この記事では、
発達障害の二次障害による子どもの反抗
について詳しく説明していきます。
お子さんが言うことを聞いてくれず、ときには反抗してくるような場合、どうやって対応すればよいのか困ってしまいますよね?
子どもが親に反抗する原因はいろいろ考えられますが、発達障害のある子どもで「二次障害」が生じていて、その対応がとても難しい場合があります。
相談室には、二次障害が原因と思われる不適応のお子さんがいらっしゃいます。
そこで、今回は、
- 発達障害の二次障害って何?
- 親への反抗のメカニズムについて知りたい!
- 二次障害で反抗する子どもへの対応方法を身に付けたい!
という悩みや疑問に答えていきます。
発達障害のお子さんの反抗にお悩みに方は是非参考にしてください。
発達障害のある人の別の悩みの一つとして、勉強方法について知りたい方は、次の記事で詳しく説明しています。
発達障害の二次障害とは
発達障害の二次障害について説明していきます。
今回は、次の3つについて詳しく解説します。
- 発達障害について
- 二次障害とは
- 二次障害として表れる症状
発達障害について
まずは、発達障害についてです。
発達障害は、言語や知的な発達が遅れたり、人とのコミュニケーションや社会性などに支障が生じたりするものです。
「アメリカ精神障害の診断と統計マニュアル:DSM-5」には発達障害の種類はたくさんあります。
その中で、代表的なものとしては「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(AD/HD)」「学習障害(LD)」の3つがあります。
それらの症状を以下に簡単にまとめました。
- ASD:コミュニケーションの難しさ、こだわりの強さ(+感覚の過敏さ)
- AD/HD:不注意、多動性、衝動性
- LD:読み書き計算などのうち、1つ又は1つ以上が極端に苦手
これらの症状は、人によって表れ方が異なります。
症状の程度も様々です。
例えば、AD/HDといっても、全員が不注意・多動性・衝動性があるというわけではなく、人によっては、不注意だけとか、不注意と衝動性があるといったように異なります。
また、自閉スペクトラム症のある子どもの場合、コミュニケーションの難しさはあるけど、こだわりはそれほど強くないこともあります。
さらに、自閉スペクトラム症と注意欠如多動症の両方の診断があり、様々な症状が同時に表れることもあります。
発達障害のある子どもについて、より多くの症状があり、それらの程度が強いと、日常生活に「生きづらさ」を抱えている可能性が高くなります。
そうしたとき、周囲の理解が得られるかどうかが、日常生活に適応できるかに関わってきます。
二次障害とは
発達障害の「二次障害」とは、もともとの発達障害の特徴的な行動や症状が、その子が育った環境や周囲の対応によってゆがめられて、それが周囲に受け入れがたい形で表現されるようになる状態を指します。
次の図をご覧ください。
例えば、自閉スペクトラム症のお子さんであれば、元来コミュニケーション力の難しさやこだわりの強さなどがあります。
そのことを周囲の人が理解できず、その子の気持ちに寄り添えずに表に出てくる症状ばかり捉えてしまうことがあります。
その際に、「人の目を見て話さない嫌な子ども」とか、「自分の好きなことしかやらないずるい子ども」などと一方的に評価してしまいます。
そして、「扱いづらい子ども」のレッテルを張って否定的なかかわりを続けるようになります。
その子は、自分なりに自分を変えようとするのですが、自分の努力だけで変えられるものではなく、意識しすぎた結果、問題となる行動がかえって増えてしまうことがあります。
周りの大人は、そうした子どもを見て、さらに否定的な関わりをするようになります。
そうした子どもは、自分に対する「劣等感」や「恥ずかしい」気持ちだけでなく、周りに対する「怒り」や「不安」などを抱くようになります。
そうした否定的な感情が二次障害として、周囲に迷惑を掛けるような症状や行動として表れます。
二次障害として表れる症状
二次障害として表れるものは、大きく3つの領域に分けて説明できます。
