お子さんがWISCを受けたことをきっかけに、「自分も検査(WAIS)を受けてみようかな」と考えはじめた方もいるのではないでしょうか。同じウェクスラー式の知能検査だから、子どもと大人で結果を見比べられそう——そう思いますよね。
ところが、ここに注意したい落とし穴があります。子のWISC-Ⅴと親のWAIS-Ⅳは、指標の数が違うので単純に比べられないのです。この記事では、2つの検査の違いと、家族で検査を考えるときに知っておきたいことを整理します。私は公認心理師として、子ども家庭支援センターで検査の結果を保護者の方と読み解いてきました。その視点からお伝えします。
📖 こんな方に読んでほしい記事です
- WISCとWAISの違いを知りたい方
- お子さんのWISCをきっかけに、自分のWAISが気になった方
- 16歳の子どもがどちらの検査を受けるのか知りたい方
- 子と親の検査結果を、どう見ればいいか迷っている方
WISCとWAISの基本的な違いは「対象年齢」

WISCとWAISは、どちらも「ウェクスラー式知能検査」という同じ系統の検査です。世界で広く使われていて、その人の知的な力の構造を、くわしく調べる目的は共通しています。では、何が違うのでしょうか。いちばんの違いは、対象となる年齢です。
💡 ウェクスラー式知能検査の3種類
- WPPSI(ウィプシ)……幼児用。3歳〜7歳3ヶ月
- WISC(ウィスク)……児童用。5歳〜16歳11ヶ月
- WAIS(ウェイス)……成人用。16歳〜90歳11ヶ月
比較するとわかるように、16歳はWISCでもWAISでも受けられる重複年齢です。どちらを選ぶかは、本人の発達の状況や検査の目的に応じて、専門家が判断します。年齢に合った課題で受けることで、より正確に特性を捉えられるのです。
ゆう同じ系統でも、年齢に合わせて課題が変わるのですね。
指標の構成が違う|単純には比較できない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。子のWISCと親のWAISは、結果に出てくる「指標」の構成が異なります。だから、数値を並べて単純に比べることはできません。
現在、WISCは最新版のWISC-Ⅴへの切り替えが進んでいます。一方、大人のWAISは、日本ではWAIS-Ⅳが広く使われています。この2つは、指標の数そのものが違います。
💡 指標の構成の違い
- WISC-Ⅴ(5つの主要指標)……言語理解/視空間/流動性推理/ワーキングメモリー/処理速度
- WAIS-Ⅳ(4つの指標)……言語理解/知覚推理/ワーキングメモリー/処理速度
大きな違いは、知覚を使う力の捉え方です。WAIS-Ⅳの「知覚推理」にあたる部分が、WISC-Ⅴでは「視空間」と「流動性推理」の2つに分けられています。つまり、同じ名前の指標どうしを単純に並べて比べることはできないのです。
なぜ分かれたのでしょうか。見たものを正確に捉える力と、規則性を見つけて考える力は、本来は別の力です。それを分けて見たほうが特性をより細かく理解できる、と考えられたためです。また、各指標を構成する下位検査も異なります。検査は、研究の進展に合わせて少しずつ改訂されていきます。
大切なのは、検査ごとに「その人の中での凸凹」を読むことです。子の結果と親の結果を数値で比べるのではなく、それぞれの結果を、それぞれの物差しで読み解く。これが正しい向き合い方です。



「子と親で数値を比べる」のは、実はおすすめできないのです。
子どものWISC、大人のWAIS|家族で考えるとき


「16歳の我が子は、どちらを受けるの?」と迷う方もいると思います。先ほどお伝えしたように16歳は重複年齢なので、本人の状況や目的に応じて、専門家がどちらの検査が適切かを判断します。迷ったら、相談先で確認してみてください。
お子さんの検査をきっかけに、ご自身の特性が気になった方も多いはずです。自分の特性を知ることは、お子さんへの理解にもつながります。「私もここが苦手だったから、この子の気持ちがわかる」。その実感は、親子の関わりの心強い土台になります。
それぞれの検査について、もっとくわしく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。お子さんのWISCについてはこちら。


ご自身の大人のWAISについては、こちらでまとめています。


どちらの検査か迷う、結果の見方を相談したい方へ
お子さんのこと、ご自身のこと。検査をめぐる迷いを、公認心理師などの専門家にオンラインで相談できます。自宅から話せるのも心強いポイントです。
検査の違いより、大切にしたいこと
WISCとWAISの違いを見てきましたが、最後に、いちばん大切なことをお伝えします。検査の種類や数値の比較に気を取られすぎないでほしい、ということです。
知能検査が教えてくれるのは、子であれ大人であれ、その人の中にある「得意と苦手の凸凹」です。数字の高い低いや、家族どうしの比較に意味があるのではありません。一人ひとりの凸凹を理解し、苦手を補い、得意を活かす。そのために検査はあります。
凸凹(評価点のばらつき)の具体的な読み方は、こちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご覧ください。


📝 これはあくまで一般化した事例ですが
お子さんのWISCの結果で「処理速度が苦手」と知ったあるお母さんが、自分も書類仕事に時間がかかることを思い出し、後日WAISを受けました。指標の構成が違うので数値はそのまま比べられませんでしたが、「親子で似た苦手があるのかも」と気づけたことで、お子さんへの声かけがやわらかくなったそうです。比較ではなく、理解につながった一例です。



比べるためではなく、理解するために検査はあります。
子のことも自分のことも、一人で抱え込まないでください。結果の意味を整理したり、気持ちを言葉にしたいときには、専門家と一緒に考えるという選択肢があります。オンラインのカウンセリングも、心強い支えになります。
検査結果を、家族のこれからに活かしていくために
結果の受け止め方や、お子さんへの関わり方を、あなたのペースで専門家と一緒に。一人で抱え込まず、まずは話してみることから始められます。
まとめ
WISCとWAISの違いについて、ポイントを振り返ります。
- WISCもWAISも同じウェクスラー式。いちばんの違いは対象年齢(WISCは5〜16歳11ヶ月、WAISは16〜90歳11ヶ月)
- 16歳はどちらでも受けられる重複年齢。専門家が状況に応じて判断する
- WISC-Ⅴは5つの主要指標、WAIS-Ⅳは4つの指標。指標の構成が違う
- WAIS-Ⅳは「知覚推理」だが、WISC-Ⅴは「視空間」と「流動性推理」に分かれている
- だから子と親の結果を、数値で単純に比べることはできない
- 大切なのは比較ではなく、一人ひとりの凸凹を理解し、得意を活かすこと
検査の種類や数字は、家族を比べるためのものではありません。子も親も、それぞれが自分の凸凹を知り、これからを少し生きやすくするための地図です。その地図を広げる隣に、伴走できる人がいることを、どうか覚えていてくださいね。
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元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター

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