WISCの結果を学校に伝える方法|合理的配慮の頼み方を公認心理師が解説

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WISCの結果は受け取ったものの、「これを学校の先生に、どう伝えればいいの?」と手が止まっていませんか。数字がずらりと並んだ用紙を前に、そのまま渡していいのか、そもそも伝えるべきなのか、迷ってしまいますよね。

結論からお伝えすると、数値をそのまま渡すだけでは、先生には届きません。大切なのは、日常の困りごとに翻訳して伝えることです。この記事では、学校への伝え方と、合理的配慮のお願いの仕方をお話しします。私は公認心理師として、検査結果を学校につなぐお手伝いをしてきました。その視点から、具体的にお伝えします。

📖 こんな方に読んでほしい記事です

  • WISCの結果を学校にどう伝えるか、迷っている方
  • 合理的配慮をお願いしたいが、頼み方がわからない方
  • 「モンスターと思われないか」と不安な方
  • 結果の説明を受けたけれど、正直よくわからなかった方

💡 この記事の前提について

この記事は、病院や療育機関など学校の外でWISCを受けた場合を想定しています。学校からの勧めで教育センターなどの職員が検査をした場合は、その職員から先生へ直接フィードバックされることもあります。まずは、どの経路で検査を受けたのかを確認しておくと安心です。

目次

WISCの結果は、学校と共有すると活きてきます

相談に乗ってくれる女性

WISCの結果は、家庭の中だけで抱えておくより、学校と共有したほうが活きる情報です。なぜなら、先生がその子に合った関わり方を選べるようになるからです。「なぜこの子はここでつまずくのか」が伝われば、授業や声かけの工夫につながります。

ここで一つ、よくある心配にお答えします。「検査を受けたことは、学校に伝わってしまうの?」という疑問です。学校の外で受けた場合は、親が伝えなければ、学校に自動的に伝わることはありません。つまり、伝えるかどうかは、あなたが選べるということです。

ゆう

伝えるかどうかも、あなたが決めていいのです。

そのうえで、お子さんが学校生活で困っているなら、共有することをおすすめします。先生という強い味方を、支援のチームに加えられるからです。

先生に伝わると、たとえば次のような変化が生まれます。「怠けている」と見られていた行動が「特性による困りごと」として理解される。席の位置や課題の出し方が、その子に合わせて調整される。困ったときに、先生のほうから声をかけてもらえる。見方が変わるだけで、お子さんの学校での過ごしやすさは大きく変わります。伝えることは、その第一歩なのです。

伝える前に|「モンスターと思われないか」の不安に

配慮をお願いしようとすると、「わがままな親だと思われないかな」と不安になる方は少なくありません。その気持ち、とてもよくわかります。でも、どうか安心してください。

合理的配慮は、わがままな要求ではありません。お子さんがほかの子と公平に学ぶための、当たり前の調整です。眼鏡が必要な子が眼鏡をかけるのと同じように、その子に合った学び方を整えるだけのことなのです。

もう一つ知っておいてほしいのは、合理的配慮は、医師の診断がなくても相談できるということです。WISCの結果は、その相談の客観的な根拠になります。診断名がついていなくても、遠慮する必要はありません。

ただし、大切なのは伝え方の姿勢です。「こうしてください」と一方的に求めるのではなく、「一緒に考えていただけますか」と、チームになる姿勢で臨みましょう。学校側の事情もあるので、対話しながら進めるのが、うまくいくコツです。

伝えるタイミングも、少し意識してみてください。おすすめは、学期の始まりや、面談・家庭訪問の機会です。慌ただしい行事の直前や、放課後の忙しい時間帯は避けたほうが、先生もじっくり話を聞きやすくなります。「一度、お時間をいただけますか」と、あらかじめ相談の場を設けてもらうのも良い方法です。

伝え方のコツ|数値ではなく「困りごと」で伝える

ポイント

ここが、この記事でいちばん大切なところです。結果用紙の数値をそのまま渡しても、先生には伝わりにくいものです。数字を、日常の具体的な困りごとと、してほしい配慮に翻訳するのがコツです。

指標ごとに、伝え方の例をご紹介します。そのまま使える言い方にしていますので、お子さんの様子に合うものを選んで参考にしてください。

ワーキングメモリーが低めのとき

一度に複数のことを覚えておくのが苦手なタイプです。次のような伝え方ができます。

  • 「指示は一つずつ、順番に出していただけると助かります」
  • 「大事な連絡は、口頭だけでなく連絡帳やメモにも書いていただけますか」
  • 「宿題の範囲は、黒板に書いて残しておいていただけると安心です」

処理速度が低めのとき

作業をこなすのに、人より少し時間がかかるタイプです。速さより正確さを大切にできる配慮をお願いしましょう。

  • 「板書を写す時間を、少し長めにとっていただけますか」
  • 「書き写す量が多いときは、プリントの配布などで調整いただけると助かります」
  • 「テストで見直しの時間が足りないようなので、時間の配慮をご相談できますか」