「身体面」「精神面」「行動面」の3つです。
身体面:腹痛、頭痛、胃痛、便秘、下痢、体のだるさ、めまい、吐き気 など
精神面:抑うつ、意欲の減退、不安、イライラ、対人恐怖、依存症、自殺念慮 など
行動面:反抗、強迫的行動、ひきこもり、自傷行為、対人暴力、家出 など
発達障害の二次障害としては、このように様々な症状が表れるおそれがあります。
身体面、精神面、行動面の全てで症状が出る人もいるかもしれませんし、一つしか出ない人もいます。
一つしか出ない人でも、その症状の程度が強い人も弱い人もいます。
発達障害のある子どもは、こうした症状について自分でコントロールすることが苦手です。
親への反抗につながるメカニズム
こうした二次障害の中でも、親の反抗につながりやすいのは、特に精神面におけるイライラなどのネガティブな感情や、行動面における周囲に迷惑を掛けるような様々な行動でしょう。
発達障害のある子どもであっても、小学校低学年頃までであれば、親や周りの言うことに素直に従い、うまくできないとしてもあまり気にせずに過ごせるかもしれません。
しかし、徐々に自分と周囲の友達を比較するようになると「自分は他の人と違うんだ」とか、「他の人のようにうまくできない」といったように考えるようになり、それが「生きづらさ」につながっていきます。
発達障害のある子どもは、「生きづらさ」を抱えている子が少なくありません。
親が、子どもの生きづらさに気付いてあげて、子どもに配慮して、働き掛けを工夫して接すれば「二次障害」は生じにくいものです。
しかし、親に発達障害の知識が不足していたとすると、なぜ自分の子どもが他の子と同じようなことができないのかなどと考えて、自分自身に責任を感じるようになります。
すると、どうにか子どもを他の子と同じようなことができるようになってほしいという気持ちから、細かいことでも口を出したり、失敗しないように何でも親が代わりにやってあげたりしてしまうことがあります。
また、親によっては、自分の子どもの気持ちが理解できないとあきらめて,接することを避けてしまう場合もあるかもしれません。
こうした親による極端な接し方によって、子どもに「二次障害」として様々な症状が表れてきます。
さらに、子どもが、小学校高学年頃になると、これまでの親の依存から離れていき、いわゆる「第二次反抗期」と呼ばれるような時期に入ります。
そのとき親には,適度に離れた距離から暖かい目で見守るくらいの働き掛けが期待されます。
しかし、発達障害のある子どもは周囲の子どもと比べるとできないことが目立つため、親はこれまで以上に子どもに過干渉又は拒絶的な働き掛けを続けてしまうかもしれません。
いずれの場合も、この時期の子どもは親に対してネガティブな感情を抱くようになり、発達障害の二次障害の症状も加わって、激しい反抗的な態度や行動に及ぶおそれがあります。
そうした子どもは、親の言うことを聞かずに、大声で怒りなどの感情をぶつけてきたり、近くにあるものを壊したりするかもしれません。
また、親への反抗は、親に直接ぶつけるものばかりではありません。
例えば、家庭内では、金銭持ち出し、家庭内暴力、スマホ依存(スマホへの没入や多額の課金)、深夜はいかいなど、家庭外では、家出、万引き、モノを壊す、他者に対する暴力などの問題行動などもあります。
こうした問題行動についても、根底には発達障害の二次障害があり、親の過干渉又は突き放すといった極端な関わり方が影響していると考えることができます。
なお、エリクソンの発達段階説では、子どもが自分と周囲を比べ始める時期を「児童期」、第二次反抗期に当たる時期を「青年期」としています。
詳しくは次の記事をご覧ください。
二次障害で反抗する子どもへの対応方法
発達障害のある子どもが、二次障害を起因とした反抗を起こすようになった場合、親としてはどのような対応をすることが望ましいでしょうか。
当然ケースバイケースにはなりますが、どのような子どもにも共通する対応策について2つ説明します。
子どもの話に耳を傾ける
何よりも重要なことは、子どもに向き合って、しっかりと話を聴き、その子の気持ちを理解することです!!
