今日も一日、走り抜けましたね。学校からの電話、癇癪への対応、明日の準備。そして夜、スマホを握りしめながら「私が頑張らなきゃ」と自分に言い聞かせていませんか。もう、じゅうぶん頑張っているのに。
その疲れの正体は、もしかすると「一人で背負っていること」そのものかもしれません。この記事では、親が一人で耐えるのではなく、家族という単位で支え合う力についてお話しします。私は公認心理師として、多くのご家族に伴走してきました。同じ親として、一緒に考えていきましょう。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- 発達障害のあるお子さんの子育てに、疲れきっている方
- 「自分ばかりが背負っている」と感じている方
- 配偶者との温度差に、もどかしさを感じている方
- 自分を大切にすることに、罪悪感がある方
発達障害の子育てに疲れるのは、当たり前のことです

まずお伝えしたいのは、疲れているのはあなたが弱いからではないということです。発達障害のあるお子さんの子育てには、外から見えにくい大変さがいくつも重なっています。
- こだわりや感覚の敏感さに、日々こまやかな対応が必要になる
- 学校や園とのやりとりが多く、そのたびに緊張する
- 周囲に「うちも大変」と言われ、しんどさが伝わりにくい
- 成長とともに楽になるとは限らず、先が見通しにくい
これだけの負荷がかかれば、誰だって疲れます。それなのに、多くの保護者が「私の関わり方が悪いのでは」と自分を責めてしまいます。
でも、はっきりお伝えします。発達障害は生まれ持った特性であり、育て方が原因ではありません。あなたの愛情が足りないからでも、努力が足りないからでもないのです。どうか、そこだけは疑わないでください。
ゆう疲れているのは、それだけ向き合ってきた証拠です。
疲れの正体は「一人で背負っていること」かもしれません
子育ての疲れについて調べると、休息やリフレッシュの方法がたくさん出てきます。もちろん大切なことです。でも、少し立ち止まって考えてみてください。それらの多くは、「親が一人でどう乗り切るか」という話ではないでしょうか。
一人で走り続ける限り、休んでもまた同じ疲れがやってきます。本当に必要なのは、背負っているものを分け合える仕組みかもしれません。ここで、心理学の研究から一つの視点をご紹介します。
📚 「家族レジリエンス」という考え方
レジリエンスとは、困難から回復し、適応していく力のことです。これを個人ではなく「家族という単位」で捉えたものが家族レジリエンスです。発達障害や知的障害のあるお子さんをもつ家族について、国内外16本の研究を整理した論文が発表されています。
鈴木田英里(2025)「発達障害児・者及び知的発達症児・者をもつ家族の家族レジリエンスに関する研究動向」家族心理学研究 39巻1号 pp.89-104
この論文が示しているのは、家族が困難を乗り越える力には、いくつかの共通した要素があるということです。そして興味深いことに、まわりからの支えと、家族の中での話し合いが、その力を高めると報告されています。



一人で耐えるのではなく、家族で回復していくのですね。
家族で支え合う力を育てる4つの要素


先ほどの論文では、家族レジリエンスを構成するものとして、4つの要素が挙げられていました。それぞれを、日々の暮らしに引き寄せて見ていきましょう。
① 特性を前向きに捉え直す
「困った特性」ではなく「その子らしさ」として見る視点です。こだわりの強さは集中力の裏返しかもしれません。動き回るのは好奇心の表れかもしれません。無理にプラスに考える必要はありませんが、見方が少し変わると、関わり方も変わってきます。
② 使える支援を、遠慮なく使う
放課後等デイサービス、相談機関、学校の配慮、祖父母の手。使えるものは、堂々と使ってください。支援を頼るのは、親としての力不足ではありません。むしろ、家族を守るための大切な判断です。
③ 家族が同じ方向を向く
夫婦で、あるいはきょうだいも含めて、「この子をどう支えるか」の方向性をそろえることです。片方だけが必死になり、もう片方が他人事だと、支える人が消耗してしまいます。完璧に一致しなくても大丈夫。「一緒に考える」姿勢があるだけで、心の負担は変わります。
④ 家族の中で話し合う
論文でも、家族の中でのやりとりが力を高めると報告されていた部分です。解決策を出す会議でなくて構いません。「今日、こんなことがあってね」と話すだけでいいのです。言葉にして共有することが、家族をチームにしていきます。
📝 これはあくまで一般化した事例ですが
お子さんの特性について、夫婦で温度差があったご家庭がありました。母親だけが学校とやりとりし、父親は「そのうち落ち着く」と構えていたそうです。あるとき母親が、解決を求めるのではなく「今日あった出来事」だけを毎晩話すようにしました。すると父親から質問が出るようになり、少しずつ一緒に考える関係に変わっていったといいます。
配偶者との温度差や、孤独感についてはこちらの記事でも扱っています。


家族の中で、話しづらさを感じていませんか
配偶者との温度差や、誰にも言えない気持ち。まず外の専門家に話すことで、家族の中でも話しやすくなることがあります。
あなたが楽になることは、子どものためでもあります
「自分のために時間を使うなんて」と、罪悪感を覚える方は少なくありません。子どもを優先するのが親の務め、と思ってしまうのですよね。その気持ち、よくわかります。
でも、先ほどの論文には、心強い報告がありました。家族レジリエンスが高いほど保護者のメンタルヘルスが良好で、育児のストレスが低いという関連が示されていたのです。さらに、子どもの行動面や心の健康の問題が起きにくいことも報告されていました。
つまり、家族で支え合う力を育てることは、親の心を守ると同時に、お子さんを支えることにもつながる可能性があるということです。あなたが楽になるのは、自分勝手なことではありません。家族全体にとって、大切なことなのです。



あなたが少し休むことも、立派な子育てです。
とはいえ、家族の中だけで支え合うのが難しい時期もあります。配偶者に余裕がない、頼れる親族がいない。そんなときは、家族の外に支えを求めてください。論文でも、まわりからの支えが力を高めると報告されていました。
誰かに話すことは、弱さではありません。家族を支えるための、確かな一手です。
一人で背負いすぎている、あなたへ
誰かに話すだけで、心は少し軽くなります。あなたのペースで、専門家と一緒に考えていけます。自宅から相談できるのも心強いポイントです。
まとめ
発達障害の子育ての疲れと、家族で支え合う力について振り返ります。
- 発達障害の子育てに疲れるのは当たり前。育て方が原因ではない
- 疲れの正体は「一人で背負っていること」かもしれない
- 家族レジリエンスとは、家族という単位で困難から回復していく力
- その要素は「特性の捉え直し」「支援を使う」「同じ方向を向く」「話し合う」の4つ
- 研究では、家族レジリエンスが高いほど保護者の心の健康が良好との関連が示された
- あなたが楽になることは、家族全体を支えることにつながる
今日も一日、本当におつかれさまでした。頑張るのをやめる必要はありません。ただ、その荷物を少しだけ、誰かと分け合ってみてください。あなたが軽くなることを、家族はきっと望んでいます。その一歩の隣に、伴走できる人がいることを、どうか忘れないでくださいね。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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