象を強く与えます。
自然で違和感のない「オウム返し」の仕方
会話では相手の言葉をただ繰り返すだけでも効果的な相づちになります。
この時相手の話の「キーワード」を上手に拾うことが大切です。
ただ、オウム返しにしているだけでも、相手は「話を聞いてくれている」と感じて嬉しくなります。
さらに、相手の会話の中に出てくる「やったこと」や「買ったもの」、そのおときの相手の「きもち」や「感情」を見つけ出して、言葉にして返してみましょう。
それだけでコミュ力はグッと上昇します!
居心地のいい人間関係
相手も自分も傷つけない
発達障害のある人は、新しい人間関係を作るのが苦手な人が多いです。
また、長く付き合っている関係であっても緊張してしまうこともあるかもしれません。
そんな人でも、ちょっとした工夫で居心地の良い人間関係にすることができます。
- たった5秒のあいさつで人生が変わる
- 「ありがとう」は魔法の言葉
- 上手に「ほめる」技術
たった5秒のあいさつで人生が変わる
「あいさつ」はしなければならないとわかっているけど、いつ、どのようなあいさつをすれば良いのかわからず困っている人もいるでしょう。
あいさつは意外と難易度が高いコミュニケーションです。
とはいえ、なんとか頑張って、初対面のときのあいさつや、毎日のあいさつをしっかりしておくと、それだけであなたへの好感度はグッとアップします。
「あいさつが苦手」という人も、明日から思い切って自分から声をかけてみましょう。
もしも過去の嫌な経験から、あいさつをすることに尻込みしてしまう方は、会釈することから始めてはいかがでしょうか?
職場では、「お疲れ様です」は、1日に何度も使っていい便利なフレーズです。「おはようございます」などの朝のあいさつをしたあとは、相手とすれ違うときなどには「お疲れ様です」と軽く会釈をするのがおすすめです。
「ありがとう」は魔法の言葉
「ありがとうございます」は、コミュニケーションを円滑にする魔法の言葉です。
発達障害のある人は、感謝や謝罪をうまく伝えられず、トラブルが起きやすいと言われています。
だからこそ、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝え合うことを意識することが大切です。
感謝の気持ちは口にして初めて伝わります。
お礼はその都度、そして早めに伝えることもポイントです。
「ありがとうございました」だけでなく、「助かりました」とか「嬉しかったです」などと自分の気持ちも添えられると、さらに良くなります。
上手に「ほめる」技術
人は自分をほめてくれる相手に好印象を抱きます。
しかし、日本人は全般的に人を褒めるのが苦手と言われています。
発達障害のある人で相手の気持ちを理解することやそれに寄り添った言動が苦手な人の場合は、どのようにほめたらいいかわからないという人も多いでしょう。
まずは、「すごいですね」とか「さすがですね」というような簡単な言葉でいいので、会話の中で相手の良いところを見つけて伝えてみましょう。
ほめるときは、あいさつくらいの気持ちで、相手との関係を踏まえた上で「頑張ったんだね」「大変だったね」など相手の仕事ぶりや努力、価値観などをほめると、相手も受け入れやすいでしょう。
ところで、人をほめるためには、その人に興味を持たなければなりません。
相手のことを前向きに捉えて言葉で伝えていきましょう。
きっとあたたかなコミュニケーションにつながるはずです。
職場で話す力
ストレスも不安も緊張も軽くなる
職場で会社の同僚や上司と話すときに緊張しやすい人もいらっしゃると思います。
ですが、会社ではある程度決まりきった話し方を覚えてしまえば、そんなにかまえる必要はありません。
- 緊張しやすい人が「人前でスムーズに話す」コツ
- 「報連相」の基本の基本
- どう困っているか伝えてみる
緊張しやすい人が「人前でスムーズに話す」コツ
①多数の人に向けて話す場合と、②1対1で話す場合に分けて話していきます。
まず、①多数の人に向けて話す場合です。
会議やプレゼンで発表しなければならないとき、緊張して胃が痛くなるという人も多いと思います。
発表を成功させるためにも、緊張を和らげるためにも、一人で、もしくは家族や友人を相手に練習をしてみましょう。
どんなプロでも練習やリハーサルは欠かさないものです。
その上で、当日は、「自分の一番親しい人に語りかける」つもりで話すと、聞いている人の心を動かす表現ができます。
次に、②1対1で話す場合です。
多数の人に向けて話す場合に比べて、緊張はあまり感じないでしょう。
その分、相手の顔や目を見て話すように心がけましょう。
目をみることが苦手な人は、眉や眉間を見るようにしましょう。
「報連相」の基本の基本
仕事において「報連相」は非常に重要です。
「報告「連絡」「相談」のことです。
