叱るたびに逆上する。謝らせようとするとさらに激しくなる。「なぜこんなに反省しないのか」と思うたびに、どう関わればいいかわからなくなっていませんか。
発達障害のある子どもの反抗・攻撃行動に悩む保護者の方は多くいます。「叱り方が悪いのか」「甘やかしすぎたのか」と自分を責めながら、それでも毎日向き合い続けている。その消耗は、想像以上のものだと思います。
この記事では、反抗・攻撃行動が激しくなりやすい理由を発達の特性から整理し、「叱っても変わらない」ときに何が起きているのか、今日から少し試せる関わり方のヒントをお伝えします。公認心理師として、子ども家庭支援センターや以前の職場で、攻撃行動のある子どもとその家族の支援に長く携わってきました。「どうすればいいかわからない」という気持ちを、一緒に整理していきましょう。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 発達障害のある子どもの反抗や攻撃行動がひどくて、どう関わればいいかわからない
- 叱っても謝らない、反省しているように見えない子どもへの接し方に悩んでいる
- 怒鳴ったり手が出るたびに、自分の関わり方を責めてしまっている
- 「なぜこんなに激しいのか」理由を知りたい
なぜ反抗・攻撃が「激しい」のか——特性から理解する

まず大切にしてほしいのは、「この子はなぜこうするのか」を理解するところから始めるということです。理由がわかると、関わり方の方向が見えてきます。
感情調節の難しさ——「抑えたくても抑えられない」
ASDやADHDのある子どもは、感情をコントロールする機能に負荷がかかりやすい特性があります。嫌なことがあったとき、悔しいとき、思い通りにならないとき——定型発達の子どもが「まあいいか」と流せる場面でも、感情の波が一気に押し寄せて、自分では止められなくなることがあります。
「わざとやっている」「親を困らせようとしている」のではなく、感情の嵐の中で行動してしまっている——そう理解するだけで、見え方が少し変わります。
衝動性と「待てない脳」——考える前に体が動く
特にADHDの特性が強い子どもは、衝動のコントロールが難しいことがあります。カッとなった瞬間に手が出る、言葉が飛び出す——「やってはいけない」とわかっていても、考えるより先に体や言葉が動いてしまうのです。
これは「しつけが足りない」から起きているのではありません。脳の機能的な特性として、衝動を抑えるブレーキが働きにくい状態があります。叱れば叱るほど「また怒られた」という経験が積み重なり、感情がさらに不安定になりやすくなります。
「謝れない・反省しない」ように見える子どもの背景
「謝りなさい」と言っても頑として謝らない。反省しているように見えない。こういった子どもの行動に、保護者の方は強い困惑や怒りを感じることがあると思います。
この背景には、いくつかの可能性があります。
💡「謝れない」の背景にあるもの
- 自分が悪いとわかっていても、プライドが許さない:内側に強い自己否定感を抱えており、謝ることが「完全な敗北」のように感じられる
- 相手の気持ちを想像しにくい特性:ASDの特性として、自分の行動が相手にどう影響したかを直感的に把握しにくいことがある
- 感情がまだ収まっていない:謝るよりも前に、まだ怒りや興奮の状態が続いている。落ち着いていない状態では謝罪は出てこない