言語理解が低めのとき

言葉だけの説明が、頭に入りにくいタイプです。目で見てわかる形の情報が助けになります。

  • 「口頭の説明に加えて、絵や図でも示していただけると理解しやすいようです」
  • 「抽象的な言い方より、具体的な例で伝えていただけると伝わりやすいです」
  • 「大切な言葉は、ゆっくり短く区切って話していただけると助かります」

視空間が低めのとき

図形や空間、位置関係を目で捉えるのが苦手なタイプです。WISC-Ⅴでは、以前の「知覚推理」がこの視空間と、次の流動性推理に分かれています。次のような伝え方ができます。

  • 「図やグラフを読むのが苦手なようです。言葉でも補って説明していただけますか」
  • 「作業の完成イメージを、先に見本で示していただけると安心します」
  • 「板書のレイアウトが複雑だと写しにくいようなので、配慮いただけると助かります」

流動性推理が低めのとき

規則性を見つけたり、初めての問題を筋道立てて考えたりするのが苦手なタイプです。手順を具体的に示すことが助けになります。

  • 「手順は、言葉で一つずつ順番に説明していただけると取り組みやすいようです」
  • 「新しい課題では、具体的な例を一つ見せてから始めていただけますか」
  • 「『自分で考えてごらん』の前に、考え方のヒントを添えていただけると助かります」

ここで一つ注意したいのは、すべての配慮を最初から求めなくてよいということです。まずは、お子さんがいちばん困っている場面に絞ってお願いすると、先生も対応しやすくなります。優先順位をつけて、少しずつ相談していきましょう。

💡 伝える相手は、担任の先生だけではありません

担任の先生に加えて、特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー(SC)にも相談できると、学校全体で支える体制がつくりやすくなります。とくにSCは、心理の専門家です。検査結果の見方にも詳しいので、頼れる存在になります。

結果の凸凹の読み方をもう一度確認したい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

結果の意味が、正直よくわからないときは

説明を受けても、ピンとこないことは珍しくありません。学校に伝える前に、専門家と一緒に結果を整理しておくと安心です。オンラインで相談できます。

伝えたあとに|学校と協力関係を続けるために

理解力

一度伝えたら終わり、ではありません。配慮は、お子さんの様子を見ながら、少しずつ調整していくものです。最初から完璧を求めず、「試してみて、また相談する」というゆるやかな関係を目指しましょう。

それでも、親一人で学校とやりとりを続けるのは、心細く感じることもあります。そんなときに知っておいてほしい選択肢が2つあります。

  • 検査を受けた機関に、「学校向けの報告書」の作成を頼む。専門家の言葉があると、学校の理解が深まりやすくなります
  • 学校での面談に、スクールカウンセラーに同席してもらう。結果の説明を補ってもらえるので、伝える負担が減ります

とくに、結果の内容が自分でもよくわからない場合は、無理に一人で説明しようとしなくて大丈夫です。専門家の力を借りることは、決して頼りないことではありません。お子さんのための、かしこい選択です。

ゆう

専門家を頼るのは、お子さんのための一手です。

📝 これはあくまで一般化した事例ですが

結果用紙のコピーを担任に渡したものの、うまく伝わらなかったお母さんがいました。次の面談で、数値の話をやめて「宿題に人一倍時間がかかって困っている」と具体的な場面を伝え、スクールカウンセラーにも同席してもらいました。すると先生の理解が進み、宿題の量を調整してもらえたそうです。伝え方と、頼る相手を変えるだけで、状況は動くのです。

結果を家庭でどう活かすかについては、こちらの記事でもご紹介しています。

学校とのやりとりや、結果への気持ちの整理を、専門家と一緒に進めたいときには、オンラインのカウンセリングという選択肢もあります。

学校とのやりとりに、疲れていませんか

伝え方の作戦も、気持ちの整理も、専門家と一緒に考えていけます。一人で抱え込まず、まずは話してみることから始められます。

まとめ

WISCの結果を学校に伝える方法について、ポイントを振り返ります。少し長くお伝えしてきましたが、大切なのは「完璧に伝えること」ではなく「一緒に考えてもらうこと」です。

  • 学校の外で受けた場合、伝えるかどうかは親が選べる。困っているなら共有をおすすめ
  • 合理的配慮は特別扱いではなく、公平に学ぶための調整。診断がなくても相談できる
  • 一方的に求めず、「一緒に考える」チームの姿勢で臨む
  • 数値をそのまま渡さず、日常の困りごとと、してほしい配慮に翻訳して伝える
  • 担任だけでなく、特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーにも相談する
  • 結果がよくわからないときは、報告書を頼む・SCに同席してもらうなど、専門家を頼ってよい

学校に伝えることは、お子さんの味方を増やすことです。うまく言えなくても大丈夫。完璧な説明より、「この子のために一緒に考えてほしい」という気持ちが、いちばん先生に届きます。その一歩の隣に、伴走できる人がいることを、どうか忘れないでくださいね。

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ゆう
この記事を書いた人:ゆう
公認心理師(国家資格)
元 少年鑑別所 心理技官(18年)
現職:子ども家庭支援センター
3,000人以上の親子の相談、500件以上の心理検査の経験から、発達障害・不登校・子どもの問題行動でお悩みの保護者へ、「親自身が自分を責めなくていい」視点で記事をお届けしています。

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