まずは相手に確実に伝わるように、①相手のわからない言葉(専門用語など)を使っていないか、②説明は足りているか、または、説明しすぎていないか、③一言が長くなっていないかを気にしてみましょう。
「報連相」が適切に行えると、理解が正しくないまま突っ走ってしまうという事態を避けることができます。
また、「報連相」をする相手を明確にしておくことで、仕事がスムーズに進むようになります。
どう困っているか伝えてみる
「人に頼みごとをするのが苦手」という方も多いでしょう。
ここでまず知ってほしいのは「人間は他者を助けるのが好き」だということです。
人にとって最大の幸せとは、「人に必要とされること」です。
例えば、他人を助けて喜んでもらえたら、「いいことをしたな」と感じて、助けた方も嬉しくなるはずです。
そこで、何か人に頼みたいときには、手伝ってほしい理由に加えて、「自分がどう困っているか」を相手に伝えることも重要です。
そして、頼みごとを引き受けてもらったり、アドバイスをもらったりしたら必ずお礼を言いましょう。
自分との上手な付き合い方
生きるのがラクになる「心の習慣」
最後に伝えるのが自分自身との上手な付き合い方についてです。
他人とコミュニケーションを取るときに、あなた自身に生じる緊張や不安などに上手に対処することができるようになると、今よりももっと気楽に人と会話ができるようになります。
- 「思考」よりも「行動」を変える
- 「マインドフルネス」でパニックから脱出
- 何度もよみがえる「つらい記憶」の対処法
「思考」よりも「行動」を変える
よく「ポジティブ思考になればうまくいく」と耳にすることがありますが、思ったように行かない人の方が多いでしょう。
人間は「思考」ではなく「行動」でできています。
いくらポジティブな思考をできたとしても、ポジティブな行動をとることができなければ、結果的にうまくいきません。
行動をしなければ何もないのと同じです。
重要なのは、自分の思考を変えることではなく、「思考」よりも「行動」を変えていくことです。
「思考」や「行動」の変化については、「認知行動療法」の考え方も役に立ちます。
「マインドフルネス」でパニックから脱出
ASDの人の中には、決まった手順に強いこだわりを持つ人がいます。
具体的には、仕事で想定外の業務をふられたときや、スケジュールが崩れたときなどに不安や不快感が生じて、ときにはパニックを起こしてしまいます。
また、ADHDの方はマルチタスクが苦手なことや、多動性からパニックを起こしやすいと考えられています。
そうしたときに活用してほしいの「マインドフルネス」です。
マインドフルネスとは、簡単にいうと「今、この瞬間に意識を向けること」です。
難しいことは何もありません。
まずは、呼吸を感じるだけで十分です。
マインドフルネスの詳しいやり方については次の記事を参考にしてください。
何度もよみがえる「つらい記憶」の対処法
ASDの傾向がある人は、ネガティブな記憶が頭から離れず、問わられやすいと言われています。
過去の経験の記憶が鮮明に再現されて、フラッシュバックのような症状を起こすことがあります。
トラウマや「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)という症状があります。
これは強いストレスを経験した後に、それを思い出して日常生活に支障が出ることを意味します。
元々トラウマやPTSDという概念は、命を脅かされるような大きな出来事や喪失によるものとして定義づけられていました。
トラウマの対処法は次の記事でも解説しています。
しかし、ASDの人は、口論や叱責など、命を脅かされるような出来事でなくても、長期にわたって繰り返し苦痛を伴って、それが想起されてしまうことがあります。
そうした場合、そのイメージを映画館のスクリーンだと思ってみてください。
そのスクリーンがどんどん小さくなるようなイメージをしていきます。
映像は小さくなって、脳の端に追いやられていきます。
イメージを小さくするだけでも気持ちは塗り替えられていきます。簡単な方法なので試してみてください。
まとめ
今回は、発達障害の人にこそ知ってほしいコミュニケーションスキルについて紹介しました。
発達障害のある人はコミュニケーションが苦手と感じがちですが、今回紹介したようなちょっとしたスキルを一つ一つに身につけていくだけで、確実にコミュニケーションスキルを高めることができます。
もっと本格的にコミュニケーションスキルを高めたい人は、オンライン教室での学びがおすすめです。
ご相談や質問がある場合には、こちらまでどうぞ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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