- 罪悪感や共感が薄い特性(CU特性):一部の子どもは、他者の痛みや感情を感じ取る機能が育ちにくく、「申し訳なさ」を感じにくい場合がある
最後の「CU特性(Callous-Unemotional traits)」については、少し補足が必要です。CU特性とは、冷淡さ・罪悪感の薄さ・共感の低さを指す特性で、攻撃行動との関連が研究で示されています。ただし、これは「この子が冷たい子だ」「感情のない子だ」ということではありません。特性として理解した上で、関わり方を変えることで行動が変わる可能性があるということです。
現時点でこの点を明確に証明する研究結果を引用できる状態にはありませんが、経験上、保護者の関わり方が肯定的であるほど、こうした特性が強い子どもでも攻撃行動が和らぎやすいと感じています。
🗒 これはあくまで一般化した事例ですが……
中学1年生のEくんは、友達とのトラブルで手が出てしまうことが繰り返されていました。その都度「なぜやったのか」「謝りなさい」と求められても、「知らない」「あっちが悪い」と言い張るばかり。保護者は「反省のかけらもない」と感じていました。支援者が関わる中で見えてきたのは、Eくんが「謝ること=自分が完全に負けること」と受け取っており、それが怖くて言葉が出てこない状態だったということです。「悪かったと思っているか」ではなく「次はどうしたいか」を一緒に考えることで、少しずつ言葉が出るようになりました。
ゆう「謝れない」には必ず理由がある。そこから考えると見え方が変わります
「叱れば変わる」が通用しない理由
「なぜ何度言っても同じことを繰り返すのか」——この問いの背景には、「叱ることで行動が変わるはず」という前提があります。でも、発達の特性がある子どもの場合、叱責が逆効果になることがあります。
叱責が「攻撃」を強化してしまうメカニズム
感情調節が難しい子どもにとって、大きな声で叱られることは強烈なストレス刺激になります。その刺激に対して、防衛反応として攻撃行動がさらに激しくなることがあります。
「叱る→逆上する→さらに強く叱る→さらに激しくなる」——このループに心当たりはありませんか。これは親の叱り方が悪いのではなく、子どもの特性と叱責の組み合わせが悪循環をつくっている状態です。
💡 叱責が逆効果になりやすい場面
- 感情がまだ高ぶっている最中に叱る
- 「なぜやったのか」を問い詰める(説明できないのでさらに追い詰められる)
- 「謝りなさい」と強要する(謝れない理由があるのにさらに圧力がかかる)
- 過去のことを持ち出して叱る(「またか」という言葉が積み重なる)
「まず関係性をつくる」という順番
支援の現場で繰り返し感じるのは、攻撃行動への対応は「スキルより先に関係性」だということです。
子どもが支援者や親を「敵」として認識している状態では、どんな働きかけも入っていきません。まず「この人は自分を攻撃してこない」「自分の話を聞いてくれる」という安心感をつくることが、行動が変わる土台になります。
経験上、支援の場でも「最初の段階は関係性の形成のみ」に徹することで、その後の介入がスムーズになるケースが多くあります。急いで行動を変えようとするより、信頼関係を先につくる——この順番を意識するだけで、関わりの質が変わります。