これは、親が子どもを育てるに当たって大切なことですが、発達障害のある子どもに対しては、このことを意識して接することがとても重要です。
なぜなら、発達障害のある子どもが何らかの問題行動を取った場合には、親は「発達障害だから仕方ない」、「周りの子と違ってうまくできない」と思い込んでいることが少なくないからです。
すると、子どもが他者に迷惑を掛けるような行動を取ってしまった場合でも、その行動によって与えた相手やその迷惑を掛けてしまったことばかりに目が向いてしまって、子どもがどうしてそのような行動を取ったのかということを理解しようとしなくなってしまいます。
子どもが親に反抗してきたときにも、「また、いつものが始まった」くらいに捉えてしまうでしょう。
発達障害の二次障害で反抗する子どもに対して関わるときには、まずはその子の気持ちの高まりが収まったところで、その子にとって最も安心できる場所(自分の部屋とかリビングなど)に移動し、親がその子の話に耳を傾けるとよいでしょう。
もちろん、発達障害の症状によっては話すのが苦手で話をしてくれないこともあるかもしれませんが、親が子どもの話を聴こうとする姿勢を示すだけでも十分な効果があります。
専門家に相談する
親が子どもの話を聴く姿勢を示すだけでうまくいかない場合も当然あります。
特に、子どもが反抗をする場合には、すでに親子関係が悪化していたり、子どもの発達障害の症状が強かったりすることもあるでしょう。
そうした場合は、家族だけで抱えずに、専門家に相談することも大切です。
「心理の専門家に相談するなんて恥ずかしい」、「家族のことは他人に知られたくない」など思うかもしれませんが,親が他の人に頼るという行動そのものに意味があります。
親が自分自身では対処が難しいことを他者に相談するという行為は、「親であっても困ったことがあれば他の人を頼る」というメッセージを子どもに対して示すことができます。
発達障害ある子どもは,生きづらさを抱えていることが多く、そうした自分を恥ずかしいとか情けないなどと考えて、自分の本音を表に出さず、人に頼ることも苦手です。
おそらく、親もその子と同じような気持ちになって、自分たち家族の悩みを外に出さないようにしてきたかもしれません。
だからこそ、人は誰であっても、困ったときには他の人に頼ってもいいんだということを子どもに伝えることが、子どもの気持をすっと楽にしてあげることができます。
親に対して反抗するよりも、頼ってくれるようになるでしょう。
もちろん、専門家に相談することによって、その子に適した具体的なアドバイスをもらえる意味もあります。
発達障害のある子どもの問題行動の相談窓口としては、次のような機関があります。
いずれも無料で対応してくれるので,気軽に相談してみてください。
発達障がい者支援センター:発達障害全般
児童相談所:18歳未満の子どもの問題行動
法務少年支援センター:子どもの問題行動や全般
ただ、こうした専門機関に直接行くのは少し勇気が必要です。
そうした方は、とりあえずオンラインで心理の専門家に相談してみましょう。
ネットで検索すると様々なオンラインカウンセリングが出てきますが、「うららか相談室」は、私と同じ公認心理師や臨床心理士といった信頼性の高い心理の資格をお持ちの方が相談に乗ってくれます。
まとめ
今回は、発達障害の二次障害による子どもの反抗について、そのメカニズムや対応方法など説明してきました。
「これさえやれば大丈夫!」という簡単な方法はありませんが、何よりも大切なのは「発達障害があるから仕方がない」と簡単に片づけることなく、子どもの話に耳を傾けて、その子の気持ちを理解しようとすることです。
「困っているのはあなただけではなく、本当に困っているのはその子自身です!」
過去の記事でも書きましたが、発達障害のある子どもは反抗したくてしているのではありません。
つまり、反抗的な態度は、「助けてほしい」というメッセージの可能性もあるので、しっかりと向き合って話を聴いてあげましょう。
そして、その子の気持ちをよく理解して、心を育んでいってください!
発達障害の二次障害を少しでも良くする方法については、次の記事で詳しく説明しています。
また、大人や親自身が発達障害で生きづらさを感じていたら、次の記事が参考になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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