関係性が先、スキルは後。この順番を変えるだけで違ってきます
「どう関わればいいかわからない」——まずその気持ちを話してみませんか
子どもの反抗・攻撃行動への対応に行き詰まっているとき、一人で抱え込まずに専門家に話すことで、状況が整理されることがあります。
今日から試せる関わり方——肯定的な関わりが鍵になる


「では具体的にどうすればいいのか」——ここからは、現場の経験をもとにした関わり方のヒントをお伝えします。「すべてやらなければ」ではなく、できそうなものを一つだけ試してみてください。
① 落ち着いた後に話す——タイミングが最重要
攻撃行動が起きているその瞬間は、子どもの脳が「戦闘モード」になっています。このタイミングで叱る・諭す・謝らせようとしても、ほとんど届きません。
まず嵐が過ぎるのを待つ。子どもが落ち着いた後——30分後でも翌日でも——に、静かに話す機会をつくることが大切です。そのときも「なぜやったのか」ではなく「次はどうしたいか」という問いかけが、子どもの言葉を引き出しやすくします。
② 小さな良い行動を見逃さない
反抗・攻撃が激しい子どもとの日常では、「問題が起きたときだけ親が反応する」という状態になりがちです。でもこれは、子どもにとって「攻撃するほうが親の注目を得られる」という学習になってしまうことがあります。
意識してほしいのは、穏やかにしていたとき・何かを自分でできたとき・少し我慢できたときに、そっと一言伝えることです。「今日は静かに話せたね」「自分で片づけてくれたの、助かった」——大げさに褒めなくていい。気づいていることを伝えるだけでいいのです。
③ 「怒鳴らない=甘やかし」ではない
「怒鳴らずに対応したら舐められるのでは?」と感じる方もいます。でも、冷静な対応は「許す」ことではなく、「感情的にならない」ことです。
ダメなことはダメ、と伝えることは必要です。ただそれを、怒鳴り声や感情的な言葉でなく、低く落ち着いたトーンで短く伝える。「それはしない」「ここまでにする」という一言で十分なことが多い。長々と説明・説教をするほど、子どもは「うるさい」と遮断してしまいます。
④ 一貫したルールをつくる
発達の特性がある子どもは、「予測できる環境」に安心感を覚えやすい傾向があります。今日は許されたのに明日は怒られた、という一貫性のなさが、混乱と不信感を生みます。
✅ 一貫したルールのポイント
- 「絶対にしてはいけないこと」を2〜3個だけ明確にする(多すぎると機能しない)
- 親が感情的な状態のときはルールの適用をいったん保留する
- ルールを破ったときの対応も、あらかじめ決めておく
- できれば父母で対応を統一する



「予測できる親」が、子どもに安心感を届けます
親自身が消耗しないために——一人で抱えなくていい
攻撃的な行動をとる子どもへの対応は、保護者を確実に消耗させます。毎日怒鳴り合い、物が壊され、言葉をぶつけられる——それが何ヶ月、何年と続いていれば、誰だって限界を超えます。
「自分の関わり方が悪いから」「もっとうまくできれば」と自分を責め続けていませんか。消耗しきった状態では、どんなに正しい関わり方を知っていても実践できません。まず親自身が少し楽になることが、子どもへの関わりを変える第一歩です。
専門家の目を借りることの意味
一人で抱えていると、「自分の見方」だけで状況を判断し続けることになります。第三者の目が入ると、気づいていなかった視点が生まれることがあります。
「この子はなぜこうするのか」「どんな関わりが合っているのか」を、専門家と一緒に整理することで、消耗の原因が少し見えてくることがあります。答えを出してもらうのではなく、「一緒に考えてくれる人がいる」という感覚が、気持ちの余裕をつくります。
深刻化する前に動くことが大切
攻撃行動は、放置すると二次障害(不登校・うつ・非行等)につながるリスクが高まります。「まだ様子を見よう」と思い続けているうちに、状況が複雑になることも少なくありません。
「こんなことで相談していいのか」と思う必要はありません。「困っている」それだけで十分、相談の理由になります。まず話してみることが、子どもとの関係を変えるきっかけになります。



「困っている」だけで、相談する理由としては十分です
子どもの反抗・攻撃行動に消耗しているなら、まず話してみませんか
うららか相談室では、発達障害のある子どもへの関わり方や、攻撃行動への対応について、スマホからオンラインで公認心理師などの専門家に相談できます。一人で抱え込まず、まず状況を整理してみましょう。
まとめ
- 反抗・攻撃行動の背景には、感情調節の難しさ・衝動性・CU特性など発達の特性がある
- 「謝れない・反省しない」には必ず理由がある。「悪い子」ではなく「特性と文脈」から理解する
- 叱責は逆効果になりやすく、「叱る→逆上→さらに激しくなる」悪循環に注意
- 関係性をつくることが先で、スキルや介入はその後。「この人は安全だ」という感覚が土台になる
- タイミング・小さな良い行動への注目・冷静な一貫したルールが関わり方の基本
- 親自身が消耗しきらないことが、子どもへの関わりを維持する条件
- 「困っている」だけで相談の理由としては十分。専門家の目を早めに借りることが大切
毎日向き合い続けているあなたは、十分に頑張っています。「もっとうまくやれれば」と思うたびに自分を責めてきたなら、その真剣さこそが、変化の出発点になります。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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